マンションを売買したり、相続したりする場合は、名義変更手続きをする必要がありますが、名義変更が複雑で不安な方も多いと思います。
この記事では、マンションの名義変更について、売買や財産分与、贈与、相続などそれぞれのケースに分けて、必要な手続きや書類などをご紹介していきます。
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マンションの名義変更(所有権移転)とは?
マンションの名義変更とは、マンションの所有者を元の持主から新しい持主へと所有権移転登記する手続きのことです。
マンションの所有権が移転するタイミングとして、売買契約があります。
マンションの売買契約では、売買契約書を結び、売主様から買主様へと所有権が移転します。契約上の手続きは、売買契約の締結と手付金の引き渡しだけで問題ありませんが、実際の所有者を第三者からも明確に分かるようにするのが登記制度です。
仮に贈与や相続でマンションを入手したとしても、名義変更(所有権移転登記)がなされていない場合、第三者に真の所有者であることを証明できない為、名義変更の手続きが必要となります。
マンションの名義変更をしないとどうなる?注意点とリスク
先述のとおり、マンションの売買契約を結んだり、贈与契約を結んでいたりしても、名義変更がされていないと第三者に自分が真の所有者であることを証明するのは困難といえます。
売買契約時には売主様から買主様に所有権を移転する登記をする必要がある為、名義変更がされていない(売主様の所有権移転登記がされていない)と、新しい買主様に所有権を移転することができないのです。
また、マンションを担保にして融資を受けるといった際、対象のマンションに抵当権を設定することになります。その際も、マンションの名義変更がされていないと、抵当権設定登記ができない為、融資を受けるのは難しいでしょう。
マンションを購入したり贈与を受けたりしても、名義変更がされていないと上記のような問題が起こるということを把握しておきましょう。
マンションの名義変更はいつ、どのようなときに行う?
マンションの名義変更が必要なタイミングとしては、どのようなものがあるのでしょうか。
一般的なものとしては、以下の4つが考えられるでしょう。
- 売買時
- 相続時
- 生前贈与時
- 財産分与時
なお、名義変更の手続きは、法務局で行う必要があります。
基本的には、自分で名義変更の手続きをすることが可能ですが、煩雑な手続きになる為、司法書士に依頼するのが一般的です。
ここからは、いくつかのケースに分けて手続きの流れや必要書類について見ていきましょう。
マンションを売却した際の名義変更
まずはマンションを売却した際の流れについて見ていきましょう。
手続きの流れ
マンションを売却するときの名義変更の流れは以下の通りです。
- 売買契約
- 買主様のローン審査
- ローン決済と名義変更
- 引き渡し
通常、不動産売買契約から引き渡しまでには、買主様がローン審査をうけることもあり、1~2ヵ月程度の期間がかかります。
マンション売却時の所有権移転登記については、買主様がローンを利用する場合、金融機関の手続きの都合上、司法書士に手続きを代行してもらうことが一般的です。
マンション売却の流れについては以下記事で詳しく解説していますのでご覧ください。
マンション売却の流れを詳しく解説-必要な手続きやポイントについても紹介
必要な書類
マンション売却時の名義変更で売主様が用意する書類、買主様が用意する書類、司法書士が用意する書類を表でまとめると以下のようになります。
売主様が用意する書類 | 買主様が用意する書類 | 司法書士が用意する書類 |
---|---|---|
身分証明書 | 身分証明書 | 登記申請書 |
印鑑証明書 | 印鑑(実印・銀行印) | 委任状 |
登記済証(権利証)または登記識別情報 | 印鑑証明書 | |
固定資産税・都市計画税納税通知書や固定資産税評価証明書 | 住民票 | |
住民票の除票(登記上の住所と現在の住所が異なる場合) |
離婚時にマンションを財産分与した際の名義変更
次は離婚時にマンションを財産分与した際の名義変更について見ていきましょう。
婚姻期間中に取得した財産については、特別な事情がない限り、夫婦が一緒に取得した財産としてみなされます。財産分与ではマンションを含めた他の資産も含めて、どのように分与するかを決めますが、一般の個人であれば、財産のなかでも不動産の資産価 値が大きな割合を占めることが多いです。
その為、離婚時にはマンションの取り扱いでトラブルになりやすい点に注意が必要でしょう。
手続きの流れ
マンションを財産分与する場合の手続きの流れは以下の通りです。
