2023.01.16住み替えローンの利用はあり?メリットや金利・審査面から注意点を解説

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売却するマンションのローン残債が売却額よりも大きい場合、住み替えローンを利用することで売却できる可能性があります。
この記事では、住み替えローンとはどのような住宅ローンなのか、その概要やメリット、注意点について解説します。

住み替えローンとは?

住み替えローンとは、オーバーローン部分を買い替える物件の借り入れ金に上乗せして借りることができるローンです。
オーバーローンとは、売却物件の住宅ローン残債が売却価格を上回っていることを指します。

住み替えローンを利用するメリット

住み替えローンはオーバーローンの状態でも家の買い替えができるという点がメリットです。

通常、住宅ローン残債が残っている物件を売却する場合、引き渡し時に残債は一括返済をすることが必要です。しかし、転勤などで住み替えが必要になり、住宅ローン完済資金を調達するのが難しいという場合もあります。
そのような場合は、住み替えローンを利用することで、売却時にオーバーローン部分も含めて住宅ローン残債を一括返済できることから、まとまった自己資金がなくとも売却をすることができます。

住み替えローンを利用する際の注意点

住み替えローンを利用する際の注意点について解説します。

審査が厳しい場合がある

住み替えローンは、通常の住宅ローンよりも融資審査が厳しい傾向があります。
理由としては、銀行は購入物件の融資に加え、売却物件の残債を完済する為の資金を融資するからです。融資額が多い場合、返済が滞った場合に銀行が物件を任意売却や競売にかけても残債を回収できなくなる場合もあります。
その為、できるだけ借り入れ金の返済に余裕のある方に融資したいと銀行は考えています。
よって、住み替えローンの審査は一般的な住宅ローンの審査よりも厳しい傾向があるのです。
なお、対策としては物件を購入する前に住み替えローンの仮審査を受けておくことが適切といえます。仮審査に通っておけば、本審査で否認される可能性は低くなります。

売却日と購入日を調整する必要がある

住み替えローンの融資実行日は、購入物件の引き渡し日になります。その為、住み替えローンを利用するには、売却物件の引き渡し日と購入物件の引き渡し日を「同日」に調整する必要があります。つまり、住み替えローン利用の際は売却と購入を並行して行うことが基本となります。

また、中古物件を購入する場合は、購入物件の売買契約時に買い替え特約を利用することが多いです。
買い替え特約とは、購入物件の売買契約において売却物件が期限までに売れなかったときに、購入物件の売買契約を解除できる特約のことを指します。

通常の住宅ローンよりも金利が高い傾向がある

住み替えローンは通常の住宅ローンよりも金利が高い傾向にあります。
理由としては、前述の通り融資をする銀行の立場からすると担保価値以上の貸し出して仮に返済が滞ってしまった場合、銀行が残債を回収できなくなる可能性があるからです。

また、住み替えローンは必ずしも全ての銀行が取り扱っているローンではありません。
一部銀行のみの取り扱いであり、銀行間同士の金利競争も少ないことから、住み替えローンは金利が高くなりやすい傾向があります。

住み替えローンを利用した住み替えの流れ

住み替えを検討する場合は、あらかじめ売却と購入のおおまかな流れを知っておくと手続きを進めやすいでしょう。特に住み替えローンを利用する場合は、どのタイミングでローンの申し込みを行うのか把握しておくことが大切です。住み替えローンを利用した場合の売却と購入の主な流れは以下のようになります。

【売却の流れ】
  • 売却物件の価格査定
  • 媒介契約の締結
  • 売却活動の開始
  • 購入申込書の受領
  • 売買契約の締結
  • 引越し
  • 引き渡し(購入物件の引き渡し日と同日に行う)
【購入の流れ】
  • 情報収集、物件見学
  • 購入申込書の提示
  • 売買契約書の締結(買い替え特約を付けると調整しやすい)
  • 住み替えローンの申し込み
  • 引き渡し(購入物件の引き渡し日と同日に行う)
  • 引越し

住み替えローンを利用する場合のシミュレーション

住み替えローンを利用する場合のシミュレーションについて解説します。

【前提条件】

  • 年齢:40歳
  • 新居を購入する為の自己資金額:100万円
  • 年収:800万円
  • ローン残債額:3,000万円
  • 自宅の売却予定額:2,500万円
  • 新居の購入額:3,500万円
  • 借り入れ期間:35年
  • 店頭金利:2.21%
【シミュレーション】
オーバーローンの額:500万円(=ローン残債額3,000万円-売却予定額2,500万円)
売却費用:100万円(売却価格の4%で想定)
購入費用:175万円(購入価格の5%で想定)

