2024.06.26【2024年】住宅ローン控除はいつまで受けられる?税制改正による変更点や要件、申請方法について解説

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住宅ローン残債の額に応じて所得税や住民税から一定額を控除できる「住宅ローン控除」。
利用することで税制上のメリットが大きい制度ですが、法改正によって条件などが異なる為、適用を検討しているなら常に最新の情報でチェックしておくことが重要です。

この記事では、令和6年の税制改正にともなう住宅ローン控除の変更点や申請方法について、詳しく解説していきます。

住宅ローン控除とは?

住宅ローン控除とは、住宅ローンを利用してマイホームを取得した場合、ローン残債の額に応じて所得税・住民税の控除を受けられる制度です。
住宅ローン減税と呼ばれることもありますが、正式名称は「住宅借入金等特別控除」といいます。

住宅ローン控除を適用すると、居住開始年や住宅性能によっても控除額は異なりますが、年末時点のローン残高の0.7%を最長13年間税金から控除できます。
仮に、年末時点の住宅ローン残高が3,000万円であれば、21万円を所得税から控除でき、控除しきれない額は住民税から控除されます。
さらに、住宅ローン控除は、税額から直接控除できる為、節税効果が大きいという特徴もあります。

住宅ローン控除は、1972年にスタートした「住宅取得控除」が制度の始まりです。
以降、何度も改正が行われ、令和4年の税制改正では、大きく以下の点が変更されています。

  • 適用期間が4年延長(令和3年12月31日までから令和7年12月31日までに延長)
  • 控除率を一律0.7%に引き下げ
  • 所得要件が3,000万円以下から2,000万円以下に引き下げ
  • 新築住宅または買取再販の中古住宅の控除期間を10年から13年に拡大(個人が売主の中古住宅は10年間)
  • 住宅性能に応じた借入限度額の増設措置 など

さらに、令和6年の税制改正にともなう変更点もあります。
適用する年度によって条件が異なる為、適用を検討する場合は最新の情報で制度の内容を把握しておくことが重要です。
以下で、住宅ローン控除の内容が改正された背景や令和6年税制改正での変更点について、詳しく見ていきましょう。

住宅ローン控除の内容が改正された背景

令和6年の住宅ローン控除の変更点の大きなポイントは「子育て世帯への支援強化」「新築住宅要件の緩和の延長」です。

これは、子育て支援の強化や近年の急激な住宅価格の上昇への対策という背景があります。
令和6年の税制改革では、住宅ローン控除の限度額の縮小が決まっていますが、子育て世帯のみ限度額は据え置かれています。
住宅ローン控除とは異なりますが、既存住宅のリフォームに関わる所得税の減税措置が拡充され、子育て対応リフォームが対象となるなど、令和6年の税制改正は子育て世帯への優遇が手厚くなっています。

日本が抱える少子化問題への対策として子育て環境を整える必要があり、そのことが今回の住宅ローン控除の改正にも反映されているといえるでしょう。

また、近年はウッドショックをはじめとする資材の高騰や人手不足などを要因とする住宅価格の高騰で、新築住宅の需要の低下、ひいては景気の悪化が懸念されている状況でもあります。
新築住宅の適用条件を緩和することで、住宅の購入を後押しする狙いもあるといえます。

参考:国土交通省「住宅ローン減税の制度内容が変更されます!~令和6年度税制改正における住宅関係税制のご案内~」

参考:国土交通省「令和6年度国土交通省税制改正概要 既存住宅のリフォームに係る特例措置の拡充・延長(所得税)」

令和6年税制改正で住宅ローン控除はどう変わる?

ここでは、令和6年税制改正での住宅ローン控除の具体的な変更点を解説します。
大きく変更されたのは以下の2点です。

  • 借入限度額
  • 床面積要件

それぞれ詳しく見ていきましょう。

借入限度額

住宅ローン控除を適用できる借入限度額が以下のように変更されています。

新築/既存など 住宅性能 令和4・5年
入居
令和6年入居 令和7年
入居(予定)
一般世帯 子育て世帯・
若者夫婦世帯
新築・買取再販 長期優良住宅・
低炭素住宅
5,000万円 4,500万円 5,000万円 4,500万円
ZEH水準省エネ住宅 4,500万円 3,500万円 4,500万円 3,500万円
省エネ基準適合住宅 4,000万円 3,000万円 4,000万円 3,000万円
その他住宅 3,000万円 0円 0円 0円
既存住宅 長期優良住宅・
低炭素住宅
3,000万円 3,000万円 3,000万円 3,000万円
ZEH水準省エネ住宅
省エネ基準適合住宅
その他住宅 2,000万円 2,000万円 2,000万円 2,000万円

