2023.3.22路線価から実勢価格は求められる?それぞれの違いや調べ方を紹介

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土地の価格を示す指標の一つに路線価があります。
路線価は、ある程度実勢価格と相関しており、路線価を調べることで実勢価格を推測することができます。
この記事では、路線価・実勢価格など土地の価格を示す指標の概要や、路線価から実勢価格を求める方法などについて解説します。

不動産の土地価格はどのように決まる?

土地の価格は「一物五価」と表現されることがあります。
時価を表す「実勢価格」の他、「公示価格」「基準地価」「路線価」「固定資産税評価額」という公的評価額が存在します。
それぞれの特徴を示すと下表の通りです。

指標 概要 主体となる調査機関 評価基準日
実勢価格 時価のことを指します。需要と供給の市場原理で決定されます。 買主様、不動産会社、不動産鑑定士 取引時点または査定時点
公示価格 土地の取り引きや公共事業用地の取得価格、不動産鑑定の参考などに用います。 国土交通省 毎年1月1日
基準地価 土地取引規制の価格審査や公共用地の買収の参考などに用います。 都道府県 毎年7月1日
路線価 相続、遺贈または贈与の財産の相続税および贈与税の財産の評価に用います。 国税庁 毎年1月1日
固定資産評価額 固定資産税、都市計画税、登録免許税、不動産取得税の基準に用います。 市町村(東京23区は東京都) 基準年(3年ごと)の1月1日

上表の公的評価額は全て「土地」の価格を表すものであり、マンションの価格ではありません。
マンションの価格を調べるには、土地の価格に加えて建物の価格を調べる必要があります。
マンションの資産価値を調べる方法については、こちらの記事で詳しく紹介していますので、ぜひご覧ください。

マンションの資産価値を調べる方法は?ケース別に活用できる評価額を解説

公示価格とは

公示価格とは、国(国土交通省)が1月1日を基準として行っている土地の評価のことです。
土地鑑定委員会と呼ばれる国の組織が、一つの評価ポイントに対し二人以上の不動産鑑定士に鑑定評価を依頼し、必要な調整を行って土地の単価を決定しています。そして、結果を3月に公表してます。

公示価格の評価ポイントのことを「標準地」と呼びます。
標準地は公示区域内に設定され、毎年若干の変動はありますが、全国に約2.6万地点存在します。
公示区域とは、都市計画区域その他の土地取引が相当程度見込まれる区域のことです。
都市計画区域は計画的に街づくりを行っていく地域のことであり、人口が相応に存在する地域になります。
つまり、標準地は人が多く住むエリアに存在するということになります。

公示価格は「正常な価格」を公示することにより、一般の土地の取引価格に対して指標を与え、公共事業用の土地に対する適正な補償金の額や取得価格の算定などに役立つことを目的としています。

例えば、自治体が道路の拡幅をする為に用地を買収するケースがあります。
用地買収の際は自治体が所有者からいくらで買うかが問題となりますが、そのときに参考とされるのが公示価格です。
公示価格は「正常な価格」を示しているものである為、時価相当額ということになっています。

公示価格と類似しているものに、基準地価があります。
公示価格は国が行っている1月1日時点の評価であるのに対し、基準地価は都道府県が行っている7月1日時点の評価です。また、基準地価の場合は、結果が9月に公表されます。

基準地価も用地買収時の価格を決める際の参考となる為、時価相当額であり、価格水準は公示価格と同じになります。
また、公示価格は評価ポイントが都市部にしかないのに対し、基準地価は山林などの人があまり住んでいない地域にも存在する点が特徴です。

路線価とは

路線価とは、道路に割り振られた土地の単価のことです。
路線価には「相続税路線価」と「固定資産税路線価」の2種類があります。

相続税路線価とは、土地の相続税評価額を求める際に利用する土地価格のことです。
固定資産税路線価とは、土地の固定資産評価額を求める際に利用する土地単価になります。
路線価には2種類ありますが、「路線価」というと相続税路線価のことを指すことが多いです。

