2023.3.22マンション売却における瑕疵担保責任(契約不適合責任)とは?対策方法を解説

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マンション売却を進めている売主様のなかには「契約不適合責任」について不動産会社から説明を受けた方もいるでしょう。

この記事では、契約不適合責任の概要と瑕疵担保責任との違いについて説明します。
また売主様が契約不適合責任に問われない為にできる対策と、買主様がトラブル回避の為にできる対策も合わせて紹介しますので、不動産の売却や購入を予定している方はぜひ参考にしてください。

契約不適合責任とは?

2020年4月1日に民法が改正され、それまで「瑕疵担保責任」と呼ばれていたものが「契約不適合責任」という名称に変わりました。

契約不適合責任とは、引き渡した物件が売買契約で定めた契約内容に「種類や品質、数量」において適合しないと判断された場合に、売主様が買主様に負う責任のことです。
簡単にいうと、売主様は契約内容に合ったものを買主様に引き渡す義務を負っています。

例えば雨漏りを例にして説明しましょう。売主様が不動産売買契約時には「雨漏りはない」と説明していたのにも関わらず、実際引き渡した後に雨漏りが発覚した場合には「契約不適合」となり、売主様はその責任を問われます。

また「種類や品質、数量」としていますが、一般的に経年劣化と思われる品質の低下は、築年数から判断しても契約不適合責任には該当しません。

瑕疵担保責任との違い

前述の通り「瑕疵担保責任」が、民法改正により「契約不適合責任」という名称に変わっています。
また、名称が異なるだけでなく、契約不適合責任のほうが売主様の負う責任の範囲が広くなりました。

民法改正前の瑕疵担保責任では、「売買の目的物に隠れたる瑕疵(買主様が知らない瑕疵)」があった場合に、売主様は責任が問われるというルールでした。しかし民法改正後の契約不適合責任では、買主様が善意無過失(瑕疵について知らず、また知る由もない状態)でなくても認められます。
また、売主様は引き渡した物件が「種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しないもの」と判断された場合も責任を問われることになります。

瑕疵担保責任において買主様が売主様に対してできるのは、「損害賠償請求権」と、契約の目的を達することができない場合の「契約の解除権」の行使のみでしたが、契約不適合責任では修補や代替品の引き渡しを求める「追完請求権」と「代金減額請求権」が新たに追加され、買主様が売主様へできる請求権が増えたのです。

改正前は「損害賠償」や「契約解除」についてのルールが不明瞭でしたが、改正後の契約不適合責任では他の一般的な債務不履行と同じように扱われるようになり、トラブルが起きたときのルールが明確になりました。

マンション売却時の契約不適合とは

マンション売却時の契約不適合として、どのようなものが考えられるのでしょうか。ここでは代表的な4つの瑕疵について解説します。

  • 物理的瑕疵
  • 心理的瑕疵
  • 法律的瑕疵
  • 環境的瑕疵

物理的瑕疵

物理的瑕疵とは、実際に存在している事象により本来の「住む」という目的が達成できない状態をいいます。

例えば、雨漏りや耐震の強度不足などが物理的瑕疵に該当します。安心して住むことができない状態は、契約上の目的が達成できないといえるでしょう。
ちなみに土地の場合は土壌汚染や、地中に大きな障害物があり撤去しなければ建物を建てることができない状態などが物理的瑕疵といえます。

心理的瑕疵

いわゆる事故物件といわれる物件が心理的瑕疵にあたります。
例えば、そのマンション内で殺人事件や自殺、長期間発見されずに放置された孤独死など人の死が関係していて、物理的に住むことはできる状態だとしても心理的ストレスを感じるような場合は心理的瑕疵にあたります。
ただし、通常に起こりうるような自然死や病死は該当しないというのが一般的な見解です。

法律的瑕疵

法律的瑕疵とは、建築基準法や都市計画法などの法律やその市区町村の条例などの制限により、契約上の目的を達することができない状況をいいます。
法律や条例については、不動産売買契約前の宅地建物取引士による重要事項説明で説明しなければならない事項です。したがって、売主様に対してというよりは、不動産会社の責任になるでしょう。
例えば、マンションが既存不適格で、再建築した場合に同程度の建物が建たないような場合などが法律的瑕疵にあたります。

環境的瑕疵

環境的瑕疵とは、マンションそのものではなく近隣の環境に問題がある場合の瑕疵です。
例えば、近くに暴力団施設や廃棄物処理場などの嫌悪施設があり、安心・安全に日常生活を送ることができないといった、環境に問題がある場合などが当てはまります。
程度にもよりますが、マンション内にトラブルを起こす方がいるケースや、鉄道や車両の騒音が大きくて健康被害が発生するようなケースも環境的瑕疵といえます。

