2024.02.26共有名義とは?不動産における意味やメリット・注意点、解消方法を解説

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不動産の共有名義とは、複数名で1つの不動産を所有することをいい、購入時の出資割合に応じて持分を定めて登記をします。一方で1人の方が所有することを、単独名義といいます。

共有名義には税金や住宅ローン控除の面ではメリットがありますが、注意すべき点もある為よく検討したうえで登記する必要があります。

この記事では、共有名義にするか否か悩んでいる方の為に、共有名義のメリットとデメリット、また共有名義を解消する方法を紹介します。

不動産の共有名義とは?

ここでは、不動産における共有名義の意味と共有名義に関連する用語を紹介します。

共有名義の意味

不動産の共有名義とは、複数名で1つの不動産を共同で所有することをいいます。所有権を登記する際は、購入時の出資額の割合に応じた持分を設定して登記します。
例えば、夫婦で不動産を購入する際に半額ずつ出資した場合、持分はそれぞれ1/2になります。

共有者・共有持分・持分割合との違い

共有名義とそれに関連する用語との違いは以下の通りです。

用語 意味
共有名義 1つの不動産を複数名で共同して所有すること。出資の割合に応じて持分を設定して登記する。
共有者 不動産を共有している方。3人の共有名義であれば、自分以外に2人の共有者がいることになる。
共有持分 1つの不動産を複数名で所有しているときの所有権の割合やその割合に応じた権利のこと。2人で同額を出資して不動産を所有しているとき、共有持分は1/2となる。ちなみに共有持分の1/2だけを売却することは可能。
持分割合 1つの不動産を複数名で所有しているときの所有権の割合。

共有名義になりうるケース

不動産が共有名義になるのは、どのようなときなのでしょうか。
この章では共有名義になる3つのケースを紹介します。

夫婦で不動産を購入した場合

夫婦で不動産を購入したときは、共有名義になります。例えば単独では難しい借入額も、夫婦で共同してローンを組むことができれば、希望の融資額を組みやすくなる為、共有名義にするというケースが考えられます。

ちなみに共働きの夫婦が共同してローンを組む場合、収入合算とペアローンの2通りの方法があります。

収入合算の場合は、どちらかが主債務者になり、もう一方の収入合算者は連帯保証人になります。ペアローンとは、それぞれが主債務者として住宅ローンを組む方法のことで、それぞれがお互いの連帯保証人になります。
どちらを選択するかは、収入や借入希望額などによって異なります。実際には金融機関にご相談ください。

相続により遺産を分割した場合

遺産である不動産を、複数名の相続人で分割したときに共有名義になります。平等に3人で相続する場合は、それぞれ持分は1/3になります。

不公平なく、平等に相続するという観点では問題ありません。しかし共有名義は将来的に売りたいと思ったときに共有者同士で意見がまとまらず、売却が難しくなる恐れがあります。

例えば土地の場合は、3等分に分割してそれぞれが相続する現物分割や、特定の相続人が住み続けて、住まない相続人に対価を支払うことで分割する、代償分割を検討することをお勧めします。

元の共有者の持分が第三者に売却・落札された場合

共有名義の場合は、共有持分のみ売却することができます。したがって共有者が持分を売却した場合、見ず知らずの第三者が共有者になる恐れがあります。また、共有者の持分が競売になった場合も落札した方(第三者)に共有持分の所有権が移ります。

共有名義のメリット

共有名義にすることでメリットもあります。この章では4つのメリットを紹介します。

高額なローンを組める

前述したように、単独では難しい借入れも、夫婦が協力してローンを組むことで希望する額を借りられる可能性があります。
例えば夫婦ともに安定した収入が見込める場合、ペアローンを組むことで高額なローンも借りることができます。そして、出資した額に応じた持分を設定して登記します。

住宅ローン控除を人数分受けることができる

ペアローンを組んで共有名義で購入すれば、夫婦それぞれが住宅ローン控除を受けられる為、単独でローンを組んだときよりも節税できます。住宅ローン控除とは、住宅ローンを利用して住居を購入した場合、一定期間住宅ローンの残高に応じて所得税を差し引くことができる控除のことです。

ちなみに住宅ローン控除を受ける場合、最初の年分は必要書類を添付し、確定申告をする必要があります。住宅ローン控除の控除率や期間は年度によって異なることがあります。国税庁のホームページなどを確認し、最新の情報を確認するようにしましょう。

参考:国税庁「住宅ローン控除を受ける方へ」

売却時に各名義人が税金控除を受けられる

居住用財産を売却したとき、一定の条件を満たすことで所有期間に関係なく、譲渡所得から最高で3,000万円控除できる特例(居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例)があります。