令和6年入居の場合、全ての新築住宅で限度額が引き下げられます。
仮に、限度額が500万円変われば、3.5万円(500万円×0.7%)の控除額の差が生まれます。

ただし、子育て世帯と若者夫婦世帯のみ「その他住宅」以外であれば、限度額は令和5年から据え置かれます。
なお、それぞれの世帯は以下の条件を満たす必要があります。

  • 子育て世帯:19歳未満の子を有する世帯
  • 若者夫婦世帯:夫婦のいずれかが40歳未満の世帯

また、令和6年以降に新築の建築確認を受けた「その他住宅」は、世帯に関わらず住宅ローン控除の対象外となるので注意が必要です。
「その他住宅」とは、省エネ基準を満たさない住宅のことをいいます。
住宅ローン控除の適用を検討しているなら、省エネ基準に適合している住宅であることが重要になる点は覚えておきましょう。

令和7年入居の場合については、今後の税制改正にともない変更される可能性があります。

出典:国土交通省「住宅ローン減税」

出典:国土交通省住宅局「住宅ローン減税省エネ要件化等についての説明会資料(2023年6月16日)」

床面積要件

住宅ローン控除の適用条件のうち、床面積の適用要件は50平方メートルですが、新築住宅に限り所得合計額が1,000万円以下であれば40平方メートル以上50平方メートル未満の住宅でも適用可能です。

これは、当初令和5年12月31日までの建築確認分が適用範囲の予定でしたが、今回の税制改正で令和6年12月31日までに延長されています。

出典:国土交通省「住宅ローン減税」

【物件の種類別】住宅ローン控除の概要と適用要件

住宅ローン減税の概要について(令和6年度税制改正後)

画像引用:国土交通省ホームページ(最終閲覧日2024年5月14日)

住宅ローン控除は、新築や中古といった物件の種類によっても異なる適用条件が設けられている為、要件を押さえておくことが重要です。
以下では「新築住宅・買取再販住宅」「中古住宅」「リフォーム・増築住宅」の概要と適用要件をそれぞれ見ていきましょう。

新築住宅・買取再販住宅

まず、購入する物件が新築住宅・買取再販住宅の場合の適用条件をご紹介します。

概要

新築住宅・買取再販住宅の住宅ローン控除は、令和4年1月1日から令和7年31日までに住宅ローンを利用してマイホームの取得・新築・増改築した場合、年末時点のローン残高×0.7%を13年間、所得税から控除できるというものです。

ただし、住宅の性能に応じて限度額が異なります。
令和6年の税制改正で限度額は減額されましたが、子育て世帯・若者夫婦世帯のみ据え置きとなっています。

新築住宅の適用要件

新築住宅の場合、以下のような適用要件を満たす必要があります。

  • 新築されてから6ヵ月以内に住み始めている
  • 控除を受ける年分の12月31日まで住んでいる
  • 床面積が50平方メートル以上かつ、床面積の2分の1以上を居住の用に供している
  • 借入期間が10年以上ある住宅ローン等である
  • 控除を受ける年の合計所得が2,000万円以下である
    (※控除を受ける年の合計所得が1,000万円以下であれば床面積は40平方メートル以上50平方メートル以下)
  • セカンドハウス等でないこと
  • 過去3年間に3,000万円特別控除など譲渡所得に関する特別控除の適用を受けていないこと
  • 生計を一にする親族などから取得したものでないこと
  • 贈与による住宅の取得でないこと

住宅ローン控除は、マイホームの購入で適用できる特例の為、適用する方がその家に住んでいることが条件となる点は覚えておきましょう。

なお、「ZEH水準省エネ住宅・省エネ基準適合住宅」に該当する場合、その証明には「建設住宅性能評価書」もしくは「住宅省エネルギー性能証明書」が必要です。
登録住宅性能評価機関や登録された建築士事務所に属する建築士、指定確認検査機関または住宅瑕疵担保責任保険法人で入手できますが、時間がかかるケースもあるので早めに確認するようにしましょう。

