2023.10.27空き家を売却する方法は?かかる費用・税金や税制優遇について解説

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空き家は所有しているだけで税金や維持費がかかります。今後利用する予定がなければ、早めの売却をお勧めします。この記事では、空き家を売却する方法やその流れ、売却にかかる費用について解説します。

また不動産を売却するときに利用できる税金の控除・特例、また売却するときのポイントを紹介しますので、空き家の売却を検討している方はぜひ参考にしてみてください。

住まない空き家は売却するべき?

空き家に将来住む可能性がなければ、売却をお勧めします。不動産は所有しているだけで固定資産税や維持費などのコストがかかるからです。

また、空き家を放置してしまうと庭木や雑草が生い茂ることになり、景観が損なわれるだけでなく害虫の発生を引き起こしかねません。不審者の侵入や不法投棄、放火などの犯罪を誘発させる恐れもあります。

そして結果的に、隣家や周辺住民とトラブルになることもあります。
こうした理由から、今後居住や賃貸する可能性がないのであれば、空き家は売却するほうが良いでしょう。

空き家を売却する方法

空き家の売却を検討する場合、いくつかの方法が考えられます。ここでは代表的な方法を5つ紹介します。

そのままの状態で売却する

一つ目は、空き家のリフォームや建物の解体をせずにそのままの状態で、不動産会社へ仲介を依頼し、買い手を探して売却する方法です。

空き家を売却する場合、中古一戸建てとして売却する他にも、古家付き土地として売却することもできます。明確な規定はありませんが、一般的には建物の価値がないぐらい築年数が古い場合は売地にし、まだ建物に利用価値がある場合は、中古一戸建てとして売出します。

ちなみに住宅用地には、固定資産税や都市計画税が軽減される特例措置があります。更地にしてしまうと特例措置を利用できなくなり、結果として翌年以降の固定資産税などが上がってしまうので注意しましょう。

住宅用地の特例措置により、住宅用地の固定資産税・都市計画税は下記の通り算出できます。

区分 固定資産税 都市計画税
小規模住宅用地 住宅用地で住宅1戸につき200㎡まで 課税標準額×1/6 課税標準額×1/3
一般住宅用地 小規模住宅用地以外の住宅用地(200㎡を超える部分) 課税標準額×1/3 課税標準額×2/3

不動産会社に買い取ってもらう

空き家を売却する方法として、仲介以外に不動産会社に買い取ってもらう方法(買取)もあります。

不動産会社は再販することを想定して購入する為、仲介による売却価格よりも低くなります。

しかし買取による売却にはメリットも多く、不動産会社が直接買取する場合は仲介手数料がかかりません。また仲介による売却には時間がかかりますが、買取は売却価格に折り合いがつけばすぐに売却が可能です。
他にも、買い手が不動産会社の為、空き家の傷や不具合などの瑕疵を免責できる可能性が高い点もメリットでしょう。

リフォームやリノベーションをして売却する

空き家をリフォームやリノベーションし、建物の価値を高めてから売却する方法もあります。

見栄えが良くなる為売りやすくなる可能性がありますが、リフォームやリノベーションにかかった費用を売却価格に反映できるとは限りません。
実際にリフォームやリノベーションをするのであれば、不動産会社の担当者と相談し、多くの方に好まれるようなデザインや仕様にするようにします。
個性的なデザインにしてしまうと、売りづらくなる恐れもあるので注意しましょう。

「空き家バンク」を活用して売却する

空き家を売却する方法として、空き家バンクを活用する方法もあります。空き家バンクとは、空き家を売却したい方と購入したい方をつなぐ、各自治体が行うサービスです。
空き家バンクを利用する場合は、空き家が所在する自治体へ申し込むことになります。自治体によって一定の条件があり、また多少手続きは異なりますが、基本的には無料で利用できます。
しかし購入希望者から問い合わせがあった場合、直接やりとりすることになり、契約業務を不動産会社へ依頼する場合は、仲介手数料がかかります。

空き家バンクには、各自治体が空き家の情報を集めて独自に開示しているものと、国土交通省がモデル事業として採択した全国版空き家・空き地バンクがあります。
全国版空き家バンクは自治体を横断して閲覧できるのが魅力ですが、実際に問い合わせする窓口は各自治体になります。
自治体によっては空き家バンクがないこともあるので、まずは自身の家が所在する自治体に空き家バンクがあるのか、下記のページから確認してみましょう。

