
家を相続したけどどうすれば良いのかわからない、という不安を抱えている方も多いのではないでしょうか。
家を相続する場合、相続登記など手続きが必要になる為、相続全体の流れを知ることが大切です。
この記事では、はじめて家を相続する方に向けて、相続手続きの流れや注意点について解説します。
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家を相続する手続きの流れ
相続が発生したからといって自動的に家を相続するわけではありません。
相続完了までにはいくつかのステップがあり、相続するまでの流れを把握しておくことが大切です。
ここでは、相続発生から相続登記をするまでの大まかな流れを紹介します。
遺言書の有無を確認する
そもそも相続とは、亡くなった方の財産を相続人が引き継ぐことです。
引き継ぐにあたって「誰が・どの財産を・どれくらい」引き継ぐかは、遺言書の有無によって異なってきます。
遺言書がある相続の場合、相続の仕方は遺言書に従うことになります。
一方、遺言書のない相続は、次に挙げる「遺産分割協議」で相続の仕方を決めなければなりません。
したがって、遺言書の有無をまず確認しましょう。
遺言書の種類には下記の3種類があり、このうち「自筆証書遺言」「秘密証書遺言」は、開封に家庭裁判所の検認が必要になります。
遺言書の種類 | 説明 |
---|---|
公正証書遺言 | 公証役場で作成した遺言書 |
自筆証書遺言 | 自分で遺言・日付・氏名を自書し押印した遺言書 |
秘密証書遺言 | 自分で作成し、公証役場に持ち込んで遺言書の存在を証明してもらう遺言書 |
公正証書遺言は、本人・証人立ち合いのもと公証人によって作成された法的な有効性のある遺言書です。
原本は公証役場で保管され、内容を確認できることから改ざんのリスクもない為、公正証書遺言であれば見つけ次第その場で開封しても問題ありません。
しかし、自筆証書遺言・秘密証書遺言は、見つけてもすぐに開封はできません。
開封するには家庭裁判所の検認が必要となり、検認前に勝手に開封すると5万円以下の過料(ペナルティ)が科せられる恐れがあります。
また、勝手に開封してしまうと他の相続人から改ざんなどの疑惑をかけられ無効を主張されるケースもあるので注意が必要です。
自筆証書遺言・秘密証書遺言の場合は、見つけ次第速やかに家庭裁判所に検認の手続きをとるようにしましょう。
遺言書がない場合は遺産分割協議を行う
遺言書がない場合、相続割合は相続人全員で話し合って決めることになります。
この話し合いのことを遺産分割協議と呼びます。
遺言書がある場合でも、遺言書に記載のない財産がある・遺言書の内容とは異なった相続をしたい場合は遺産分割協議で相続割合を決めることになります。
遺産分割協議を行うにあたって、先に「相続財産の確定」「相続人の確定」を済ませておきましょう。
相続財産は、プラスの物だけでなくマイナスの物も全て含めて確定させます。
また、遺産分割協議では相続人全員の合意が必要になる為、相続人の確定も必要です。
協議後に新たに相続人が出てきた場合、協議のやり直しになるので最初に明確にしておきましょう。
なお、法定相続人の範囲は次の通りです。
- 配偶者:常に相続人
- 相続第1順位:子・孫
- 相続第2順位:父母・祖父母
- 相続第3順位:兄弟姉妹
相続順位の高い方が相続人となった場合、下位の順位の方は相続人にはなりません。
仮に、相続順位の高い方が相続開始時点で亡くなっている場合でも、その方の子どもがいる場合は代襲相続が発生し、子どもが相続人です。
相続人の確定は、被相続人に兄弟姉妹が多い・離婚歴があるなどで複雑になるケースもあります。出生時から死亡時までの戸籍をたどって、漏れなく確定できるようにしましょう。
相続財産と相続人が確定したら、遺産分割協議で相続割合を決めていきます。
遺産分割協議が合意したら、内容を遺産分割協議書として作成しておきましょう。
なお、遺産分割協議では決まらない・そもそも参加してもらえないという場合は、家庭裁判所での調停や審判で決めることになります。
土地・建物に関係する書類を集める
家を相続することが決まったら、相続の手続きに入ります。
相続手続きでは、土地・建物に関する情報として、正確な地番・家屋番号などが必要です。
地番や家屋番号は、毎年5~6月頃に送付される固定資産税納税通知書や権利証などで確認できます。
相続登記に必要な書類を集める
家などの不動産を相続した場合、不動産の所有者を被相続人から相続人に変更する手続きが必要です。
この手続きを相続登記と呼びます。
相続登記は、必要書類を揃えて法務局へ申請するので登記に必要な書類を集めましょう。
必要な書類は、相続の仕方によって異なるので注意が必要です。
主な必要書類は下記のようなものがあります。
書類名 | 入手場所 | 遺言書による相続 | 遺産分割協議書による相続 | 法定相続人ごとに相続 |
