高額で大切なマンションを売るには、誰しも失敗したくないところです。
マンション売却で成功するには、よくある失敗例と対策を知ることがポイントとなります。
この記事では、マンション売却前や活動中の失敗、さらには売却後の失敗について解説します。
最初にマンション売却の流れをおさらい
マンション売却の流れは下図の通りです。基本的に、準備から引き渡しまでトータルで数ヵ月程度の時間がかかります。 まずは、どのような順番でマンション売却が進むのかを頭に入れておきましょう。
マンション売却は大きく準備フェーズと、売却活動フェーズ、売却後のフェーズに分かれます。各フェーズについては、こちらの記事で詳しく紹介していますのでご覧ください。
マンション売却の流れは?注意点やかかる税金・費用、失敗事例についても紹介
マンション売却活動前のよくある失敗例と対策
マンション売却の良くある失敗例について解説します。
住宅ローンを完済できそうか確認しなかった
住宅ローンが残っている物件を売る際は、住宅ローンの残高を確認することが大切です。
住宅ローンが残ったままでも、マンションを売りに出すことは可能ですが、引き渡しまでにローンを完済して抵当権を抹消する必要があります。最新の返済予定表をチェックし、売却によって完済できそうか、自己資金を充当することで完済できるのかを確認しておきましょう。
マンション売却時にローン残債がある場合の注意点については、こちらの記事で詳しく紹介していますのでご覧ください。
ローン残債があってもマンション売却できる?ケース別に対処方法を解説
もし自己資金が足りず、ローン完済が難しいときは、任意売却を検討するのも一つの方法です。任意売却とは、住宅ローンの返済が困難になったときに金融機関の了承を得て、一定の条件下で売却する方法のことをいいます。任意売却については、こちらの記事で詳しく紹介していますのでご覧ください。
適正価格を調べずに売り出し価格を設定した
物件をスムーズに売却する為には、適正価格で売り出すことが重要です。
その為にも同エリアの相場価格を把握し、適正な価格を設定しましょう。同じエリア内でも、間取りや立地環境によって相場価格は異なります。担当者ともよく相談し、売り出し価格を設定することをお勧めします。
各エリアの売却相場については、こちらの記事で詳しく紹介していますのでご覧ください。
東京都のマンション売却価格相場は?各市区町村別・築年数別・間取り別に解説
横浜市のマンション売却価格相場は?各市区町村別・築年数別・間取り別に解説
大阪府のマンション売却価格相場は?各市区町村別・築年数別・間取り別に解説
名古屋市のマンション売却価格相場は?各市区町村別・築年数別・間取り別に解説
福岡県のマンション売却価格相場は?各市区町村別・築年数別・間取り別に解説
販売期間を短く見積もってしまった
売却にはトータルで数ヵ月程度の時間がかかります。余裕がないスケジュールを組んでしまうと、「売り急ぎ」につながりかねませんので、スケジュールは余裕を持って組むようにしましょう。
売却を検討している方のなかには、新居の決済日が迫っている・転勤が決まっている・相続税の支払い期限が迫ってきているなどの事情で、売却したい時期が決まっている方もいるでしょう。
このように、まとまった資金が必要なタイミングまでに売却が難しいときは、不動産会社の直接買取による売却も検討しましょう。
直接買取であれば条件次第で最短1週間程度での売却も期待できる為、「急いでマンションを現金化したい」という方にもお勧めです。
買取については、こちらの記事で詳しく紹介していますのでご覧ください。
マンション買取とは?仲介との違いや注意点、向いているケース、業者の選び方について解説
設備の不備などを営業担当に伝えなかった
売主様は、売却時に契約不適合責任という責任を負います。
契約不適合責任とは、契約内容とは異なるものを売った場合、売却後に買主様から修繕または契約解除、損害賠償などを追及される責任のことです。
設備の不備などを伝えないまま売ってしまうと、契約内容とは異なるものを売ったことになり、契約不適合責任を問われてしまう恐れがあります。
その為、設備の不備や床の傷、クロスの汚れの有無といった物件に関する問題、近隣から臭いが発生しているといった周辺環境に関する問題は、担当者へ正確に伝えるようにしましょう。事前に伝えておくことで、簡易的な修繕や設備交換クリーニングなどで対処できるものなのか判断を仰ぐことにもつながります。
