2024.01.26譲渡所得とは?不動産売却時の税金の計算から確定申告手続きまで詳しく解説

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不動産の売却利益は譲渡所得と呼ばれ、税金がかかります。
ただし、譲渡所得にかかる税金は所有期間の長さや特例の活用などによって税額が大きく異なってくるものです。

この記事では、譲渡所得やかかる税金の計算方法、特例の適用から確定申告の方法まで、分かりやすく解説します。
不動産の売却を検討している方は、ぜひ参考にしてください。

譲渡所得とは?

譲渡所得とは、保有する資産の譲渡で得られる利益(所得)のことです。
この際の譲渡とは、売却だけでなく競売・交換など、所有権を移転する取引が全て含まれます。
受け取る収入は、権利や経済的利益といった金銭以外であっても、その時価などが収入金額と判断されるのです。

また、譲渡所得の対象となる資産は、金銭以外の全ての経済的価値のある資産であり、主な資産は下記の通りです。

  • 不動産(土地・建物・建築物)
  • 株式などの有価証券
  • 骨とう品や貴金属
  • ゴルフ会員権や借地権・営業権などの権利

これらの譲渡によって譲渡所得が発生すると、所得に対して税金が課税されます。
ただし、課税制度は、譲渡の内容によって分離課税と総合課税に分かれるので注意しましょう。
分離課税と総合課税の対象となる資産は、下記の通りです。

分離課税の対象となる譲渡資産の例 総合課税の対象となる譲渡資産の例
  • 不動産や株式など
  • 骨とう品や美術品などの動産
  • ゴルフ会員権や営業権などの権利

不動産や株式などの譲渡は、分離課税となり他の所得と分けて課税されます。
一方、それ以外の動産や権利などの譲渡所得は、他の所得と合算して課税される総合課税の対象です。

なお、資産のうち山林や事業用の棚卸資産などの譲渡は、譲渡所得には含まれません。

譲渡所得の計算方法

譲渡所得は、売却額がそのまま譲渡所得になるわけではありません。
大まかには「売却した金額から購入した金額を差し引いた額」が譲渡所得になります。
具体的な計算方法は、下記の通りです。

譲渡収入金額 ー(取得費 + 譲渡費用)ー 特別控除額 = 譲渡所得

詳しい計算方法を以下でみていきましょう。

➀譲渡収入金額を計算する

まずは、収入金額を計算します。
収入金額とは、譲渡の対価として受け取る金額のことです。

不動産売却の場合は、売却額が収入金額となります。
また、売却時に固定資産税の清算金を受け取った場合も、収入金額に含まれます。
仮に、売却額3,000万円と清算金30万円を受け取った場合は、収入金額は3,030万円です。

収入金額は、金銭以外で受け取った場合も発生する点には注意しましょう。
例えば、金銭の代わりに不動産を得た場合(交換)、受け取った不動産の時価が収入金額として計算されます。

➁取得費から減価償却費を差し引く

取得費とは、譲渡する資産を取得したときの費用のことです。
不動産であれば、売却する不動産の購入費用や建築代金が取得費に該当します。
また、下記のような費用も取得費に含まれます。

取得費に含まれるもの
  • 購入手数料(仲介手数料など)
  • 整備費や改良費
  • 登録免許税や不動産取得税・印紙税
  • 支払った立ち退き料
  • 土地の造成費用や測量費
  • 所有権確保の為の訴訟費用
  • 解体費用の一部
  • 土地や建物を購入するために借り入れた借入資金の利子のうち使用開始までの部分
  • 別の不動産の購入契約を解除して該当不動産を取得した場合の違約金など

参考:国税庁「No.3252 取得費となるもの」

取得費を証明する為には、領収書や契約書が必要です。
購入してから長期経過した不動産や相続した不動産の場合、取得費の証明が難しい場合もあります。

そのような場合は、概算取得費として「譲渡所得×5%」を計上します。
ただし、概算取得費での形状となると、本来の取得費よりも計上できる額が少なくなり、利益が多くなる可能性があります。
利益が多くなればその分課税額も高くなる為、できるだけ取得費を証明できる書類を揃えられるようにしておきましょう。

