2026.08.20相続した不動産を3年以内に売却すると税金はどうなる?計算方法から節税できる特例・注意点を解説

相続した不動産を3年以内に売却すると税金はどうなる?計算方法から節税できる特例・注意点を解説画像
この記事で分かることを1分で解説
  • 2024年4月から相続登記が義務化され、不動産の相続(取得)を知った日から3年以内に登記しないと過料の対象となる恐れがある
  • 相続した不動産の売却では、相続税や譲渡所得税、印紙税、登録免許税などがかかる
  • 相続した空き家の3,000万円特別控除や取得費加算の特例によって税負担を抑えられる
  • 特例には適用期限や併用の制限がある為、確認しておくことが重要
  • 相続した不動産を放置すると資産価値が下がり、固定資産税が最大6倍になる恐れがある

親から実家や土地を相続した場合、売却にどれだけ税金がかかり、手元にいくら残るのか、不安を感じる方も多いのではないでしょうか。2024年4月からは相続登記が義務化され、不動産の相続(取得)を知った日から3年以内に正当な理由なく登記をしない場合、10万円以下の過料の対象になる恐れがある為、売却の進め方にも注意が必要です。

この記事では、売却にかかる税金の種類やシミュレーション、使える特例や売却時の注意点を解説します。

不動産を相続して3年以内に売却する流れ

まずは、相続登記の義務化による影響と売却までの全体の流れを、相続した不動産を3年以内に売る場合を前提に確認していきましょう。

相続登記の義務化が売却スケジュールに与える影響

2024年4月1日から相続登記が義務化され、不動産の相続(取得)を知った日から3年以内に登記申請することが求められるようになりました。正当な理由なくこの期限を過ぎると10万円以下の過料の対象となる恐れがあります。

相続した不動産は、相続登記を終えていないと買主様へ引き渡しができないことになっています。また、不動産会社には「名義を変えないまま売り出したが買主様が決まらない」「相続登記が決済の直前になってしまい引き渡しができなかった」などの相談が寄せられるようになりました。

相続した不動産の相続登記は義務化された為、早めに登記を済ませておくことをお勧めします。

売却の流れ

相続した不動産は次の手順に沿って売却を進めていきます。その途中には法律で定められた期限がある為、逆算して動くと安心です。

  1. 遺言書の有無を確認する
  2. 遺産と相続人を確定する
  3. 相続放棄をするか判断する(相続を知った日から3カ月以内)
  4. 遺産分割協議で遺産の分割方法を決める
  5. 相続登記で名義を変更する(取得を知った日から3年以内)
  6. 不動産を売却する

相続税がかかる場合は、相続を知った日の翌日から10カ月以内に申告と納税までを済ませなければなりません。売却して利益が出た場合、翌年の2月16日~3月15日の間に確定申告が必要になるケースもあります。期限を守らなければ過料や追徴課税などのペナルティを受ける恐れがある為、早めに準備を始めましょう。

マイホームの売却の流れや相続時の手続きについては、こちらの記事で詳しく解説していますのでご覧ください。

家の相続手続きの流れは?費用や相続登記、注意点について解説

マンション相続の手続きと期限は?相続税の計算、利用できる控除を解説

相続した不動産の売却を検討している方は、長谷工の仲介の無料査定からご相談ください。

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不動産を相続して売却するまでにかかる税金

相続した不動産を売却する際にかかる主な税金は以下の表の通りです。

フェーズ かかる税金
不動産を相続したとき
  • 相続税
  • 登録免許税
  • 消費税
不動産を所有している間
  • 固定資産税
  • 都市計画税
相続した不動産を売却するとき
  • 住民税
  • 所得税
  • 復興特別所得税
  • 印紙税
  • 消費税

