2024.02.26相続した不動産の売却にかかる税金は?税金の種類から税金負担を減らす方法まで徹底解説

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相続した不動産を売却すると税金がかかる為、どのような税金がいくらかかるのかを把握しておくことは重要です。
売却時にかかる税金の負担を抑える制度も用意されていますが、どのような制度があるのか分からない方も多いのではないでしょうか。

この記事では、相続した不動産売却にかかる税金や税負担を抑える方法について解説します。

不動産を相続してから売却するまでの流れ

相続した不動産を売却する際には、まず相続発生から売却までの大まかな流れを把握しスケジュールを立てることが大切です。
相続発生から売却までの流れは、以下の通りです。

  1. 遺言書の有無確認
  2. 遺産・相続人の確定
  3. 相続放棄の判断
  4. 遺産分割協議
  5. 相続登記
  6. 売却

相続が発生したら、まずは遺言書の有無を確認しましょう。
遺言書がある場合は、原則その内容に応じて相続が行われます。

また、同時に遺産内容と相続人を明確にすることも必要となります。
なお、遺産が借金しかないような場合は相続放棄(全財産を相続しないこと)という選択肢がありますが、相続放棄は相続があることを知った日から3ヵ月以内に手続きが必要になります。

一方で、遺言書がない・遺言書に記載のない遺産がある場合は、相続人全員による遺産分割協議を行い遺産の分割方法を決めていきます。
遺産分割協議の内容は、その後の手続きで必要になる為、遺産分割協議書という書類に作成しておくようにしましょう。

不動産を相続することが決まれば、不動産登記を行います。
不動産登記とは、不動産の所有者の名義を被相続人から相続人に変更する登記手続きのことです。
相続登記が終了すれば、通常の不動産同様に相続人は売却に進めます。

ただし、不動産売却で得た資金で相続税を納税しようと考えている場合は、相続税の納付期限が相続開始から10ヵ月以内という点に注意が必要です。
この期間内に売却できるように、早めに段取りを立てるようにしましょう。

不動産を相続してから売却するまでの流れについては、こちらの記事で詳しく解説していますのでご覧ください。

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相続した不動産を売却する際にかかる税金

相続した不動産を売却する際にかかる主な税金は、以下の通りです。

  • 住民税や所得税
  • 印紙税
  • 登録免許税
  • 消費税

住民税や所得税

不動産売却で得た利益は譲渡所得と呼ばれ、住民税・所得税の対象です。
譲渡所得は下記の方法で計算できます。

課税譲渡所得 = 譲渡収入金額 -(取得費 + 譲渡費用)ー 特別控除額

譲渡収入額である売却額から取得費・譲渡所得を差し引き、さらに特別控除を差し引いた額に対して税金がかかります。
取得費は、物件購入額だけでなく仲介手数料などの諸費用を含むことができます。

ただし、相続した不動産を売却する際の取得費は「被相続人が取得した際の金額」となる為、被相続人が購入したときの売買契約書や領収書などが必要です。
相続した家のように購入がかなり昔で書類がないという場合は、概算取得費として売却額×5%を計上します。
また、取得費からは減価償却費を差し引く必要がある点にも注意しましょう。
譲渡費用とは、物件の売却にかかった費用です。
仲介手数料や解体費などが含まれます。

売却額から取得費・譲渡費用・特別控除を差し引いた額がプラスになる場合、その額に対して住民税・所得税が課せられます。
譲渡所得に対して課せられる住民税・所得税は、まとめて譲渡所得税とも呼ばれます。
譲渡所得税は、課税譲渡所得に税率を乗じることで算出可能です。
税率は、物件の所有期間に応じて次のように異なります。

所有期間 所得税・復興特別所得税 住民税 合計税率
短期譲渡所得 5年以下 30.63% 9% 39.63%
長期譲渡所得 5年超 15.315% 5% 20.315%