また、譲渡する資産が償却資産の場合、所得費から減価償却費を差し引かなければならない点にも注意が必要です。
不動産の場合、建物が償却資産として減価償却費の対象となります。

減価償却費は、以下の計算で算出します。

減価償却費=取得価額 × 0.9 × 償却率 × 経過年数

償却率は、建物の構造により定められており以下の通りです。

建物の構造 耐用年数 償却率
鉄骨鉄筋コンクリート造又は鉄筋コンクリート造 70年 0.015
れんが造、石造又はブロック造 57年 0.018
金属造 骨格材の肉厚4mm超 51年 0.020
骨格材の肉厚3mm超4mm以下 40年 0.025
骨格材の肉厚3mm以下 28年 0.036
木造又は合成樹脂造 33年 0.031
木骨モルタル造 30年 0.034

引用:国税庁「減価償却費の計算について」

例えば、3,000万円で購入した木造住宅を所有期間10年で売却した場合の、減価償却費と取得費は次のようになります。

減価償却費=3,000万円×0.9×0.031×10年=837万円
取得費=3,000万円-837万円=2,163万円

なお、土地は減価償却の対象ではありません。
購入金額が土地・建物込みの価格の場合、土地と建物を分けて計算しなければならないので注意しましょう。

こちらの記事では、マンション売却時に行う減価償却費の計算について詳しく解説していますので、売却を検討している方は併せてご覧ください。

マンション売却時の減価償却とは?計算方法や譲渡所得税との関係について解説

➂譲渡費用に含められるものをまとめる

譲渡費用とは、売却する為にかかった費用のことです。
下記のような費用が譲渡費用に該当します。

譲渡費用に含まれるもの
  • 仲介手数料
  • 売主様が負担した印紙税
  • 立ち退き料
  • 解体費用と建物の損失額
  • 有利な条件で売却する為に契約解除した場合の違約金
  • 借地権を売るときに地主から承諾をもらうための名義書換料

参考:国税庁「No.3255 譲渡費用となるもの」

譲渡費用は、売る為にかかった費用であり、不動産を維持する為の費用ではありません。
修繕費や固定資産税は含まれないので、注意しましょう。

④譲渡所得から特別控除額を差し引く

譲渡所得を算出する際には、さらに特別控除を差し引くことが可能です。
譲渡所得を控除で削減することで、節税につながる為、どのような控除が活用できるかを把握しておくようにしましょう。

不動産売却で活用できる主な控除には、下記のようなものがあります。

特別控除の例 概要説明
居住用財産の3,000万円特別控除 マイホームを売却する際に最大3,000万円を控除できる
空き家売却の3,000万円特別控除 相続した空き家を売却した場合に最大3,000万円を控除できる
収用などによる売却の控除 公共事業の為に売却するときに最大5,000万円を控除できる
平成21年及び平成22年に取得した土地などの売却の控除 該当する年に取得した土地などを売却する場合に最大1,000万円を控除できる

ただし、控除を適用するには細かな条件を満たす必要があります。
適用できそうな控除がある場合、事前に条件をチェックして適用を検討するようにしましょう。

譲渡所得の控除については、こちらの記事で詳しく解説していますのでご覧ください。

3000万円特別控除とは?適用条件や計算方法について解説
買い替え特例とは?適用要件や計算方法、注意点について解説

譲渡所得にかかる税率

計算して譲渡所得が発生する場合、所得税・住民税が課せられます。
譲渡所得にかかる税は、課税対象の譲渡所得に譲渡にかかる税率を乗じるだけで算出できます。

ただし譲渡所得は所有期間に応じて「短期譲渡所得」と「長期譲渡所得」に分かれ、それぞれ税率が異なるので注意しましょう。
また、譲渡にかかる税率は所有期間が10年を超えるマイホームの場合、譲渡所得6,000万円以下の部分に対して軽減税率の適用が可能です。

