2023.12.26空き家を放置すると税金が高くなる?固定資産税の増額や対策について紹介

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空き家は放置されることで倒壊やゴミの不法投棄、放火による火災などを引き起こす恐れがあります。総務省の「平成 30 年住宅・土地統計調査」によれば、1998年からの20年間で空き家が約2倍に増加しており、周辺環境への影響が問題視されています。

住宅用地には固定資産税等に対する軽減措置が適用されるので、更地にせず空き家を残すことで税金の負担を安く抑えようとするケースも多く、空き家が増加する一因ともなっています。

この記事では、空き家を所有しているとかかる固定資産税と都市計画税についてわかりやすく解説します。また空き家を放置することで税金が高くなる理由と、その対処法も紹介しますのでぜひ参考にしてみてください。

空き家を所有しているとかかる税金

不動産を所有しているとかかる税金に、固定資産税と都市計画税があります。つまり人が住んでいない空き家であっても、その土地と建物は課税の対象となります。
まず固定資産税と都市計画税について解説し、それぞれ税額の求め方を紹介します。

固定資産税

固定資産税とは土地や建物に対して課税される地方税で、毎年1月1日に所有する方が納税義務者になります。所在する市町村から(東京都23区は都から)4月〜6月頃に納税通知書が届きますので、定められた期限内に分割もしくは一括で納めます。

区分 固定資産税
小規模住宅用地 住宅用地で住宅1戸につき200㎡までの部分 課税標準額×1/6×1.4%(税率)
一般住宅用地 小規模住宅用地以外の住宅用地 課税標準額×1/3×1.4%(税率)

固定資産税は「課税標準額×1.4%」と算出するのが基本ですが、小規模住宅用地は課税標準額が1/6、一般住宅用地は1/3に軽減されます。したがって住宅用地は、住戸1戸につき200㎡までは1/6、200㎡を超える部分は1/3に軽減されます。

課税標準額とは、総務大臣が定めた基準(固定資産評価基準)に基づいて市区町村の長が固定資産を評価して決定するもので、3年に一度評価が見直されます。

ちなみに税率については、市区町村が必要に応じて異なる税率を条例により定めることができる為異なることがあります。

住宅用地の特例措置が適用される場合の、固定資産税のシミュレーションは以下の通りです。

【条件】
課税標準額
土地(200㎡以下):2,000万円
建物:500万円
税率:1.4%

【計算】
土地:2,000万円×1/6×1.4%≒4.7万円
建物:500万円×1.4%=7万円
固定資産税:合計約11.7万円

都市計画税

国土は計画的に市街化すべき都市計画区域と、市街化を抑制すべき市街化調整区域に区分されており、都市計画区域においてどちらにも分類されていない地域を非線引き区域といいます。

都市計画税は、原則として市街化区域内にある土地や建物に対して課される地方税で、都市計画事業や土地区画整理事業の財源として課税されます。

都市計画税を課税するか否かは市区町村に委ねられている為、市街化区域内であっても課税されないこともあります。また、市街化調整区域内や非線引き区域内であっても、条例で定められている場合はその区域に課税されることもあります。

区分 都市計画税
小規模住宅用地 住宅用地で住宅1戸につき200㎡までの部分 課税標準額×1/3×税率
一般住宅用地 小規模住宅用地以外の住宅用地 課税標準額×2/3×税率

都市計画税は「課税標準額×税率」で計算されますが、この税率の上限は0.3%と定められており市区町村によって異なります。
住宅用地は、住戸1戸につき200㎡までは1/3、200㎡を超える部分は2/3に軽減されます。

住宅用地の特例措置が適用される場合の、都市計画税のシミュレーションは以下の通りです。

【条件】
課税標準額
土地(200㎡以下):2,000万円
建物:500万円
税率:0.3%

【計算】
土地:2,000万円×1/3×0.3%≒2万円
建物:500万円×0.3%=1.5万円
都市計画税:合計約3.5万円

「特定空き家」に認定されると固定資産税が6倍になる?

ここからは、「特定空き家」の概要や、認定されると固定資産税が6倍になる理由について解説していきます。

「特定空き家」の定義

住宅用地は特例措置の適用により、固定資産税と都市計画税は軽減されます。しかし空き家が増加傾向であることを懸念した政府は、2015年に「空家等対策の推進に関する特別措置法」を施行しました。

この法律により、自治体が空き家の所有者の許可なしに敷地への立ち入り調査が可能になり、また所有者が勧告や命令に応じない場合、過料を科すことや代執行により空き家を除却することができるようになりました。
また「特定空き家」に認定されることで、住宅用地の特例から適用除外されることになる為、翌年の固定資産税が6倍、都市計画税は3倍になる恐れがあります。

特定空き家とは、「空家等対策の推進に関する特別措置法」第2条第2項において以下のような状態であるものと定義されています。

  • そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態
  • そのまま放置すれば著しく衛生上有害となるおそれのある状態
  • 適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態
  • その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態

