2022.12.133000万円特別控除とは?適用条件や計算方法について解説

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マイホームを売却すると適用を受けられる3,000万円特別控除についてご存じでしょうか。
この記事では、3,000万円特別控除がどのような制度なのか、またどのような要件を満たすと適用を受けられるかなどを解説していきます。
また、3,000万円特別控除は他の特例と併用できる場合とそうでない場合があります。
どのような特例が併用できて、また併用できない特例はどのようなものなのかについても解説するので、これからマイホームの売却を考えている方はぜひ参考にしてみてください。

3000万円特別控除とは?

そもそも3,000万円特別控除とはどのような制度なのでしょうか。
3,000万円特別控除とは、不動産を売却したことで生じた譲渡所得税を計算する際に税金を3,000万円分控除できるというものです。

3000万円特別控除の適用要件

3,000万円特別控除の適用を受ける為には、マイホームの売却であることなどいくつかの適用要件を満たす必要があります。
具体的には、以下の6つです。
ここでは、国税局が明示している要件をまとめています。

  1. マイホームの売却であること。
  2. マイホームを売った年の前年および前々年にこの特例や、マイホームの譲渡損失についての損益通算及び繰越控除の特例の適用を受けていないこと。
  3. マイホームを売った年とその前年および前々年にマイホームの買換えやマイホームの交換の特例の適用を受けていないこと。
  4. 売った家屋や敷地等について、収用等の場合の特別控除など他の特例の適用を受けていないこと。
  5. マイホームが地震や災害により家屋が滅失した場合は、その敷地に住まなくなった日から3年後の12月31日までに売却すること。
  6. 売主様と買主様が、親子や夫婦などの関係でないこと。

参考:国税庁「No.3302 マイホームを売ったときの特例」

なお、以前住んでいたマイホームについて、転勤などを理由に住まなくなってから売却する場合、住まなくなった日から3年後の12月31日までに売却すれば適用を受けることが可能です。
また、マイホームが建っていた土地を、家屋を解体してから売却する場合、家屋解体から1年以内に売買契約を締結し、かつ住まなくなった日から3年後の12月31日までに売却すれば適用を受けられます。
ただし、家屋を取り壊してから売買契約を結ぶ日までの間に、貸駐車場などにして貸し付けていた場合は適用を受けられません。

3000万円の控除が受けられるその他の特例

ここでは、3,000万円特別控除を受けられるその他の特例について見ていきます。

相続された物件を売却する場合

相続や遺贈により取得した物件を売却する場合、必要な条件を満たせば3,000万円特別控除の適用を受けられます。これを「被相続人の居住用財産に係る譲渡所得の特別控除」といい、被相続人がマイホームとして居住していることなどが要件となります。
詳しい適用要件に関しては後ほど解説します。

賃貸に出している物件を売却する場合

マイホームであった物件を賃貸に出している場合でも、条件を満たせば3,000万円特別控除の適用を受けることが可能です。
ただし、売却時点においてマイホームでない物件を売却する場合、住まなくなった日から3年後の12月31日までに売却しなければなりません。また、自宅兼貸家を売却する場合には、自宅部分のみ、3,000万円特別控除の適用要件を満たせば控除を受けることが可能です。

店舗と併用していた物件を売却する場合

店舗併用住宅を売却する場合、自宅部分に該当する部分のみ、3,000万円特別控除の適用要件を満たせば、控除を受けることが可能です。
なお、全体の90%以上を居住用として使っていた場合には、建物全体について3,000万円特別控除の適用を受けられます。

共同の名義の物件を売却する場合

複数の人間で共有していたマイホームを売却する場合、適用要件に合致する全員が3,000万円分の特別控除を受けることができます。
例えば、持分が2分の1ずつだったとしても、条件を満たせばそれぞれ3,000万円の特別控除を受けることが可能なのです。
なお、敷地のみを所有しており、家屋の所有権がない方は、控除の適用を受けることができません。

