2024.01.26再建築不可物件とは?購入時の注意点や売却のポイント、活用方法を解説

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中古住宅のなかには、建て替えることができない再建築不可物件というものが存在します。
再建築不可物件の場合、不動産広告には必ず再建築不可と明示される為、買主様は購入の際に再建築不可物件であると知ることができます。

再建築不可物件とは、一体どのような物件なのでしょうか。
この記事では、再建築不可物件とはどのような物件なのか、再建築不可物件になる条件や再建築不可物件を購入・売却する際の注意点について解説します。

再建築不可物件とは?

再建築不可物件とは、現存する建物を取り壊してしまうと再びその土地に建物を建てることができない物件のことを指します。
再建築不可物件は、接道義務を満たしていない物件を指すことが多いです。

接道義務とは、建物を建てるにあたって原則としてその土地が幅員4m以上の道路に間口が2m以上接していなければならないという義務を指します。

仮に建物に火災が発生した場合、前面道路の幅員が4m以上あれば消防車が敷地に近づき、間口が2m以上あれば消防ホースを伸ばして消火活動ができるというのが接道義務の存在する理由です。

接道義務は、都市計画法で定められる都市計画区域または準都市計画区域内に適用される建築基準法の規定です。
接道義務が適用されない地域は都市計画区域外と呼ばれますが、都市計画域外とは主に山間部などが該当します。
人が多く住む地域は基本的に都市計画区域となっており、一般的な住宅街であれば接道義務が適用されます。

再建築不可物件になる条件や具体例

接道義務を満たしていない再建築不可物件が生じる主な理由には、3つが考えられます。

1つ目は、行政の監督が甘かった時期に建築確認などの行政手続きを適切に経ないまま建てられたケースです。
1970年代頃までは今よりも大らかだった為、自治体によっては違法に建てられた建物を見過ごしていたところもあります。

2つ目は、建築基準法が施行される以前に建てられた建物です。
建築基準法は1950年(昭和25年)に施行された法律である為、それ以前の建物は建築基準法が存在しなかったことから、理論的には無道路地(接道義務を満たしていない土地のこと)に建っていることはあり得ます。

3つ目は、建設当初は接道義務を満たしていたものの、その後、土地を分筆して接道部分を他人に売却したようなケースがあります。
分筆とは、土地を切ることです。
このケースは、相続税を納める為に自宅の土地の一部を売る場合に生じ得ます。
分筆する際、接道義務の知識がないと、残地を無道路地としてしまうことは考えられます。

再建築不可物件の実状

総務局の調査によると、全国で接道義務を満たせていない住宅数は以下の通りです。

再建築不可物件と疑われる住宅の数(全国)
住宅の総数 6,240万7,400戸
幅員2m未満の道路に接している住宅数 292万3,600戸
道路に接していない住宅数 129万5,500戸

出典:「平成30年住宅・土地統計調査 調査結果」(総務省統計局)をもとに作成

割合としては、全体のうち約7%が再建築不可物件である可能性が考えられます。
なお、道路に接していなくても建築基準法の43条但し書きの許可を得ることで合法的に建てられている建物はあります。
その為、道路に接していない住宅であるからといって、一概に全ての物件が再建築不可物件とは限らないということです。

再建築不可物件の特徴

この章では、再建築不可物件の特徴について解説します。

建築確認不要なリフォームは実施しやすい

再建築不可物件であっても、建築確認が不要なリフォームなら行うことができます。
建築確認とは、着工前に行う図面審査のことです。
建築予定の建物が合法的な建物かどうかを判断する手続きであり、建築確認申請が通れば建築確認済証が下りて着工することができます。
無道路地の場合、建築確認申請が通らない為、着工することができません。

建築確認が不要なリフォームとは、以下のようなものが挙げられます。

  • クロスやフローリングの張り替え
  • バスやキッチン、トイレなどの交換
  • 間仕切りの変更

なお、都市計画区域外に存在する4号建築物と呼ばれる建物は、新築であっても建築確認が不要です。
4号建築物とは、木造なら2階建て以下かつ、床面積が500平米以下、軒高9m以下、高さ13m以下の建物のことを指します。