---|---|---|---|---|
遺言書 | - | 〇 | - | - |
遺産分割協議書 | 作成する | - | ○ | - |
被相続人の住民票除票または戸籍附票 | 亡くなった方の最後の住所地の役所 | ○ | ○ | ○ |
被相続人の戸籍謄本 | 出生から死亡までの連続した戸籍(亡くなった方の最後の住所地の役所~異動がある場合は以前の役所からも取り寄せが必要) | ○ | ○ | ○ |
相続人の戸籍謄本 | 相続人の本籍地の役所 | ○ | ○ | ○ |
相続人の住民票 | 相続人の住所地の役所 | ○ | ○ | ○ |
相続人全員の戸籍謄本 | 各相続人の本籍地の役所 | - | ○ | ○ |
相続人全員の印鑑証明 | 各相続人の住所地の役所 | - | ○ | ○ |
固定資産評価証明書 | 毎年送付されるない場合は役所で交付してもらう | ○ | ○ | ○ |
登記簿謄本 | 法務局 | ○ | ○ | ○ |
相続登記申請書 | 法務局または司法書士が作成 | ○ | ○ | ○ |
委任状 | 委任する場合(司法書士が作成するのが一般的) | ○ | ○ | ○ |
相続登記を行う
必要書類を集めたら申請書を添えて、相続する不動産を管轄する法務局に相続登記を申請します。
相続登記は必要書類さえ集められれば、自分でも登記可能です。
しかし、法務局が遠方にある、仕事が忙しくて時間がない、手続きに不安があるといった場合は司法書士に依頼しましょう。
なお、相続登記は2024年4月1日以降に義務化されます。
義務化されると、相続してから3年以内に相続登記しない場合、10万円以下の過料(ペナルティ)が課せられる為、忘れずに手続きすることが大切です。
また、義務化後は2024年4月1日以前に相続した不動産も義務化の対象となります。
相続後いまだ登記が済んでいない方は、早めに登記手続きを行うようにしましょう。
出典:東京法務局「相続登記が義務化されます(令和6年4月1日制度開始)~なくそう 所有者不明土地!~」
家を相続する際にかかる費用や税金
家を相続する際には、様々な費用や税金がかかるので、なににどれくらい必要なのかを把握しておくことが大切です。
ここでは、家の相続でかかる費用や税金を解説していきます。
書類の取得費用
戸籍謄本や住民票などの書類取得の費用が必要です。
主な書類の取得費は下記のようになります。
書類 | 取得費用 |
---|---|
住民票・住民票除票 | 1通300円 |
戸籍謄本 | 1通450円 |
印鑑証明 | 1通300円 |
登記簿謄本 | 480円~600円(申請方法により異なる) |
司法書士手数料
相続登記を司法書士に依頼する場合、司法書士手数料が必要です。
手数料は、依頼する司法書士や依頼内容によって異なりますが、5~10万円程が目安となります。
登録免許税
登録免許税とは、登記手続きの際に発生する税金です。
登記する内容によって費用は異なりますが、相続登記の場合は次のようになります。
例えば、不動産評価額1,000万円の場合、登録免許税は4万円となります。
ただし、遺言により相続人以外が取得する場合は、税率が2%となります。
相続登記の登録免許税は、申請書に収入印紙を添付するか、金融機関・税務署で納めて領収書を発行してもらう方法で納税します。
また、金融機関によってはインターネットバンキングを利用した登録免許税の納税に対応しているところもあるので、利用してみても良いでしょう。
相続税
相続が発生すると、相続財産に対して相続税が課税されます。
相続税の対象となる財産には、次のようなものがあります。
- 現預金
- 有価証券
- 不動産
- 貴金属や骨とう品など
相続税は、プラスの財産から借金・未払い金などのマイナスの財産と葬祭費を差し引いた価額が対象です。
土地や家屋などの不動産も対象となり、不動産の場合は不動産鑑定士などの専門家が算出した評価額が相続税を計算する際に使用されます。
相続税の計算方法
相続税は、プラスからマイナスを引いた相続財産の価額から、さらに基礎控除を差し引いた部分に課税されます。
基礎控除は、次の通りです。
例えば、相続人が配偶者と子ども2人の場合4,800万円が基礎控除となります。
相続財産が基礎控除を超える場合、次のステップで相続税を算出します。
- 各人の相続税額の計算:法定相続の持ち分×相続税の税率
- 各人の相続税額を合算し実際の財産取得割合に応じて按分
まずは、相続人が法定相続分に応じた取得金額で相続したと仮定して相続税を計算します。
仮に、基礎控除を除いた相続財産が5,000万円で、相続人が配偶者と子ども2人なら、配偶者が2,500万円・子どもはそれぞれ1,250万円が法定相続分となります。
相続税の税率は、相続財産により異なるので以下の速算表で確認しましょう。