- 財産分与の対象となる財産の額を把握する
- 財産をどのように配分するかを決める
- 財産分与の対象にマンションが含まれ、かつ名義が変わる場合はマンションの名義変更の手続きを進める
- 住宅ローンの残債がある場合は住宅ローンの組み換えについても検討する必要がある
マンションを財産分与する場合、問題となりやすいのは住宅ローンの手続きです。
財産分与の結果、元夫から元妻に住宅ローンの名義を変更する場合、住宅ローンを組みなおすには、元妻にも十分な収入がなければなりません。
住宅ローンを組みなおせない場合には、財産分与でマンションを名義変更することができない可能性もある為、住宅ローンの支払にはどれくらいの収入が必要なのか、マンションを売却したほうが良いのか、検討しておくと安心です。
離婚時のマンション売却時に関する注意点については、こちらの記事で詳しく解説していますのでご覧ください。
離婚時にマンションを売却すべき?財産分与やローンがある場合の注意点を解説
必要な書類
財産分与時に必要な書類については、基本的には通常の名義変更で必要とされるものと同じですが、離婚協議書や財産分与契約書が必要になるのは離婚時の名義変更における特徴といえます。
現在の名義人が用意する書類 | 新しい名義人が用意する書類 | 司法書士が用意する書類 |
---|---|---|
身分証明書 | 身分証明書 | 登記申請書 |
印鑑証明書 | 印鑑(実印・銀行印) | 委任状 |
登記済証(権利証)または登記識別情報 | 印鑑証明書 | |
固定資産税・都市計画税納税通知書や固定資産税評価証明書 | 住民票 | |
離婚協議書や財産分与契約書 |
マンションを相続した際の名義変更
マンションを相続した場合にも、名義変更をする必要があります。
なお、2022年時点では、マンションを相続した後の名義変更は義務ではありません。
ただ、名義変更していないと売却したり抵当権を設定したりといったことが難しい可能性もある為、基本的には相続したタイミングで名義変更するようにしましょう。
なお、相続したマンションの名義変更については、2024年4月より義務化されることが決まっており、相続したマンションを名義変更せずに放置しているとペナルティが課されてしまいます。
手続きの流れ
相続したマンションの名義変更の流れは以下の通りです。
- 遺言書がない場合、遺産分割協議を行う
- 被相続人から相続人にマンションが引き継がれる
- マンションの名義変更の手続きを行う
マンションを相続する場合、マンションの所有権自体は名義変更をせずとも引き継がれる為、名義変更を後回しにしてしまいがちです。
なお、2024年4月1日の法改正後は、相続から3年以内に名義変更をしないと10万円以下の罰金が課されることになります。
必要な書類
ここでは、マンション相続時の名義変更で必要な書類について、相続人が用意する書類、被相続人が用意する書類、司法書士が用紙する書類に分けて見ていきます。
相続人が用意する書類 | 被相続人に関する書類 | 司法書士が用意する書類 |
---|---|---|
相続人全員の戸籍謄本 | 被相続人の10歳前後から死亡に至るまでの継続した全ての戸籍謄本 | 登記申請書 |
相続人全員の住民票または戸籍の附票 | 被相続人の除住民票または戸籍の附票 | 委任状 |
固定資産税・都市計画税納税通知書や固定資産税評価証明書 | ||
遺産分割協議書(遺産分割協議を行う場合) | ||
遺言書(遺言書による相続手続を行う場合) |
なお、遺産分割協議を行った場合には遺産分割協議書が、遺言書に沿って相続を行う場合には遺言書がそれぞれ必要です。
マンションを生前贈与された際の名義変更
マンションを生前贈与する場合も、名義変更が必要です。
生前贈与も売買契約等と同じく贈与しただけでは登記は移転しない為、注意しましょう。
手続きの流れ
生前贈与の手続きの流れは以下の通りです。
- 贈与契約書の作成
- マンションの贈与
- 名義変更(所有権移転登記)
贈与自体は、特に具体的な手続きをせずとも完了させることが可能です。
ただし、贈与契約書など事前に作成しておくことで後のトラブル防止につながり、税務調査でも贈与を証明できます。
必要な書類
マンションを生前贈与する場合に必要な書類について、贈与する方、贈与を受ける方、司法書士が用意する書類に分けて見ていきます。
贈与する方が用意する書類 | 贈与を受ける方が用意する書類 | 司法書士が用意する書類 |
---|---|---|
登記済証(権利証)または登記識別情報 | 住民票 | 登記申請書 |
印鑑証明書 | 委任状 | |
固定資産税・都市計画税納税通知書や固定資産税評価証明書 | ||