参考:国税庁「認定住宅の新築等をした場合(住宅借入金等特別控除)」

買取再販住宅の適用要件

買取再販住宅とは、不動産会社などが買取し増改築した既存住宅のことです。
買取再販住宅で適用する場合の適用要件は以下の通りです。

  • 購入する時点で、新築から10年経過している住宅である
  • 買取業者が取得した日から2年以内に購入している
  • 特定増改築にかかる工事費用が売買価格(税込み)の20%以上である
  • 昭和57年1月1日以降に建築された住宅である
  • 昭和56年以前に建築されている場合は、取得の日前2年以内に耐震基準に適合する補修を受けている

また、上記の条件に加え新築住宅の適用条件も満たしている必要があります。

参考:国税庁「No.1211-2 買取再販住宅を取得し、令和4年以降に居住の用に供した場合(住宅借入金等特別控除)」

中古住宅

中古住宅を購入した場合でも、適用要件を満たすことで住宅ローン控除を適用できます。

概要

住宅ローンを利用して中古住宅を購入した場合、年末時点の住宅ローン残高×0.7%を10年間、所得税から控除できます。

ただし、借入限度額や控除期間は、住宅の区分によって異なります。

適用要件

中古住宅の適用要件は、以下の通りです。

  • 既存住宅のうち買取再販住宅に該当しない住宅
  • 中古住宅の取得の日から6ヵ月以内に住んでいる
  • 床面積50平方メートル以上かつ、床面積に2分の1以上を居住の用に供している
  • 控除を受ける年の合計所得が2,000万円以下
  • 昭和57年1月1日以後に建築されている
  • 昭和56年12月31日以前に建築されている場合は、耐震基準を満たしているもの

中古住宅に対しては、床面積の緩和は適用されません。
また、築年数も要件に含まれるので注意しましょう。

参考:国税庁「No.1211-3 中古住宅を取得し、令和4年以降に居住の用に供した場合(住宅借入金等特別控除)」

リフォーム・増築住宅の場合

一定以上のリフォーム・増改築で住宅ローンを利用する場合も、住宅ローン控除が適用できます。

概要

マイホームの増改築で住宅ローンを利用した場合、限度額2,000万円で0.7%の控除を10年間適用できます。

適用要件

増改築等とは、以下の要件に該当する工事のことです。

  • 増築・改築・建築基準法に規定する大規模の修繕または大規模の模様替えの工事であること
  • マンションの場合は、区分所有する部分の床または階段・壁の過半について行う一定の修繕・模様替え工事
  • 家屋のうち居室・調理室・浴室・便所・洗面所・納戸・玄関または廊下の一室の床または壁の全部について行う修繕・模様替え工事
  • 建築基準法施行令の構造強度等に関する規定または地震に対する安全性にかかる基準に適合させる為の一定の修繕・模様替えの工事
  • 一定のバリアフリー改修工事
  • 一定の省エネ改修工事

控除を受ける為には、以下のような要件を満たす必要もあります。

  • 増改築などの日から6ヵ月以内に住んでいる
  • 床面積50平方メートル以上かつ、床面積に2分の1以上を居住の用に供している
  • 控除を受ける年分の12月31日まで住んでいる
  • 控除を受ける年の合計所得が2,000万円以下
  • 増改築の額が100万円を超えており、その2分の1以上の額が居住用部分の工事の費用に充てている

参考:国税庁「No.1211-4 増改築等をし、令和4年以降に居住の用に供した場合(住宅借入金等特別控除)」

適用を受けた場合の控除金額をシミュレーションしてみよう

住宅ローン控除を提供すると、どれくらい税金の控除ができるのかを具体的にシミュレーションしていきましょう。
条件は以下の通りです。

  • 2024年入居
  • 新築
  • ローン条件:借入額3,500万円/返済期間35年/金利1.0%
  • 2024年1月から返済スタート(年間返済額1,185,588円)
  • 一般世帯(東京都在住・年収600万円・扶養親族0人)