所有期間5年を境に、短期譲渡所得と長期譲渡所得に分けられ、税率も大きく異なるので注意しましょう。
なお、相続の場合、所有期間は前の所有者の所有期間を引き継ぎます。
例えば、親の所有期間30年・相続人である子の所有期間が1年の場合、所有期間は31年となり長期譲渡所得の税率が適用されるのです。

長期譲渡所得や減価償却ついては、こちらの記事で詳しく解説していますのでご覧ください。

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印紙税

印紙税とは、課税対象の文章を作成した際に課せられる税金です。
不動産売却の場合、売買契約書が印紙税の対象となります。
印紙税は、税額分の収入印紙を作成した書類に貼付・消印することで納税できます。
税額は、書類に記載されている金額(売買代金)に応じて異なり、下記の通りです。

売買契約書に記載する売買代金 本則 軽減税率
1万円未満 非課税 非課税
1万円以上10万円以下 200円 対象外
10万円超50万円以下 400円 200円
50万円超100万円以下 1,000円 500円
100万円超500万円以下 2,000円 1,000円
500万円超1,000万円以下 10,000円 5,000円
1,000万円超5,000万円以下 20,000円 10,000円
5,000万円超1億円以下 60,000円 30,000円
1億円超5億円以下 100,000円 60,000円
5億円超10億円以下 200,000円 160,000円
10億円超50億円以下 400,000円 320,000円
50億円超 600,000円 480,000円
契約金額の記載のないもの 200円 対象外

なお、印紙税は2014年4月1日から2024年3月31日までは軽減税率が適用されます。

印紙税は納付しなければ、本来の税額の3倍にあたる税額、過怠税を徴収されることになりますので添付・消印忘れがないように気を付けましょう。

参考:国税庁「不動産売買契約書の印紙税の軽減措置」

参考:国税庁「No.7131 印紙税を納めなかったとき」

登録免許税

登録免許税とは、登記の作成・変更にかかる税金です。
不動産の所有者が変わるなど登記内容に変更が出る際、法務局への申請時に納税します。
不動産売却では、抵当権を抹消する登記である抵当権抹消登記が必要になるケースがあります。

  • 住宅ローンが完済していない住宅を売却する
  • 被相続人が不動産を担保に借入している
  • 被相続人が住宅ローン完済後に抵当権抹消登記をしていない

上記のようなケースで抵当権が設定されている場合、そのままでは不動産の売却はできません。

住宅ローンを完済するなどして抵当権の抹消が必要ですが、この際にかかる費用が抵当権抹消登記の登録免許税です。
抵当権抹消の場合、登録免許税は不動産個数×1,000円が必要となっています。
一般的には、土地と建物合わせて2,000円となるでしょう。

抵当権抹消登記は、自分で手続きできますが司法書士へ依頼も可能です。司法書士に依頼する場合は、別途司法書士報酬が発生する点には注意しましょう。

なお、売却後に所有者を買主様に変更する名義変更の登記は、基本的に買主様が行うので売主様に費用の負担はありません。

抵当権抹消登記や登録免許税について、詳しくはこちらの記事で解説しているのでご覧ください。

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消費税

個人がマイホームなどを売却する場合は、売却額に対して消費税がかかることはありません。
しかし、事業用不動産の売却や課税事業者が売却する場合は、消費税の対象となるので注意しましょう。

売却額に対して消費税はかかりませんが、以下のような費用に対しては消費税が発生します。

  • 不動産会社への仲介手数料
  • 司法書士報酬
  • 住宅ローン返済の手数料
  • 解体業者やハウスクリーニング業者などへの費用

不動産を売却する際にかかる消費税については、こちらの記事で詳しく解説していますのでご覧ください。

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売却時にかかる可能性があるその他の費用

不動産の売却には、税金以外にも費用がかかります。
税金・その他費用の支出は、売却額の5~10%程が目安です。
どのような費用が発生するのかを把握したうえで、売却計画を立てるようにしましょう。