それぞれの税金を詳しく見ていきましょう。

なお、固定資産税や都市計画税については、こちらの記事で詳しく解説していますのでご覧ください。

固定資産税の計算は自分でもできる?計算方法や減税措置、シミュレーション例をご紹介

相続税

相続税は、相続した財産の価額に対してかかる税金です。遺産の総額から基礎控除額を差し引いた残りの額に対して課税されますが、遺産額が基礎控除額を超えなければ相続税はかかりません。

土地と建物の評価額について

相続した土地は、路線価方式か倍率方式のどちらかで評価額を算出します。

算出方法 概要説明
路線価方式 国税庁が定める道路に面した土地1平方メートルあたりの価格(路線価)に面積をかけて求める方法
倍率方式 路線価が定められていない地域では、固定資産税評価額に一定の倍率をかけて求める方法

一方、建物の評価額は固定資産税評価額と同じ金額になります。固定資産税評価額は、毎年4~6月頃に届く固定資産税の納税通知書で確認できるので、気になる方はチェックしてみましょう。

固定資産税評価額の詳しい調べ方や計算方法については、こちらの記事で詳しく解説していますのでご覧ください。

固定資産税評価額とは?調べ方や税金との関連性、計算方法について紹介

課税遺産総額と基礎控除額について

相続税がかかるかどうかは、基礎控除額を計算して判断します。基礎控除額は、3,000万円+(600万円×法定相続人の数)で算出します。

例えば法定相続人が3人なら、3,000万円+(600万円×3人)=4,800万円が基礎控除額です。遺産の総額がこの金額以下なら相続税はかかりません。

課税遺産総額とは、遺産の総額から基礎控除額を差し引いた残りの金額を指します。この課税遺産総額をもとに納める相続税が決まるのです。

相続税の計算方法について

相続税は、課税遺産総額をいったん法定相続分で分けたと仮定し、それぞれに税率をかけて求めます。税率は取得金額に応じて10%から55%まで段階的に上がる仕組みです。下記の速算表に当てはめて計算します。

法定相続分に応ずる取得金額 税率 控除額
1,000万円以下 10% -
1,000万円超から3,000万円以下 15% 50万円
3,000万円超から5,000万円以下 20% 200万円
5,000万円超から1億円以下 30% 700万円
1億円超から2億円以下 40% 1,700万円
2億円超から3億円以下 45% 2,700万円
3億円超から6億円以下 50% 4,200万円
6億円超 55% 7,200万円

参考:国税庁「No.4155 相続税の税率」

各相続人の税額を合計した額が相続税の総額となります。

住民税・所得税・復興特別所得税

不動産売却で得た利益は譲渡所得と呼ばれ、住民税・所得税の対象となります。譲渡所得は下記の方法で計算できます。

課税譲渡所得=譲渡収入金額-(取得費+譲渡費用)ー特別控除額

譲渡収入額である売却価格から取得費・譲渡費用を差し引き、さらに特別控除を差し引いた額に対して税金がかかります。取得費には、物件購入額だけでなく、仲介手数料などの諸費用も含まれます。

なお相続した不動産の取得費は、被相続人が取得した際の金額となる為、被相続人が購入したときの売買契約書や領収書などが必要です。購入時期がかなり昔で書類がないという場合は、概算取得費として売却価格×5%を計上します。また、取得費からは減価償却費を差し引く必要がある点にも注意しましょう。

譲渡費用とは、物件の売却にかかった費用です。仲介手数料や解体費などが含まれます。売却価格から取得費・譲渡費用・特別控除を差し引いた額がプラスになる場合、その額に対して住民税・所得税が課せられます。

譲渡所得に対して課せられる住民税や所得税は、まとめて譲渡所得税とも呼ばれます。譲渡所得税は課税譲渡所得に税率を乗じることで算出可能です。

税率は、物件の所有期間に応じて次のように異なります。

所有期間 所得税・復興特別所得税 住民税 合計税率
短期譲渡所得 5年以下 30.63% 9% 39.63%
長期譲渡所得 5年超 15.315% 5% 20.315%