瑕疵担保責任(契約不適合責任)については、こちらの記事で詳しく紹介していますのでご覧ください。
マンション売却における瑕疵担保責任(契約不適合責任)とは?対策方法を解説
不動産会社を比較検討せずに決めてしまった
マンション売却において、不動産会社選びは重要です。
査定額が一番高いからといって、査定額だけで依頼先を決めないようにし、アフターフォローの内容などを比較する為にも複数社へ査定依頼しましょう。また担当者との相性も大切な為、決定する前に極力コミュニケーションを取るようにします。
不動産会社選びの際に、比較したいポイントは以下の通りです。
- 査定額の根拠を詳しく説明しているか
- マンション売却の実績が豊富か
- 仲介による売却だけでなく買取など幅広い売却方法に対応しているか
- 口コミの評価はどうか
マンション売却時の不動産会社の選び方については、こちらの記事で詳しく紹介していますのでご覧ください。
マンション売却業者の選び方は?売却の手段や確認すべきポイントを解説
売却手続きに必要な書類が取得できていなかった
マンション売却には、揃えておくべき書類がいくつかあります。
例えば住宅ローンがまだ残っているときは、金融機関に返済予定表や残高証明書を発行してもらって残高を確認し、決済日当日に返済する額がいくらになるのか確認しておきましょう。売り出し価格にも影響する為、不動産会社へ査定依頼する前に確認しておくようにします。
また、登記済証(権利証)または登記識別情報通知書は、所有権移転の際に必要な書類ですが、紛失してしまっていることに気付いたら、なるべく早めに不動産会社へ相談してください。
登記済証(権利証)または登記識別情報通知書がなくても売却は可能ですが、司法書士などに本人確認をしてもらい所有者本人であることを証明する必要があります。
マンションの登記済証(権利証)を紛失した場合の対処方法について知りたい方は、こちらの記事で詳しく紹介していますのでご覧ください。
マンションの登記済証(権利証)を紛失した場合の対処方法は?売却時の注意点を解説
このように書類が不足することで、手続きがスムーズに進まないケースもあります。その為にも、各売却のフェーズで必要な書類を確認し、早めに揃えておきましょう。
マンション売却のフェーズごとに必要な書類については、こちらの記事で解説していますのでご覧ください。
マンション売却に必要な書類は?段階ごとの必要書類と入手方法を解説
マンション売却活動中のよくある失敗例と対策
次に、マンション売却中の失敗について解説します。
媒介契約の違いをよく調べずに契約してしまった
媒介契約は3種類あり、それぞれ特徴が異なります。
項目 | 一般媒介契約 | 専任媒介契約 | 専属専任媒介契約 |
---|---|---|---|
契約期間 | 3ヵ月以内 (法律上の規制なし。標準媒介契約約款による) |
3ヵ月以内 (宅建業法による定めあり) |
3ヵ月以内 (宅建業法による定めあり) |
複数の会社と契約できるか | 可能 (1社のみに依頼することも可能) |
不可 (1社のみに限定される) |
不可 (1社のみに限定される) |
依頼主への活動報告義務 | 報告義務なし (報告を依頼することは可能) |
2週間に1回以上の活動報告義務あり (文書もしくはメール) |
1週間に1回以上の活動報告義務あり (文書もしくはメール) |
自分で買主様を発見し取引できるか | 可能 | 可能 | 不可 |
レインズの登録義務 | 任意 (登録の義務はなし。ただし登録を依頼することは可能) |
媒介契約を締結した翌日から7日以内に登録する義務あり ※休業日を除く |
媒介契約を締結した翌日から5日以内に登録する義務あり ※休業日を除く |
例えば複数社に依頼したいと思っているのであれば、専任媒介契約や専属専任媒介契約ではなく、一般媒介契約を選ぶ必要があります。よく条件を確認せずに専任媒介契約を締結してしまい、複数社に依頼できずに困ったという失敗談を聞くこともあります。その為、それぞれの違いを確認してから契約するようにしましょう。
媒介契約については、こちらの記事で詳しく紹介していますのでご覧ください。
専任媒介契約とは?他の媒介契約との違いやメリット・注意点を分かりやすく解説
媒介とは?不動産取引における仲介との違いや媒介契約の種類について解説
売却する時期を見誤った
不動産市場が活発なときに売り出さないと、売却までに時間がかかってしまう恐れがあります。不動産売却は需要の影響を受けやすい為、購入需要が高まる時期にタイミングを合わせて売却したいものです。