ここでは、相続税路線価のことを「路線価」として解説します。
路線価は国税庁が不動産鑑定士に評価を依頼し、調整を行ったうえで評価額が決定されます。
路線価は公示価格をベースとしており、価格も公示価格の80%程度を目安としています。
つまり、公示価格の標準地となっている土地であれば、前面道路の路線価は公示価格の80%程度になっているということです。

路線価は公示価格をベースにして評価が決定される為、路線価の評価時点は公示価格と同じく1月1日です。一方で、公示価格の公表時期は毎年3月ですが、路線価は公表された公示価格をベースに評価作業を行っていく為、公表時期は毎年7月初旬頃と期間が空きます。

公示価格は標準地の「点」の価格情報ですが、路線価は道路の「線」の価格情報となります。点の情報だけでは不十分な為、路線価では公示価格の標準地に加えて別の地点の評価も行ったうえで線の情報にまとめていくという作業が必要になります。
このように、路線価は評価作業に多くの労力が必要となることから、路線価の公表時期は公示価格から4ヵ月程度遅れて公表されています。

路線価からマンションの相続評価額を求める方法
マンションの相続評価額を求める際は、建物と土地に分けて求める必要があります。
路線価を用いることで、土地の相続税評価額の概算額を求めることができます。マンションの土地の相続税評価額は、敷地全体の評価額に敷地権の割合を乗じたものです。

マンションの土地の相続税評価額の概算額 = 路線価 × 敷地全体面積 × 敷地権割合

参考:国税庁「No.4602 土地家屋の評価」

一方でマンションの建物の相続税評価額は、建物の固定資産評価額となります。
マンションの相続評価額や相続の手続きについては、こちらの記事で詳しく紹介していますのでご覧ください。

マンション相続の手続きとは?流れや相続税の計算、利用できる控除を解説

実勢価格とは

実勢価格とは、実際に取り引きがなされて決まる「成約価格」のことを指します。
実勢価格(時価)は、需要と供給の関係によって決まります。

不動産を売却する際は、最初に不動産会社に査定を依頼します。
不動産会社による査定価格は、正確には「実勢価格の予想価格」です。
売主様は査定価格を参考に売り出し価格を決めて、販売活動を開始します。
購入希望者が現れ、購入希望価格が売り出し価格よりも低ければ、価格交渉が行われる場合があります。価格交渉の結果、売り出し価格とは異なる金額で売買が決まれば、それが「成約価格」となります。

路線価と実勢価格の違い

前述の通り、路線価は公示価格の80%程度で決まり、実勢価格は実際の成約価格であり、需要と供給の関係で決まるという違いがあります。

公示価格は、時価相当額であることから、路線価を0.8で割り戻せば理論的には実勢価格を求めることができます。
ただし、路線価を0.8で割り戻した価格が実勢価格と乖離してしまうことはよくあります。
理由としては、公示価格が「表向き」の時価相当額だからです。
表向きというのは、公示価格は公共用地の買収の参考にしたいことから時価を目指しているものの、諸事情によって時価とは一致していないという意味になります。

公示価格は相続税路線価だけでなく、固定資産税路線価にも影響する価格です。
あらゆる税金に影響する価格であることから、時価に合わせて変動させにくいという事情があります。
急激に上げれば納税者からの反発も増えますし、急激に下げれば税収の減少を招くことになります。

路線価から実勢価格を求めるには?