マイホームを取り壊して敷地のみを売却する場合

マイホームが建っていた敷地を、マイホームを解体した後に敷地だけ売却する場合、以下の要件を満たすことで3,000万円特別控除の適用を受けることが可能です。

  • 建物解体から1年以内に敷地を売る契約を結ぶこと
  • 住まなくなってから3年後の年の12月31日までに売却すること
  • 建物解体から売買契約締結の日までに駐車場などとして第三者に貸し付けていないこと

空き家を売却する場合

空き家については、すでに解説した「被相続人の居住用財産に係る譲渡所得の特別控除」と同じ要件を満たすことで3,000万円特別控除の適用を受けられます。
つまり、相続して空き家になっている、被相続人のマイホームだった物件を売却する場合に、一定の要件を満たすことで特例の適用を受けられるのです。

3000万円特別控除を適用したときの税額はどうなる?

ここでは、3,000万円特別控除を適用したときの税額について見ていきましょう。
譲渡所得税を求める際は譲渡所得を求める必要があり、以下のように計算します。

譲渡所得 = 譲渡価格 - (取得費 + 譲渡費用)

また、譲渡所得税の税率は、所有期間により以下のように異なります。

所得の種類 所有期間 所得税率 住民税率 復興特別所得税 合計税率
短期譲渡所得 5年以下 30% 9% 0.63% 39.63%
長期譲渡所得 5年超 15% 5% 0.315% 20.315%

参考:国税庁「No.3208 長期譲渡所得の税額の計算」

参考:国税庁「No.3211 短期譲渡所得の税額の計算」

では実際に、3,000万円で取得した不動産を5,000万円で売却して、仲介手数料などが譲渡費用として300万円がかかった場合の譲渡所得税と、3,000万円特別控除を利用した場合の譲渡所得税をそれぞれ計算してみます。

【譲渡所得の計算方法】
譲渡所得 = 譲渡価格 - (取得費 + 譲渡費用)
=   5,000万円 ー (3,000万円 + 300万円)
= 1,700万円(課税譲渡所得)

【納税額の計算方法】
所有期間が5年以下だった場合:
1,700万円 × 39.63% = 673万7,100円

所有期間が5年超だった場合:
1,700万円 × 20.315% = 345万3,550円

【3,000万円特別控除を適用した場合】

譲渡所得 = 譲渡価格 - (取得費 + 譲渡費用) ー 特別控除
= 1,700万円 - 3,000万円
= 0円(課税譲渡所得)

上記の通り、特別控除の適用を受けることで、短期譲渡所得の場合で673万円、長期譲渡所得の場合で345万円分の税金が控除されることが分かります。

3000万円特別控除を申請する方法と流れ

ここでは、3,000万円特別控除を申請する方法と流れを見ていきましょう。

必要な書類

3,000万円特別控除の適用を受ける為には、確定申告する必要があります。
確定申告の際には、確定申告書の作成と、以下のような書類の準備をしなければなりません。

書類 取得場所
売却したマンションの謄本 法務局で入手
住民票の除票※1 市町村役場
確定申告書B 税務署(国税庁ホームページからDLも可能)
譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書) 税務署(国税庁ホームページからDLも可能)
売却時の売買契約書 売主様が保有(紛失時は売却を依頼した不動産会社に問い合わせ)
購入時の売買契約書 売主様が保有(紛失時は売却を依頼した不動産会社に問い合わせ)
費用を証明するの領収書など 売主様が保有(紛失時は売却を依頼した不動産会社に問い合わせ)

※1契約日前日までに住民票の住所と譲渡資産の所在地が異なる場合は必要になります。
確定申告の流れや確定申告書の書き方については、以下の記事で詳しく紹介していますのでご覧ください。

マンション売却の流れは?注意点やかかる税金・費用、失敗事例についても紹介

マンション売却の確定申告書の書き方は?手続きの流れも併せて解説

申請期間

3,000万円特別控除を申請する為には、不動産を売却した年の翌年2月16日~3月15日までの間に申告書を作成し、管轄の税務署に提出する必要があります。
なお、e-Taxを利用することで、自宅から申告を済ませることも可能です。