国土交通省「建設産業・不動産業:空き家・空き地バンク総合情報ページ」

取り壊し更地にして売却する

空き家を解体し更地にして売却する選択肢もあります。空き家が古く、建物の状態が悪い場合や倒壊する恐れがある場合は、更地にしたほうが管理しやすくなります。
また空き家の状態によっては、リフォームや改修に多額な費用がかかる場合もある為、空き家の築年数によっては、解体も視野にいれましょう。土地を探している方にとっては家を建てたときのイメージがしやすく、解体費用がかからない為、早期売却ができる可能性があります。

ただし空き家を解体した翌年は、前述した「住宅用地の特例措置」が利用できなくなる点には注意が必要です。また、再建築不可物件の場合、更地にすると建物を建てられない場所となり、売却が難航することや価格が下がる恐れがあります。その為、取り壊す前に確認しましょう。

空き家を売却する流れ

空き家を売却する流れは、以下の6つのステップです。

  1. 不動産会社に空き家の査定を依頼する
  2. 仲介依頼先を選び、不動産会社と媒介契約を締結する
  3. 売却活動を開始する
  4. 売買契約を締結する
  5. 空き家を引き渡す
  6. 翌年に確定申告を行う

まずは、不動産会社に査定を依頼し、空き家がどれくらいで売却できそうかを確認します。空き家の査定でチェックされるポイントと、売却時に必要になる書類は以下の通りです。

空き家の査定でチェックされるポイント ・立地や日当たり
・周辺環境
・道路の幅員や種類
・交通や生活の利便性
・土地の面積
・建物の床面積や間取
・建物築年数や状態
・設備の有無や状態
・インフラの引き込みの有無(水道・下水・ガス)
査定時に必要になる書類 ・登記済権利証
・登記識別情報通知
・土地の測量図や境界確認測量図
・建物の平面図や間取図
・固定資産税納税通知書
・購入時の売買契約書
・重要事項説明書

そして、査定結果や空き家の状況を踏まえて仲介での売却を決めた場合は、不動産会社と媒介契約を結び、不動産を売り出します。
具体的な売却の流れについては、こちらの記事でも詳しく解説していますのでご覧ください。

一戸建て売却の基礎知識!売却までの流れや費用、成功させる為のポイントを紹介

空き家の売却にかかる主な費用・税金

空き家の売却には費用や税金がかかります。一般的に発生する可能性がある費用や税金配下の通りです。(条件によってはかからないケースもあります。)

かかる費用・税金 相場
仲介手数料 不動産会社に仲介を依頼する場合に支払う費用です。
仲介手数料は売買価格に応じてその上限が定められています。速算式は以下の通りです。
  • 売買価格が200万円以下の場合:売買価格×5%+消費税
  • 売却価格が200万円超400万円以下:売買価格×4%+2万円+消費税
  • 売買価格が400万円超:売買価格×3%+6万円+消費税
解体費用(更地にする場合) 解体する場合、空き家の構造や前面道路との高低さなどによって異なりますが、一般的な構造別の相場は以下の通りです。
  • 木造:3~5万円/坪
  • 鉄骨造5~7万円/坪
  • 鉄筋コンクリート造:6~8万円
合計で100~300万円程度
清掃費用 空き家を売却する場合、必ずしもプロに清掃を依頼する必要はありませんが、空き家が遠方にあり自身で清掃できない場合は、清掃会社に依頼することもできます。
  • 空き家の清掃+不用品の処分:3LDKで15~50万円程度
  • 空き家の清掃のみ:3LDKで7~10万円程度
依頼先やプランによっても異なるので、実際には複数社に依頼して比較しましょう。
相続登記費用 空き家の相続登記をする場合、登録免許税と司法書士の報酬がかかります。報酬は依頼先によっても異なりますが、それぞれ以下の通りです。
  • 登録免許税:不動産評価額×0.4%
  • 司法書士への報酬:5~10万円
印紙税 不動産売買契約書は課税文書である為、売買契約を締結する場合は、契約書に印紙を貼って印紙税を納めます。なお、2024年3月31日までに作成する場合は、印紙税が軽減されます。例えば以下の通りです。
  • 契約金額1,000万円超5,000万円以下:1万円
  • 契約金額5,000万円超1億円以下:3万円
譲渡所得税(住民税・所得税・復興特別所得税) 空き家を売却して利益が発生する場合、譲渡所得税がかかります。
厳密には譲渡所得税は、所得税と復興特別所得税をさしますが、一般的に住民税も一緒に算出するケースが多いです。
ちなみに2037年までは、復興特別所得税として基準所得税額の2.1%が合せてかかります。