所有期間5年を境に短期譲渡所得と長期譲渡所得に分けられ、税率も大きく異なるので注意しましょう。税率は物件の所有期間で変わり、売った年の1月1日時点で所有が5年を超えていれば長期譲渡所得、5年以下なら短期譲渡所得と判定します。

なお相続の場合、所有期間は前の所有者の所有期間を引き継ぎます。例えば、親が30年前に購入した実家を相続して5年以内に売っても、長期譲渡所得にあたる20.315%の税率が適用されます。

長期譲渡所得や減価償却については、こちらの記事で詳しく解説していますのでご覧ください。

長期譲渡所得とは?短期譲渡所得との違いや税金の計算方法について解説

建物の減価償却とは?不動産売却時の計算方法や仕組みについて解説

印紙税

印紙税とは、課税対象の文書を作成した際に課せられる税金です。不動産売却の場合、売買契約書が印紙税の対象となります。

印紙税は、税額分の収入印紙を作成した書類に貼付・消印することで納付できます。税額は書類に記載されている金額(売買代金)に応じて異なり、下記の通りとなります。

売買契約書に記載する売買代金 本則 軽減税率
1万円未満 非課税 非課税
1万円以上10万円以下 200円 対象外
10万円超50万円以下 400円 200円
50万円超100万円以下 1,000円 500円
100万円超500万円以下 2,000円 1,000円
500万円超1,000万円以下 1万円 5,000円
1,000万円超5,000万円以下 2万円 1万円
5,000万円超1億円以下 6万円 3万円
1億円超5億円以下 10万円 6万円
5億円超10億円以下 20万円 16万円
10億円超50億円以下 40万円 32万円
50億円超 60万円 48万円
契約金額の記載のないもの 200円 対象外

なお、印紙税は2014年4月1日から2027年3月31日まで軽減税率が適用されています。

印紙税は、納付しなければ本来の税額の3倍にあたる過怠税が徴収されることになりますので、貼付・消印忘れがないように気を付けましょう。

参考:国税庁「不動産売買契約書の印紙税の軽減措置」

参考:国税庁「No.7131 印紙税を納めなかったとき」

登録免許税

登録免許税とは、登記を行う際にかかる税金です。不動産の所有者が変わるなど登記内容に変更が出る場合、法務局への申請時に納税します。

▼登録免許税が発生するケース
  • 住宅ローンが完済していない住宅を売却する
  • 被相続人が不動産を担保に借り入れしている
  • 被相続人が住宅ローン完済後に抵当権抹消登記をしていない

上記のようなケースで抵当権が設定されている場合、そのままでは不動産の売却はできません。住宅ローンを完済するなどして抵当権の抹消が必要ですが、この際にかかる費用が、抵当権抹消登記の登録免許税です。抵当権抹消の場合、登録免許税は不動産個数×1,000円が必要となっています。土地と建物が一筆ずつの場合、合わせて2,000円となる計算です。

一方、相続時に発生する「相続登記(所有権移転登記)」の登録免許税は、固定資産税評価額の0.4%と定められています。例えば評価額が2,000万円の不動産の場合、2,000万円×0.4%=8万円の登録免許税がかかります。これは売却時ではなく、相続によって名義を変更する際にかかる税金です。

抵当権抹消登記や相続による所有権移転登記は自分でも手続きできますが、司法書士への依頼も可能です。ただし、司法書士に依頼する場合は別途司法書士報酬が発生します。

なお、売却後に所有者を買主様に変更する名義変更の登記は、基本的に買主様が行う為、売主様に費用負担が無い事がほとんどです。

抵当権抹消登記や登録免許税については、こちらの記事で詳しく解説していますのでご覧ください。

マンション売却では税金がかからない?税金の種類や特別控除についても紹介

抵当権抹消手続きの流れは?手続きが必要なタイミングやかかる費用を徹底解説

消費税

個人がマイホームなどを売却する場合、売却価格に対して消費税がかかることはありません。しかし、事業用不動産の売却や課税事業者が売却する場合は消費税の対象となるので注意しましょう。