申請期間中には、土日など相談しながら申告を進められる会場が設けられることもある為、確認しておくと良いでしょう。締め切りが近くなる程、会場が混み合う傾向にある為、早めに手続きを進めてしまうのがお勧めです。

3000万円特別控除と他の控除制度・特例を併用する際のポイント

3,000万円特別控除は、他の特例と併用できるものと、併用できないものがあります。
それぞれについて見ていきましょう。

併用できる控除制度・特例

3,000万円特別控除と併用できる特例として以下のようなものがあります。

  • 10年超所有軽減税率の特例
  • 被相続人の居住用財産に係る譲渡所得の特別控除
  • 相続財産譲渡時の取得費加算特例

10年超所有軽減税率の特例

10年超所有軽減税率の特例とは、売却したマイホームの所有期間が10年超だった場合、軽減税率の適用を受けられる特例です。
具体的には、所得のうち6,000万円以下の分について、14.21%(所得税10.21%、住民税4%)の軽減税率適用を受けることができます。

本特例の適用条件は、基本的には3,000万円特別控除の適用要件と同じと考えて良いでしょう。本特例の適用を受けることができれば、3,000万円特別控除の適用を受けたうえで、さらに6,000万円以下の部分について低い税率で税金を計算できるのです。

参考:国税庁「No.3305 マイホームを売ったときの軽減税率の特例」

例えば、売却額が1億円、取得費が5,000万円、譲渡費用が1,000万円だった場合、以下のように特例の適用を受けられます。

(特例を受けた場合)
課税譲渡所得:1億円 ー 5,000万円 ー 1,000万円 ー 3,000万円(3,000万円特別控除) = 1,000万円

納税額 = 1,000万円 × 14.21% = 142.1万円

(特例を受けない場合)
納税額 = 1,000万円 × 20.315% = 203.15万円

10年超所有の軽減税率の適用を受けることで60万円程度納税額が安くなる計算です。

被相続人の居住用財産に係る譲渡所得の特別控除

被相続人の居住用財産に係る譲渡所得の特別控除の適用要件は、以下の通りです。

  • 被相続人がマイホームとして居住していたこと
  • 対象のマイホームが昭和56年12月31日以前に建築されたこと
  • マンションなど区分所有登記された建物でないこと
  • 相続の開始直前において被相続人以外の方が居住していないこと
  • 平成28年4月1日から令和5年12月31日までの間に売却すること

参考:国税庁「No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」

 相続財産譲渡時の取得費加算特例

相続財産譲渡時の取得費加算特例は、相続または遺贈により取得した財産を一定期間内に譲渡した場合、相続税額のうち一定金額を譲渡資産の取得費として加算できる制度です。
つまり、すでに相続した財産の相続税を支払った場合、その一定額を取得額として計上できる制度といえます。
本特例の適用要件は以下の通りです。

  • 相続や遺贈により財産を取得していること
  • 相続税が課税されていること
  • 相続税の申告期限の翌日以降3年以内に譲渡していること

参考:国税庁「No.3267 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」

併用できない控除制度・特例

一方、以下の特例は3,000万円特別控除と併用できません

  • 住宅ローン控除
  • 居住用財産の買換え等に係る特例

 住宅ローン控除

住宅ローン控除とは、一定の要件を満たす住宅を、住宅ローンを組んで購入した際に、住宅ローンの年末残高の0.7%について13年間(既存住宅の場合は10年間)控除を受けられる制度です。