登記簿謄本 | ||
登記原因証明情報や贈与契約書 |
マンションの名義変更で発生する費用と税金
マンションの名義変更ではどのような費用と税金が発生するのでしょうか。
必要な費用と税金についてまとめた表は以下の通りです。
発生する税金・費用 | 売却 | 相続 | 生前贈与 | 財産分与 |
---|---|---|---|---|
各書類の取得費 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
司法書士手数料※司法書士に依頼する場合 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
登録免許税 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
贈与税 | × | × | 〇 | 〇 |
相続税 | × | 〇 | × | × |
譲渡所得税 | 〇 | × | × | × |
不動産所得税 | 〇 | × | 〇 | 〇 |
以下、それぞれ必要な費用について見ていきましょう。
各書類の取得にかかる費用
マンションの名義変更で必要な可能性がある書類と、それぞれの費用は以下のようになります。
- 住民票:300~400円程度(自治体による)
- 印鑑証明書:300円程度(自治体による)
- 登記簿謄本:書面600円、オンライン480円
司法書士手数料
名義変更を司法書士に依頼する場合、地域や内容によっても異なりますが、おおよそ5~15万円程度の費用が必要です。同じ地域であっても別の司法書士に依頼することで費用を抑えられるケースもあるので、複数の司法書士に相談してみるのも良いでしょう。
登録免許税
名義変更の手続きをする際、法務局に納めるのが登録免許税です。
登録免許税は、売買、贈与、相続など名義変更の要因別に以下のように税率が定められています。
土地にかかる登録免許税
内容 | 課税標準 | 税率 | 軽減税率 |
---|---|---|---|
売買 | 不動産の価額 | 1,000分の20 | 令和5年3月31日までの間に登記を受ける場合1,000分の15 |
相続、法人の合併または共有物の分割 | 不動産の価額 | 1,000分の4 | - |
その他(贈与・交換・収用・競売等) | 不動産の価額 | 1,000分の20 | - |
参考:法務局「令和4年4月1日以降の登録免許税に関するお知らせ」
建物にかかる登録免許税
内容 | 課税標準 | 税率 | 軽減税率 |
---|---|---|---|
売買または競売による所有権の移転 | 不動産の価額 | 1,000分の20 | 令和6年3月31日までの間に登記を受ける場合1,000分の3 |
相続または法人の合併による所有権の移転 | 不動産の価額 | 1,000分の4 | - |
その他の所有権の移転(贈与・交換・収用等) | 不動産の価額 | 1,000分の20 | - |
参考:法務局「令和4年4月1日以降の登録免許税に関するお知らせ」
なお、登録免許税は、売買時には買主様が負担するのが一般的です。
相続の場合は相続を受ける方、贈与の場合は受贈者が負担することが多いでしょう。
財産分与時には誰が登録免許税を負担するかについては、財産分与契約書であらかじめ取り決めておくことで後々のトラブルを避けることができます。
登録免許税の軽減税率
先述の通り、不動産売買時の登録免許税のうち、土地については令和5年3月31日まで、建物については令和6年3月31日まで軽減税率の適用を受けることができます。
また、相続登記については、以下のようなケースで土地の登録免許税が免除されます(令和7年3月31日まで)。
- 土地を相続した方が相続登記しないで死亡した場合
- 土地の価格が100万円以下の場合
贈与税
マンションを贈与した場合、贈与を受けた方は1年間の贈与額が110万円を超えると贈与税を納めなければなりません。
なお、一定の要件を満たすと控除を受けられる制度もあります。
ここでは、以下2つについて見ていきましょう。
- 夫婦の間で居住用の不動産を贈与したときの配偶者控除
- 相続時精算課税制度
夫婦の間で居住用の不動産を贈与したときの配偶者控除
20年以上の婚姻期間がある夫婦が、夫婦間で不動産を贈与した場合、2,000万円分の控除を受けることができます。
この控除は基礎控除の110万円とは別に適用を受けられる為、2,110万円までであれば贈与税非課税となる計算です。
相続時精算課税制度
相続時精算課税制度とは、60歳以上の父母や祖父母から18歳以上の子や孫に対して財産を贈与した場合に利用できる制度です。