借り入れ予定額 = 新居の購入額 ― 自己資金 + オーバーローンの額 + 売却費用 + 購入費用
= 3,500万円 ― 100万円 + 500万円 + 100万円 + 175万円
= 4,175万円

借り入れ金額4,175万円、金利2.21%、借り入れ期間35年、ボーナス返済なし、元利均等返済とした場合の返済額は以下の通りです。

毎月返済額:142,844円
総返済額:59,994,211円

※金融機関によっても金利や仕組みが異なる為、シュミレーション結果と実際の返済額が異なる場合があります。

住み替え時には他にも様々な費用がかかる

住み替え時には以下のような費用が発生します。

場面 費用項目 費用の相場
売却時 仲介手数料 400万円超:「売却金額×3%+6万円」200万円超400万円以下:「売却金額×4%+2万円」200万円以下:「売却金額×5%」
印紙税 売却金額が1,000万円超5,000万円以下:1万円売却金額が5,000万円超1億円以下:3万円
抵当権抹消費用 抵当権抹消の登録免許税:不動産1個につき1,000円司法書士手数料:1万円~3.5万円程度
一括返済手数料 都市銀行の窓口申込:0円~3万円程度
譲渡所得税 売却した年の1月1日における所有期間保有期間5年以下:譲渡所得の39.63%保有期間5年超:譲渡所得の20.315%
引越し時 引越し代 3人家族で500km未満の引越し:20万~40万円程度
購入時 仲介手数料(中古住宅を買う場合) 400万円超:「購入金額×3%+6万円」200万円超400万円以下:「購入金額×4%+2万円」200万円以下:「購入金額×5%」
印紙税 購入金額が1,000万円超5,000万円以下:1万円購入金額が5,000万円超1億円以下:3万円
不動産登記費用 固定資産税評価額×税率(軽減措置有り)司法書士手数料:所有権移転登記と抵当権設定登記を合わせて5~15万円程度
不動産取得税 固定資産税評価額×税率3%(軽減措置有り)
火災保険 5年一括契約で2万円~3万円程度
住宅ローン事務手数料 3~5万円程度、または借り入れ額の2.2%
住宅ローン保証料 金利上乗せタイプ:金利+0.2%程度現金一括払いタイプ:数十万~100万程度

住み替えにかかる費用の詳細については以下の記事で詳しく記載していますのでご覧ください。

マンションを売却して住み替える方法とは?流れや費用、利用できる特例を紹介

住み替えローンはどこで借りられる?

前述の通り、住み替えローンは全ての金融機関で扱われているわけではありません。ここでは、住み替えローンが借りられる銀行の一例を紹介します。

金融機関名 ローン名称 ローンの特徴
三井住友銀行 住み替えローン 完済時満80歳の誕生日までの方、前年度税込年収が500万円以上であることなどが要件。融資額は100万円以上1億円以内。
みずほ銀行 みずほ買い替えローン 完済時の年齢が満81歳未満の方などが要件。50万円以上3億円以内。
りそな銀行 りそな住みかえローン 完済時の年齢が満80歳未満の方、前年度税込年収が100万円以上であることなどが要件。50万円以上1億円以内(その他上限要件あり)。
横浜銀行 住宅ローン(お住み替え) 完済時の年齢が満82歳未満の方、前年度税込年収が400万円以上であることなどが要件。
千葉銀行 住み替えコース 原則として借り入れ残高と売却価格との差額が対象。1億円以内。
福岡銀行 住み替えローン 完済時の年齢が満82歳未満の方、前年度税込年収が250万円以上であることなどが要件。50万円以上1億円以内。

※詳しくは各金融機関のホームページ等でご確認ください。

住み替え時に利用できる特別控除

住み替え時に利用できる特別控除について解説します。

住み替え時に利益が生じた場合

住み替えにおいて、マイホームの売却で利益が生じた場合は原則として税金が生じます。
利益とは譲渡所得と呼ばれ、譲渡所得は以下の式で計算されます。

譲渡所得 = 譲渡収入金額 - (取得費 + 譲渡費用)