下記は、中古マンションの月別成約件数を過去3年分のデータをもとに、グラフにしたものです。
月 | 1月 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 | 12月 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
2023年 (件) |
2,581 | 3,240 | 3,442 | 2,954 | 2,737 | 3,111 | 3,236 | 2,367 | 3,191 | 3,287 | 2,900 | 2,941 |
2022年 (件) |
2,760 | 3,146 | 3,405 | 3,094 | 2,877 | 3,003 | 3,104 | 2,346 | 2,990 | 3,072 | 2,797 | 2,835 |
2021年 (件) |
3,480 | 3,587 | 4,228 | 3,428 | 3,297 | 3,262 | 3,002 | 2,615 | 3,176 | 3,440 | 3,416 | 2,881 |
新生活や新学期を迎える前の、1〜3月頃に多く成約していることが分かります。また8月に成約件数が落ち込むものの、9〜11月に成約件数が増えています。秋は転勤の時期であり、比較的気候が良く、物件を探しやすい時期であることが数字を押し上げていると考えられます。
ただし、前述した通り、マンション売却には数ヵ月程かかる為、売却時期から逆算して売却を進めていく必要があるという点には注意しましょう。
出典:東日本不動産流通機構(レインズ)「MarketWatch2024(令和6)年1月度」
出典:東日本不動産流通機構(レインズ)「MarketWatch2023(令和5)年1月度」
出典:東日本不動産流通機構(レインズ)「MarketWatch2022(令和4)年1月度」
不動産会社から囲い込みを受けてしまった
不動産会社から囲い込みを受けてしまうと、売却までに時間がかかってしまうなど、売主様にとって不利になることがあります。囲い込みとは、不動産会社が自社の利益を優先する為に他社へ物件情報を公開せず、社内両手(売主様と買主様から仲介手数料を得ること)を目指すことをいいます。
囲い込みにあわない為にも、信頼できる不動産会社へ依頼し、不動産流通機構(レインズ)へ登録したことを証明する登録証明書を受け取るようにしましょう。
内覧時の部屋の印象が良くなかった
内覧時の印象が悪いと、購入希望者の印象を落としてしまうことがあります。販売期間中はなるべく室内の整理整頓に努め、清潔な状態を保つようにしましょう。例えば一部の不動産会社が提供している、荷物一時預かりサービスを利用するのも一つの方法です。
マンション売却の内覧については、こちらの記事で詳しく解説していますのでご覧ください。
マンション売却での内覧の流れは?事前準備やチェックすべきポイントもご紹介
また壁のクロスの汚れや床のへこみが目立つ場合は、事前に修繕しておくことが望ましいです。長谷工の仲介では「壁・床リペア」など安心して売却できるサービスが充実していますので、不動産会社選びの参考にしてみてください。
内覧時に物件の魅力と欠点を十分に伝えられなかった
内覧の際はじっくり見てもらえるように配慮し、気になる汚れや傷があれば、隠さず伝えるようにしましょう。内容によっては契約不適合責任を問われ、契約解除に発展することもあるので注意が必要です。
また買主様が引っ越し後の生活がイメージできるように、住んでいるからこそ分かるメリットを説明し、成約につながるようなマンションの魅力を伝えるようにしましょう。
買主様のローン審査が通らず契約解除になった
マンション売却では、買主様は売買契約後に住宅ローンの本審査を受けることが多いのですが、買主様が住宅ローンの本審査に通らないことで契約が解除されることもあります。
売買契約後の解除のリスクを減らすには、住宅ローンの仮審査に通っている方と契約することが適切といえます。
仮審査であれば売買契約前に行える為、不動産会社を通じて買主様とコミュニケーションを取ってもらい、仮審査に通っているかどうかを確認すると良いでしょう。
値下げ交渉の際に吟味せずに応じてしまった
マンション売却では、購入の意思が固い購入希望者から「購入申込書(買付証明書)」が提示されます。 購入申込書とは、購入の意思があることを正式に売主様に伝える為の書面で、購入希望価格や、引き渡し希望時期などが記載されています。