売却時にかかる可能性がある費用は、下記の通りです。

費用項目 概要説明
仲介手数料 不動産会社への手数料
売価額が400万越えの場合:売却額×3%+6万円+消費税
司法書士費用 抵当権抹消登記を依頼する場合に必要
目安額:1~3.5万円程度
住宅ローンの一括返済手数料 完済にかかる金融機関の手数料
目安額:3.3~5.5万円程度
引っ越し費用 ファミリーの場合、8~40万円程度
単身者の場合、5~15万円程度

例えば、3人家族で500km未満の引っ越しを行った場合、通常期なら20万円、繁忙期(2~4月)なら30~40万円程度
ハウスクリーニング費用 ハウスクリーニングを行う場合の費用
目安額:10~50万円程度(箇所や程度により異なる)
解体費用 不動産を解体して売却する場合の費用
目安額:100~300万円程度
測量費用 測量が必要な場合の費用
目安額:50~80万円程度

不動産の売却にかかる費用については、こちらの記事で詳しく解説していますのでご覧ください。

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税金負担を抑える方法は?

不動産売却での税金負担を抑える方法として、次の3つが挙げられます。

  • 税金の特例控除を受ける
  • 費用に計上できるものを確認する
  • ふるさと納税を行って控除を受ける

ここでは、それぞれ詳しく説明していきます。

税金の特例控除を受ける

売却利益にかかる所得税・住民税の負担を抑える方法として、譲渡所得の特例控除を適用する方法があります。
特例控除額を譲渡所得から差し引くことで、課税対象額を抑えられ税負担の軽減ができます。

以下では、不動産売却で適用できる主な特例を紹介します。

居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例

マイホームを売却する場合に、譲渡所得から最大3,000万円を控除できる特例です。
例えば、譲渡所得が4,000万円の場合、この特例の適用で4,000万円-3,000万円=1,000万円が課税対象額となります。
譲渡所得が3,000万円以下であれば、適用により税金を0円にできるので大きな税負担の軽減につながるでしょう。

主な適用条件は、下記の通りです。

  • 自分が住んでいる家屋・その敷地の売却である
  • 住んでいない場合は、住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までの売却である
  • 売った年と売った年の前年および前々年でこの特例や他の特例を適用していない
  • 売主と買主が親子や夫婦など特別な関係でない

出典:No.3302 マイホームを売ったときの特例

3000万円特別控除については、こちらの記事で解説していますのでご覧ください。

3000万円特別控除とは?適用条件や計算方法について解説

相続した空き家を譲渡した場合の3,000万円特別控除

相続した空き家を売却する場合、条件を満たすことで譲渡所得から3,000万円を控除できる特例です。
主な適用条件は、下記の通りです。

  • 相続または遺贈により取得した家屋または敷地の売却である
  • 平成28年4月1日から令和9年12月31日までの売却である
  • 売却する家屋が昭和56年5月31日以前の建設である
  • 耐震リフォームを施した家屋か解体して更地にした状態での売却である
  • 売主と買主が親子や夫婦など特別な関係でない

出典:国税庁「No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」

適用の条件が厳しいですが、適用できれば大きく税負担を減らせられます。
相続した不動産を活用せずに売却する場合は、一度適用条件を確認すると良いでしょう。

軽減税率の特例

所有期間が10年を超えるマイホームを売却した場合、一定額までの譲渡所得税の税率を軽減できる特例です。
この特例を適用することで、税率が以下のように軽減されます。

譲渡所得額 所得税・復興特別所得税 住民税 合計税率
6,000万円以下の部分 10.21% 4% 14.21%
6,000万円超の部分 15.315% 5% 20.315%

譲渡所得額が6,000万円以下の部分の税率を軽減できるので、税負担を抑えることが可能です。

主な適用条件は、下記の通りです。

  • 自分が住んでいる家屋・その敷地の売却である
  • 敷地・家屋の所有期間が10年を超えている
  • 住んでいない場合は、住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までの売却である
  • 売った年と売った年の前年および前々年でこの特例や他の特例を適用していない
  • 売主と買主が親子や夫婦など特別な関係でない

