相続した実家や元マイホームなど、空き家の取り扱いについて困っている方も多いと思います。
空き家の増加は社会問題となっている為、空き家特別措置法により特定空き家と呼ばれる空き家に指定されると土地の固定資産税が上がる仕組みとなっています。
空き家特別措置法は2023年6月14日の改正により「管理不全空き家」という新しい制度が創設されたことで、今後はさらに土地の固定資産税が上がりやすくなりました。
この記事では、空き家問題の現状や解決策、国や地方自治体の補助金や支援制度について解説します。
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空き家問題の現状
最初に、空き家問題の現状について解説します。
空き家の数は増加傾向にある
出典:総務省統計局「平成 30 年住宅・土地統計調査」
※総務省統計局「平成 30 年住宅・土地統計調査」をもとに作成
日本国内の空き家は増加傾向にあります。
2018年時点における全国の空き家の数は、846万戸です。
1988年(昭和63年)から2018年(平成30年)までの30年間にかけて、2倍強も増加している状況です。
空き家には種類がある
空き家は4種類に分けられ、それぞれの概要は以下の通りです。
空き家の種類 | 概要 |
---|---|
賃貸用の住宅 | 新築・中古を問わず、賃貸の為に空き家になっている住宅 |
売却用の住宅 | 新築・中古を問わず、売却の為に空き家になっている住宅 |
二次的住宅 |
|
その他の住宅 | 賃貸用の住宅、売却用の住宅、二次的住宅以外の住宅
|
空き家の種類別に見る割合は、以下の通りです。
出典:総務省統計局「平成 30 年住宅・土地統計調査」
※総務省統計局「平成 30 年住宅・土地統計調査」をもとに作成
空き家で最も割合が高いのは、賃貸用の住宅です。
ただ、近年はその他の住宅の割合が増加傾向にあることが特徴となっています。
空き家が増加する主な原因
なぜ、空き家が増加しているのでしょうか?ここでは、空き家が増加する主な原因について解説します。
土地所有者の高齢化が進んでいる
空き家が増えている原因として、所有者の高齢化が進んでいることが挙げられます。
年金生活者の場合、解体やリフォームの費用負担が難しいことも多いです。
相続者の管理が行き届いていない
相続した方が空き家を積極的に管理していないことも、空き家が増えている原因になります。
倉庫代わりに利用している方も多く、売却や活用をする意思が少ないケースも見られます。
固定資産税・都市計画税が高くなる為、更地にできない
住宅の空き家を取り壊すと、住宅用地の軽減措置がなくなる為、更地にすることができない点も空き家が増える原因の一つです。
一般的には、建物のある土地よりも更地の固定資産税のほうが3~4倍程度高くなります。
区分 | 固定資産税 | 都市計画税 | |
---|---|---|---|
小規模住宅用地 | 住宅用地で住宅1戸につき200㎡までの部分 | 固定資産税評価額×1/6 | 固定資産税評価額×1/3 |
一般住宅用地 | 小規模住宅用地以外の住宅用地 | 固定資産税評価額×1/3 | 固定資産税評価額×2/3 |
更地 | 負担水準が70%超 | 固定資産税評価額×70% | 固定資産税評価額×70% |
空き家を放置するリスク
空き家を放置するリスクについて解説します。
不動産価値が低下する
メンテナンスを行わないことで、売るときの売却価格や貸すときの家賃が下がる恐れがあり、資産価値が低下します。
近隣住民に悪影響を及ぼしてしまう
空き家を放置することで、悪臭や害虫が発生するだけでなく、建物の倒壊の恐れもあります。また、犯罪グループが住み着く場合もあり、近隣の不動産価値まで下げてしまうケースも考えられます。
「特定空家など」に認定される恐れがある
前述した通り、空き家対策特別措置法は、2023年6月14日に改正されました。
従来は、周辺に害を及ぼす懸念があるといった一定の要件を満たす空き家は「特定空き家」に指定されるという制度でした。