契約不適合責任で買主様が売主様に請求できるもの

買主様が売主様に請求できるのは以下の5つです。それぞれについて詳しく紹介していきます。

  • 損害賠償請求
  • 追完請求
  • 催告解除
  • 無催告解除
  • 代金減額請求

損害賠償請求

瑕疵担保責任でも買主様は損害賠償請求ができましたが、契約不適合責任の損害賠償請求とは少し異なるので注意が必要です。

瑕疵担保責任における損害請求は「無過失責任」であったため、売主様は故意・過失がなくても損害賠償責任を負いましたが、契約不適合責任では「過失責任」なので売主様に故意・過失がなければ損害賠償請求に応じなくても良いということになります。

しかし、契約不適合責任のほうが売主様の負担が少なくなったわけではありません。
契約不適合責任では範囲が広がり、「履行利益」が含まれるようになりました。履行利益とは、契約が履行された場合に債権者が得る予定だった利益を失ったことに対する損害です。
例えば、売買契約後に売主様から土地の引き渡しを受けるのを見越して、家を建てる目的で資材を購入していたのにも関わらず契約が不履行になった場合、その資材の代金も損害賠償できることになりました。

追完請求

瑕疵担保責任にはありませんでしたが、契約不適合責任になってから追完請求ができるようになりました。

追完請求とは種類や品質、数量が異なっていることから、あらためて完全なものを請求することですが、不動産においては数量を追加する意味ではなく、修補請求を意味します。
例えば、雨漏りがない建物を契約したのに、雨漏りが発覚した場合は雨漏り修理(修補)を請求することができます。

催告解除

催告解除とは追完請求や代金減額請求をしたのにも関わらず、売主様がその請求に応じない場合に、買主様が催告して契約解除できる権利です。催告解除の特徴は、「契約の履行ができる可能性がある」という点です。

例えば、建物に欠陥がある為買主様が代金減額請求をしているが、売主様が応じないとします。その際、買主様は売主様が責務を行うまでの期間を設け催促します。その期間が経過してもなお売主様が責務を行わない場合は契約解除を要求できます。

無催告解除

無催告解除とは売主様の履行が不可能と考えられるとき、または売主様が債務の履行を明確に拒絶した場合は無催告でも解除ができる権利です。催告解除との違いは「契約の履行が不可能である」という点です。

例えば、建物に欠陥があり追完請求や代金減額請求しているが、売主様がその修補にかかる費用を捻出できないと明確に拒絶したときに無催告で解除できます。

代金減額請求

代金減額請求は瑕疵担保責任にはありませんでしたが、契約不適合責任になり追加されました。
修補が必要だけれど売主様が追完請求に対して応じない場合に、代金減額請求を行って売買代金を減額してもらうというものです。

例えば、故障していて修補しても直らない設備がある場合や、売主様が追完請求を拒否して設備を直さない場合には代金減額請求をすることができます。

契約不適合責任の適用期間

瑕疵担保責任では買主様が瑕疵を知ったときから1年以内にその損害について請求しなければなりませんでしたが、契約不適合責任では1年以内にその損害について通知すればよく、請求自体は1年経過後でもできるようになりました。

しかし1年以内という期間は、そもそも引き渡し前からの瑕疵なのか、それとも引き渡し後に生じた瑕疵なのか判別が難しい為、個人が売主様になる場合には別途期間を設けていることがほとんどです。

売主様が個人の場合

売主様が個人の場合、民法通りの期間であると売主様が負う責任が重すぎることから、契約不適合責任を負う期間を3ヵ月程度として、別に特約で定めているケースがほとんどです。

売主が不動産会社の場合

不動産会社が売主となる場合は契約不適合責任の期間を軽減できません。宅地建物取引業法によって、通知できる期間は物件引き渡しから2年以上としなければならないと定められています。

契約不適合責任に問われない為の対策

ここからは、売主様が契約不適合責任に問われない為にできる対策を紹介します。

不備や不具合は事前に担当者に伝える

すでに不備や不具合がある場合は、マンションの査定を依頼する際に不動産会社の担当者へその詳細について伝えておきましょう。程度によっては査定額が低くなる可能性はありますが、隠さずに報告することがトラブル防止につながります。
査定で見られる箇所や査定時のポイントについては、こちらの記事で詳しく解説していますのでご覧ください。

マンション売却査定の不安を解消!査定の流れや査定でみられるポイントを徹底解説

マンションの状態を契約書に詳細に記入する

マンションの不備や不具合について、不動産会社の担当者に伝えておくことはもちろん重要ですが、それが全て買主様に伝わっているとはかぎりません。また、言った言わないとトラブルになる可能性もあります。

不動産売買契約時には、不動産売買契約書・重要事項説明書の他に売主様がマンションの状況について伝える為に不動産会社が作成する「物件状況報告書」が必要になります。
もし、雨漏りや給排水設備の故障など不備や不具合があれば、その書面へ記載のうえ説明します。重要事項説明書にも同様の内容を記載しますが、「物件状況報告書」による買主様への説明は売主様の責任になりますのできちんと説明するようにしましょう。その内容を買主様が了承したうえで売買契約を締結することが重要です。

