2024.02.26ローン返済中の家は売却できる?売却方法や注意点を解説

ローン返済中の家は売却できる?売却方法や注意点を解説画像

住宅ローンの残債が残っている状態でも、自宅の売却は可能です。売買代金として受け取った代金で抵当権を抹消できれば、決済日当日に買主様へ所有権を移転できます。

この記事では、ローン返済中の家を売却するときに必要な事前準備や売却方法、実際の流れを解説します。また適用できる税金の特例や、相続や離婚時の注意点も紹介します。これから家の売却を検討している方は、ぜひ参考にしてみてください。

ローン返済中でも家を売ることは可能?

住宅ローン返済中であっても家の売却は可能です。

しかし住宅ローンを借入した場合には金融機関の抵当権が設定されており、そのままの状態では売却できません。
抵当権とは、住宅ローンの返済が難しくなったときに備えて担保となる資産に金融機関が設定するものです。万が一返済できなくなったときには、金融機関が不動産を競売にかけて、貸し出したお金を回収することになります。

売買代金が住宅ローンの残債額を上回る場合は、決済日に買主様から受領した売買代金で完済することができるので抵当権を抹消できます。そしてその日のうちに所有権移転登記の申請ができます。

住宅ローン返済中の売却方法や実際の手順、住宅ローンの残債が売買代金を上回る場合の売却方法は、後半で解説します。

また抵当権の抹消については、こちらの記事で詳しく解説していますのでご覧ください。

抵当権とは?設定や抹消手続きの流れ、行使された場合の対処法についても解説

ローン返済中の家を売却する際の事前準備

ローン返済中の家を売却する際に、事前に確認すべきポイントを4つ紹介します。

ローン残高を確認する

まず住宅ローン残高を確認します。確認する方法はいくつかありますが、ここでは代表的な方法を4つ紹介します。

金融機関が作成する返済予定表を確認

返済予定表とは金融機関が作成するもので、毎月の住宅ローン返済額や利息の内訳、借入残額が記されています。通常、住宅ローンを契約したときに発行される書面です。繰り上げ返済をした場合は実際の借入金額と異なる場合がある為、最新の内容が知りたい場合は金融機関へ依頼しましょう。

金融機関から郵送で送られてくる残高証明書で確認

残高証明書は住宅ローン控除を受ける際に必要な書面で、住宅ローンの残高を確認できます。金融機関や借入時期によって手元に届く時期は異なりますが、10月から12月にかけて送られてくることが多いです。

金融機関のWEBサイトで確認

インターネットバンキングや金融機関のアプリを使うことで、住宅ローン残高を確認できます。手軽に確認できるのが魅力ですが、金融機関によってサービスが異なります。また借り入れしている金融機関によっては、対応していないことがあります。

コールセンターや窓口で確認

返済予定表や残高証明書などが手元になく、WEBサイトでの確認も難しい場合は、金融機関のコールセンターや窓口でも住宅ローン残高を確認できます。本人確認ができる書類が必要になりますので、必要書類などについては直接問い合わせましょう。

売却相場価格を把握する

住宅ローンの残債額がわかったら、売却相場価格を確認します。不動産会社に無料査定を依頼するのが一般的です。
ただし、不動産会社によって査定額が異なることがあるので、査定額の妥当性を判断する為にも、ある程度事前に相場価格を把握しておくようにしましょう。
売却相場を知る方法については、こちらの記事で詳しく解説していますのでご覧ください。

【2023年】一戸建ての売却相場はいくら?地域別・築年数別の相場や、調べる方法を解説

【2023年】マンション売却の相場を知るには?調査の仕方や確認すべきポイントについて

売却価格を査定して完済できるか確認する

実際に不動産会社による査定額を売却価格と想定して、住宅ローンの残債を上回るか確認します。複数社に査定依頼し、一番低い査定額を参考にしましょう。査定額の下限を把握しておくことで、ゆとりを持って資金計画を立てることができます。

査定価格の算出方法や査定時のポイントについては、こちらの記事で詳しく解説していますのでご覧ください。

一戸建て売却の査定価格はどう決まる?見られるポイントや査定のコツとは

マンション売却査定の不安を解消!査定の流れや査定でみられるポイントを徹底解説

売却にかかる費用や税金を確認する

家を売却するときには、不動産会社へ支払う仲介手数料や抵当権を抹消する為の費用、登記費用などがかかります。

マンション売却にかかる費用は売却価格に対して3.5〜4%程度、一戸建ての場合は5~10%かかるともいわれています。売却する不動産の金額や条件によっても異なりますが、諸費用は数百万円かかる為、住み替えの資金計画に含めておく必要があります。

