2023.10.27離婚時に住宅ローンが残っている場合はどうすれば良い?ケース別の対処法や注意点を解説

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住宅ローンの組み方や離婚後の生活拠点にもよりますが、離婚時は不動産を売却したほうが良いケースが多いです。ただし、売却は住宅ローンの関係を解消するだけでなく、財産分与にも影響してきます。

離婚時に住宅ローンが残っている場合は、どのようなときが売却に適しており、また注意点には何があるのでしょうか。
この記事では、離婚時に住宅ローンが残っている場合のケース別対処法などについて解説します。

住宅ローンは財産分与の対象になる?

離婚時、住宅ローンはマイナスの財産として、財産分与を計算するうえで考慮されます。
例えば、時価が4,000万円、住宅ローン残債が3,500万円とした場合、4,000万円から3,500万円を差し引いた残りの500万円が財産分与の対象です。
財産分与は50%ずつ分けることが一般的ですので、250万円(=500万円×50%)ずつ分けることになります。

出典:法務局「財産分与」

離婚時に住宅ローンが残っている場合に確認すること

離婚時に住宅ローンが残っている場合は何を確認すれば良いのでしょうか。ここでは、3つの項目に分けてそれぞれ解説していきます。

名義人

住宅の所有者と住宅ローンの債務者(お金を借りている方)は、同一人物であることが基本です。
住宅を売却できるのは、所有者となります。

ただし、離婚をする際は、念の為法務局で登記簿謄本を取得し、物件の所有者(名義人)が誰であるかを確認することが適切です。

契約内容

住宅ローンの債務者が誰なのかも確認しておきましょう。
住宅ローンには、以下のような借り方があり、契約内容によって債務者が異なります。

契約内容 概要
単独ローン 主たる債務者が1人でローンを組み、所有形態も単独所有となります。
連帯保証 収入合算の一つの方法であり、夫婦の一方が主たる債務者、他方が連帯保証人になります。所有形態は主たる債務者の単独所有です。
ペアローン 収入合算の一つの方法であり、夫婦それぞれが単独のローンを借ります。所有形態は夫婦の共有です。
連帯債務 収入合算の一つの方法であり、夫婦が同じ債務の住宅ローンを借ります。所有形態は夫婦の共有です。

住宅ローンの残債と物件の価格

離婚では、住宅を売却する可能性も高いです。
住宅を売却する際は、住宅ローンの残債と物件の価格を知ることが必要となります。

住宅ローン残債が売却価格を下回っていることを「アンダーローン」、住宅ローン残債が売却価格を上回っていることを「オーバーローン」とも呼びます。

住宅ローン残債がある物件を売る場合、売却代金で住宅ローン残債を一括返済することから、原則として売却価格が住宅ローン残債を上回っていることが基本的な条件です。
その為、売却する際は不動産会社に査定を依頼し、売却予想価格を把握して、住宅ローンを完済できる金額か否か(アンダーローンかどうか)を確認することが第一歩となります。

【ケース別】離婚時に住宅ローンの残債がある場合の対処法

離婚時に住宅ローンの残債がある場合の対処法をケース別に解説します。

不動産を売却する

離婚時の不動産売却は、「2人の債務の関係を解消できる」、「現金で財産分与を行いやすい」などのメリットがあります。
連帯保証やペアローン、連帯債務などの2人の間に何らかの債務の関係がある場合には、売却してローンを完済することで債務関係を解消できます。

残債額が売却額を下回る場合(アンダーローン)

不動産の売却には、仲介と買取の2種類があります。
仲介とは不動産会社の紹介を通じて、直接買主様に市場価格で売却する方法のことです。
買取とは、仲介のプロセスを経ずに不動産会社に買い取ってもらうサービスのことを指します。

仲介と買取のメリットと注意点を示すと下表の通りです。

仲介 買取
メリット
  • 市場相場に合わせて売却価格を決められる
  • 多くの額を財産分与できる
  • 早く売れる
  • 近所に知られずに売却ができる
注意点
  • 売却までに時間がかかる
  • 仲介よりも安価での売却になる為、財産分与の額が少なくなる