特定空き家に指定され、行政からの助言や指導を無視し勧告を受けると住宅用地の軽減措置が適用されなくなり、土地の固定資産税が上がります。
ただし、従来の制度は特定空き家に指定されるまでのハードルが高く、実効性に乏しいという批判がありました。
そこで、改正では特定空き家に指定される前の段階で「管理不全空き家」に指定できるという制度が設けられています。
管理不全空き家とは、放置すると特定空き家になる恐れのある空き家のことです。
管理不全空き家に指定された場合、指導を無視して勧告に至ると住宅用地の軽減措置の適用がなくなります。
つまり、管理不全空き家という新しい指定制度ができたことで、空き家における土地の固定資産税は従来よりも上がりやすくなったといえます。
空き家問題の対策
空き家問題の対策について解説します。
売却する
まず、不動産会社を通じて空き家を売却する方法が考えられます。
次章で紹介する空き家バンクを利用して売却することもできますが、空き家バンクでの売却は買主様が認知していなければ、売却が難しいでしょう。
その為、不動産会社を通じて売却したほうが、スムーズに売却しやすいといえます。
長谷工の仲介では「売却何でも相談」を受け付けていますので、空き家の売却を検討している方はぜひご利用ください。
空き家を売却する流れについて知りたい方は、こちらの記事で詳しく解説していますのでご覧ください。
空き家を売却する方法は?かかる費用・税金や税制優遇について解説
一戸建て売却の基礎知識!売却までの流れや費用、成功させる為のポイントを紹介
資産運用に活用する
空き家の活用方法としては、更地にして賃貸物件を建築することが考えられます。
賃貸物件の選択肢としては、立地によってはアパートだけでなく福祉施設や商業施設も候補になり得ます。
賃貸物件は家賃収入が得られるというメリットがある一方で、初期費用と維持費用が発生するという点がデメリットです。
リフォームする
リフォームして貸し出すという活用方法もあります。
リフォームを行う場合には、リフォームの必要性や、リフォームしたら本当に貸すことができるかなどを事前に不動産会社に相談してから決めることが適切です。
管理を委託する
不動産会社やNPO法人などに、管理を委託することも考えられます。
ただし、管理の場合は数年後に住む予定があれば適切な選択と考えられますが、将来も利用予定がない場合にはコストがかかる為、売却よりは優先順位の低い選択肢となります。
解体する
空き家は、解体することも対策の一つです。
古い空き家は解体すれば売却や活用がしやすくなるというメリットがありますが、解体費用が高額でありハードルが高い点がデメリットとなります。
空き家対策で知っておきたい支援制度・補助制度
ここでは、空き家対策で知っておきたい支援制度・補助制度について解説します。
空き家バンク
空き家バンクとは、自治体が運営している空き家と利用者のマッチングサイトのことです。
必ずしも全自治体に備わっている制度ではありませんが、2015年に創設された空き家対策特別措置法をきっかけに、空き家バンクを設置する自治体が急速に増えてきました。
空き家バンクは、自治体によっては売却だけでなく、賃貸に出して借主を探す機能を備えているケースもあります。
空き家バンクを利用する際は、まずは空き家がある所在地の自治体に空き家バンクがあるかどうかを確認し、自治体に物件の掲載方法を確認するようにしましょう。
空き家バンクについて詳しく知りたい方は、国土交通省のページをご覧ください。
移住・住みかえ支援機構
ハウスメーカーや銀行などで構成される一般社団法人 移住・住みかえ支援機構(以下、JTI)では、マイホーム借り上げ制度を実施しています。
マイホーム借り上げ制度とは、原則として50歳以上の方が所有する住宅をJTIが借り上げてくれる制度のことです。ただし、耐震基準を満たしているなどの一定の要件を備えている必要があります。