この特例は共有者1名につき最高3,000万円まで控除できる為、夫婦で共有名義にしている場合は、つまり最高で6,000万円まで控除できることになります。なおこの特例を適用するには、それぞれが確定申告をする必要があります。

3,000万円特別控除については、こちらの記事で詳しく紹介していますのでご覧ください。

3000万円特別控除とは?適用条件や計算方法について解説

参考:国税庁「No.3308 共有のマイホームを売ったとき」 

相続税の節税ができる

被相続人が不動産を単独で所有していた場合、相続時にはその全てが相続税の課税対象になりますが、持分の一部を贈与して共有名義とする場合は、その被相続人の持分のみが課税対象になります。つまり単独名義のときよりも相続税を節税できます。

なお、夫婦間で贈与を行う、かつ婚姻期間が20年超の場合、居住用財産もしくは居住用財産を取得する為の金銭については、基礎控除の110万円のほかに最高で2,000万円まで贈与税が控除されます。したがって登記費用や不動産取得税はかかりますが、2,110万円までは贈与税がかかりません。

ただし、この特例を利用するには贈与を受けた方が「その後も引き続き住む見込みである」ことが要件となる為、売却を前提に贈与をする場合は利用できない点に注意しましょう。

参考:国税庁「No.4452 夫婦の間で居住用の不動産を贈与したときの配偶者控除」

共有名義の注意点

共有名義をすることでメリットがある一方で、注意すべき点もあります。ここでは、4つの注意点を紹介します。

自由に売却や賃貸借、リフォームなどができない

共有名義の不動産は、売却や賃貸借時に共有者全員の同意が必要です。
共有持分のみ売却することは物理的には可能ですが、持分のみ購入するケースは少なく、買い手がつかないことがあります。売るときや貸し出すときは、基本的に共有者全員の同意が必要になると心得ましょう。

ちなみにリフォームをする場合は、共有者の過半数の同意が必要です。共有名義にする場合は将来のことも考えて、利用方法についても話し合っておきましょう。

諸経費は共有者ごとに発生する

共有名義にすることで、事務手数料が2倍になることが考えられます。例えばペアローンは、それぞれがローンを組むことになります。金融機関の事務手数料や抵当権設定時の登録免許税、金銭消費貸借契約書の印紙税がそれぞれかかります。そしてローン完済時の事務手数料や売却抵当権抹消の登録免許税、司法書士への報酬も同様です。

持分の管理が複雑になる

共有名義の不動産が相続により持分がさらに細分化された場合、共有者が増えてしまいます。また代を経るごとに、お互いが連絡を取り合うことも難しくなることが想像できます。
そして共有者全員の合意を得ることが難しくなり、売却も賃貸もできないという事態にもなりかねません。

財産分与のトラブルが発生する可能性がある

財産分与とは、離婚する際に夫婦で結婚後に築いた財産を公平に分ける制度です。収入に関係なく、基本的には財産を1/2ずつ分け合うのが通例です。

例えば、共有名義のマンションは離婚時に売却して、現金化することでスムーズに財産分与できます。住宅ローンが残っていたとしても、売買代金で完済できれば連帯保証人の立場も解消できます。

しかし一方が共有名義のマンションを売ることに合意しないときは、売却できません。通常住宅ローンを完済するまでは連帯保証人から外れることはできず、万が一相手側が返済しない場合は、連帯保証人が返済しなければならずトラブルになることがあります。

離婚時のマンション売却については、こちらの記事で詳しく紹介していますのでご覧ください。

離婚時にマンションを売却すべき?財産分与やローンがある場合の注意点を解説

熟年離婚の財産分与でマンションはどう分ける?具体的な分割方法を解説

共有名義を解消するには?

共有名義によるリスクが大きいと感じる場合は、共有名義の解消を検討しましょう。ここでは、共有名義を解消する方法を5つ紹介します。

単独名義に変更する

共有者で相談して全員の合意があれば、任意の方を単独名義にすることができます。単独名義人になる方が、共有者に対価を支払う場合は問題ありませんが、無償で持分を受け取った場合は贈与とみなされ、贈与税が発生する恐れがあります。

なお持分の放棄は単独ででき、共有者の同意は必要ありません。ただしトラブルを避ける為にも、放棄を希望する場合は事前に相談しておきましょう。

共有者全員の同意を得て不動産を売却する

不動産を売却することで共有名義を解消できます。その場合は、前述の通り共有者全員の合意が必要です。ちなみに共有者全員の合意があれば売却だけでなく賃貸としての活用やリフォーム(過半数以上合意で可能)もすることができます。

