2023.07.10熟年離婚の財産分与でマンションはどう分ける?具体的な分割方法を解説

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一定の財産は、たとえ所有権が夫だけ、または妻だけであっても「夫婦間で協力して形成・維持してきたものである」という考え方をするのが基本です。その為離婚時の財産分与に関して、どのように行うべきかという悩みや疑問が多く存在します。

財産分与では、特に金額の大きな不動産が問題となります。不動産の財産分与はどのように考えれば良いのでしょうか。
この記事では、熟年離婚による財産分与の方法や不動産の処理について解説します。

財産分与に関する基礎知識

最初に、財産分与に関する基礎知識について確認しておきましょう。

財産分与の種類

財産分与には以下の3つの種類があります。

  • 清算的財産分与
  • 扶養的財産分与
  • 慰謝料的財産分与

それぞれ詳しく見ていきましょう。

清算的財産分与

清算的財産分与とは、夫婦が婚姻中に協力して蓄えた財産(清算的財産)を清算することです。不動産の財産分与など、いわゆる世間一般でイメージする財産分与はこの清算的財産分与にあたります。

扶養的財産分与

扶養的財産分与とは、離婚後の生活が困窮する当事者の一方に対して、離婚後一定期間の扶養を約束することです。
裁判では、当事者の一方が病気や高齢などにより離婚後に経済的自立が困難となる場合に認められることがあります。
扶養的財産分与は、あくまでも清算的財産分与の補充的な位置づけです。

慰謝料的財産分与

慰謝料的財産分与とは、いわゆる慰謝料のことです。
裁判所では、慰謝料は財産分与の一つの要素と考えられていますが、実際は財産分与とは別に請求するケースもみられます。

財産分与の割合

財産分与の割合は、2分の1(50%)ルールが適用されることが一般的です。
財産分与は夫婦のそれぞれの貢献度に応じて分配することを指しますが、基本的に離婚までの財産については夫婦がそれぞれ平等に貢献してきたという考え方をします。
その為、妻側が専業主婦で無収入であっても、あるいは共働きで双方に収入があっても、2分の1ルールが適用されるのが原則です。一般的に内助の功は定量的に測定することが困難である為、公平の観点から財産分与の割合は2分の1が妥当と考えられています。

ただし例外として、下記に該当する場合は2分の1ルールが適用されないこともあります。

  • 婚姻前から有していた財産や寄与して得られた財産
  • 一方が高額な収入を得ていた場合
  • 双方に収入があり別々に財産を管理されていた場合

熟年離婚における財産分与の対象

財産分与は必ずしも全ての財産を分けるわけではありません。
では一体どのような財産が対象となり、どのような財産が対象とはならないのでしょうか。
ここでは、財産分与の対象について解説します。

財産分与の対象になる財産

財産分与の対象となる財産は、「共有財産」と呼ばれます。
共有財産とは、夫婦が婚姻期間中に協働で築き上げた財産のことです。
共有財産には、以下のようなものが挙げられます。

【共有財産の例】
  • 現金・預貯金
  • 不動産
  • 生命保険、学資保険
  • 退職金
  • 株式・債権・投資信託などの有価証券
  • 家具・家電などの動産
  • 自動車
  • 住宅ローンなどの負債

財産分与の対象にならない財産

財産分与の対象とならない財産には、「特有財産」があります。
特有財産とは、夫婦の一方が独自に持っている財産のことです。
また、当事者間の合意により財産分与の対象から外した財産も、財産分与の対象にはなりません。
特有財産を例示すると、以下のようなものが挙げられます。

【特有財産の例】
  • 結婚する前に取得した財産
  • 親から相続した財産
  • 親などの第三者から贈与を受けた財産

熟年離婚をする際に、年金や退職金はどう分割する?