出典:国税庁「No.3305 マイホームを売ったときの軽減税率の特例」
出典:国税庁「土地や建物を売ったとき」

なお、所有期間10年超軽減税率の特例は、居住用財産の3,000万円特別控除との併用が可能です。

1,000万円特別控除

平成21年および平成22年に取得した土地の売却の場合、最大1,000万円を控除できます。

主な適用条件は、下記の通りです。

  • 平成21年1月1日から平成22年12月31日までの間に土地などを取得している
  • 平成21年に取得した土地は平成27年以降、平成22年に取得した土地は平成28年以降の売却である
  • 他の譲渡所得の特例を適用していない
  • 相続や遺贈・贈与により取得した土地でない
  • 売主と買主が親子や夫婦など特別な関係でない

出典:国税庁「No.3225 平成21年及び平成22年に取得した土地等を譲渡したときの1,000万円の特別控除」

100万円特別控除

一定の条件を満たす土地を500万円以下で売却した場合、譲渡所得から100万円を控除できます。

主な適用条件は、下記の通りです。

  • 都市計画区域内にある低未利用土地などを売却している
  • 売った年の1月1日時点で所有期間が5年を超えている
  • 他の譲渡所得の特例を適用していない
  • 売却額が500万円以下である(市街化区域など一部の区域は800万円以下)
  • 売主と買主が親子や夫婦など特別な関係でない

出典:国税庁「No.3226 低未利用土地等を譲渡した場合の長期譲渡所得の特別控除」

この特例では、令和2年7月1日から令和7年12月31日までの売却が対象となる点には注意しましょう。

相続財産譲渡時の取得費加算特例

相続で取得した不動産を売却する場合、支払った相続税の一部を取得費として加算できます。

主な適用条件は、下記の通りです。

  • 相続や遺贈で財産を取得した
  • 取得した方が相続税を支払っている
  • 相続のあった日の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までの売却である

出典:国税庁「No.3267 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」

特定居住用財産の買い換え特例

マイホームを売却して新たなマイホームを購入する住み替えの場合、売却したマイホームの譲渡所得にかかる税金を将来に繰り延べることができます。
例えば、マイホームの売却で3,000万円の譲渡所得がある場合、特例の適用でその年には譲渡所得に対して税金はかかりません。
ただし、将来、住み替えで購入したマイホームを売却する際、繰り延べした3,000万円を譲渡所得に加えて課税されます。

主な適用条件は、下記の通りです。

  • 自分が住んでいる家屋・敷地の売却
  • 居住期間と家屋・敷地の所有期間が10年を超えていること
  • 買い換える建物の床面積が50㎡以上
  • 住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までの売却
  • 売却額が1億円以下である
  • 売った年と売った年の前年および前々年でこの特例や他の特例を適用していない
  • 売主と買主が親子や夫婦など特別な関係でない

出典:国税庁「No.3355 特定のマイホームを買い換えたときの特例」

この特例を適用するには、新たに購入するマイホームにも床面積などの条件がある点には注意しましょう。
また、この特例は税金の免除ではなく繰り延べの為、将来売却した場合の税負担が大きくなる可能性があります。

反対に、将来マイホームを売却しない場合は、税負担を大きく軽減できます。
将来の売却計画まで含めて特例の適用を検討するようにしましょう。

買い替え特例について、詳しくはこちらの記事で解説しているのでご覧ください。

買い替え特例とは?適用要件や計算方法、注意点について解説

費用に計上できるものを確認する

譲渡所得を計算する際に、取得費と譲渡費用をしっかり計上することで譲渡所得を抑えられ税負担の軽減につながります。
取得費・譲渡費用として計上できるものには、下記のようなものがあります。

取得費 譲渡費用
  • 売った不動産の購入代金・建築代金
  • 購入手数料
  • 設備費
  • 改良費
  • 登録免許税
  • 不動産取得税
  • 印紙税
  • 立退料
  • 造成費用
  • 測量費
  • 所有権確保の為の訴訟費用
  • 仲介手数料
  • 印紙税
  • 立退料
  • 取り壊し費用や取り壊し時の損失額
  • 名義書換料
  • 有利な条件で売却する為の解約にともなう違約金