共有名義の不動産を売却する流れは以下の通りです。

  1. それぞれの持分を確認する
  2. 不動産の相場価格を把握する
  3. 不動産会社へ査定を依頼する
  4. 不動産会社と媒介契約を締結する
  5. 売買契約締結
  6. 残代金決済・引き渡し
  7. 売買代金を持分に応じて分ける
  8. 翌年に確定申告をする

共有名義の不動産を売却する方法については、こちらの記事で詳しく紹介していますのでご覧ください。

共有名義のマンションを売却する方法は?売却までの流れや注意点を解説

共有者同士で持分を売買する

共有者同士で持分を売買すれば、単独名義にすることができます。ただし、その対価が相場と比べて極端に安いときは贈与とみなされる恐れがあります。相場価格を参考にして、売買代金を決めるようにしましょう。
相場価格を把握する方法については、こちらの記事で詳しく解説していますのでご覧ください。

【2023年】一戸建ての売却相場はいくら?地域別・築年数別の相場や、調べる方法を解説

【2023年】マンション売却の相場を知るには?調査の仕方や確認すべきポイントについて

自身の持分を第三者へ売却する

共有者の合意が得られず売却が難しいときは、自身の持分のみを売却して共有名義を解消する方法があります。持分のみを売却することは可能ですが、相場価格で持分のみを売却することは難しく、買い手を探すのに時間がかかる恐れがあります。

共有物分割請求によって解消する

共有者は、他の共有者に共有状態の解消を求める権利があります。他の共有者が応じない場合、共有物分割請求訴訟を行うことを検討しましょう。

共有物分割請求訴訟とは、共有状態を解消する為に裁判所に適切だと思われる裁定をしてもらうことです。
しかし共有者が応じない場合は解決までに時間がかかり、また自分の望み通りになるとは限りません。

共有名義の不動産に関するよくある質問

最後に共有名義の不動産に関する、よくある質問を紹介します。

共有者が認知症の場合でも売却はできますか?

認知症の方は法的には意思能力がないと判断される為、法律行為である不動産売却はできなくなります。対処法としては後見人制度があり、この制度を利用することで、不動産の売却は可能になります。

後見人制度とは、裁判所が選任した後見人(程度により保佐人や補助人)が本人に代わって法律行為を行うものです。もし弁護士や司法書士が後見人になる場合は、本人の財産から報酬を支払う必要があります。

そして共有名義の不動産を売却した後も、本人が亡くなるまで後見人としての役割は続きます。後見業務が長く続く場合は大きな負担になる可能性もある為、よく検討する必要があります。

共有者が自己破産した場合はどうなりますか?

共有者が自己破産した場合でも、他の共有者の持分にまで影響することはありません。しかし最終的にその持分が競売となり落札された場合、落札者がその持分の名義人となります。

自己破産した場合、破産管財人が不動産を処分することで現金化します。その為、競売になる前に共有持分の買取を提案されることがありますが、買取に応じることで第三者と共有名義になることを防ぐことができます。

共有名義の不動産にかかる税金はどうなりますか?

共有名義の不動産にかかる固定資産税や都市計画税は、共有者が連帯して納税する義務があります。

ただし誰か1人が全額を納めれば、全員の納税義務が消滅します。
したがって役所が共有持分に応じて税金を分割するなどして、納付書を送ることはありません。代表者に納付書が送られてきますが、共有者全員の同意があれば送付先を変更できます。

まとめ

共有名義にすることで、税金の特例や住宅ローン控除を適用できれば減税につながります。しかし売却したいと思っても、共有者の合意がなければ売ることができません。

また夫婦でペアローンを組むことで高額の住宅ローンを組みやすくなりますが、離婚することになった場合、名義や住宅ローンの返済についてトラブルになることがあります。
メリットと注意すべき点をよく把握したうえで、共有名義にするか検討しましょう。

長谷工の仲介では、共有名義の不動産売却に関する相談を受け付けています。まずは「売却何でも相談」からお気軽にご相談ください。

※本記事の内容は2024年2月26日現在のものであり、制度や法律については、今後改正・廃止となる場合がございます。

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この記事の著者

桜木理恵
私鉄系不動産会社にて仲介営業を約8年、大手ハウスメーカーのグループ会社にてリフォーム営業を5年従事した経験を活かし、現在不動産Webライターとして活動。保有資格は宅地建物取引士・管理業務主任者・2級ファイナンシャルプランニング技能士

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