提示された購入希望価格に応じるか否かは、不動産会社の販売活動状況や反響の多寡、販売活動期間などを見て総合的に判断すると良いでしょう。
また事前に「最低限ここまでなら値引きできる額」を決めておくと、相手側にスムーズに回答できます。
マンション売却活動後のよくある失敗例と対策
最後に、売却後の失敗について解説します。
抵当権抹消手続きが遅くなってしまった
不動産を売却する際、基本的に住宅ローンが残っている場合は、抵当権を抹消しなければ、買主様へ所有権を移転できません。決済日が決まったら、早めに金融機関へ連絡し、抵当権抹消手続きを進めておきましょう。手続きが遅くなってしまうことで買主様への引き渡しに支障が出てしまい、トラブルに発展することもあります。
抵当権の抹消については、こちらの記事で詳しく紹介していますのでご覧ください。
抵当権抹消手続きの流れは?手続きが必要なタイミングやかかる費用を徹底解説
売却にかかる費用や税金が想定よりも多かった
マンション売却にかかる費用が想定よりも多く、手元に残る資金が少なくなったといった失敗談もあります。その為、マンション売却時にかかる諸費用や税金を把握し、資金計画を立てておきましょう。費用や税金をシミュレーションしたい場合は、不動産会社の担当者に相談しておくと安心です。
マンション売却にかかる一般的な諸費用や税金には、以下のようなものが挙げられます。
- 仲介手数料
- 印紙税
- 登録免許税
- 司法書士手数料
- 住宅ローンの繰り上げ返済手数料
- 引っ越し代
- 譲渡所得(売却によって生じた利益)にかかる税金
マンション売却にかかる費用については、こちらの記事で詳しく紹介していますのでご覧ください。
マンション売却にかかる費用や手数料は?費用を抑える方法も紹介
マンション売却にかかる税金はいくら?計算方法や知っておきたい控除について徹底解説
売却に関する課税制度をよく知らなかった
マンションを売却して利益(譲渡所得)が発生すると、譲渡所得に対して税金がかかります。
税率は不動産の所有期間によって異なり、売却した年の1月1日に5年を超える場合は長期譲渡所得(所得税15%・住民税5%)、5年以下は短期譲渡所得(所得税30%・住民税9%)になります。また、令和19年12月31日(2037年)までは、上記に加えて所得税の2.1%を復興特別所得税として納付する必要があります。
ただし、利益が出たとしても特例の適用を受けることで、税金の負担を軽くすることができます。自分が受けることができる特例がないかを、しっかりと確認するようにしましょう。
マイホームを売却したときに利用できる、税金の特例は以下の2つです。
- 居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例
- 所有期間10年超の居住用財産を譲渡した場合の軽減税率の特例
これらの特例は、買い替えで購入物件に住宅ローン控除を使う場合、同時に併用できないことになっています。「売却物件の節税特例」と「購入物件の住宅ローン控除」は選択適用の為、いずれか有利なほうを選択しましょう。
マンション売却時に知っておきたい課税制度や特例については、こちらの記事で詳しく紹介していますのでご覧ください。
長期譲渡所得とは?短期譲渡所得との違いや税金の計算方法について解説
【2024年】住宅ローン控除はいつまで受けられる?税制改正による変更点や要件、申請方法について解説
確定申告を忘れてしまった
マンションを売却して利益(所得)を得たときや税金の控除を受ける際には、売却した翌年の2月16日から3月15日までの間に確定申告をする必要があります。
万が一確定申告を忘れてしまうと、本来納めるべき税金とは別にペナルティとして無申告加算税が課されます。また納付期限までに所得税を納めなかったときは、延滞税が課されます。忘れないように注意しましょう。
まとめ
ここまで、マンション売却の失敗について解説してきました。
マンションを売却したいけど失敗したくない方は、この記事で失敗しやすいポイントを確認しておきましょう。また、マンション売却で失敗を防ぐには、信頼できる不動産会社に任せることもお勧めです。
長谷工の仲介では、「売却何でも相談」サービスを展開しており、売主様の悩みに細かく対応することが可能ですので、ぜひご相談ください。
※本記事の内容は2024年6月26日現在のものであり、制度や法律については、今後改正・廃止となる場合がございます。