課税譲渡所得金額=譲渡益-(取得費+譲渡費)-特別控除額

上記式で算出した課税譲渡所得金額に、空き家の所有期間に応じて税率を乗じます。税率は以下の通りです。
  • 所有期間5年以下:譲渡所得の39%
  • 所有期間5年超:譲渡所得の20.315%

税金については、必ず税理士に相談しておきましょう。
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空き家を売却する際に利用できる控除・特例

空き家を売却する際に利用できる控除や特例を5つ紹介します。それぞれ計算式や適用要件を解説しますので、ぜひ参考にしてください。

被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例

相続や遺贈によって取得した家屋またはその家屋の敷地を、2023年12月31日までに売却するとき、一定の要件に当てはまる場合は譲渡所得から3,000万円を限度に控除できます。
被相続人が亡くなる直前まで居住していた場合で、以下の3つの要件に当てはまるときは特例の対象(被相続人居住用家屋)となります。

  • 1981年(昭和56年)5月31日以前に建築された建物
  • 区分所有建物(マンションなど)ではないこと
  • 被相続人が亡くなる直前に被相続人以外に居住する方がいなかったこと

計算方法と適用要件は以下の通りです。

【計算式】
課税譲渡所得金額=譲渡益-(取得費+譲渡費)-3,000万円
適用要件
  1. 売却する方が、相続または遺贈によって被相続人居住用家屋およびその敷地を取得したこと
  2. 相続または遺贈によって取得した被相続人居住用家屋、もしくはその敷地も合わせて売却すること
  3. 相続したときから売却するまでに事業用、賃貸用として利用していないこと
  4. 譲渡時に、一定の耐震基準を満たしていること
  5. 相続開始から3年を経過する日が属する年の12月31日までに売却すること
  6. 売却代金が1億円以下であること
  7. 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例、もしくは収容等の場合の特別控除など、他の特例を受けていないこと
  8. 同じ被相続人から相続または遺贈によって取得した被相続人居住用家屋またはその敷地について同じ特例を受けていないこと
  9. 親子間や夫婦間の売買でないこと

出典:国税庁「No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」

相続財産を譲渡した場合の取得費の特例

相続または遺贈によって取得した土地や建物、株式などの財産について、一定期間内に売却した場合は、一定金額を譲渡資産の取得費に加算できる特例です。
計算方法と適用要件は以下の通りです。

【計算式】
その者の相続税額×その者の相続税の課税価格の計算の基礎とされたその譲渡した財産の相続税評価額その者の取得財産の価額+その者の相続時精算課税適用財産の価額+その者の純資産価額に加算される暦年課税分の贈与財産の価額=取得費に加算する相続税額
適用要件
  1. 相続や遺贈によって財産を取得した者であること
  2. 財産を取得した方に相続税が課税されていること
  3. 相続の開始があった翌日から、相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までにその財産を譲渡していること

出典:国税庁「No.3267 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」

マイホームを売ったときの軽減税率の特例

居住用財産を売却して一定の要件に当てはまる場合は、課税長期譲渡所得の6,000万円以下については、通常よりも低い税率となる軽減税率が適用になります。
計算方法と適用要件は以下の通りです。

【計算式】
課税長期譲渡所得金額が6,000万円以下:長期譲渡所得金額×10%
課税長期譲渡所得金額が6,000万円超 :(長期譲渡所得金額-6,000)×15%+600万円
適用要件
  1. 日本国内にあるマイホームを売却すること。もしくはその自宅と敷地を売ること
  2. 売却した年の1月1日にその自宅と敷地の所有期間が10年を超えていること
  3. 売却した年の前年、もしくは前々年に同様の特例を受けていないこと
  4. 売却した家屋や敷地について、マイホームと買換え特例などの特例を受けていないこと(3,000万円控除と軽減税率は併用可能)
  5. 親子間や夫婦間の売買でないこと

出典:国税庁「No.3305 マイホームを売ったときの軽減税率の特例」

低未利用土地等の100万円特別控除

2020年7月1日から2022年12月31日の間に個人が都市計画区域内にある土地を500万円以下で売却した場合、その土地が低未利用地であれば、その年の低未利用地等の譲渡にかかる譲渡所得金額から100万円を限度に控除できます。
計算方法と適用要件は以下の通りです。