住宅の環境性能等 借入限度額 控除期間
令和4・5年入居 令和6・7年入居 令和4・5年入居 令和6・7年入居
新築住宅・増改築・買取再販※業者が増改築等した一定の住宅 長期優良住宅・低炭素住宅 5,000万円 4,500万円 13年間
ZEH水準住宅 4,500万円 3,500万円
省エネ基準適合住宅 4,000万円 3,000万円
その他の住宅 3,000万円 0円 13年間 10年間
既存住宅 長期優良住宅・低炭素住宅ZEH水準住宅・省エネ基準適合住宅 3,000万円 10年間
その他の住宅 2,000万円

参考:国土交通省「住宅ローン減税」

ただし、現在所有しているマイホームを売却して新しくマイホームを購入する場合、売却時に3,000万円特別控除の適用を受けていると、新しくマイホームを購入する際に住宅ローン控除の適用を受けられない点に注意が必要です。
3,000万円特別控除の適用を受ける場合と、住宅ローン控除の適用を受ける場合とでは、どちらが自身に適しているか、事前にしっかり計算しておくことが大切だといえます。

 居住用財産の買換え等に係る特例

居住用財産の買換え等に係る特例とは、マイホームを売却して買換えた場合にかかる税金について、次回の売却まで繰り延べられるという制度です。
居住用財産の買換え等に係る特例も3,000万円特別控除との併用はできません。

参考:国税庁「No.3355 特定のマイホームを買い換えたときの特例」

マンション売却時にマイナスの利益が出た場合の控除特例

3,000万円特別控除はマイホームを売却して利益が出た場合に利用できる特例ですが、マイナスの利益が出た場合に利用できる特例もあります。
ここでは、特にマンションを売却したときにマイナスの利益が出た場合の特例についてみていきましょう。

居住用財産を買換えた場合の譲渡損失の損益通算および繰越控除の特例

居住用財産を買換えた場合の譲渡損失の損益通算および繰越控除の特例とは、マイホームを売却して新しくマイホームを購入した場合に生じた損益については損益通算と繰越控除ができるという制度です。

例えば、給与所得が400万円ある方が、マイホームを売却して2,000万円の損失が発生した場合、その年の所得を損益通算によってゼロにし、所得税や住民税の還付や減税を受けるといったことが可能です。
さらに、損益通算してもなお損益が残る場合には、3年間まで繰越控除することが可能です。

1年目(売却年) 2年目 3年目 4年目 5年目
給与所得 400万円 400万円 400万円 400万円 400万円
譲渡所得 -2,000万円 -1,600万円 -1,200万円 -800万円 0円
合計所得 0円 0円 0円 0円 400万円

参考:国税庁「No.3370 マイホームを買い換えた場合に譲渡損失が生じたとき」

居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例

居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例は、住宅ローンが残っているマイホームを売却してマイナスの利益が生じたときに適用を受けられる特例です。
基本的な考え方は居住用財産を買換えた場合の譲渡損失の損益通算および繰越控除の特例と同じで、生じた損益分を損益通算することができ、また損益通算してもなお損益が残る場合には、3年まで繰越控除可能です。

いずれの特例についても、確定申告をしなければ適用できない特例の為、マイホームを売却したときは、マイナスの利益が出たときも確定申告をして特例の適用を受けるかどうか検討してみましょう。

参考:国税庁「No.3390 住宅ローンが残っているマイホームを売却して譲渡損失が生じたとき」

まとめ

ここまで、3,000万円特別控除についてお伝えしました。
3,000万円特別控除は、譲渡所得から最大で3,000万円分の税金控除を受けられる制度です。マイホームの売却で特例の利用を考えている方は、適用要件を確認しておきましょう。
そのうえで、他に併用できる特例がないかや、3,000万円特別控除の適用を受けるより自身に適した特例がないかなど、この記事の内容を参考に比較検討することをお勧めします。

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※本記事の内容は2022年12月23日現在のものであり、制度や法律については、今後改正・廃止となる場合がございます。

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この記事の著者

逆瀬川 勇造(合同会社7pockets 代表社員)
明治学院大学卒。銀行、不動産会社勤務を経て独立。宅地建物取引士、FP2級技能士(AFP)、住宅ローンアドバイザー。

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