売却価格に対して消費税はかかりませんが、以下のような費用に対しては消費税が発生します。

  • 不動産会社への仲介手数料
  • 司法書士報酬
  • 住宅ローン返済の手数料
  • 解体費用やハウスクリーニング費用

不動産を売却する際にかかる消費税については、こちらの記事で詳しく解説していますのでご覧ください。

マンション売却で消費税はかかる?課税される場合とされない場合について解説

相続後3年以内に売却する場合に利用できる特例控除

相続した不動産を3年以内に売る場合、税金の負担を抑えられる3つの特例があります。

被相続人の居住用財産に係る譲渡所得の特別控除の特例

相続した空き家を売却する場合、条件を満たすことで譲渡所得から3,000万円を控除できる特例です。主な適用条件は下記の通りです。

  • 相続または遺贈により取得した家屋または敷地の売却である
  • 平成28年4月1日から令和9年(2027年)12月31日までの売却である
  • 売却する家屋が昭和56年5月31日以前の建設である
  • 耐震リフォームを施した家屋か解体して更地にした状態での売却である
  • 売主様と買主様に親子や夫婦などの特別な関係がない

また、2024年1月1日以降は内容が一部変わりました。主な変更点は下記の通りです。

項目 2023年12月31日まで 2024年1月1日以降
耐震改修・取り壊しの時期 売主様が引き渡しまでに完了させる必要があった 買主様が引き渡し後(翌年2月15日まで)に済ませる場合も対象となる
控除額
(取得した相続人が3人以上)
一人あたり最高3,000万円 一人あたり最高2,000万円に縮小
適用期限 - 令和9年(2027年)12月31日まで

相続した不動産を活用せずに売却する場合は、適用条件を確認しておくと良いでしょう。

参考:国税庁「No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」

3,000万円特別控除については、こちらの記事で詳しく解説していますのでご覧ください。

居住用財産の3,000万円特別控除とは?適用要件や必要書類を解説

相続財産を譲渡した場合の取得費の特例

相続で取得した不動産を売却する場合、支払った相続税の一部を取得費として加算できます。主な適用条件は下記の通りです。

  • 相続や遺贈で財産を取得した
  • 取得した方が相続税を支払っている
  • 相続のあった日の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までの売却である

2024年1月1日以後、相続時精算課税に新しく、年110万円の基礎控除が設けられました。相続時精算課税とは、生前贈与の時点で課税を抑え、贈与した人が亡くなったときに贈与財産を相続財産に足してまとめて精算する制度のことです。 これにより、相続時精算課税を利用した場合、取得費に加算される金額は、贈与時の額そのものではなく、そこから毎年110万円を引いた後の残りの額となります。

また、生前贈与加算では、相続開始前3年より前にさかのぼる贈与についてはその合計額から100万円を引いた残りを加算する調整も行われています。

出典:国税庁「No.3267 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」

小規模宅地等の特例

小規模宅地等の特例とは、被相続人が住んでいた土地などの相続税評価額を減らせる制度です。例えば自宅の敷地(特定居住用宅地等)の場合は、330平方メートルまでの部分について評価額を80%減額できます。

小規模宅地等の特例は、取得する人ごとに要件が定められています。例えば、自宅の土地を配偶者が相続する場合、要件はありません。

一方、商売に使っていた土地に適用させる為には、被相続人の事業を申告期限までに引き継ぎ、その事業を続けながら土地を所有するのが要件です。また、アパートや駐車場などの土地は、被相続人の事業を申告期限までに引き継ぎ、貸付を続けながら土地を保有しなければなりません。ただし、相続開始前3年以内に新しく貸し始めた土地は対象外です。