熟年離婚の場合、年金や退職金も財産分与の対象となってきます。年金や退職金はどのように分ければ良いのでしょうか。
ここでは、年金や退職金の分割方法について解説します。

合意分割

合意分割とは、当事者の一方または双方からの請求により、婚姻期間中の厚生年金記録を当事者間で分割することができる制度のことです。
合意分割を行うには、以下の条件を満たす必要があります。

  • 婚姻期間中の厚生年金記録があること
  • 当事者の合意または裁判手続きにより按分割合を定めたこと
  • 離婚などをした日の翌日から起算して2年以内に請求すること

参考:日本年金機構「離婚時の厚生年金の分割(合意分割制度)」

3号分割

3号分割とは、国民年金の第3号被保険者であった方からの請求により、平成20年4月1日以後の婚姻期間中の第3号被保険者期間における相手方の厚生年金記録を2分の1ずつ、当事者間で分割することができる制度のことです。
当事者の合意は不要である点が特徴となります。
3号分割を行うには、以下の条件を満たす必要があります。

  • 2008年(平成20年)5月1日以後の離婚であること
  • 婚姻期間中に2008年(平成20年)4月1日以後の国民年金の第3号被保険者期間があること
  • 離婚などをした日の翌日から起算して2年以内に請求すること

参考:日本年金機構「離婚時の厚生年金の分割(3号分割制度)」

熟年離婚をする際、マンションはどう分ければ良い?

離婚をする際、マンションはどのように分与すれば良いのでしょうか。
ここでは、離婚時のマンションの取り扱いについて解説します。

売却する

マンションを持っている場合、離婚では売却が選択されることがよくあります。
その理由として、「財産分与の為」と「権利関係の解消の為」の二つが挙げられます。

不動産のままでは、財産を2分の1ずつ平等に分けにくくなります。しかし売却して不動産を現金に換えれば、1円単位で財産を分けることができます。このように、財産分与の為に分けやすい形にできるという点で、売却は合理的な方法です。

一方、権利関係の解消という観点からもメリットがあります。
ここでいう権利関係とは、例えば共有関係や債務関係が該当します。マンションを共有で持っている場合、所有関係と婚姻関係は関係がない為、離婚しても扱いは共有のままになります。そうすると双方に固定資産税などの維持費がかかる為、売却して共有を解消してしまおうというケースが多い傾向にあります。

また、ローンを完済していない場合、ローンの組み方によっては二人が債務上で一定の関係を有している場合があります。例えば、一方が他方の連帯保証人になっているケースや、ペアローンで組んでいるケースです。

連帯保証とは、主たる債務者と連帯して債務を負担することです。債務関係も婚姻関係とは関係がない為、離婚しても自動で解消されるわけではありません。連帯保証などの双方が関係しているローンを組んでいる場合、売却してローンを完済することで債務関係も解消することができます。

このように、離婚時には財産分与と権利関係の解消の二つの理由があることから、売却を選択する方が多いのです。
離婚時の売却については、以下の記事で詳しく解説していますのでご覧ください。

離婚時にマンションを売却すべき?財産分与やローンがある場合の注意点を解説

仲介で売却する

仲介とは、不動産会社の紹介を通じて買主様を見つける売却方法のことです。
仲介のメリットは、市場相場に近い価格で売却を目指せるという点が挙げられます。
住宅ローンが残っている場合、売却時にローン残債を一括返済することから、売買代金は住宅ローン残債を上回っている必要があります。

一方で、仲介の注意点は、売却までに時間がかかるという点が挙げられます。
一般的に、マンションは売りに出してから売買契約を締結するまで2〜3ヵ月程度の時間がかかります。また、不動産の売買では売買契約と引き渡しを別日で行うことが一般的であり、売買契約を締結してから引き渡しまでに1〜2ヵ月程度要します。
よって、不動産を現金化するまでに、半年以上の時間がかかることもあります。

このように売却までのスケジュールに余裕があり、可能な限り市場相場に近い価格で売却をしたいという場合は仲介を選択するのが適切といえます。
仲介でマンションを売却する際の流れや注意点に関する詳細は、下記の記事をご覧ください。

マンション売却の流れは?注意点やかかる税金・費用、失敗事例についても紹介

不動産会社に買い取ってもらう

買い取りとは、不動産会社に不動産を直接売る方法のことです。
買い取りのメリットは、早く売れやすいという点です。不動産会社と売却条件が合意すれば1週間〜1ヵ月程度で売却できます。