【計算式】
課税譲渡所得金額=譲渡益-(取得費+譲渡費)-100万円

適用要件
  1. 売却した土地が都市計画内にあり、低未利用地等であること
  2. 売却した年の1月1日に、所有期間が5年を超えていること
  3. 親子間や夫婦間、生計をともにする親族間の売買でないこと
  4. 売買金額が低未利用土地とその上にある建物と合計しても、500万円以下であること
  5. 売却後は低未利用地が利用されること
  6. 他の譲渡所得の特例を受けていないこと(収用等の場合の特別控除や事業用資産を買い換えた場合の課税の繰延べなど)

出典:国税庁「No.3226 低未利用土地等を譲渡した場合の長期譲渡所得の特別控除」

地方自治体の空き家解体補助金

自治体によっては空き家を解体する住民に対し、費用を補助する事業を行っているケースがあります。
ここでは参考として以下の例を紹介しますが、実際には空き家が所在する自治体の窓口やホームページで確認してください。
地方自治体

地方自治体 補助額
文京区(空家等対策事業) 倒壊の危険性などがある空き家に対し、区が200万円を上限に解体費用を補助します。なお除去後は区が所有者から10年間無償で借り受けて、行政目的で利用することになります。
町田市(除去工事) 倒壊の恐れがある住宅の解体にかかる費用の1/2(上限は50万円)まで助成してもらえます。
横浜市(住宅除却補助制度) 1981年5月末日以前に建てられた建物を対象に、市の耐震診断が一定以下だった場合下記のいずれか低い額が補助されます。
  • 20万円(非課税世帯は40万円)
  • 延床面積×13,500円×1/3
  • 除去工事費用×1/3
長野市(老朽危険空き家解体事業補助) 以下の金額のうちいずれか少ない額が補助されます。
  • 解体する建物の延べ面積に応じて、国が定める除去工事費の8/10
  • 補助対象経費の5/10
  • 限度額100万円
なお申請日の前年度の所得金額が200万円以下の方は、以下のいずれか低い額が補助されます。
  • 解体する建物の延べ面積に応じて、国が定める除去工事費の8/10
  • 補助対象経費の6/10
  • 限度額120万円

出典:
文京区「空家等対策事業」

町田市「除去工事」

横浜市「住宅除却補助制度」

長野市「老朽危険空き家解体事業補助」

空き家を売却する際のポイント

最後に空き家を売却するときのポイントを4つ紹介します。

名義人を確認する

もし空き家を相続によって取得した場合は、相続登記をして登記名義人を現所有者に変更しなければなりません。被相続人の名義のままでは売却できない為注意しましょう。

空き家の状態を把握しておく

空き家を中古一戸建てとして売却するのか、更地にして売却したほうが良いのか判断する為にも、一度は空き家の状態を把握する必要があります。
不動産会社へ査定依頼する前に自ら足を運んで、建物の状態や設備の不具合などを実際に確認しておくことをお勧めします。

取り壊す場合はタイミングを見計らう

固定資産税は毎年1月1日の所有者に対し課税されます。その時点で更地の場合、その年の固定資産税は住宅地の特例措置が適用されません。
空き家を解体するのであればその年中に売却できるようにし、年をまたがないように注意します。

空き家の売却に強い不動産会社に相談する

空き家は定期的なメンテナンスができていないことがある為、引き渡し後に予期せず不具合が見つかるケースがあります。中古住宅として売却する場合は、空き家の売却に強く、アフターフォローが充実した不動産会社に相談することをお勧めします。

長谷工の仲介では、お住いの購入・売却後もご利用できるアフターサービスが充実しています。建物保証をはじめ、設備保証延長や24時間駆けつけサービスなどがあり、安心して売却することができます。
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まとめ

空き家を売却するのであれば、条件によっては仲介による売却だけでなく、買取も視野に入れておくと安心です。仲介と買取の、両方を相談できる不動産会社に相談しましょう。

長谷工の仲介では、仲介だけでなく買取のご相談も可能です。無料査定や無料相談も行っておりますので、まずは無料査定からお気軽にご相談ください。

※本記事の内容は2023年10月27日現在のものであり、制度や法律については、今後改正・廃止となる場合がございます。

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この記事の著者

桜木理恵
私鉄系不動産会社にて仲介営業を約8年、大手ハウスメーカーのグループ会社にてリフォーム営業を5年従事した経験を活かし、現在不動産Webライターとして活動。保有資格は宅地建物取引士・管理業務主任者・2級ファイナンシャルプランニング技能士

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