所有期間ごとの税率と軽減税率適用後の税率は、下記のようになります。

短期譲渡所得 長期譲渡所得
所有期間 5年以下 5年以上 10年以上
(10年超所有軽減税率の特例を適用)
居住用財産を譲渡した場合の合計 39.63%
所得税:30.63%
住民税:9%
20.315%
所得税:15.315%
住民税:5%
譲渡所得6,000万円以下の部分
14.21%
所得税:10.21%
住民税:4%

譲渡所得6,000万円超の部分
20.315%
所得税:15.315%
住民税:5%
それ以外の場合 39.63%
所得税:30.63%
住民税:9%
20.315%
所得税:15.315%
住民税:5%
20.315%
所得税:15.315%
住民税:5%

なお、所得税には東日本大震災の復興の財源確保を目的とした、復興特別所得税も含まれ、「所得税×2.1%」で計算することができます。

10年超所有期間軽減税率の特例は、先述した居住用財産の3,000万円特別控除との併用が可能です。
しかし、10年超所有期間軽減税率の特例・3000万円特別控除ともに、住宅ローン控除との併用ができません。
その為、売却して新しい家を住宅ローンで購入する場合は、どちらの控除を利用するかはシミュレーションしたうえで慎重に検討するようにしましょう。

長期譲渡所得については、こちらの記事で詳しく解説していますのでご覧ください。

長期譲渡所得とは?短期譲渡所得との違いや税金の計算方法について解説

譲渡所得にかかる税金のシミュレーション

ここでは、所有期間4年と12年で譲渡所得にかかる税金のシミュレーションを解説します。

所有期間4年の場合

【条件】
  • 譲渡価額:5,000万円
  • 譲渡費用:150万円
  • 売却した物件の購入額:4,000万円(土地1,500万円+建物2,500万円)
  • その他取得費:200万円
  • 構造:鉄筋鉄骨コンクリート
  • 所有期間:4年

減価償却費は、次のようになります。
減価償却費=2,500万円×0.9×0.015×4=135万円
よって、取得費は4,000万円-135万円+200万円=4,065万円

譲渡所得=5,000万円-(4,065万円+150万円)=785万円

所有期間4年の為、短期譲渡所得の税率が課税されます。
譲渡所得にかかる税金=785万円×39.63%=約311万円

上記の場合、約311万円が税金として課税されるのです。

ただし、売却した不動産がマイホームの場合、3,000万円特別控除の適用で譲渡所得が0円となり、税金は発生しません。

所有期間12年の場合

【条件】
  • 譲渡価額:3,000万円
  • 譲渡費用:50万円
  • 売却した物件の購入額:2,000万円(土地500万円+建物1,500万円)
  • その他取得費:100万円
  • 構造:木造
  • 所有期間:12年

減価償却費は、次のようになります。
減価償却費=1,500万円×0.9×0.031×12=約502万円
よって、取得費は2,000万円-502万円+100万円=1,598万円

譲渡所得=3,000万円-(1,598万円+50万円)=1,352万円

所有期間12年の為、長期譲渡所得の税率が課税されます。
譲渡所得にかかる税金=1,352万円×20.315%=約274万円

さらに、所有期間12年の場合、10年超所有期間軽減税率の特例を適用できるので、適用した場合の納税額は下記の通りです。
譲渡所得にかかる税金=1,352万円×14.21%=約192万円

なお、3,000万円特別控除の適用で譲渡所得が0円となり、税金は発生しません。

譲渡所得が発生したら確定申告が必要?

譲渡所得が発生した場合、確定申告して税金の納税が必要です。
一方、譲渡所得の計算でマイナスが出た場合、税金は課税されない為、確定申告は必要ありません。

ただし、控除の特例を利用して譲渡所得が0円になる場合は、確定申告が必要です。
各種控除の特例は確定申告して初めて適用された状態となります。忘れずに確定申告するようにしましょう。