相続した不動産の場合、相続税を支払っていれば相続税の一部を取得費に加算できます。

これらの費用を証明するには、領収書などが必要となるので大切に保管しておくようにしましょう。

参考:国税庁「No.3252 取得費となるもの」

参考:国税庁「No.3255 譲渡費用となるもの」

参考:国税庁「No.3267 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」

ふるさと納税を行って控除を受ける

ふるさと納税で自治体に寄付を行うことで、寄附額のうち2,000円を超える部分が所得税・住民税から控除(寄付金控除)されます。

売却で所得税・住民税の支払いがある年に合わせてふるさと納税を行うことで、税負担の軽減が可能です。
また、ふるさと納税では多くの自治体が寄付に対して返礼品を用意しているので、返礼品で寄付先を選ぶ楽しみもあります。

ただし、ふるさと納税で控除できる額は寄付者が住んでいる地域や年収、家族構成などにより異なります。
控除上限を超えて寄付しても控除されない為、注意しましょう。
事前に、シミュレーションサイトなどを利用して控除上限額を確認したうえで利用額を決めることが大切です。

参考:国税庁「ふるさと納税(寄附金控除)」

【ケース別】不動産売却時の税金シミュレーション

ここでは、相続した不動産を売却した場合の税金シミュレーションを解説します。
相続後も住むことなく、以下の条件で売却できたことを想定して、相続税が発生していない場合・発生している場合に分けてシミュレーションしています。

【売却の条件】
  • 売却額:4,000万円
  • 取得費:不明
  • 譲渡費用:500万円
  • 所有期間:30年(被相続人からの通算)

相続税が発生してない場合

まずは、相続税が発生してない場合での税金を計算していきましょう。
取得費が不明な為、概算取得費として4,000万円×5%=200万円を計上します。
譲渡収入金額から取得費と譲渡費用を差し引いて譲渡所得を求めると以下のようになります。

譲渡所得:4,000万円-(200万円+500万円)=3,300万円

今回の場合、長期譲渡所得税の税率が課税されるので、税額は以下の通りです。

3,300万円×20.315%=約670万円

なお、空き家の3,000万円特別控除を適用できる場合、税額は次のようになります。

課税譲渡所得額=3,300万円-3,000万円=300万円
税額=300万円×20.315%=約61万円

相続税が発生している場合

次に、事前に相続税を納税している場合で見ていきましょう。
取得時加算では、支払った相続税のうち売却した不動産にかかる部分を取得費に加算できます。
今回は、1,000万円の相続税を支払い、そのうち500万円を取得時加算できる想定でシミュレーションします。
課税譲渡所得額と税額は以下の通りです。

課税譲渡所得額=4,000万円-(200万円+500万円+500万円)=2,800万円
税額=2,800万円×20.315%=約568万円

なお、相続税の取得時加算を適用すると、空き家の3,000万円特別控除は適用できません。
どちらを適用したほうが税額を抑えられるかはシミュレーションをしたうえで検討するようにしましょう。

かかる税金は、人それぞれですので必ず税理士に相談することをお勧めします。
長谷工の仲介では、税金に関する無料相談を受け付けていますので、ぜひご利用ください。

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相続した不動産を売却する際の注意点

ここでは、相続した不動産を売却する際の注意点を解説します。

売却する為には相続人全員の合意が必要になる

遺言書がない相続の場合、誰が不動産を相続するかを遺産分割協議で決めることになります。
遺産分割協議では相続人全員の合意が必要となり、誰か一人でも合意しない・参加していない状態では協議内容は決定できません。

さらに、協議後に新たに相続人が判明した場合、遺産分割協議をやり直す必要がある為、事前に相続人を漏れなく把握することが大切です。
また、遺産分割協議の内容をまとめた遺産分割協議書には、相続人全員の署名・捺印も必要です。