税金は譲渡所得に対して税率を乗じて計算されます。
基本的な税率は以下の通りです。

所得の種類 所有期間 所得税率 住民税率 復興特別所得税 合計税率
短期譲渡所得 5年以下 30% 9% 0.63% 39.63%
長期譲渡所得 5年超 15% 5% 0.315% 20.315%

参考:国税庁「No.3208 長期譲渡所得の税額の計算」

参考:国税庁「No.3211 短期譲渡所得の税額の計算」

ただし、一定の要件を満たすマイホームを売却した場合、3000万円特別控除を利用でき、3000万円特別控除を利用した場合の譲渡所得の計算方法は以下の通りです。

譲渡所得 = 譲渡収入金額 - (取得費 + 譲渡費用) ― 3,000万円

また、所有期間が10年超となるマイホームを売却した場合は、「10年超所有軽減税率の特例」も利用できます。
軽減税率を適用した場合の税率は下表の通りです。

課税譲渡所得金額 所得税 住民税
3,000万円特別控除後の譲渡所得のうち6,000万円以下の部分 10% 4%
3,000万円特別控除後の譲渡所得のうち6,000万円超の部分 15% 5%

「3000万円特別控除」と「10年超所有軽減税率の特例」は併用可能です。

一方で、「特定の居住用財産の買換えの特例」という特例も存在します。
売却物件の「譲渡価額」と購入物件の「取得価額」との大小により、売却時の税金を繰り延べ(先送り)できるという特例です。

大小関係 課税の関係
譲渡価額>取得価額 一部課税される
譲渡価額≦取得価額 繰り延べされる

参考:国税庁「No.3355 特定のマイホームを買い換えたときの特例」

「特定の居住用財産の買換えの特例」は、「3000万円特別控除」と「10年超所有軽減税率の特例」とは併用できません。

なお、売却益が発生したときに利用できる以下の特例は、購入物件で住宅ローン控除を利用する際はいずれも同時に利用することはできないことになっています。

  • 3000万円特別控除
  • 10年超所有軽減税率の特例
  • 居住用財産の買換え等に係る特例

売却物件で節税するか、購入物件で節税するかについては、有利な方を選ぶことになります。

3000万円特別控除の適用要件や他の特例との併用については、こちらの記事で詳しく記載していますのでご覧ください。

3000万円特別控除とは?適用条件や計算方法について解説

住み替え時に損失が生じた場合

譲渡所得がマイナスとなる場合には、その譲渡所得は「譲渡損失」と呼ばれます。
譲渡損失が発生した場合には、一定の要件を満たすマイホームであれば以下のいずれかの特例を利用できます。

  • 居住用財産を買換えた場合の譲渡損失の損益通算および繰越控除の特例
  • 居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例

上記はマイナスの譲渡所得とプラスの他の所得を合算(損益通算)することで税金の還付を受けることができる特例です。両者の主な違いは、「居住用財産を買換えた場合の譲渡損失の損益通算および繰越控除の特例」が買い替えを要件としているのに対し、「居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例」は買い替えを要件としていないという点になります。

譲渡損失が発生した場合でも、特例を利用する場合は確定申告が必要です。
確定申告については以下の記事で詳しく記載していますのでご覧ください。

マンションを売却したら確定申告が必要?流れや手順、必要書類について徹底解説

まとめ

ここまで、住み替えローンについて解説してきました。
住み替えローンを利用することで、住宅ローン残債が売却価格を上回っている状態であっても買い替えが可能になります。ただし、売却日と購入日を同日にする必要があるなどの注意点もある為、ローンを利用する際は売却と購入のスケジュールを調整すると良いでしょう。

長谷工の仲介では、住み替えにおけるマンション売却から新居購入までサポート可能です。買い替えを検討しているものの、具体的にどのように進めれば良いかわからないなど住み替えに関する相談も承っていますので、まずは「売却何でも相談」をご利用いただけると幸いです。

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※本記事の内容は2023年1月16日現在のものであり、制度や法律については、今後改正・廃止となる場合がございます。

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この記事の著者

竹内英二(株式会社グロープロフィット 代表取締役)
不動産鑑定および宅建業の代表取締役。不動産鑑定士、宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、公認不動産コンサルティングマスター(相続対策専門士)、中小企業診断士、住宅ローンアドバイザー。大阪大学出身。
写真:竹内英二(株式会社グロープロフィット 代表取締役)

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