一方で、買い取りの注意点は、不動産会社は再販を目的に買い取る為、売却価格が安くなるという点になります。買い取りの価格は、仲介で売る価格の7割程度が相場です。買い取りは売却価格が安くなる為、財産分与でもらえる金額も少なくなります。

また、多額の住宅ローンが残っている場合、買い取りの価格だと住宅ローン残債を一括返済できないこともあります。
住宅ローン残債がある物件で買い取りを選択する場合には、売却価格で一括返済できるかどうかを慎重に見極めることが必要です。
買い取りについては、以下の記事で詳しく解説していますのでご覧ください。

マンション売却は買い取りがお勧め?仲介との違いや向いている物件の特徴を解説

一方が住み続ける

離婚しても一方が住み続けるという選択肢は存在します。
住み続けるメリットとしては、住環境を変えなくて済むという点です。熟年離婚の場合、長年住み続けてきた地域を離れたくないという方も多いと思います。近所の友人関係や習い事の場所などを変更しなくても良い点も、住み続けるメリットです。

一方、売却しないと平等に財産分与することが難しくなるという点に注意が必要です。
一方が住み続けるとなると、財産分与の方法としては、マンションの売却額相当の50%分を現金で相手方に支払うか、または他の不動産などで現物支給するといった方法が考えられます。

ただし、マンションの価格の50%分の現金を相手に支払うというのは、相当な資金が必要です。また、売却を予定せずにマンションの時価を把握する必要がある為、例えば不動産鑑定士(不動産の適正価格を評価する国家資格者)によるマンションの鑑定評価も必要となってきます。不動産鑑定士に評価を依頼する場合には手数料も必要です。
一方が住み続ける場合の注意点や名義変更のポイントについては、以下の記事で詳しく解説していますのでご覧ください。

マンションの名義変更(所有権移転登記)はいつ行う?手続きの流れや費用、注意点を解説

熟年離婚時にローンが残っている場合はどうする?

ローンが残っている場合の対処方法は、いくつか存在します。
例えば、一方が住み続ける場合、住み続ける方が所有者かつ債務者である場合、今まで通り住む方が住宅ローンを返済すれば良い為、特に大きな問題はありません。

一方で、ペアローンの場合、離婚してもなにもしなければペアローンのままである為、双方に債務の返済は続きます。ペアローンを解消するには、売却してローン残債を一括返済することがシンプルな方法です。
その他、住む方がローンの借り換えを行って相手方のローンも含めて借り直すといった方法も考えられます。

住宅ローンには夫婦の収入を合算して組む方法として、一方が片方の連帯保証人になるケースもあります。
連帯保証人は所有者でもなく、登記簿謄本にも明記されていない為、自分自身が連帯保証人になっていたことを忘れてしまっているケースも多いです。
連帯保証人の関係を解消する場合も、売却してローンを完済する必要があります。
連帯保証人の関係は解消しておかなければ、万が一離婚後に債務者がローンを返済できなくなった場合、連帯保証人にローンの返済が突然降りかかってくることがあります。

ローンが残っている物件は、売却時に売買代金でローン残債を一括返済できれば問題ありません。また、夫婦間にペアローンや連帯保証といった債務関係が存在する場合であっても、後のトラブルを防ぐ為に売却して関係解消しておくことをお勧めします。

まとめ

ここまで、熟年離婚の財産分与について解説してきました。
財産分与とは、主に夫婦が婚姻中に協力して蓄えた財産を分け合うことを指し、清算的財産分与で財産を双方に半分ずつ分与することが原則です。マンションをお持ちの場合には、財産分与や権利関係の解消の為にも売却することをお勧めします。

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※本記事の内容は2023年7月10日現在のものであり、制度や法律については、今後改正・廃止となる場合がございます。

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この記事の著者

竹内英二(株式会社グロープロフィット 代表取締役)
不動産鑑定および宅建業の代表取締役。不動産鑑定士、宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、公認不動産コンサルティングマスター(相続対策専門士)、中小企業診断士、住宅ローンアドバイザー。大阪大学出身。
写真:竹内英二(株式会社グロープロフィット 代表取締役)

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