上記の場合、住宅ローン控除の控除率0.7%で13年間控除を適用できます。
以下では、「1年~10年目」と「11年~13年目」の控除額を一般的な住宅(省エネ基準適合住宅)と長期優良住宅に分けてシミュレーションします。

1年~10年目

1年~10年目までの住宅ローン残高と控除額は以下の通りです。

年末残高 控除額(控除率0.7%)
省エネ基準適合住宅
限度額3,000万円
長期優良住宅
限度額4,500万円
1年目 34,160,566円 21万円 23.9万円
2年目 33,312,697円 21万円 23.3万円
3年目 32,456,313円 21万円 22.7万円
4年目 31,591,325円 21万円 22.1万円
5年目 30,717,646円 21万円 21.5万円
6年目 29,835,191円 20.8万円 20.8万円
7年目 28,943,873円 20.2万円 20.2万円
8年目 28,043,599円 19.6万円 19.6万円
9年目 27,134,279円 18.9万円 18.9万円
10年目 26,215,825円 18.3万円 18.3万円

住宅性能によって住宅ローン控除が適用できる限度額が異なります。
省エネ基準適合住宅の場合、限度額が3,000万円までの為ローン残高が3,000万円を上回る1年~5年目までは3,000万円×0.7%の21万円までしか控除できません。
一方、長期優良住宅は上限額が4,500万円となるので、1年目から住宅ローン残高全てが控除の対象です。

なお、子育て世帯・若者夫婦世帯に該当すれば、省エネ基準適合住宅でも上限額が4,000万円となるので、1年目から住宅ローン残高全てが控除対象となります。
ちなみに、令和6年に入居する住宅が令和6年1月以降に建築確認を受けた「その他住宅」に該当すると住宅ローン控除の対象外です。
ただし、令和6年に入居する「その他住宅」でも令和5年末までに建築確認を受けている、または令和6年6月30日までに建築されていれば、限度額2,000万円で10年間控除を受けられます。

11年~13年目

11年~13年目の控除額と全期間の控除額合計は以下の通りです。

年末残高 控除額(控除率0.7%)
省エネ基準適合住宅
限度額3,000万円
長期優良住宅
限度額4,500万円
11年目 25,288,145円 17.7万円 17.7万円
12年目 24,351,415円 17.0万円 17.0万円
13年目 23,404,731円 16.3万円 16.3万円
1~13年の合計 約254万円 約262万円

どちらの住宅性能であっても限度額以下となるので、年ごとの控除額に変わりはありません。
しかし、合計の控除額で見た場合、1~5年目で満額控除できない省エネ基準適合住宅と比べると、8万円程控除額が少なくなります。

ちなみに、年収600万円での所得税は、各種控除を考慮しない場合おおむね年間20万円です。
住宅ローン控除で、年間16~20万円を13年間所得税から控除できるメリットは大きいといえるでしょう。

住宅ローン控除を受ける為に必要な手続き

住宅ローン控除は、住宅ローンを組めば自動的に適用されるわけではありません。
控除の適用は、自分で手続きする必要がある為、手続きについても理解しておくことが重要です。
以下で、住宅ローン控除を受ける為の手続きを見ていきましょう。

1年目

住宅ローン控除を適用する場合、1年目は確定申告が必要です。
会社から給与をもらう会社員の場合、年末調整で納税する為、毎年の確定申告が不要な方も多いでしょう。
しかし、住宅ローン控除1年目のみは年末調整ではなく確定申告する必要があるので注意が必要です。

確定申告を行う際は、申告時期に必要書類を管轄の税務署に提出します。
1年目の確定申告で必要な書類は、以下の通りです。

必要な書類 取得方法
確定申告書 税務署の窓口や国税庁のホームページでダウンロードできる
源泉徴収(給与取得者) 年末頃に会社から配布される
住宅借入金等特別控除額の計算明細書 税務署の窓口や国税庁のホームページでダウンロードできる
住宅ローンの年末残高証明書 金融機関から年末頃に送付される
登記事項証明書 法務局で取得(窓口取得の場合1通600円)
工事請負契約書または売買契約書の写し すでに所有している書類
認定住宅の区分に応じた証明書など ハウスメーカーや不動産会社から取得