売却にかかる費用や手数料については、こちらの記事で詳しく解説していますのでご覧ください。

マンション売却にかかる費用や手数料は?費用を抑える方法も紹介

一戸建て売却の基礎知識!売却までの流れや費用、成功させる為のポイントを紹介

売却額でローンを完済できる場合の売却方法

家の売却代金で住宅ローンを完済できる(アンダーローン)状態の場合、新居の購入と自宅の売却のどちらを先に進めたら良いのでしょうか。

買い先行か売り先行で売却する

新居を先に購入することを一般的に買い先行といい、自宅の売却を先に進めることを売り先行といいます。どちらにもメリット・注意点がありますので、希望や条件に合せて選択するようにしましょう。

買い先行とは

買い先行とは、新居を先に購入して引っ越しを終えてから自宅を売却する方法です。仮住まいをする必要がない為、引っ越しにかかる手間やコストは1度で済みます。また気に入った新居をすぐに購入できるのもメリットといえます。

自宅を空き家の状態で売り出すことができる為、不動産会社に鍵を預けることができれば、内覧に立ち会う必要はありません。その為「内覧前に清掃や荷物の整理を行う」という負担から解放されます。

一方で、住宅ローンを完済できる予定であったとしても、新居をローンで購入する場合、一時的にダブルローンになります。年収に対して返済比率が高くなり、収入や年齢によってはダブルローンの借り入れができないこともあります。

売り先行とは

売り先行とは、自宅を先に売却してから新居を購入する方法です。自宅の売却価格が確定してから新居を購入できる為、住み替えの資金計画を堅実に立てたい方にお勧めの売却方法です。

また新居を購入する際に新たな住宅ローンを借り入れできるので、借り入れ自体もしやすく、無理のない返済計画を立てられます。

一方で、自宅売却後に仮住まいする必要があり、引っ越しの手間とコストが2回かかります。また希望する新居が見つかるまで長い期間がかかれば、その分仮住まい費用がかさみます。

自宅に住みながら売却する為、内覧対応が必要になります。場合によっては、毎週末内覧希望者に対応しなければならない場合もあり、忙しい方にとっては大きな負担になるかもしれません。

自宅に住みながら売却するときのメリットや注意点については、こちらの記事で詳しく解説していますのでご覧ください。

住みながら家を売ることはできる?メリットやポイントも併せて紹介

リースバックを利用する

もし自宅を売却する理由が、住宅ローンの完済やまとまった資金を得る為であれば、リースバックを前提とした売却も一つの方法です。

リースバックとは、セール・アンド・リースバックが正式名称です。自宅を売却して売却代金を手に入れた後、月々家賃を支払って賃貸人として住み続ける方法です。住み慣れた自宅に住み続けることができ、広告活動もしない為、基本的に周囲に売却したことを知られることはありません。
自宅の所有者でなくなる為、固定資産税などの負担がなくなり、また住宅ローンを完済することで月々の返済もなくなります。

しかし、リースバックは資産を手放すことになります。特に老後を見据えてリースバックを利用する場合は、トラブルを避ける為にも、家族や想定相続人とよく相談し、契約条件や売却価格が自分にとって納得できるものなのか検討したうえで契約するようにしましょう。

また、売却価格は相場よりも安くなることが多く、家賃は近隣の水準よりも高くなるのが一般的です。その為、リースバック後の生活にかかる家賃を考慮して資金計画を立てておくことをお勧めします。

リースバックについては、こちらの記事で詳しく解説していますのでご覧ください。

リースバックとは?メリットや利用する場合の注意点を解説

ローンの残高が売却額を上回る場合の売却方法

ローン残高が売却代金を上回る場合でも、自宅の売却は可能なのでしょうか。ここでは、オーバーローンでも売却できる方法を4つ紹介します。

差額を自己資金で補う

まず検討したいのが、住宅ローンの残債を自己資金で完済する方法です。手持ちの資金で返済できるのであれば、一番無理のない方法といえます。

ちなみに住宅ローンを一括返済する場合、金融機関の手数料や抵当権抹消費用がかかります。一括返済する場合の事務手数料は、金融機関や返済方法によって手数料は異なります。