ほかにも、住んでいないと分からないようなことやマイナス要因になると思われることは全て説明しておくことが大切です。説明すべきと思われるのは以下の通りです。

  • 近隣環境による騒音や臭気、日照問題
  • マンションの大規模修繕の予定過去の洪水や浸水の被害履歴
  • マンション内のトラブル

ホームインスペクションを実施して証明書をもらう

インスペクションは英語で検査や調査を意味します。
「ホームインスペクション」とは住宅の専門家が建物の検査を行ったうえで欠陥の有無や劣化具合を報告し、修理や改修のアドバイスをしてくれるものです。つまり、建物の健康診断のようなものです。

ホームインスペクションは義務ではありませんが、売買契約後に不具合が発覚してトラブルになることを避ける為にも、事前に実施して証明書を取得しておけると安心です。マンションであれば所要時間は1〜2時間程度で、費用は4.5~6.5万円程度です。

診断結果や証明書は買主様にとって安心材料になりますが、販売前にホームインスペクションを実施し、証明書取得済み物件として売り出すことができれば、他の物件との差別化にもなるでしょう。

インスペクションのメリットは?流れや費用相場、検査項目などを解説

付帯設備表を売買契約書に添付する

前述の通り売買契約締結時には、不動産売買契約書や重要事項説明書の他に「物件状況報告書」が必要になると説明しましたが、ほかにも「付帯設備票」という書面があります。

付帯設備表とは、マンションに付属する設備の有無や不具合について説明するもので、書式は不動産会社のものを利用しますが、それぞれの状態については売主様が記入のうえ説明します。

例えば、浴室にシャワーが付いていることや、付属するエアコンや照明器具の数などを記載します。ここでも各設備の不備や不具合を説明することができますので、瑕疵がある場合はその詳細を説明し、買主様に了承してもらうようにしましょう。
売買契約時に必要な書類については、こちらの記事でも詳しく解説していますのでご覧ください。

マンション売却に必要な書類は?段階ごとの必要書類と入手方法を解説

契約不適合責任の通知期間を定める

契約不適合責任の通知期間について前で触れていますが、契約不適合責任の通知期間は民法では1年とされており、個人が売主様の場合は別に期間を定めることができます。通常3ヵ月程度とするのが一般的です。この減免は任意である為、忘れずに設定するようにしましょう。
なお、設定する際は不動産会社の担当者と相談したうえで、買主様の了解を得る必要があります。

アフターサポートが充実した不動産会社を選ぶ

マンションの引き渡しが終わった後に売主様が気付いていない欠陥や不具合が見つかることもあります。万が一に備えて、引き渡し後のアフターサービスが充実した不動産会社を選ぶことをお勧めします。

長谷工の仲介では、業界初の10年保証を実現した「建物保証10」や設備保証延長、24時間駆けつけサービスなど契約不適合責任に対応している充実したアフターサービスをご用意しています。詳しくはこちらをご覧ください。

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トラブルを避ける為に買主様ができる対策

トラブルを避ける為に買主様ができる対策はあるのでしょうか。
例えば一つの指標として、ホームインスペクションを実施しているマンションは安心できます。しかし、費用がかかることから実施していないマンションのほうが多いのが実状です。

売主様の了解が得られれば、買主様の立場でもインスペクションを受けることは可能です。築年数が経っているなど懸念点がある場合は、自己負担で実施するのも一つの方法でしょう。

その他にも契約不適合責任の内容や通知できる期間について、事前に売主様と確認しておけると安心です。
例えば給排水管は目に見えませんが、配管詰まりが発生していることがあります。引き渡し後にその詰まりによって水漏れが発生した場合には、配管清掃代や水漏れによる被害にも対応してもらえるよう、その内容と通知期間を確認しておくことができます。
ただし売主様と直接交渉するわけではなく、不動産会社の担当者を通して交渉するようにしましょう。

まとめ

民法改正によって、従来の瑕疵担保責任よりも売主様の責任範囲が広くなりました。契約不適合責任に問われない為にも、物件の不具合や設備の不具合は隠さずにしっかりと買主様に伝えることが大切です。

また、マンションの売却を安心に進める為には、実績が豊富でアフターサービスが充実した不動産会社を選ぶことが重要です。
長谷工の仲介では売主様のマンション売却サポートのみならず、引越し後の不安を解消するアフターサービスも充実しています。売却に関する相談は「無料相談」で受け付けていますのでお気軽にご利用ください。

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※本記事の内容は2023年3月22日現在のものであり、制度や法律については、今後改正・廃止となる場合がございます。

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この記事の著者

桜木理恵
私鉄系不動産会社にて仲介営業を約8年、大手ハウスメーカーのグループ会社にてリフォーム営業を5年従事した経験を活かし、現在不動産Webライターとして活動。保有資格は宅地建物取引士・管理業務主任者・2級ファイナンシャルプランニング技能士

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