2023.04.28任意売却とは?競売との違いやメリット、注意点などを解説

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住宅ローンの返済が長期間滞ってしまうと、最終的に競売にかけられることになります。

競売になると、市場価格の5~7割程度での売却となることが多いなど、様々なデメリットが生じてしまいます。
その為の解決策の一つとして「任意売却」があります。

この記事では、任意売却を検討している方に向けて、任意売却とはそもそもどういうものなのかや、任意売却のメリット・注意点などを紹介していきます。

任意売却とは?

任意売却は、不動産を担保とするローンの返済が難しくなった方が、抵当権設定権者である金融機関と交渉して売却する方法です。

不動産を担保とするローンは、融資時に対象のローンに対して抵当権を設定します。
抵当権は、万が一ローンの返済が滞ったときに金融機関が不動産を差し押さえて競売にかけ、売却資金を回収できるというものです。

この抵当権はローンを完済しなければ抹消できません。
また、他人の抵当権がついたままの物件は一般的に売却することが困難です。
この為、物件を売却しようとしたときに、売却代金を含めてローンの残債を完済できなければそもそも売却できないということになってしまうのです。

こうしたケースで利用されるのが任意売却で、抵当権設定権者である金融機関の承諾を得ることができれば、ローンの残債が残ったままでも物件の売却が可能となります。
抵当権や抵当権抹消については、こちらの記事で詳しく解説していますのでご覧ください。

抵当権抹消手続きの流れは?手続きが必要なタイミングやかかる費用を徹底解説

通常の売却(仲介)との違い

任意売却は、通常の仲介による売却と同じように、不動産会社に仲介を依頼したうえで売却活動を行います。
しかし、通常の売却と比べるといくつか違いがある点に注意が必要です。

まず、任意売却はローンを延滞してから金融機関に交渉を持ち掛けるものです。
仮に金融機関の承諾を得たとしても、売却に時間がかかってしまうと、最終的に競売になってしまう恐れがあります。
この為、競売を避ける為に急いで売却を進めることになり、理想的な売却価格で売却できない恐れがあるでしょう。

また、任意売却は売却を進める際に、都度、金融機関の承諾を得なければなりません。
したがって、通常の売却と比べると自由度が低く、手間がかかってしまうといったことも異なる点だといえます。

競売との違い

ローンを延滞して数ヵ月経過すると、抵当権が設定された物件は競売にかけられることになります。
通常、競売になると市場相場の5~7割程度での売却となってしまいますが、任意売却であれば、状況次第では相場程度での売却を目指すことも可能です。

また、競売の場合は強制退去の日が決められているのと比べて、任意売却であれば売主様や金融機関次第で比較的融通が利きやすくなります。
さらに、任意売却の場合は、売却代金の一部から引越し費用を捻出してもらえる可能性があります。

上記のように、任意売却と競売は様々な点で違いがあり、基本的に任意売却の方が売主様にとってメリットが多いといえるでしょう。

任意売却のメリット

ここでは、あらためて任意売却のメリットについて見ていきましょう。

情報を公開せずに売却できる

競売の場合、売主様の情報が裁判所の競売情報などで公開されますが、任意売却では販売時の広告公開範囲を不動産会社と相談することができます。
特に物件が競売にかけられていることがインターネット上に公開されると、お金に困っているということも全国に知られてしまいます。
そうした情報が知人に知られることを快く思わないという方がほとんどのはずです。

都合に合わせて売却時期を調整しやすい

任意売却は都合に合わせて売却時期を調整しやすいというメリットがあります。
前述した通り、競売になると強制退去日が定められ、その日までに退去することが求められます。
一方、任意売却は売主様や金融機関と交渉して、都合の良いタイミングで売却することも可能です。
例えば、お子様の進学や、ご両親の仕事の状況に合わせて調整するといったことも交渉次第では可能でしょう。