窓口で返済するよりもWEB上で手続きするほうが安価になる場合がある為、事前にかかる費用を比較して返済しましょう。

無担保ローンを利用して差額を補填する

無担保ローンとは、不動産を担保として提供する必要がなく、様々な用途に利用できるローンです。フリーローンや多目的ローンとも呼ばれます。
残債額によっては、金融機関の無担保ローンを利用して住宅ローンを返済する方法があります。

WEBで申し込めるケースが多く、比較的審査が早い点がメリットです。しかし住宅ローンに比べて金利がかなり高い為、なるべく短期間で返済するような工夫が必要です。

住み替えローンを利用する

住み替えローンとは、既存の住宅ローンの残債と、新居を購入する為の資金を合算して借り入れするローンです。新居に抵当権を設定してローンを組みますが、新居の担保評価や借入する本人の収入や年齢によっては借り入れが難しいケースもあります。

自宅を売却できるまで二重に不動産を所有することになり、固定資産税なども二重にかかります。また自宅の売却金額が確定する前に新居を購入することになる為、ある程度余裕をもって資金計画を立てる必要があります。

住み替えローンのメリットや注意点については、こちらの記事で詳しく解説していますのでご覧ください。

住み替えローンの利用はあり?メリットや金利・審査面から注意点を解説

任意売却を行う

住宅ローンの返済が難しいときは、抵当権設定権者の金融機関に相談して了承を得る必要はありますが、任意売却する方法があります。

しかし売却価格によっては、残債が残ります。抵当権を抹消してもらえますが、残債がゼロになるわけではありませんので注意しましょう。また、売却価格が住宅ローンの残債額を大きく下回る場合は金融機関が任意売却に同意しない恐れもあります。

また住宅ローンを返済できない状態が数ヵ月続くと、債権者によって不動産を差し押さえられ、競売になる恐れがあります。なるべく早く金融機関に相談するようにしましょう。

任意売却や競売については、こちらの記事で詳しく解説していますのでご覧ください。

任意売却とは?競売との違いやメリット、注意点などを解説

マンションの住宅ローンが払えない!滞納するリスクや対処法を紹介

競売とは?流れや注意点、回避する方法について詳しく解説

売却方法を決めた後の流れ

売却方法を決めた後の流れは以下の通りです。

  1. 売買契約締結
  2. 引き渡し準備(新居や仮住まいへ引っ越し)
  3. 売買代金受領
  4. 抵当権抹消
  5. 所有権移転登記申請手続き
  6. 確定申告手続き

売買契約を締結後、決済日までに家の引き渡し準備を進めます。新居や仮住まいに引っ越しして役所へ転出・転入届を提出し、郵便局へは転居届を提出し、郵便物を転送してもらう手続きをします。

すでに引っ越しを終えている場合は、決済日に買主様へ引き継ぐ書類を準備しておきます。
決済日には家の鍵のほか、マンションであれば管理規約や購入時のパンフレットなど、一戸建ての場合は建築確認済証などを買主様へ渡します。

決済日に買主様から受領した代金で住宅ローンの残債を完済し、金融機関から抵当権抹消書類を受け取ります。そして司法書士に抵当権抹登記と所有権移転登記を依頼します。

売却により利益(譲渡所得)が発生する場合や税金控除の特例を利用する場合は、翌年に確定申告する必要があります。

売却の流れについては、こちらの記事で詳しく解説していますのでご覧ください。

マンション売却の流れは?注意点やかかる税金・費用、失敗事例についても紹介

一戸建て売却の基礎知識!売却までの流れや費用、成功させる為のポイントを紹介

ローン返済中の家を売るときのポイントや注意点

ローン返済中の家を売るときのポイントと、注意点を紹介します。

確定申告を忘れずに行う

不動産を売却して利益が発生した場合は、税金がかかります。前述した通り、譲渡所得の申告や税金控除の特例を利用する場合は、翌年に確定申告が必要になります。
確定申告については、こちらの記事で詳しく解説していますのでご覧ください。

マンションを売却したら確定申告が必要?流れや手順、必要書類について徹底解説

適用できる税金特例を確認する

不動産売却時には、様々な税金控除の特例を利用できますが、物件の条件によって利用可否が異なります。特例の例は以下の通りです。

特例の例 概要説明
居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例 居住用の財産を譲渡して一定の要件を満たす場合は、その所有期間に関係なく譲渡所得から最高3,000万円まで控除できます。
特定のマイホームを買い換えたときの特例 2023年12月31日までに居住用財産を売却して新居を買い換える際に一定の要件を満たすと、譲渡益に対する課税を将来に繰り延べることができます。