この制度を利用すると、利用した年以降ずっと適用を受けることになり、選択以降2,500万円まで非課税、2,500万円以降は20%の贈与税が課されることになります。
この制度を一度利用すると、その年以降、110万円の基礎控除を受けることができません。
また、この制度を利用した場合、相続時にこの制度を活用した財産の額を相続財産の額に加算する必要があります。
相続税
相続税は、財産を相続した方が、その相続した財産の額に応じて納める必要のある税金です。
なお、相続税には「3,000万円+600万円×法定相続人の数分」の基礎控除枠があります。
例えば、相続財産が1億円で、配偶者と子2人がいるようなケースでは、以下のようになります。
1億円 ー 4,800万円 = 5,200万円分
基礎控除額を除いた5,200万円を相続人同士でどのように配分するかを決めたうえで、それぞれの相続税額を計算することになります。
マンションを相続した際の相続税の計算や納税時の注意点については、以下の記事で詳しく紹介していますのでご覧ください。
マンション相続の手続きとは?流れや相続税の計算、利用できる控除を解説
譲渡所得税
譲渡所得税とは、マンションを売却して利益がある場合に売主様が納める税金です。
マンションの譲渡所得税は以下のように計算します。
譲渡所得 × 税率
参考:法務局「No.1440 譲渡所得(土地や建物を譲渡したとき)」
なお、課税譲渡所得の税率は、売却した不動産の所有期間に応じて以下のように定められています。
所有期間 | 所得税 | 住民税 | 復興特別所得税 | 合計 | |
---|---|---|---|---|---|
短期譲渡所得 | 5年以下 | 30% | 9% | 0.63% | 39.63% |
長期譲渡所得 | 5年超 | 15% | 5% | 0.315% | 20.315% |
なお、マンションを売却したときは自分で課税譲渡所得を計算して確定申告する必要があります。
マンション売却時の確定申告については、こちらの記事で詳しく解説していますのでご覧ください。
マンションを売却したら確定申告が必要?流れや手順、必要書類について徹底解説
マンション売却の確定申告書の書き方は?手続きの流れも併せて解説
不動産取得税
不動産取得税は不動産を取得した個人や法人に課される税金です。
不動産取得税の納税率を求める計算式は以下の通りです。
なお、令和6年3月31日までに取得した住宅・土地に関しては、税率が3%となります。
また、一定の要件を満たすことで、建物については最大で1,200万円(認定長期優良住宅の場合は1,300万円)まで控除を受けることができます。
一方、土地については以下の計算式で求めた額を控除可能です。
A=45,000円
B=(土地1㎡当たりの固定資産税評価額 × 1/2)× 課税床面積 × 2(200㎡限度)× 3%
ただし、2024年令和6年3月31日までに取得した土地の課税標準額は価格を1/2として計算します。
マンションの名義変更に関するQ&A
最後に、マンションの名義変更でよくある質問を見ていきましょう。
名義変更は自分でもできる?
名義変更は自分で行うことも可能です。
自分で手続きすることで、司法書士費用分、費用を抑えることができます。
ただし、名義変更の手続きは法務局が開いている平日日中にする必要がある他、法務局での書類作成や各種手続きを全て自分で行わなければなりません。
また、マンションの売買において、ローンを利用する場合は、金融機関側の手続きの関係で司法書士の利用を求められることがほとんどです。
家族間での名義変更はどうなる?
家族間でマンションを譲る行為は、贈与手続きに該当します。
その為、この記事で紹介したように、贈与にかかる名義変更の手続きを行わなければなりません。
家族間の財産移転であっても、贈与税など発生する点には十分注意しましょう。
まとめ
ここまで、マンションの名義変更について解説してきました。
マンションの売買や財産分与、贈与、相続などのタイミングで名義変更の手続きが必要になります。
それぞれ、手続きの流れや必要書類などが変わる為、名義変更する必要がある方はこの記事の内容を参考にしてみてください。
長谷工の仲介では、売主様のマンションの売却サポートだけではなく、引越し後の不安を解消するアフターサポートも充実しています。
確定申告など、売却後に発生する手続きに関しては複雑な場合も多く、不安な方も多いかと思いますので、そのような場合にはぜひ長谷工リアルエステートの「売却何でも相談」をご利用ください。
※本記事の内容は2023年1月16日現在のものであり、制度や法律については、今後改正・廃止となる場合がございます。