以下では、確定申告の流れと必要書類を解説します。

手続きの流れ

確定申告の大まかな流れは、下記の通りです。

  1. 必要書類の収集
  2. 確定申告書の作成
  3. 税務署に確定申告書を提出

確定申告書の作成は、申告時期直前になると自治体や税理士会が無料相談会を開催することが多いので、不安な方は活用をお勧めします。

確定申告時期は、売却した年の翌年2月16日から3月15日の期間です。
この時期に確定申告できるように、早めに準備に取りかかるようにしましょう。

こちらの記事では、マンション売却時の確定申告について詳しく解説しています。不動産売却を検討している方は併せてご覧ください。

マンションを売却したら確定申告が必要?流れや手順、必要書類について徹底解説

必要書類

確定申告では、一般的に下記の書類が必要です。

  • 売却した不動産の登記簿謄本
  • 住民票除票
  • 売却した不動産の購入時の売買契約書や購入金額の分かる領収書
  • 売却時の売買契約書や手数料の分かる領収書
  • 確定申告書
  • 譲渡所得の内訳書

確定申告書や譲渡所得内訳書は、国税庁のホームページでダウンロード可能です。
また、控除を適用する場合は、特例ごとに必要書類が異なります。
事前に国税庁のホームページや申告書添付書類チェックシートで確認するようにしましょう。

こちらの記事では、マンション売却時の確定申告書の書き方について詳しく解説しています。不動産売却を検討している方は併せてご覧ください。

マンション売却の確定申告書の書き方は?手続きの流れも併せて解説

譲渡所得に関するよくある質問

最後に、譲渡所得に関するよくある質問を解説します。

所有期間と居住期間の違いは?

所有期間とは、所有者となってからの期間です。
不動産の税法上では、売却した年の1月1日時点の経過年数を所有期間として計算します。
一方、居住期間は実際に住んでいた期間のことをいい、入居日から転居するまでの期間のことを指します。
長期譲渡所得か短期譲渡所得かを決める所有期間は、1月1日が基準日となるので計算する際には注意しましょう。

譲渡所得以外にかかる税金は?

不動産を売却する場合、譲渡所得にかかる税金以外にも下記の税金がかかります。

税金の種類 概要説明
登録免許税 (抵当権がある不動産を売却する場合)抵当権抹消登記の費用※所有権移転登記は基本的に買主様が行うので売主様は不要
印紙税 売買契約書の作成にかかる税金
税額は契約書に記載された金額に応じて異なる
仲介手数料や司法書士手数料にかかる消費税 不動産会社を仲介して売却した場合にかかる仲介手数料と登記を司法書士に依頼した際の手数料にかかる消費税

売却にかかる税金や費用については、こちらの記事で詳しく解説しています。マンション向けの記事ではありますが、ぜひご覧ください。

マンション売却にかかる税金はいくら?計算方法や知っておきたい控除について徹底解説
マンション売却にかかる費用や手数料は?費用を抑える方法も紹介

譲渡所得や控除の要件について相談したい場合は?

税金の計算や控除の適用・確定申告に不安がある方は、税理士への相談をお勧めします。
所得費や譲渡費用に含めて良い費用、適用できる控除は、間違ってしまうと税額に大きな差が出ることもあります。

無料相談会などを利用して、しっかりと節税できるようにしましょう。
また、長谷工の仲介では無料で税務相談ができる「税務相談サービス」を提供しています。
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まとめ

ここまで、譲渡所得やかかる税金の計算について解説してきました。
不動産を売却した際に生じた利益を譲渡所得といい、税金の対象となります。
ただし、各種控除を適用して税額を抑えることもできます。
譲渡所得や税金の計算、適用できる控除については、長谷工の仲介の税理相談サービスを上手に活用しながら、進めていくと良いでしょう。

これから、一戸建てやマンションの売却を進めていく方は、まずこちらの記事をご覧ください。

マンション売却の流れは?注意点やかかる税金・費用、失敗事例についても紹介
一戸建て売却の基礎知識!売却までの流れや費用、成功させる為のポイントを紹介

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※本記事の内容は2024年1月26日現在のものであり、制度や法律については、今後改正・廃止となる場合がございます。

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この記事の著者

逆瀬川 勇造(合同会社7pockets 代表社員)
明治学院大学卒。銀行、不動産会社勤務を経て独立。宅地建物取引士、FP2級技能士(AFP)、住宅ローンアドバイザー。

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