相続分に応じた取得金額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
1,000万円以下 | 10% | - |
1,000万円超3,000万円以下 | 15% | 50万円 |
3,000万円超5,000万円以下 | 20% | 200万円 |
5,000万円超1億円以下 | 30% | 700万円 |
1億円超2億円以下 | 40% | 1,700万円 |
2億円超3億円以下 | 45% | 2,700万円 |
3億円超6億円以下 | 50% | 4,200万円 |
6億円超 | 55% | 7,200万円 |
引用:国税庁:相続税の税率
配偶者2,500万円・子どもがそれぞれ1,250万円ずつ相続した場合の、相続税は次の通りです。
子ども:1,250万円×15%-50万円=137.5万円
相続税を算出したら、各人の相続税を合算して実際の相続割合に応じて按分します。
上記の例では、相続税合計が462.5万円です。
仮に、配偶者と子ども2人で平等に相続した場合(3分の1ずつ)、相続税はそれぞれ
約154万円となります。
ただし、実際には配偶者控除などの税額控除や加算を行って最終的な税額を計算します。
相続の計算については、必ず税理士に相談しましょう。
長谷工の仲介では相続税など税金に関する税務相談を受け付けておりますので、ご利用ください。
相続税対策で活用できる控除や特例
相続税対策として活用できる控除や特例を把握しておくことが大切です。
主な控除や特例には、下記のようなものがあります。
控除および特例の名称 | 概要 |
---|---|
配偶者控除 | 配偶者が相続した財産のうち「法定相続分」または「1億6,000万円」のどちらか多い金額までは相続税がかからない制度 |
小規模宅地等の控除 | 要件を満たす土地であれば評価額を最大80%軽減できる制度 |
贈与税額控除 | 相続開始前3年以内に贈与で取得した財産を相続財産に加算する場合、支払った贈与税額を相続税から控除する制度 |
相次相続控除 | 相続開始前10年以内に相続税が課されていた場合、次の相続の際に相続税から一定額を控除する制度 |
贈与税の基礎控除(生前贈与) | 暦年贈与の場合、年間110万円の基礎控除以内なら贈与税がかからない制度 |
相続税の計算や控除の適用は複雑になることも少なくありません。
また、生前贈与などの活用で相続税を抑えられるケースもあります。
相続財産が高額や適用できる控除が分からないといった場合は、税理士など専門家への相談をお勧めします。
マンションに関する記事ですが、相続の手続きや相続税の計算について知りたい方は、こちらの記事も参考にしてみてください。
マンション相続の手続きとは?流れや相続税の計算、利用できる控除を解説
家を相続したくない場合は「相続放棄」することもできる
相続する不動産が遠方にある、すでにマイホームを所有しているなどで、家を相続したくない場合の選択肢として「相続放棄」があります。
相続放棄とは、相続人としての権利や義務を一切引き継がずに放棄することです。
マイナスの財産を背負う義務がなくなる為、相続財産が借金というケースで利用されます。
家を相続したくない場合でも、相続放棄が有効でしょう。
ただし、相続放棄を選択する際には次の点には注意が必要です。
- 相続放棄は3ヵ月以内の手続きが必要
- 家以外の相続財産も放棄する必要がある
- 家の管理義務が残る場合がある
相続放棄は、相続開始を知った日から3ヵ月以内に家庭裁判所に申請する必要があります。
期限を超えると相続放棄できなくなるので、早めに判断し速やかに手続きするようにしましょう。
また、相続放棄では全ての相続財産を放棄する必要があります。
家は相続したくないけど現預金は相続したいということはできません。
借金がなく他に相続したい財産がある場合は、相続後に家を売却する手段を視野に入れるのも良いでしょう。
古い空き家を相続したくなくて相続放棄するケースでは、他に相続人がいなければ相続放棄しても空き家の管理義務は残る恐れがあります。
この場合は、家庭裁判所に相続財産清算人を申し立て、管理者を選任してもらう必要があるので注意しましょう。
家を相続する際の注意点やポイント
家を相続する際の注意点やポイントを解説します。
共同名義での相続は避ける
共同名義とは、1つの不動産に対して複数の所有者がいる状態のことです。
不動産は現金のようにきっちり分割できない為、相続時に相続人で名義を共有するケースも少なくありません。
しかし、共有名義で相続してしまうと、次のようなトラブルが発生する恐れがあります。
- 売却や活用が難しい(利用するには名義人全員の同意が必要)
- 固定資産税などの負担で揉める
- 次の相続が発生するとより複雑になる
共有名義の不動産を売却する場合、名義人全員の同意が必要になります。