このように、適用要件を満たせば特例を利用することが可能なので、売却予定の土地でも利用を検討してみましょう。

参考:国税庁「No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)」

相続した不動産を3年以内に売却する場合の税金シミュレーション

続いて、実際に相続した不動産を3年以内に売却した場合の税金シミュレーションを行います。

今回は、相続後も住むことなく、以下の条件で売却できたことを想定して、相続税が発生していない場合・発生している場合に分けてシミュレーションしています。

【売却の条件】
  • 売却価格:8,000万円
  • 取得費:不明
  • 譲渡費用:300万円
  • 所有期間:50年(被相続人からの通算)
  • 土地の評価額:6,000万円
  • 建物の評価額:500万円

相続税が発生してない場合

まずは相続税が発生してない場合での税金を計算していきましょう。取得費が不明な為、概算取得費として8,000万円×5%=400万円を計上します。

譲渡収入金額から取得費と譲渡費用を差し引いて譲渡所得を求めると、以下のようになります。

譲渡所得=8,000万円-(400万円(概算取得費) +300万円(譲渡費用) )=7,300万円

ここでの場合、長期譲渡所得税の税率が課税される為、税額は以下の通りです。

7,300万円×20.315%=約1,480万円

なお、空き家の3,000万円特別控除を適用できる場合、譲渡所得7,300万円から3,000万円を控除できるため、課税譲渡所得額は4,300万円、譲渡所得税は約873万円になります。

また、印紙税は軽減税率が適用されて3万円が目安です。登録免許税については、売却時に売主様が負担するのは、住宅ローンの担保を外すための「抵当権抹消登記」の費用のみとなります。抵当権抹消登記の登録免許税は不動産1個につき1,000円の為、土地・建物の2件分で2,000円が目安です。

かかった税金 税額
譲渡所得税(住民税・所得税・復興特別所得税)
  • 約1,480万円(空き家の3,000万円特別控除が適用できない場合)
  • 約873万円(空き家の3,000万円特別控除を適用した場合)
印紙税 3万円
登録免許税(抵当権抹消登記費用) 2,000円

相続税が発生している場合

次に、事前に相続税を納税している場合で見ていきましょう。この場合、「相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」を適用することで、支払った相続税のうち売却した不動産にかかる部分を取得費に加算できます。ここでは、他の遺産も含めて相続税を納めており、そのうち売却物件の取得費として300万円を加算できたと想定してシミュレーションします。

課税譲渡所得額=8,000万円-(400万円(概算取得費) +300万円(譲渡費用) +300万円(特例によって加算される取得費) )=7,000万円
税額=7,000万円×20.315%=約1,422万円

なお、相続税の取得時加算を適用した場合は、空き家の3,000万円特別控除を併用できません。どちらを適用したほうが税額を抑えられるか、シミュレーションをしたうえで検討することをおすすめします。

印紙税は、ここでも軽減税率が適用されて3万円が目安です。登録免許税は先ほどと同様に抵当権抹消登記費用として2,000円が目安となります。

かかった税金 税額
譲渡所得税(住民税・所得税・復興特別所得税) 約1,422万円
印紙税 3万円
登録免許税(抵当権抹消登記費用) 2,000円

相続人が複数いる場合

最後に、相続人が3人おり、共有持分(3分の1ずつ)で相続した不動産を、8,000万円で売却したケースを見ていきましょう。
不動産全体の譲渡所得は、これまでと同様の考え方で計算します。概算取得費として8,000万円×5%=400万円を計上し、譲渡費用は300万円とすると、全体の譲渡所得は次のようになります。

譲渡所得:8,000万円-(400万円(概算取得費) +300万円(譲渡費用) )=7,300万円

譲渡所得税は共有持分に応じて一人ずつ計算する為、3人で均等に分ける場合、一人あたりの譲渡所得は次のようになります。

一人あたりの譲渡所得:7,300万円÷3人=約2,433万円

ここから空き家の特別控除2,000万円(相続人が3人以上になると、空き家の特別控除は一人あたり最高2,000万円に縮小する為)を差し引くと、課税対象と税額は次のようになる可能性があります。