路線価から実勢価格を求める方法について解説します。

➀国税庁のページで路線価を調べる

路線価は国税庁の「財産評価基準書」というホームページで調べることができます。
財産評価基準書では、地図をクリックして所在を絞っていくと対象地の路線価図が表示される仕組みです。

前面道路に、例えば「240E」と書かれていたら、路線価は「240,000円/平米」ということになります。
数字と一緒に記載されているA~Gの記号は、借地権割合を示しているものです。
借地権割合とは、土地価格に対する借地権価格の割合になります。

路線価には「路線価地域」と「倍率地域」の2種類が存在します。
路線価地域とは道路に路線価が振られている地域であり、倍率地域とは道路に路線価が振られていない地域のことです。
財産評価基準書は路線価地域であれば、住所を絞ることで路線価図に表示することができます。倍率地域では路線価図が存在しない為、財産評価基準書で地図を表示させることができません。

倍率地域の場合、財産評価基準書にある評価倍率表を用います。
評価倍率表では、該当する地域に例えば「1.1」などの倍率が記載されています。
倍率地域では、「土地の固定資産評価額」に倍率を乗じたものが「相続税評価額」です。
土地の固定資産評価額は固定資産税納税通知書に記載されている「価格(評価額)」を用います。

具体的な路線価の見方は、財産評価基準書にも記載されていますのでご覧ください。

国税庁「路線価図の説明」
国税庁「評価倍率表(一般の土地等用)の説明」

➁求めた路線価から実勢価格を推定する

路線価は公示価格の80%相当額である為、路線価を0.8で割ることで公示価格相当額を求めることはできますが、実勢価格とは乖離がある場合もあります。
都市部では、公示価格相当額の1.5~2.0倍程度が時価相当額です。
一方で、地方では公示価格相当額の1.0~1.1倍程度が時価相当額とされています。
これらの関係から路線価から実勢価格の求め方を示すと、以下の通りです。

(路線価から公示価格相当額を求める方法)
公示価格相当額 = 路線価 ÷ 0.8

(公示価格相当額から実勢価格を求める方法)
都市部の実勢価格 = 公示価格相当額 × 1.5~2.0
地方の実勢価格 = 公示価格相当額 × 1.0~1.1

ただし、実勢価格と公示価格相当額との乖離は、物件や景気の動向などによっても異なります。都市部でも、実勢価格が公示価格の2倍以上になっている土地もありますし、公示価格とほぼ同じという土地もあります。
その為、路線価から求める実勢価格は、あくまでも目安としてみておくと良いでしょう。

路線価から実勢価格を求める際の注意点

路線価はあくまでも標準的な土地をベースにした単価である為、その土地の個性まで反映した価格ではありません。土地には、角地や方位、形状、高低差、地下埋設物や土壌汚染の有無などの個性があり、実勢価格はこれらの個性を加味して決まります。
したがって、売却前に実勢価格を知りたい場合には、不動産会社に査定を依頼することが適切です。
不動産会社の査定は、土地の個性を反映した価格となります。

路線価がないエリアの実勢価格を求める方法

路線価のない倍率地域では、実勢価格が把握しにくいです。
その場合は、国土交通省が運営している「土地総合情報システム」を利用するという方法があります。
土地総合情報システムは公示価格を求める為に、国が実際に取り引きを行った方に対して実施しているアンケート結果を公表したものです。

土地だけでなく、戸建やマンション、農地、林地の相場も調べることができます。
ただし、個人情報が特定されない形で情報が公開されていることから、事例の場所が分からず相場を把握しにくい点が注意点です。
例えばマンションの場合、マンション名までは表示されない形で情報が掲載されています。
土地総合情報システムについてはこちらをご覧ください。

国土交通省「土地総合情報システム」

まとめ

ここまで、路線価と実勢価格について解説してきました。
路線価とは前面道路に割り振られている土地の価格であり、公的評価額の一つです。
実勢価格とは時価のことを指します。

自分の不動産を売るには、査定を依頼し実勢価格を知ることが第一歩です。
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※本記事の内容は2023年3月22日現在のものであり、制度や法律については、今後改正・廃止となる場合がございます。

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この記事の著者

竹内英二(株式会社グロープロフィット 代表取締役)
不動産鑑定および宅建業の代表取締役。不動産鑑定士、宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、公認不動産コンサルティングマスター(相続対策専門士)、中小企業診断士、住宅ローンアドバイザー。大阪大学出身。
写真:竹内英二(株式会社グロープロフィット 代表取締役)

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