確定申告書の作成に不安がある場合は、税理士や自治体の相談窓口を活用すると良いでしょう。
なお、確定申告時期は住宅を取得した年の翌年2月16日~3月15日です。
確定申告時期に間に合うように早めに準備に取りかかることが重要です。

参考:国税庁「No.1213 認定住宅の新築等をした場合(住宅借入金等特別控除)」

2年目以降

2年目以降は、会社員と自営業者では手続きが異なります。
会社員の場合は、2年目以降、会社の年末調整で住宅ローン控除の申請が可能です。
年末調整時に必要書類を揃えて会社に提出しましょう。
年末調整で申請する際に必要な書類は以下の通りです。

必要な書類 取得方法
給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書兼住宅借入金等特別控除明細書 2年目に残期間分の書類が税務署から送付される
住宅ローンの年末残高証明書 金融機関から年末頃に送付される

「給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書兼住宅借入金等特別控除明細書」は1年目に確定申告すると、その年に税務署から残り期間分(1年で1枚)の書類が送付されるので使用しましょう。
紛失した場合は、税務署で再交付してもらう必要があります。

一方、毎年確定申告している自営業者は、1年目同様確定申告で住宅ローン控除の適用を申請します。
確定申告する場合でも、1年目よりも必要書類は少なくなります。
確定申告する場合の必要書類は以下の通りです。

必要な書類 取得方法
確定申告書 税務署の窓口や国税庁のホームページでダウンロードする
住宅借入金等特別控除額の計算明細書 税務署の窓口や国税庁のホームページでダウンロードする
住宅ローンの年末残高証明書 金融機関から年末頃に送付される

なお、会社員の方であっても、年収が2,000万円を超えている方や副業の所得が20万円を超えている方などは、自営業者の方と同じように確定申告をしなければなりません。

万が一申請期限を過ぎてしまったら?

住宅ローン控除の申請期限は確定申告と同じです。
しかし、申告期限を超えても一定期間内であれば申請して還付を受けられます。
自営業者や会社員が1年目の確定申告を忘れてしまった場合でも、5年以内であれば還付申告が可能です。

ただし、確定申告自体はしたけど住宅ローン控除の申請をしていない場合は、注意しなければなりません。
確定申告の申告期限内(3月15日まで)であれば、再度申告することで適用できます。

しかし、期限を超えてしまった場合、住宅ローン控除の適用が難しくなります。
期限を超えた場合、申告内容の修正を申告する「更新の請求」が必要になりますが、更新の請求は住宅ローン控除の申請忘れには適用できません。
期限を超えた場合は、「更新の請求の嘆願」を税務署に行う必要がありますが、認められるかは税務署の判断によります。
事情によっては認められる可能性もあるので、税務署に相談するようにしましょう。

会社員の場合、2年目以降の年末調整で申請を忘れたときは、まずは会社への相談が必要です。
会社が確定申告前であれば、社内の修正のみで済みます。
会社が確定申告を終えている場合は、自分で確定申告を行う必要があるので注意しましょう。

住宅ローン控除を受ける際の注意点

住宅ローン控除を受ける際の注意点として、以下の2つがあります。

  • 併用できる控除とできない控除がある
  • ローン期間が10年未満の場合は利用できない

以下で詳しく見ていきましょう。

併用できる控除とできない控除がある

税制上利用できる控除の特例は、住宅ローン控除以外にも多くあります。
しかし、控除によっては併用できるもの・できないものもあるので、控除の適用を検討している場合は、併用の可否についても把握しておくことが重要です。
住宅ローン控除を適用することで別の控除が適用できない、別の控除を適用していたから住宅ローン控除が適用できないというケースは少なくありません。

以下では、住宅ローン控除と併用できる控除と併用できない控除を詳しく解説します。

併用できる控除

住宅ローン控除と併用できる代表的な控除は以下の通りです。

特例・控除の名称 概要説明
ふるさと納税 自治体への寄付額に応じて一定額を所得税・住民税から控除できる制度
マイホームを買い替えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除 住み替え時の売却で損失が生じた場合、損失を他の所得から控除できる制度