一人あたりの課税譲渡所得額=約2,433万円-2,000万円=約433万円
一人あたりの税額=約433万円×20.315%=約87万円

前述したように、空き家の3,000万円特別控除と、相続財産の取得費加算の特例は併用できません。各相続人の納付相続税額次第ではどちらが得か変わる可能性もあるため、両方を試算して比較することをお勧めします。

なお、印紙税は軽減税率が適用されて3万円、登録免許税は抵当権抹消登記費用として2,000円を目安として考えておきましょう。いずれも不動産全体にかかる費用の為、持分に応じて3人で分担する形になります。

かかった税金 税額(一人あたり)
譲渡所得税(住民税・所得税・復興特別所得税) 約87万円
印紙税(3人で按分) 1万円
登録免許税(抵当権抹消登記費用、3人で按分) 約667円

実際にかかる税金は状況により変わりますので、必ず税理士に相談することをお勧めします。長谷工の仲介では税金に関する無料相談を受け付けています。ぜひご利用ください。

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税金負担を抑える方法は?

不動産売却での税金負担を抑える方法としては、次の2つが挙げられます。

  • 費用に計上できるものを確認する
  • ふるさと納税を行って控除を受ける

それぞれ詳しく説明していきます。

費用に計上できるものを確認する

譲渡所得を計算する際は、取得費と譲渡費用をしっかり計上することで譲渡所得を抑えられ、税負担の軽減につながる可能性があります。

取得費・譲渡費用として計上できるものには、下記のようなものがあります。

取得費 譲渡費用
  • 売った不動産の購入代金・建築代金
  • 購入手数料
  • 設備費
  • 改良費
  • 登録免許税
  • 不動産取得税
  • 印紙税
  • 立退料
  • 造成費用
  • 測量費
  • 所有権確保の為の訴訟費用
  • 仲介手数料
  • 印紙税
  • 立退料
  • 取り壊し費用や取り壊し時の損失額
  • 名義書換料
  • 有利な条件で売却する為の解約にともなう違約金

相続した不動産の場合、相続税を支払っていれば、相続税の一部を取得費に加算できます。これらの費用を証明するには領収書などが必要となるので、大切に保管しておくようにしましょう。

参考:国税庁「No.3252 取得費となるもの」

参考:国税庁「No.3255 譲渡費用となるもの」

参考:国税庁「No.3267 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」

ふるさと納税を行って控除を受ける

ふるさと納税を活用し自治体に寄付を行うと、寄付額のうち2,000円を超える部分が所得税・住民税から控除(寄付金控除)されます。売却で所得税・住民税の支払いがある年に合わせてふるさと納税を行えば、税負担の軽減が可能です。また、ふるさと納税では多くの自治体が寄付に対して返礼品を用意しているので、返礼品で寄付先を選ぶ楽しみもあります。

ただし、ふるさと納税で控除できる額は、寄付者が住んでいる地域や年収、家族構成などにより異なります。また、控除上限を超えて寄付した額については控除されないので注意しましょう。事前にシミュレーションサイトなどを利用し、控除上限額を確認したうえで利用額を決めることが大切です。

参考:国税庁「No.1155 ふるさと納税(寄附金控除)」

ふるさと納税については、こちらの記事で詳しく解説していますのでご覧ください。

不動産売却でふるさと納税の上限額はどう変わる?仕組みと計算方法を解説

相続した不動産を売却する際の注意点

ここでは、相続した不動産を売却する際の注意点を解説します。

売却する為には相続人全員の合意が必要になる

遺言書がない相続の場合、誰が不動産を相続するかを遺産分割協議で決めることになります。遺産分割協議では相続人全員の合意が必要となり、誰か一人でも合意しない・参加していない状態では協議内容を決定できません。

さらに、協議後に新たに相続人が判明した場合、遺産分割協議をやり直す必要がある為、事前に相続人を漏れなく把握することが大切です。また、遺産分割協議の内容をまとめた遺産分割協議書には相続人全員の署名・捺印も必要です。相続人全員の合意が得られず遺産分割協議が進まない場合は、家庭裁判所の調停や審判で相続内容を決めていく必要があります。