出典:e-Gov法令検索「空家等対策の推進に関する特別措置法」をもとに作成

特定空き家に認定されるまでの流れ

特定空き家に認定されるまでの、一般的な流れは以下の通りです。

  1. 近隣住民からの苦情などが役所などに入る
  2. 役所の担当課が状況を確認する
  3. 担当者から空き家の所有者へ連絡が入る
  4. 所有者に対し空き家の除却や修繕、庭木の伐採など助言・指導を行う
  5. 改善が見られない場合は改善するように勧告・命令される
  6. 特定空き家に認定される
  7. 固定資産税の住宅用地の特例が適用除外になる
  8. 行政により強制的に空き家の解体・除去 (行政代執行)が行われる

まず、近隣住民からの苦情などを受けて、行政が空き家の状況を確認します。周辺環境に悪影響が生じていると判断された場合、行政が所有者に対して改善するように助言や指導を行います。一定期間の猶予期間が与えられますが、それでも空き家の改善が見られない場合は、改善するように勧告がなされます。

勧告・命令しても改善されない場合は、最終的に行政により強制的に空き家を解体・除去されます。つまり行政代執行法に基づく改善措置となります。そして解体などにかかった費用は、所有者が負担することになります。また行政の命令に違反したとみなされた場合、50万円以下の過料を科せられることもあります。

なお、特定空き家に認定された場合は住宅用地の特例は適用除外になりますが、固定資産税や都市計画税の賦課期日は1月1日の為、実際に税金が高くなるのは翌年以降です。

特定空き家認定後の固定資産税と都市計画税

特定空き家に認定されて住宅用地の特例が適用除外された場合の固定資産税と都市計画税は、以下のように計算します。

区分 固定資産税 都市計画税
小規模住宅用地 住宅用地で住宅1戸につき200㎡までの部分 固定資産税評価額×1.4%(税率) 固定資産税評価額×税率
一般住宅用地 小規模住宅用地以外の住宅用地 固定資産税評価額×1.4%(税率) 固定資産税評価額×税率

実際にシミュレーションしてみましょう。

▼固定資産税
【条件】
課税標準額
土地(200㎡以下):2,000万円
建物:500万円
税率:1.4%

【計算】
土地:2,000万円×1.4%=28万円(住宅用地の特例措置がある場合は約4.7万円)
建物:500万円×1.4%=7万円
固定資産税:合計35万円
▼都市計画税
【条件】
課税標準額
土地(200㎡以下):2,000万円
建物:500万円
税率:0.3%

【計算】
土地:2,000万円×0.3%=6万円(住宅用地の特例措置がある場合は約2万円)
建物:500万円×0.3%=1.5万円
都市計画税:合計約7.5万円

固定資産税35万円と都市計画税7.5万円で、合計は42.5万円です。

特定空き家に認定される前は住宅用地の特例措置がある為、固定資産税は約11.7万円、都市計画税は約3.5万円、合計15.2万円です。特定空き家に認定されることで、税金がかなり高くなることがわかります。

「空家等対策の推進に関する特別措置法空き家法」改正について

空家等対策の推進に関する特別措置法は2015年に施行されましたが、その後も空き家は増加傾向が続いた為、2023年6月14日「空家等対策の推進に関する特別措置法の一部を改正する法律」が公布されました。
ここからは、改正の概要について解説していきます。

改正の概要

空家等対策の推進に関する特別措置法は、2023年6月に改正案が公布されました。
空き家の所有者に対しては「適切な管理の努力義務」から「国や自治体の施策に協力する努力義務」へと責務が強化され、今後特定空き家になる恐れがある空き家を「管理不全空き家」と定めることとしました。

空き家問題については、こちらの記事で詳しく解説していますのでご覧ください。

空き家問題の現状と解決策。所有する空き家はどうする?

管理不全空き家と特定空き家の違い

管理不全空き家とは、現状のまま放置すれば特定空き家になる恐れがある空き家です。
特定空き家は、前述の通り、倒壊の危険性や周辺環境へ衛生上有害であると認められる場合に認定されます。つまり現状で、周辺環境や住民に悪影響を及ぼしている状態が特定空き家です。

しかしこの改正により、窓ガラスが割れたまま放置されている状態や庭に雑草が生い茂っている状態など、今後悪影響が予見できる状態の空き家は管理不全空き家として認定されるようになりました。

管理不全空き家に認定されると、特定空き家でなくても市区町村長が空き家所有者に対して勧告・指導できるようになります。さらに、勧告を受けた管理不全空き家は、固定資産税の住宅用地特例の適用を解除されてしまいます。

管理不全空き家や特定空き家に認定されない為には?