好きな自治体を選んで寄付することで寄付額から2,000円を除いた分を所得から控除できるふるさと納税は住宅ローン控除との併用が可能です。
ただし、所得税においてふるさと納税の控除は住宅ローン控除よりも優先して適用されるので、控除額によっては住宅ローン控除を100%活用できません。

その為、ふるさと納税と併用する場合は、ふるさと納税のワンストップ特例制度の併用をお勧めします。
確定申告なしで控除を適用できるワンストップ特例制度では、住民税が対象です。住宅ローン控除で所得税、ふるさと納税で住民税を控除できるので、併用するメリットも大きいでしょう。
しかし、ワンストップ特例制度は確定申告をしない給与所得者が対象です。
その為、住宅ローン控除1年目では活用できない点は注意しましょう。

また、住み替えで利用できる「マイホームを買い替えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除」も住宅ローン控除と併用できる特例です。
この特例は、旧居の売却で損失が出て、住宅ローンを利用して新居を購入した際に利用できます。ただし、損失分の控除を優先して行う為、所得がゼロになれば住宅ローン控除の恩恵は受けられない点は注意が必要です。

参考:総務省「ふるさと納税のしくみ(税金の控除について)」

参考:総務省「ふるさと納税のしくみ(ふるさと納税の流れ)」

参考:国税庁「マイホームを買い換えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例」

併用できない控除

併用できない控除の代表的なものは、下記の通りです。

特例・控除の名称 概要説明
3,000万円特別控除の特例 マイホームの売却時に譲渡所得から3,000万円を控除できる特例
買い替え特例 住み替えの売却で利益が出た場合に税金の支払いを将来に繰り延べする特例

参考:国税庁「No.3223 譲渡所得の特別控除の種類」

参考:国税庁「No.3355 特定のマイホームを買い換えたときの特例」

マイホームの売却時の利益から最大3,000万円を控除することで譲渡所得税の節税が可能になる3,000万円特別控除は、住宅ローン控除との併用ができません。

先述した「マイホームを買い替えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除」が住み替えで損失が出た場合に適用できる控除であるのに対して、買い替え特例は住み替えで利益が出た場合に適用できる特例です。
この特例の適用で、売却時の譲渡所得にかかる税金を将来購入した家を売却するときまで繰り延べられます。

買い替え特例・住宅ローン控除・3,000万円特別控除はそれぞれ併用できないので、どの特例を適用するかはしっかりシミュレーションすることが重要です。

3,000万円特別控除や買い替え特例については、こちらの記事で詳しく解説していますのでご覧ください。

3000万円特別控除とは?適用条件や計算方法について解説

買い替え特例とは?適用要件や計算方法、注意点について解説

住宅の住み替えにかかる税金とは?発生する税金や利用できる特例を紹介

マンションを売却して住み替える方法とは?流れや費用、利用できる特例を紹介

ローン期間が10年未満の場合は利用できない

住宅ローン控除の適用要件には「ローン期間が10年以上」というものがあります。
このローン期間は適用年度における残期間のことを指します。
その為、ローン期間が10年未満になると住宅ローン控除は適用できません。

例えば当初15年で住宅ローンを組んでいる場合、6年返済すると残り期間が9年になる為、その年以降は住宅ローン控除が適用できません。
また、繰り上げ返済で住宅ローンの残期間が10年未満になった場合も、その年から適用できなくなるので注意が必要です。
繰り上げ返済を検討している場合は、返済後の期間も考慮して繰り上げ返済の額や時期を検討するようにしましょう。

まとめ

住宅ローン控除の適用で、所得税・住民税の大きな節税が可能です。
しかし、住宅ローン控除は税制改正にともない、適用する年によって要件や控除額が大きく異なります。令和6年の税制改正では、子育て世帯・若者夫婦世帯以外の世帯での限度額の引き下げ、新築住宅の要件緩和の延長などがありました。

住宅ローン控除の適用を検討しているなら、最新の要件や適用方法・併用できる特例なども押さえたうえで判断することが重要です。

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※本記事の内容は2024年6月26日現在のものであり、制度や法律については、今後改正・廃止となる場合がございます。

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この記事の著者

逆瀬川 勇造(合同会社7pockets 代表社員)
明治学院大学卒。銀行、不動産会社勤務を経て独立。宅地建物取引士、FP2級技能士(AFP)、住宅ローンアドバイザー。

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