作成した遺産分割協議書は、相続登記で必要な書類ですので、登記完了まで大切に保存しましょう。

特例によっては併用できないものもある

相続時に税負担を軽減する特例は、制度によって併用できるものとできないものがあります。併用できない場合は、どの特例を活用したほうがより税負担を抑えられるかをシミュレーションすることが大切です。

特例の併用について、下記の一覧で確認しましょう。

併用可否 被相続人の居住用財産に係る譲渡所得の特別控除の特例 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例 小規模宅地等の特例
被相続人の居住用財産に係る譲渡所得の特別控除の特例 - ×
相続財産を譲渡した場合の取得費の特例 × -
小規模宅地等の特例 -

被相続人の居住用財産に係る譲渡所得の特別控除の特例と相続財産を譲渡した場合の取得費の特例は、どちらも譲渡所得を減らす所得税の特例の為、同じ売却に重ねて使えません。売却前にどちらが得かを試算して選びましょう。

小規模宅地等の特例は相続税を軽くする制度の為、上記2つの所得税の特例とは別枠で利用できます。ただし、取得費加算と併用する場合、加算できる相続税額は小規模宅地等の特例で下がった後の評価額をもとに計算する為、加算額は小さくなります。

確定申告が必要な場合は忘れずに行う

前述した通り、不動産を売却し利益が出た場合、確定申告して納税する必要があります。確定申告の期間は売却した年の翌年2月16日から3月15日となり、この期間に管轄の税務署に申告しなければなりません。

また、控除の特例を利用する場合も確定申告が必要です。特例を利用して税金が発生しない場合でも確定申告が必要なので注意しましょう。

確定申告の手順や必要書類について、詳しくはこちらの記事で解説しているのでご覧ください。

マンションを売却したら確定申告が必要?流れや手順、必要書類について徹底解説

マンション売却の確定申告書の書き方は?手続きの流れも併せて解説

売却金の分配が贈与とみなされる場合がある

相続した不動産を売却し売却金を相続人で分割する場合、分配が贈与と見なされ贈与税が課せられる恐れがあるので注意しましょう。

不動産は公平に分けられないので、売却して得た資金を均等に分けるケースは少なくありません。この際、売却手続きは誰か一人が進める為、相続登記も相続人のうち一人のみで行うケースがあります。相続人のうち一人が相続登記した場合、登記簿上の名義人はその方になりますが、遺産分割協議の内容次第では、実質的に他の相続人にも権利や持分が残っているとみなされる場合があります。

しかし、たとえ相続人全員の合意で誰か一人が相続登記した場合でも、売却金の分配が相続人から他の相続人への贈与と見なされる恐れがあります。贈与と見なされ、贈与税の基礎控除を超えていれば、超えた分に贈与税が発生します。贈与と見なされないようにする為には、あらかじめ遺産分割協議書に分配する旨を記載しておく必要があります。

分配が贈与にあたるかどうかの判断が難しい・遺産分割協議書の作成の仕方が分からないという場合は、専門家に相談するようにしましょう。

不動産の相続や売却に関するよくある質問

最後に、相続した不動産の売却で多く寄せられる疑問について、Q&A形式で答えていきます。

遺産分割中でも売却の相談はできる?

遺産分割の最中でも売却の相談は可能です。ただし、実際に売却の手続きに進む為には、相続人のうち誰がその不動産を相続するのかを決めなければなりません。

長谷工の仲介では提携する司法書士のご紹介も可能で、相続登記とあわせて相談ができます。まずは長谷工の無料査定で「相続した家がいくらで売れそうか」を確かめてみてはいかがでしょうか。

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売却時にはどのような費用がかかる?