買取については、こちらの記事で詳しく解説していますのでご覧ください。

マンション売却は買い取りがお勧め?仲介との違いや向いている物件の特徴を解説

連帯保証やペアローンなどの2人の債務の関係は、物件そのものを変化させているわけではない為、買主様には特に影響を与えません。
ただし、債務の関係によっては単独所有か共有か否かが異なる為、売主様には一定の制限が生じます。
単独所有もしくは共有という観点から、売却のしやすさと債務の関係を示すと下表の通りです。

単独ローン 連帯保証 ペアローン 連帯債務
売却のしやすさ

単独ローンと連帯保証の場合、単独所有物件となることから売主様の単独意思のみで売却することが可能です。
一方で、ペアローンや連帯債務の場合、売却には共有者全員の同意が必要となります。

残債額が売却額を上回る場合(オーバーローン)

前述の通り、住宅ローン残債がある物件を売るには、売却時に住宅ローン残債を一括返済することが必要です。その為、住宅ローン残債がある物件を売るには、原則としてアンダーローンの状態となっていることが望ましいです。

ただし、オーバーローンであっても、貯蓄を加えて住宅ローン残債を一括返済できる場合には、通常の売却方法で売却可能です。

一方で、貯蓄を加えても住宅ローン残債を一括返済できない場合の売却方法としては任意売却が考えられます。返済が難しいという理由で任意売却を選択した場合、借金を約束通り返済できないことになる為、債務不履行を発生させることになります。
債務不履行を発生させれば、ブラックリスト(信用情報機関の事故リスト)に載ります。ブラックリストに名前が載れば、一定期間新たに住宅ローンが組めない、クレジットカードを作れないなどのデメリットが生じます。

なお任意売却を選択する場合には、債権者(銀行)の合意が必要です。
例えば、売却金額があまりにも安い、住宅ローンを組んだ直後に任意売却を要求する場合には、債権者の合意が得られないこともあります。

また、債務者が1人なのか、2人なのかによって、選択のしやすさ(売却のしやすさ)は異なってきます。
2人ともブラックリストに載るという話であれば、2人の同意は得にくくなります。
任意売却の選択のしやすさと債務の関係を示すと、下表の通りです。

単独ローン 連帯保証 ペアローン 連帯債務
売却のしやすさ

ローン残債がある物件の売却や任意売却については、こちらの記事で詳しく解説していますのでご覧ください。

ローン残債があってもマンション売却できる?ケース別に対処方法を解説

任意売却とは?競売との違いやメリット、注意点などを解説

離婚後もどちらかが住み続ける

離婚では、例えば子供の転校を避けたいなどの理由で、離婚後もどちらかが住み続けるという選択をすることもあります。
離婚後もどちらかが住み続けるには、住宅ローンの債務者が引き続き住み続けるケースと、債務者ではない方が引き続き住み続けるケースの2通りが考えられます。

名義人が住み続ける場合

単独ローンや連帯保証などの単独名義になっており、住宅ローンの債務者がそのまま所有者として住み続ける場合は、特段の手続きを経ずに住み続けることができます。

単独ローンの場合は特に問題はありませんが、連帯保証となっている場合は注意が必要です。
例えば、主債務者である元夫が住み続けて連帯保証人である元妻が出ていった場合、元夫が債務の返済を滞らせると連帯保証人である元妻のところに一括返済の請求が来ます。
連帯保証人の側が出ていく場合、主たる債務者が知らない間に債務不履行となってしまう懸念があります。

またペアローンや連帯債務で一方が住み続ける場合、一方が他方のローンを借り換えることで住宅ローンを単独名義とし、住み続ける方法もあります。
ただし、他方のローンも加わることになる為、債務を引き受ける側の債務者には相応の収入があることが条件です。審査が通らないこともある為、借り換えを行う場合には、事前に銀行に相談することが望ましいです。

名義人ではない方が住み続ける場合

離婚では、協議の結果、住宅ローンの債務者でない方が家に住み続ける場合もあります。
例えば、元妻と子が引き続き家に住み、出ていった元夫が住宅ローンを払い続けるケースです。

債務者ではない方が住み続ける場合、出ていった債務者が知らない間に住宅ローンの返済を滞納させてしまうこともあります。債務者が住宅ローンを滞納させれば、最終的には競売にかけられ、強制退去しなければならないこともあり得ます。

また、所有権も出ていった債務者のままである為、勝手に売却されることも考えられます。
所有者兼住宅ローンの債務者ではない方が住み続けることはリスクがある為、所有権も債務の名義も住み続ける方に変更することが望ましいです。
離婚時のマンション売却については、こちらの記事で詳しく解説していますのでご覧ください。

離婚時にマンションを売却すべき?財産分与やローンがある場合の注意点を解説

離婚後の住宅ローンや不動産に関するよくある質問

この章では、離婚後の住宅ローンや不動産に関するよくある質問について解説します。

ローンを組んでいる金融機関に連絡する必要はありますか?