市場価格での売却を目指せる

任意売却は、通常の売却と同じく不動産会社に仲介を依頼して買主様を探すやり方で売却を進めることが可能です。
この為、市場価格での売却を目指すこともできるでしょう。

一方、競売の場合は市場相場の5~7割程度での売却となるのが一般的です。
相場より価格が安くなってしまう理由としては以下のようなことが挙げられます。

  • 買主様は購入前に内覧をすることが難しいから
  • 競売物件の情報が公開されてから入札開始までの時間が短いから
  • 現所有者が立ち退きを拒否する場合は買主様自身で交渉しなければいけないから

上記のように、競売は通常の購入より特殊な条件での購入となってしまうのが一般的です。
この為、相場と同程度の価格で売り出してしまうと買主様が見つからない恐れもあります。

売却費用を減らせる可能性がある

物件の売却後は、新しい住居での生活についても考える必要があるでしょう。
この点、任意売却は売却資金の配分を金融機関と交渉し、引越し費用など売却にかかる費用を売却資金に充当するということもできます。

売却後も今の家に住める可能性がある

住宅ローンの返済が難しいものの、できれば同じ家に住み続けたいと考えている方もいらっしゃるでしょう。
任意売却であれば、リースバックを利用して売却後も同じ物件に住み続けることが可能です。
ただし、買い取ってくれるリースバック業者が現れるかどうか、また金融機関が買い取りを承諾するかなどに注意が必要でしょう。
リースバックを利用する際のメリットや注意点については、こちらの記事で詳しく解説していますのでご覧ください。

リースバックとは?メリットや利用する場合の注意点を解説

任意売却を検討する際の注意点

任意売却のメリットについてお伝えしましたが、一方で任意売却には注意点もあります。
それぞれ見ていきましょう。

期間内に売却を行う必要がある

任意売却はローンを延滞した後、競売が実行されるまでに行う必要があります。
売却するには買主様との交渉も必要になる為、余裕を持ってスケジュールを組むことが大切です。
売却をはじめると購入希望者から価格交渉を持ちかけられることがありますが、不動産会社と相談したうえで多少の値引きに応じなければならないこともあるでしょう。その為、こうした不動産会社との相談もスケジュールに組み込んでおきましょう。

金融機関の同意がないと売却が難しい

任意売却は、抵当権設定権者である金融機関と交渉しながら売却を進めていくことになります。
場合によっては、購入希望者が現れたのにも関わらず金融機関からの承諾を得られないケースも考えられるでしょう。
例えば、物件の査定額が残債を極端に下回るケースだと、返済計画が現実的なものでなければそもそも任意売却することができない恐れもあります。

連帯保証人や共有名義人の同意が必要になる

任意売却を進める際には、連帯保証人や共有名義人の同意が必要になります。
例えば、住宅ローンの返済中に離婚し、離婚後もそのマンションに妻が住み続けており慰謝料や養育費として夫が住宅ローンを支払っている場合、夫婦双方の同意が必要であり、同意が得られない場合には売却できない点に注意しなければなりません。

離婚時や共有名義の売却については、こちらの記事で詳しく解説していますのでご覧ください。

離婚時にマンションを売却すべき?財産分与やローンがある場合の注意点を解説

共有名義のマンションを売却する方法は?売却までの流れや注意点を解説

信用情報機関に登録される恐れがある

任意売却では通常の売却と同じように売却を進めることができますが、ローンの延滞後に金融機関に相談することになる為、個人信用情報にローンを返済していないという情報が登録される点には注意が必要です。

なお、個人信用情報に情報が登録されるタイミングは、金融機関や信用情報機関により異なりますが、一般的にローンを3回滞納したタイミングとされています。

個人信用情報に情報が登録されてしまうと、5年間は新しくローンを借りることがかなり難しくなります。
クレジットカードなどの審査にも影響が及ぶ為、インターネットでの買い物など普段の生活にも支障が出る恐れがあるでしょう。
また、賃貸借契約を締結する際に家賃保証会社との契約が必要な場合は、信用情報機関への照会が行われる為、賃貸借契約ができないケースもあります。

売却後も残債がある場合は返済が続く

任意売却後、ローンの残債が残る場合は、返済をしていかなければなりません。
ただし、任意売却の場合は一括返済だけでなく、分割返済が可能なケースもあります。
具体的にどの程度の額を返済していく必要があるかについては、収入状況などから金融機関が決定することになりますが、一般的には月額5,000円~30,000円程度で決定されることが多いです。