ただし繰り延べであって、譲渡益が非課税にはなりません。
マイホームを買い換えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例 2023年12月31日までに居住用財産を売却して新居を買い換えた場合、旧自宅の譲渡によって生じた譲渡損失をその年の給与所得や事業所得など他の所得から損益通算できる特例です。
マイホームを売ったときの軽減税率の特例 居住用財産を売却して一定の要件を満たす場合、長期譲渡所得よりも低い軽減税率で計算できる特例です。

各特例の要件については、こちらの記事で詳しく解説していますのでご覧ください。

3000万円特別控除とは?適用条件や計算方法について解説

買い替え特例とは?適用要件や計算方法、注意点について解説

ローン返済中に相続や離婚が発生したらどうする?

ローン返済中に相続が発生した場合や、離婚によって状況が変わったときの注意点を紹介します。

相続する場合の注意点

ローン返済中に契約者が亡くなり相続が発生した場合、相続人はローンも相続します。つまりプラスの資産も、マイナスとなる債務も原則相続することになります。
相続時の債務を減らす方法として、主に以下の4つがあります。

相続時の債務を減らす方法 概要説明
団体信用生命保険に加入しているか確認する 契約者が亡くなった際には保険金が支払われる為、相続人は残債額を支払う必要がなくなります。
債務控除を利用する 相続税の計算において、遺産の総額からマイナスの財産(債務)を差し引くことができます。
相続放棄を選択する プラスの資産よりもマイナスの資産が多いときは、権利や債務(義務)を一切引き継がない相続放棄を選択できます。
限定承認を選択する 債務がどの程度であるかわからないときは、プラスの相続財産の額に応じて債務を引き継ぐ限定承認を選択できます。

なお、相続不動産を売却する際は、相続人全員の合意が無ければ売却を進めることができません(自分の持分だけであれば可能)。売却する為には相続登記が必要ですが、2024年4月1日から相続登記は義務化されます。すぐに売却をしないときでも、相続登記しなければならなりませんので注意しましょう。

相続については、こちらの記事で詳しく解説していますのでご覧ください。

共有名義とは?不動産における意味やメリット・注意点、解消方法を解説

家の相続手続きの流れは?費用や注意点についても分かりやすく解説

離婚する場合の注意点

離婚により共有名義の自宅を売却する場合、相手側の同意がなければ売却できません。したがって財産分与が思うように進まない恐れがあります。

また住宅ローンの連帯保証人になっている場合、完済するまで基本的に保証人から外れることはできません。また離婚後に相手側の返済が滞った場合など、自分に債務が発生することも想定しなければなりません。

離婚時に住宅ローンが残っている場合の対処法については、こちらの記事で詳しく解説していますのでご覧ください。

離婚時に住宅ローンが残っている場合はどうすれば良い?ケース別の対処法や注意点を解説

まとめ

住宅ローン返済中でも、家を売却することは可能ですが、自己資金や売却資金で金融機関の抵当権を抹消する必要があります。その為、あらかじめ住宅ローンの残高と売却相場を確認し、資金計画を立てましょう。そして、残債額の状況に応じて、売却方法を検討することが重要です。

長谷工の仲介では仲介による売却はもちろん、直接買取やリースバック、任意売却など幅広い売却方法を提案できます。まずは「売却何でも相談」からご相談ください。
また売却の無料査定や、税理士による税務相談も行っています。お気軽にご利用ください。

長谷工の税務相談サービスはこちら

※本記事の内容は2024年2月26日現在のものであり、制度や法律については、今後改正・廃止となる場合がございます。

満足度の高い売却は「長谷工の仲介」で。

「知人・親族にすすめたい」そんなお客さまが90.8%!満足度の高い売却は「長谷工の仲介」で。

売却の流れをチェック!

この記事の著者

桜木理恵
私鉄系不動産会社にて仲介営業を約8年、大手ハウスメーカーのグループ会社にてリフォーム営業を5年従事した経験を活かし、現在不動産Webライターとして活動。保有資格は宅地建物取引士・管理業務主任者・2級ファイナンシャルプランニング技能士

関連のおすすめ記事