所有する空き家を、管理不全空き家や特定空き家に認定されない為には、どのようにしたら良いのでしょうか。この章ではおもな対処法を3つ紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。

賃貸として貸し出す

一つ目は、賃貸物件として貸し出して物件を維持するという方法です。
賃貸として貸し出すメリットと注意点は以下の通りです。

メリット 注意点
  • 家賃収入が見込める
  • 入居者が住むことで換気や掃除をしてもらえる
  • 資産として残すことができる
  • 修理や改修費用、固定資産税などがかかる
  • 相続不動産売却時に適用できる特例を受けられない
  • 入居者が決まらない場合、空き家の状態が続く恐れがある
  • 家賃収入が年間20万円以上の場合は確定申告が必要になる

貸すことで賃貸収入を得ることができ、人が住むことで換気や掃除が行われる為、建物の劣化を遅らせることも可能です。しかし貸し出す場合はある程度修理や改修が必要になり、状態によっては改修費が高額になるかもしれません。

また相続不動産を賃貸することで、将来的に売却を検討する際に「被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例」が受けられなくなる為注意が必要です。

家賃収入が年間20万円を超える場合は確定申告が必要になりますので、忘れないようにしましょう。

参考:国税庁「No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」

空き家を売却する

2つ目は、空き家をそのまま売却して手放すという方法です。
売却するメリットと注意点は以下の通りです。

メリット 注意点
  • まとまった資金(売買代金)が手に入る
  • 空き家の維持費や管理コストがかからない
  • 固定資産税など税負担もなくなる
  • 売買価格や条件によっては税金がかかる
  • 売却に際して測量費や仲介手数料などの費用がかかる
  • 資産を手放すことになる

空き家を売却すると賃貸のように維持や管理する為のコストがかかりません。固定資産税などの負担もなくなり、売却によりまとまった資金を手に入れることができます。

ただし売却価格や条件によっては譲渡所得(売却益)が生じて税金がかかることがありますので、あらかじめ試算しておくことをお勧めします。

もし相続により取得した空き家であれば、「被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例」により、一定の要件を満たすことで譲渡所得から最高3,000万円まで控除することができます。つまり売却価格が3,000万円以下であれば、譲渡所得がかからない可能性があります。

この特例を受ける為には確定申告で申告する必要がありますので、忘れないように注意しましょう。

参考:国税庁「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」

長谷工の仲介では、売却に関する相談を無料で受け付けています。まずは「売却何でも相談」からお気軽にご相談ください。

売却何でも相談

更地にして売却する

3つ目は、空き家を解体して更地にしてから売却するという方法です。
更地にするメリットと注意点は以下の通りです。

メリット 注意点
  • 空き家が倒壊する心配がなくなる
  • 空き家がある状態よりも見栄えが良くなり、売れやすくなる可能性がある
  • 空き家を維持・管理する必要がなくなり、コストを軽減できる
  • 空き家を解体する為の費用がかかる
  • 資産を手放すことになる
  • 固定資産税や都市計画税が高くなる恐れがある

空き家を更地にすると解体費用がかかりますが、特定空き家などで倒壊の恐れがある場合は、倒壊リスクを解消することができます。また空き家の条件や状態によっては更地にしたほうが売却しやすい可能性があります。

一方で、更地にすることで住宅用地の特例が適用されなくなり、翌年の固定資産税と都市計画税の負担が増えます。ちなみに建物に対して課税されていた固定資産税と都市計画税は、賦課期日である1月1日以降は課税されません。

更地にしてから売却しても、「被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例」は適用になります。しかし売却前に更地を駐車場として貸してしまうと、この特例は受けられなくなりますので注意しましょう。

その為、空き家の状態で売却するか、更地にしてから売却するかの判断は、不動産会社に相談してから決めるようにしましょう。

万が一、認定された場合はどうすれば良い?

特定空き家や管理不全空き家に認定された場合でも、行政の助言や指導に従い空き家の改修や庭木の伐採などを行うことで、特定空き家などの認定は解除されます。また、ただちに固定資産税などが高くなるわけではありません。

都道府県や自治体によっては、特定空き家の解消を促進する為の支援制度や補助事業があります。リフォーム費用や解体費用について、補助を受けることができる可能性がありますので、空き家が所在する都道府県や自治体の担当窓口に相談、もしくはホームページなどで確認してみましょう。

空き家のリフォームや解体に関する補助金・助成金については、こちらの記事で詳しく解説していますのでご覧ください。

空き家問題の現状と解決策。所有する空き家はどうする?

まとめ

空き家を放置してしまうと、特定空き家や管理不全空き家に認定され、固定資産税や都市計画税が高くなる恐れがあるので注意が必要です。

また倒壊の危険性があるのにも関わらず空き家を放置し続けると、代執行により解体され、その費用が請求されたり、過料が科せられたりする恐れもあります。
なるべく空き家は放置せず、早めに賃貸や売却することを検討しましょう。

税金の計算や特例の要件について判断が難しい場合は、実績が豊富な不動産会社へ相談することをお勧めします。
賃貸にするか売買にするか判断が難しい場合なども、ぜひ長谷工の仲介へご相談ください。売却に関する相談も無料で受け付けています。

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※本記事の内容は2023年12月26日現在のものであり、制度や法律については、今後改正・廃止となる場合がございます。

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この記事の著者

桜木理恵
私鉄系不動産会社にて仲介営業を約8年、大手ハウスメーカーのグループ会社にてリフォーム営業を5年従事した経験を活かし、現在不動産Webライターとして活動。保有資格は宅地建物取引士・管理業務主任者・2級ファイナンシャルプランニング技能士

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