任意売却の手続きの流れ

ここでは、任意売却の手続きの流れを見ていきましょう。具体的には、以下のような流れで手続きが進められていきます。

  • 金融機関と今後の返済について相談する
  • 不動産会社に事前相談をする
  • 査定を受けて売却価格を決める
  • 債権者(金融機関)の同意を得て売却活動を行う
  • 売買契約を結ぶ
  • 決済や引越しを行う

以下、それぞれについて見ていきましょう。

金融機関と今後の返済について相談する

住宅ローンの返済が厳しくなってきたら、早い段階で金融機関に今後の返済について相談しておくようにしましょう。
通常、ローンを延滞して1~2ヵ月経つと督促状が届くようになりますが、督促状が届く前に相談できるとよりスムーズに売却を進めることが可能です。
住宅ローンを延滞してから半年~1年程経つと競売が始まる為、任意売却を考えているのであれば早めに行動することが大切だといえるでしょう。

なお、金融機関に相談する際は、住宅ローン残高証明書を発行してもらい、現状を整理することからはじめるのがお勧めです。
また、債務者の状況によっては任意売却に応じないケースがある為、金融機関に任意売却が可能かどうか確認しておくと良いでしょう。

不動産会社に事前相談をする

任意売却の手続きを進める前に、不動産会社に事前に相談しましょう。
借入残高や延滞状況、金融機関との相談内容などを不動産会社と共有しておきます。
任意売却は通常の不動産売却と同じ方法で売却を進めることが可能ですが、不動産会社側は抵当権設定権者である金融機関と相談しながら売却を進めなければなりません。
この段階で、不動産会社が任意売却を取り組み可能かどうかといった点も押さえておくと良いでしょう。

査定を受けて売却価格を決める

次に、不動産会社に物件の価格査定をしてもらい、金融機関へ提示する売却価格や売却のスケジュールなどをまとめておきます。

なお、任意売却の査定も通常の売却査定と同じと考えて問題ありません。
立地や間取り・広さ、築年数、マンションであれば階数などが査定の対象となります。
不動産の売却査定については、こちらの記事で詳しく解説していますのでご覧ください。

マンション売却査定の不安を解消!査定の流れや査定でみられるポイントを徹底解説

債権者(金融機関)の同意を得て売却活動を行う

価格査定が済んだら、金融機関の同意を得て売却活動を開始します。
不動産の売却にかかる期間は物件によって異なりますが、買主様が見つかるまでおおむね3ヵ月程度はかかると考えておくと良いでしょう。
売却期間中は、購入希望者に対して内覧会など実施し、実際に買いたいという方がいれば価格交渉などを行う必要があります。
内覧で買主様に好印象を持ってもらう為にも、事前に室内の清掃をしたり、不要な物を処分しておきましょう。
売却時の内覧については、こちらの記事で詳しく解説していますのでご覧ください。

マンション売却での内覧の流れは?事前準備やチェックすべきポイントもご紹介

売買契約を結ぶ

買主様が見つかったら金融機関と調整を行い、売却内容に対して同意を得た後に、買主様との間で売買契約を結びます。
金融機関の同意を得ることができなければ、売却を進めることができないという点には注意しなければなりません。

決済や引越しを行う

売買契約後、買主様側のローン審査承認が得られたら決済へと進みます。
売却資金を受け取ってもローンの残債を完済できない場合には、残債を返済していくことになります。その際は、残債の返済に関する契約書を作成しなければなりません。

具体的にどのように返済していくかなどは金融機関との交渉次第で異なる為、返済していける内容かどうかをしっかり確認して、必要に応じて複数の返済プランを提示してもらいながら交渉していくことも考えると良いでしょう。

任意売却では売却までの期限が短いケースも多く、引越しができなければ売買を完了できない恐れもあります。その為、引越し先の選定や室内清掃や物を減らす工夫など、退去に必要な準備はなるべくスムーズにおこなっておくことが重要です。