相続人全員の合意が得られず遺産分割協議が進まない場合は、家庭裁判所の調停や審判で相続内容を決めていく必要があります。

作成した遺産分割協議書は、相続人が不動産の名義を変更する相続登記で必要な書類です。相続登記していない不動産は、相続人であっても売却できない為、登記完了まで大切に保存しましょう。

共有名義の不動産売却については、こちらの記事で解説しているのでご覧ください。

共有名義とは?不動産における意味やメリット・注意点、解消方法を解説

共有名義のマンションを売却する方法は?売却までの流れや注意点を解説

特例によっては併用できないものもある

譲渡所得の控除の特例は、特例によって併用できるもの・できないものが異なります。
併用できない場合は、どの特例を活用したほうがより税負担を抑えられるかをシミュレーションすることが大切です。

特例の併用について、下記の一覧で確認しましょう。

併用可否 居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例 相続した空き家を譲渡した場合の3,000万円特別控除 軽減税率の特例 1,000万円特別控除 100万円特別控除 相続財産譲渡時の取得費加算特例 特定居住用財産の買い換え特例
居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例
同年内に併用する場合は、2つあわせて上限3,000万円
× × ×
相続した空き家を譲渡した場合の3,000万円特別控除
同年内に併用する場合は、2つあわせて上限3,000万円
× × × × ×
軽減税率の特例 × × × × ×
1,000万円特別控除 × × × × × ×
100万円特別控除 × × × × × ×
相続財産譲渡時の取得費加算特例 × × × ×
特定居住用財産の買い換え特例 × × × × ×

確定申告が必要な場合は忘れずに行う

不動産を売却し利益が出た場合、確定申告して納税する必要があります。
確定申告期間は、売却した年の翌年2月16日から3月15日となり、この期間に管轄の税務署に申告しなければなりません。

また、控除の特例を利用する場合も確定申告が必要です。
特例を利用して税金が発生しない場合でも、確定申告が必要なので注意しましょう。

確定申告の手順や必要書類について、詳しくはこちらの記事で解説しているのでご覧ください。

マンションを売却したら確定申告が必要?流れや手順、必要書類について徹底解説

マンション売却の確定申告書の書き方は?手続きの流れも併せて解説

売却金の分配が贈与とみなされる場合がある

相続した不動産を売却し、売却金を相続人で分割する場合、分配が贈与と見なされ贈与税が課せられる恐れがあるので注意しましょう。
不動産は公平に分けられないので、売却して得た資金を均等に分けるケースは少なくありません。

この際、売却手続きを誰か一人で進めてもらう為、相続登記を相続人のうち一人のみで行うケースがあります。
相続人のうち一人が相続登記した場合、その不動産は相続登記した方のものです。

たとえ相続人全員の合意で誰か一人が相続登記した場合でも、売却金の分配が相続人から他の相続人への贈与と見なされる恐れがあります。
贈与と見なされ、贈与税の基礎控除を超えていれば超えた分に贈与税が発生します。
贈与を見なされない為には、あらかじめ遺産分割協議書に分配する旨を記載しておく必要があります。

分配が贈与にあたるかどうかの判断が難しい・遺産分割協議書の作成の仕方が分からないという場合は、専門家に相談するようにしましょう。

まとめ

相続した不動産を売却すると、税金や費用がかかる為、どのような費用があるのかを把握して売却計画を立てることが重要です。

税金は控除を適用して税金負担を抑えることもできるので、併せて適用できそうな控除についても理解しておくようにしましょう。
相続した不動産を売却するなら、まずは長谷工の売却相談で査定からスタートしてみてはいかがでしょうか。

※本記事の内容は2024年2月26日現在のものであり、制度や法律については、今後改正・廃止となる場合がございます。

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この記事の著者

逆瀬川 勇造(合同会社7pockets 代表社員)
明治学院大学卒。銀行、不動産会社勤務を経て独立。宅地建物取引士、FP2級技能士(AFP)、住宅ローンアドバイザー。

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