不動産の売却には税金以外にも費用がかかります。税金・その他費用の支出は、売却価格の5~10%ほどが目安です。売却時にかかる可能性がある費用は下記の通りです。

費用項目 概要説明
仲介手数料 不動産会社への手数料
売却価格が400万円超えの場合の上限:売却価格×3%+6万円+消費税

2024年7月の改正で、売却価格800万円以下の空き家・空き地は上限が最大33万円(税込)に引き上げ
司法書士費用 抵当権抹消登記を依頼する場合などに必要
目安額:2〜5万円程度
住宅ローンの一括返済手数料 完済にかかる金融機関の手数料
目安額:3.3〜5.5万円程度
引っ越し費 ファミリーの場合、8〜40万円程度
単身者の場合、5〜15万円程度
例えば、3人家族で500km未満の引っ越しなら、通常期で20万円、繁忙期(2〜4月)で30〜40万円程度
ハウスクリーニング費用 室内を清掃する場合の費用
目安額:10〜50万円程度(箇所や程度により異なる)
解体費用 不動産を解体して売却する場合の費用
目安額:100〜300万円程度
測量費用 測量が必要な場合の費用
目安額:45〜80万円程度

相続した不動産をそのまま放置するリスクは?

相続した不動産を放置する期間が長ければ長いほど建物の劣化が進み、資産価値は下がっていきます。また、誰も住んでいなくても、所有しているだけで、毎年の固定資産税や維持管理費がかかり続けます。

さらに、管理が行き届かないと、自治体から特定空き家や管理不全空き家に指定され、土地の固定資産税が最大6倍に上がる恐れもあります。相続した不動産を手放す予定があるなら、早めの売却を検討してください。

空き家については、こちらの記事で詳しく解説していますのでご覧ください。

空き家の売却方法は?かかる費用や税金、税金控除をわかりやすく解説

空き家問題の現状と解決策。所有する空き家はどうする?

空き家の活用方法は?事例や補助金、放置するリスクについて解説

相続した不動産をスムーズに売却するには?

相続に詳しく、幅広い売却方法に対応できる不動産会社へ相談するのがお勧めです。様々な売却方法に対応している会社であれば、市場で買主様を探す「仲介」に加え、不動産会社に直接買い取ってもらう「買取」の相談もできます。

長谷工の仲介では、一定期間内に売れなかった場合にあらかじめ約束した価格で買い取る売却保証や、最短1週間で現金化でき仲介手数料がかからない直接買取のサービスをご用意しています。相続の状況にあわせて無理のない売却プランをご提案いたします。

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不動産買取については、こちらの記事で詳しく解説していますのでご覧ください。

マンション買取とは?仲介との違いや注意点、向いているケース、業者の選び方について解説

不動産買取の相場は仲介の何割?調べ方や売却成功のポイントを解説

まとめ

相続した不動産を3年以内に売る場合は、相続登記を先に済ませ、相続税や譲渡所得税など各税金がいくらかかるかシミュレーションしておきましょう。

空き家の3,000万円特別控除や取得費加算の特例を使えば、税負担を抑えられる可能性もあります。ただし、特例には期限や併用の制限があるほか、空き家は放置すればするほど不動産の資産価値は下がってしまう為、早めに専門家に相談するのがお勧めです。まずはぜひ、長谷工の仲介の無料査定にご相談ください。

※本記事の内容は2026年8月20日現在のものであり、制度や法律については、今後改正・廃止となる場合がございます。

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この記事の著者

杉山明熙
元不動産営業のWEBライター。
不動産営業を12年間経験し店長、営業部長として、売買仲介、賃貸仲介、新築戸建販売、賃貸管理、売却査定等、あらゆる業務に精通。
個人ブログにて不動産営業への転職のお手伝い、不動産営業のノウハウ、不動産投資のハウツーなどを発信。
不動産業界経験者にしかわからないことを発信することで「実情がわかりにくい不動産業界をもっと身近に感じてもらいたい」をモットーに執筆活動を展開中。
宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、2級ファイナンシャルプランナー保有。
写真:杉山明熙

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