任意売却を検討する際のポイント

最後に、任意売却を検討する際のポイントを4つ紹介します。

早めに相談する

任意売却は競売までに売却を完了しなければなりません。
売却活動から成約までにある程度の期間が必要である為、少しでも早いタイミングで売却をはじめることが大切なのです。
具体的には、住宅ローンの返済が難しくなったら督促状が届く前に相談すると考えておくと良いでしょう。

また、住宅ローン以外の債務による差押えを受けてしまうと任意売却が難しくなる恐れもあります。
いずれの場合でも、任意売却を検討しているのであれば、早めに金融機関や不動産会社に相談することが大切です。

幅広い売却に対応した不動産会社に相談する

次に、幅広い売却に対応した不動産会社に相談することもポイントです。
例えば、長谷工の仲介では任意売却以外にも直接買取も行っています。
直接買取であれば、売買条件がまとまればすぐに買い取って貰うことができる為、急いで売却を進める必要がありません。

ただし、直接買取は市場価格より低い価格での買い取りとなることが多かったり、売却資金をローン残債や住み替え費用に充当する必要があったりと注意点もあります。
大切なことは、豊富なプランを持っており、状況に応じて最適な提案をしてくれる不動産会社を探すことだといえるでしょう。

長谷工の仲介の直接買取については、こちらで詳しく紹介していますのでご覧ください。

長谷工の提案力売却保証/直接買取

事前に売却にかかる費用を把握する

任意売却を進めるにあたり、事前に売却にかかる費用を把握しておくようにしましょう。
不動産の売却では数十万円以上の費用が必要になるケースもある点には注意が必要です。
なお、任意売却では、金融機関との交渉次第で、売却資金から売却にかかった費用を差し引くことができます。

売却後に残債がある場合には返済していかなければならない為、早い段階で売却時に必要な費用と、売却資金からどの程度の費用を捻出できるかといった点を押さえておくようにしましょう。

マンション売却にかかる費用についてはこちらの記事で詳しく解説していますのでご覧ください。

マンション売却にかかる費用や手数料は?費用を抑える方法も紹介

売買契約の特約に目を通す

売買契約時には特約の内容をよく確認しておくようにしましょう。

任意売却においては、売買契約時に白紙解約に関する特約や、契約不適合責任を免責とする特約を設けるのが一般的です。
白紙解約に関する特約とは、売買契約後に抵当権設定者である金融機関が売買の内容に納得できないといった場合に契約を白紙解約できるといったものです。
また契約不適合責任とは、売買契約後に契約の内容と実際の物件の状況が異なる場合に、売主様が買主様に対して賠償請求などを負わなければならない責任のことです。

しかし、任意売却の場合は売主様がお金に困っていることは明らかであり、責任を追及されても対応できないことが予想されます。
この為、あらかじめ契約不適合責任を免責とする特約を設けるのが一般的なのです。
契約不適合責任については、こちらの記事で詳しく解説しているのでご覧ください。

マンション売却における瑕疵担保責任(契約不適合責任)とは?対策方法を解説

まとめ

ここまで、任意売却と通常の売却や競売との違い、任意売却のメリット・デメリットや具体的な流れなどを紹介してきました。
住宅ローンの返済が難しくなり、延滞してしまうと最終的に競売となってしまいます。
競売となると、市場価格の6~7割程度での売却となってしまうことが多いなど、様々なデメリットが生じます。
任意売却は上記のような、競売における様々なデメリットを解消できる売却方法の一つなのです。

ただし、状況によっては任意売却以外の方法が適しているケースもあるでしょう。
本文中でお伝えした通り、大切なことはご状況に応じて最適な売却方法を提案してくれる不動産会社に相談することです。

長谷工の仲介では、任意売却の他に買い取りなど幅広い売却方法を提案可能です。
住宅ローンの返済が難しいと感じている方は、まずは長谷工の仲介までご相談くださいませ。

※本記事の内容は2023年4月28日現在のものであり、制度や法律については、今後改正・廃止となる場合がございます。

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この記事の著者

逆瀬川 勇造(合同会社7pockets 代表社員)
明治学院大学卒。銀行、不動産会社勤務を経て独立。宅地建物取引士、FP2級技能士(AFP)、住宅ローンアドバイザー。

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