売却して一括返済をする場合、もしくは夫婦の一方に単独名義とする為に借り換えを行う場合は、事前に金融機関に連絡することが望ましいです。
ローンの借り換えに必要な書類は、銀行によっても異なりますが、一般的に必要とされる書類は、以下の通りです。

ローン借り換えの為に必要な書類
  • 本人確認書類(運転免許証など)
  • 収入証明書類(給与所得者であれば源泉徴収票、住民税決定通知書など)
  • 物件に関する書類(登記簿謄本など)
  • 現在の住宅ローンに関する書類(返済予定表など)

売却による一括返済や、夫婦の他方へ単独名義とする為に行う一括返済には、住宅ローンの繰上返済手数料が発生することもあります。

共有名義の場合でも売却はできますか?

共有の持分だけの売却であれば、単独の意思だけで行うことができます。
共有物件を全体で売却する場合には、売主様は共有者全員となり、売買契約書にも共有者全員が押印することになります。
共有名義のマンション売却については、こちらの記事で詳しく解説していますのでご覧ください。

共有名義のマンションを売却する方法は?売却までの流れや注意点を解説

養育費の負担が軽減されることはありますか?

離婚では、離婚後に妻子が今の家に住み続け、夫が住宅ローンを継続して負担する場合、養育費の中から住宅ローンが支払われる取り決めがなされ、負担が軽減される場合もあります。
例えば、養育費が15万円で住宅ローンが10万円の場合、実際に支払われる養育費は15万円から住宅ローンの10万円を差し引いた5万円となるケースもあります。

公正証書は作成したほうが良いですか?

公正証書とは、公証人がその権限に基づいて作成する公文書のことです。
公正証書を強制執行認諾文言とすることで、相手方が養育費を支払わないなどの約束を破った場合には、強制執行をすることができます。
取り決めに強制力を持たせるようにするには、強制執行認諾文言の公正証書を締結することが望ましいです。

住宅ローン控除は引き続き受けられますか?

住宅ローン控除は、債務者(ローンの返済義務のある方)が引き続き住めば、継続して適用することができます。

例えば、債務者である元夫が引き続き住み、元妻の分を購入して新たに住宅ローンを組む場合は住宅ローン控除を引き続き受けることが可能です。
元夫分の住宅ローン控除は経過年数も継続しますが、元妻の分の住宅ローン控除は中古住宅の購入を目的とした新規の借り入れという扱いになり、1年目から適用できます。

一方で、元妻が家に引き続き住み続け、元夫が住宅ローンを負担するケースでは、居住要件を満たさない為、住宅ローン控除は適用できないことになります。

住み続けた場合でも母子手当は受けられますか?

母子手当とは、両親が離婚や死別をした場合に支給される手当のことです。
母子手当の支給を受けるには所得制限が設けられており、養育費の額によっては母子手当が減額または不支給となる場合もあります。
養育費の中から住宅ローンが支払われているケースでは、金額次第では母子手当が減額または不支給となる懸念は考えられます。

まとめ

ここまで、離婚時の住宅ローンについて解説してきました。
離婚時に債務の関係を解消したい場合には、不動産を売却したほうが良いケースも多いです。
長谷工の仲介では、無料相談を承っています。
離婚時の売却についても相談可能ですので、ぜひご利用いただければと思います。

※本記事の内容は2023年10月27日現在のものであり、制度や法律については、今後改正・廃止となる場合がございます。

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この記事の著者

竹内英二(株式会社グロープロフィット 代表取締役)
不動産鑑定および宅建業の代表取締役。不動産鑑定士、宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、公認不動産コンサルティングマスター(相続対策専門士)、中小企業診断士、住宅ローンアドバイザー。大阪大学出身。
写真:竹内英二(株式会社グロープロフィット 代表取締役) -->

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