また、共有名義の状態で次の相続が発生し、被相続人の持ち分が次の相続人で共有されるとさらに名義人が増えます。相続が複数回行われると、権利関係が複雑になることもある為注意しましょう。
遺産を平等に分割できるように工夫する
家の相続は分割しにくいことから、相続人が複数いる場合などでトラブルに発展するケースが少なくありません。
家以外の相続財産が豊富にあれば、家を含めて全体で平等に分割しやすいでしょう。
しかし、家以外の財産が少ない場合、平等に分割できるような工夫が必要です。
家を含めた遺産を平等に分割する方法には、次のような手段があります。
- 生命保険の活用
- 生前贈与
- 売却
家の相続の方法には、誰か一人が相続して他の相続人に代償金で清算する方法があります。
ただし、これは相続人に代償金を支払う財力が必要です。
そこで、事前に生命保険の受取人に相続人を指定し、代償金の財源にすることでスムーズな解決が期待できます。
また、他の相続人を生命保険の受取人にすることで、家を相続しなくても遺産の受取額を平等にできるでしょう。
生前贈与であれば、相続税対策になるだけでなく確実に受け渡したい方への家の譲渡も可能です。
家に住みたい方がいない場合などは、売却して現金化すれば相続人できっちり分割できるのでトラブルを避けやすくなります。
相続した家は放置しない
家を相続したけど誰も住まないケースもあるでしょう。
しかし、空き家を適切に管理せずに放置していると「特定空き家」に指定される恐れがあります。
特定空き家とは、倒壊の危険性や衛生上・防犯上有害など、放置することが適切でないと判断された場合に、空家対策特別措置法に基づき自治体が指定する空き家のことです。
特定空き家に指定されると改善の指導・勧告に従う必要があり、従わない場合は50万円以下の罰則が科せられます。
また、宅地の固定資産税軽減措置を適用できなくなり、固定資産税が6倍になるので注意も必要です。
空き家を放置することのリスクについては、こちらの記事で詳しく解説していますのでご覧ください。
空き家を放置すると税金が高くなる?固定資産税の税額や税金対策について紹介
相続後、家を売却するという選択も
相続した家には、固定資産税や修繕・管理費など保有しているだけで様々なコストがかかります。その為、誰も住まない・賃貸など活用の予定もない家の場合、早めに売却を検討すると良いでしょう。
ここでは、相続した家を売却するメリット・注意点を解説します。
売却するメリット
相続した家を売却するメリットとして、下記のようなことが挙げられます。
- 維持費がかからない
- 売却金を相続人で平等に分けられる
- 近隣住人とのトラブルを避けられる
売却してしまうことで、固定資産税や修繕費などのコストから解放されます。
売却によって得られた資金(売却金)を、相続人で平等に分割できれば円満な相続にもつながるでしょう。
また、相続した家を放置していると、倒壊などで近隣に迷惑をかけトラブルに発展する恐れもあるので管理しきれないなら売却してしまうほうが良いでしょう。
売却する際の注意点やポイント
売却する際の注意点やポイントとして、下記のようなことが挙げられます。
- 相続登記の手続きを済ませて単一名義にする必要がある
- 引き渡しまでに遺品整理を行う必要がある
- 売却手続きは不動産会社に相談する
売却できるのは、名義人だけです。
相続後は、速やかに相続登記し名義を自分にしたうえで売却を進めましょう。
名義が共有の場合、売却には他の名義人の同意も必要になるので注意が必要です。
売却後は、家の受渡までに家を片付ける必要があります。
しかし、一軒家の片付けは想像以上に大変です。
特に、遺品になると勝手に処分して他の相続人とトラブルになるケースもあります。
事前に、遺品整理について相続人間で話し合ったうえで、売買契約までに処分できるように進めておきましょう。
個人で整理が難しい場合は、遺品整理業者への依頼を検討するのも良いでしょう。
売却したいが相続した家が遠方にある、相続税の支払いに間に合わせたいなど、売却の目的や悩みは不動産会社への相談をお勧めします。
不動産会社に相続後の売却に必要なアドバイスをうけることで、スムーズな売却が目指せるでしょう。
まとめ
家を相続すると相続登記が必要になる為、相続発生から登記までの全体の流れの把握が重要です。
しかし、活用予定のない家を相続すると税金や修繕費などのコストがかかってきます。さらに放置することで特定空き家への指定などのリスクもあるので、管理・活用できないなら相続後に売却を検討すると良いでしょう。
長谷工の仲介では相続した家の売却をサポートしています。まずは「売却何でも相談」で売却を相談してみてはいかがでしょうか。
※本記事の内容は2023年12月26日現在のものであり、制度や法律については、今後改正・廃止となる場合がございます。