建物所有者はJTIと賃貸借契約を締結し、JTIと入居者が転貸借契約を締結して貸し出すという形です。マイホーム借り上げ制度では、いったん、入居者が決まると、その後空室でも賃料収入が発生するというメリットがあります。(空室時の賃料は、借主がいるときの賃料に一定料率を乗じた金額となります。)
入居者から見た貸主はJTIであり、入居者トラブルはJTIが対処してくれる為、安心して空き家を貸すことができる制度です。
リフォームや解体に関する補助金・助成金
リフォームや解体に関する補助金・助成金は、各自治体が行っていることが多いです。
例えば「世田谷区 解体 補助金」などで検索すると、補助金を見つけることができます。
この章では、いくつかの自治体の補助金を紹介します。
補助金・助成金制度 | 給付・助成される金額 |
---|---|
世田谷区エコ住宅補助金 | 外壁などの断熱改修や太陽光発電システムの設置、高断熱浴槽の設置などの一定のリフォーム工事に対する補助金です。補助率は工事経費の10~20%ですが、補助上限額は20~40万円(実施内容により異なる)となります。高断熱浴槽などの一部の設置工事に関しては定額の補助となっています。 |
練馬区住宅の耐震改修工事等の助成 | 1981年(昭和56年)5月以前に建築された旧耐震の住宅などの一定の要件を満たす家の解体を補助する制度です。練馬区内の防災まちづくり事業実施地区内の物件であることも要件となります。解体費用の補助金は、補助率が3分の2、補助上限額が130万円です。 |
横浜市住宅除却補助制度 | 1981年(昭和56年)5月以前に建築された旧耐震の住宅などの一定の要件を満たす家の解体を補助する制度です。補助金額は以下の費用のなかで最も低い金額が補助されます。
補助金額 ➀20万円(課税世帯)・40万円(非課税世帯) ➁延べ面積(㎡)×13,500円/㎡に1/3を乗じた額 ➂解体費用に1/3を乗じた額 |
出典:世田谷区「令和5年度 世田谷区エコ住宅補助金について」
各種税制特例
各種税制特例について解説します。
空き家の発生を抑制する為の特例措置(空き家の譲渡所得の3,000万円特別控除)
一定の要件を満たす空き家は、売却する際、譲渡所得から3,000万円を控除して節税ができる特例があります。
譲渡所得とは、売却時に生じる売却益のことです。
詳しくは以下のサイトをご覧ください。
国土交通省「空き家の発生を抑制するための特例措置(空き家の譲渡所得の3,000万円特別控除)」
居住用財産の譲渡に関する特例措置
マイホームの売却においても、自分が住まなくなった日から3年後の12月31日までに売却した空き家は3000万円特別控除を利用することができます。
3000万円特別控除については、こちらの記事で詳しく解説していますのでご覧ください。
低未利用地の適切な利用・管理を促進する為の特例措置
低未利用土地などであることなどの一定の要件を満たす不動産を売却した場合、譲渡所得から100万円を控除できる特例があります。
対象は土地だけでなく、土地上の建物も対象です。
売却価格は原則として500万円以内または800万円以下※の物件が対象であり、低廉な価格で売却される物件で利用できる特例となります。
※令和5年度税制改正により、令和5年1月1日~令和7年12月31日までの間に、市街化区域や用途地域設定区域内等における低未利用土地等について譲渡された場合は、上限が800万円となる。
詳しくは以下のサイトをご覧ください。
まとめ
ここまで、空き家の問題について解説してきました。
全国の空き家は増加傾向にあり、放置しておくと空き家特別措置法により土地の固定資産税が上がってしまう懸念があります。
空き家の対策としては、売却する、活用するなどの手段がありますが、将来活用する予定がない場合は売却することをお勧めします。
長谷工の仲介では、空き家の売却に関してもサポートしています。
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※本記事の内容は2023年11月20日現在のものであり、制度や法律については、今後改正・廃止となる場合がございます。