ただし、都市計画区域外はそもそも接道義務がありませんので、建築確認申請の有無に関わらず、無道路地であっても再建築はできることになります。

固定資産税や相続税が安い

再建築不可物件は、築年数が古い建物が多いことから、固定資産評価額が低く、固定資産税が安い傾向があります。
また、建物の相続評価額は固定資産評価額である為、相続税評価額も安くなります。

相場よりも安価で取引される傾向がある

再建築不可物件は、建物を建てることができず、場合によっては道路の幅が狭いことで車が入りづらいケースもある為、土地の利用価値が著しく劣ることから相場よりも安価で取引されることが多いです。

通常よりも売買までに時間がかかりやすい

一般的な不動産であれば、売却活動を始めてから買主様が決まるまで3ヵ月程度かかります。
しかし、再建築不可物件の場合、広告に必ず再建築不可と明示されてしまう為、まず買主様を見つけることに時間がかかります。その為、一般的な不動産よりも売却までに時間がかかる恐れがあります。

不動産の広告規制は、消費者である買主様を保護する目的で作られており、
買主様が不測の損害を被らないように再建築不可と明記されています。

また、売買契約の前も不動産会社が重要事項説明で再建築不可であることを説明することから、売買契約も成立しにくいといえます。

再建築不可物件を購入する際の注意点

ここでは、再建築不可物件を購入する際の注意点について解説します。

建て替えができない

再建築不可物件は、万が一、建物が地震で倒壊したり、火災で焼失したりしても建て替えることができません。

現存する再建築不可物件のなかには築年数が古い物件もある為、建て替えができないことは大きなリスクがあるといえます。

機材搬入や地質調査に時間がかかることがある

再建築不可物件は、無道路地であることが多く、敷地内に大きな機材を搬入できないといったことも考えられます。
調査や工事に必要な大型重機を持ち込めない可能性もあり、手作業で代替する場合は時間もコストもかかる原因となってしまいます。

住宅ローンを利用できない場合がある

再建築不可物件は、買主様が購入する際、住宅ローンを組めないことも多いです。
住宅ローンの本審査には、不動産会社が発行する重要事項説明書が添付資料とされることがよくあります。

銀行は、重要事項説明書によって物件に問題がないかどうかを見極めます。
再建築不可物件は、土地の利用価値を著しく落としてしまう問題である為、担保価値が極めて低いです。

仮に買主様が住宅ローンを返済できなくなった場合、競売で売却しようとしても売却が困難となってしまいます。
銀行にとっては貸したお金を回収できない可能性が極めて高くなることから、住宅ローンを貸すことが難しくなるのです。

日当たりが良くない可能性がある

状況にもよりますが、周辺の建物に囲まれるように建っている物件の場合、日当たりが悪くなっている再建築不可物件もあります。
日当たりの悪い物件は湿気が溜まりやすく、木造住宅の場合には腐朽を早める原因となります。再建築不可物件に限らずですが、物件の購入を検討する際には日当たりや風通しを事前に確認しておくと良いでしょう。

隣人と敷地の境界線でトラブルになる恐れがある

再建築不可物件は、境界でトラブルが発生する恐れもあります。

例えば、道路に対して間口が実際には1.9mしか接していないにもかかわらず、建築当時は境界が曖昧だったことから10cmずらした部分を建築敷地として建築確認を無理矢理通したということもあり得ます。
この場合、後で境界を確定すると間口は1.9mしか接しておらず、実は無道路地だったということになります。

また、旗竿地の場合、接道部分の間口が2mあったとしても、通路(竿の部分)の途中が2m未満に細くなっていると接道義務を満たしていないことになります。
旗竿地とは、道路と細い通路でつながっており、上から見たときに旗竿状になっている土地のことです。

旗竿地で間口がギリギリ2mとなっている場合には、通路の幅員も2m以上確保されていることをしっかり確認することが適切となります。

再建築不可物件を活用する方法

再建築不可物件を活用する方法について解説します。

再建築ができる状態にする

例えば、今の物件の状態から再建築ができる状態にするという方法があります。
具体的な方法は以下の通りです。

位置指定道路を作る

位置指定道路とは、幅員が4m以上ある私道の建築基準法の道路となります。
仮に位置指定道路ができれば、理論的には接道義務を満たすことはできます。
しかしながら、無道路地の場合、そもそも位置指定道路を公道に接道できない状態の物件がほとんどであることから、位置指定道路を作るという方法は非現実的だといえます。

隣地を買う・借りる

隣地を買う、もしくは借りることで接道義務を満たす土地にすることはできます。
再建築不可物件を是正するには、隣地を買う・借りるという方法が現実的です。

セットバックを行う

セットバックとは、敷地の一部を後退させて、接道義務を満たす為に必要な道幅を確保する方法です。

例えば、もともと2m未満の接道に面していたため再建築不可物件とされていたが、当該地区が狭あい道路整備促進区域であった為、建築基準法43条但し書きの許可を得てセットバックを実施したことで再建築可能が可能になったという事例があります。

狭あい道路とは、道路幅員が1.8m以上4.0m未満の一般道路のことです。地方自治体によっては、こうした狭あい道路の整備やセットバックなどを推進しているところもある為、確認してみると良いでしょう。

ただし、地方自治体ごとに事業予算が決まっている為、申請した段階で事業予算がなくなっていたり、来年度の協議に回されたりするケースもあります。

「43条但し書き」の許可を得る

43条但し書きとは、敷地の周辺に広い空地などが存在する場合は、接道義務を満たしていなくても許可を得ることで建物を建てられるという制度のことです。
敷地の周辺に広い空間が広がっていれば、火災時に建物近くまで消防車が到達し、消火活動ができる為、このような特例が認められています。

また、既存の物件が43条但し書きによって建っており再び許可を得られる場合には、再建築は可能です。

一方で、既存の物件が43条但し書きの許可を得ていない場合でも、周辺に広い空地があり、新たに許可を得られる条件が整っている場合には、再建築ができる場合もあります。

更地にして土地活用を行う

再建築不可物件は、車も入りにくく、視認性の低い物件も多い為、更地にしたときに駐車場や自動販売機置場などの土地活用が難しい場合も多いです。

再建築不可物件では、更地にしたときに以下のような土地活用であればできる可能性はあります。

【土地活用の方法】
  • バイク置場
  • シェアサイクルスペース
  • 貸し農園

なお、住宅が建っている土地の場合、住宅を取り壊すことで土地の固定資産税が上がりますので、取り壊しは慎重に判断することが適切です。
空き家の税金については、こちらの記事で詳しく解説していますのでご覧ください。

空き家を放置すると税金が高くなる?固定資産税の増額や対策について紹介

活用しない場合は売却を視野に入れる

再建築不可物件でも、建物をそのまま貸して家賃収入を得ることは可能です。
ただし、既存の建物が貸しにくく、活用が難しい場合は売却も視野に入れて検討することも望ましいといえます。
売却に関する基礎知識については、こちらの記事で解説していますのでご覧ください。

一戸建て売却の基礎知識!売却までの流れや費用、成功させる為のポイントを紹介

再建築不可物件を売却する際のポイント

再建築不可物件の売却は、まずは隣地所有者に打診することがポイントです。
隣地所有者は、自分の土地が広がる為、購入してくれる可能性は十分にあります。

一方で、隣地所有者から土地を購入し、接道条件を満たす物件に変えてから売却するという方法もあります。
ただし、この場合、隣地を相場よりも高く買う可能性が高くなり、売却時に損失が出てしまうことも多いです。

その他としては、買取を行っている不動産会社に対して、買い取ってもらう方法もあります。

まとめ

ここまで、再建築不可物件について解説してきました。
再建築不可物件は、活用やリフォーム、売却の可否などを不動産会社に相談したうえで対応を決めることが望ましいといえます。
長谷工の仲介では無料相談を受け付けていますので、再建築不可物件にお悩みの方はご利用いただけると幸いです。

※本記事の内容は2024年1月26日現在のものであり、制度や法律については、今後改正・廃止となる場合がございます。

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この記事の著者

竹内英二(株式会社グロープロフィット 代表取締役)
不動産鑑定および宅建業の代表取締役。不動産鑑定士、宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、公認不動産コンサルティングマスター(相続対策専門士)、中小企業診断士、住宅ローンアドバイザー。大阪大学出身。
写真:竹内英二(株式会社グロープロフィット 代表取締役)

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