2023.09.27心理的瑕疵とは?該当する例や告知義務の有無について解説

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心理的瑕疵とは、買主様や借主様が心理的抵抗や嫌悪を感じる不動産のことをいいます。いわゆる「事故物件」も心理的瑕疵の一種です。
心理的瑕疵のある物件は、買主様から避けられる傾向があり売却が難しくなります。

また、心理的瑕疵に限らず瑕疵のある不動産を売却する際は、売主様に告知義務が課せられる為、告知義務についても理解しておく必要があります。
とはいえ、心理的瑕疵のある物件がどのような物件なのか、告知義務の範囲についてなどよく分からないという売主様も多いでしょう。

反対に、心理的瑕疵のある物件の購入を検討している方のなかには、安心して購入する為の注意点を知りたいという方もいるでしょう。
そこで、この記事では心理的瑕疵の基本知識や他の瑕疵との違い、告知義務の有無、売買時の売却側・購入側それぞれの注意点などを分かりやすく解説します。

心理的瑕疵とは?

心理的瑕疵とは、構造上や設備などには問題はないが、購入や住むうえで心理的に抵抗感や嫌悪感を抱く欠陥のことです。
もっともイメージしやすいのは、自殺や他殺など人の死が発生した物件であるいわゆる「事故物件」でしょう。
自殺や他殺・事故といった一般的な自然死・病死以外の人の死が室内や周囲で起きた物件は、心理的瑕疵のある物件として認められるケースが多いです。

しかし、心理的瑕疵は人の死以外にも次のようなケースで認められる場合があります。

  • 墓地や火葬場・刑務所など近隣に嫌悪感を抱く施設が立地している
  • 指定暴力団構成員など反社会的組織が近隣に居住している

このように心理的瑕疵のある物件は、物件の構造などには問題がなくても日常生活において心理的な影響を及ぼす恐れがあります。
その為、心理的瑕疵のある物件を取引する際には、買主様・借主様にその旨を告知する義務が課せられています。

しかし、心理的瑕疵は明確な基準がない為、なにが心理的瑕疵に該当し、告知期間も曖昧でした。心理的瑕疵の告知についての基準がないことから、トラブルに発展するケースは少なくありませんでした。
そこで、心理的瑕疵の告知によるトラブルを未然に防ぐ為に、2021年に国土交通省から「人の死の告知に関するガイドライン」が公表されました。
ガイドラインでの告知義務については後述するので、参考にしてみてください。

不動産に関するその他の瑕疵

不動産に関する瑕疵は心理的瑕疵だけではありません。
そもそも「瑕疵」とは、本来ある性質や品質を欠く状態のことをいいます。
不動産取引においての瑕疵は、不動産に対する重大な欠陥や問題点のことです。
心理的瑕疵以外にも、次の3つの瑕疵があります。

  • 物理的瑕疵
  • 法律的瑕疵
  • 環境的瑕疵

それぞれ詳しくみていきましょう。

物理的瑕疵

物理的瑕疵とは、建物の構造など不動産そのものの瑕疵のことをいいます。
建物・土地それぞれ瑕疵があり、次のような瑕疵が一般的です。

  • シロアリ被害
  • 雨漏りや水漏れ
  • 建物傾き
  • ひび割れ
  • 土壌汚染
  • 地盤沈下
  • ゴミや廃材などの地中障害物(埋設物)

なお、床や壁のキズや摩耗など日常生活で通常生じる建物の破損は、瑕疵には該当しません。

法律的瑕疵

法律的瑕疵とは、法的に問題のある不動産のことをいいます。
一般的には、次の法律に反しているケースが多いでしょう。

  • 都市計画法
  • 建築基準法
  • 消防法

計画的な街づくりについて定めた都市計画法では、市街化調整区域など区域を指定しています。
基本的に住宅の建設が認められない市街化調整区域に、建設されている場合などが土地計画法に抵触しているとして法律的瑕疵に該当します。

建築基準法は、建築するうえで建物が満たさなければならない基準について定めています。
建物を建設するには、構造上の安全基準や容積率(延べ床面積)・建ぺい率(敷地面積に対する建物面積の割合)・接道義務(建物が道路に2メートル以上接っていなければならないという決まり)などこの建築基準法に則って建設する必要があるのです。
この建築基準法の建築基準を満たしていない場合、法律的瑕疵に該当します。

消防法は、火災報知器など防火設備の設置義務を定めており、この基準を満たしていない場合、法律的瑕疵に該当します。

基本的には、新しい建物を建設する場合は、現行の法律の基準を満たして建設する為、法律的瑕疵が発生することはほとんどありません。
ただし、法律は適時改正される為、改正前の基準で建設されている場合に、現行の法律の基準を満たせずに法律的瑕疵に該当する可能性があるのです。

環境的瑕疵

環境的瑕疵とは、構造など不動産自体には問題はないものの、環境的な要因で生活するうえで不快感や嫌悪感を抱く瑕疵のことを言います。
次のような物件は環境的瑕疵が認められる可能性があるでしょう。

  • 近隣に火葬場や墓場・風俗営業・清掃工場など嫌悪施設が存在する
  • 近隣の鉄道や高速道路などにより騒音や振動がある
  • 近隣の工場などから異臭がする
  • 近隣のゴミ屋敷から異臭や害虫の被害がある

環境的瑕疵には、心理的に嫌悪感を抱く瑕疵だけでなく、実際に日常生活に影響する瑕疵があります。
また、環境瑕疵は内容によっては心理的瑕疵に含まれる場合もあります。

心理的瑕疵と他の瑕疵の違い

心理的瑕疵は、嫌悪感や抵抗感といった目には見えない瑕疵の為、他の瑕疵とは扱いが異なる点もあります。
ここでは、心理的瑕疵と他の瑕疵の違いについてみていきましょう。
大きな違いは、次の2つです。

  • 告知義務の具体的な期間が明確でない
  • 物理的な対応ができない

告知義務の具体的な期間が明確でない

心理的瑕疵は、告知期間があいまいです。
国土交通省のガイドラインでは、賃貸では発生後おおむね3年間の告知義務を示していますが、売買物件では明確な期間が提示されていません。

また、国土交通省のガイドラインは不動産取引の告知義務の判断基準ではありますが、法的な効力があるわけではありません。過去の判例では、売買物件で心理的瑕疵発生後、数十年経過していても、心理的瑕疵が問われた事例もあるのです。

なお、以前の住人が起こしていた瑕疵であっても、知っているのであれば売却時に告知しなければなりません。その為、中古で購入した場合は購入時の契約書や物件状況報告書等を確認のうえ、引き継いだ瑕疵の情報を伝えましょう。
また、以前の瑕疵を解消した場合であっても告知義務はあります。例えば、以前漏水をしていた箇所を修繕して住み続けたケースなどが考えられます。
このような場合でも、トラブルを避ける為にも瑕疵内容や解消方法・その時期などを告知するようにしましょう。

告知義務について不安がある場合は、弁護士などに一度相談することをお勧めします。

物理的な対応ができない

心理的瑕疵以外の瑕疵は物理的な対応が可能なケースが多いです。
例えば、水漏れであれば給排水管の交換などで修繕できます。
その為、心理的瑕疵以外の瑕疵の場合、買主様が瑕疵を発見した場合、売主様に対して「追完請求」が可能です。追完請求とは、瑕疵の解消の為の修理を請求することをいいます。

しかし、心理的瑕疵は物理的な解消は基本的にできません。
心理的瑕疵で契約不適合責任を問われた場合、売主様は追完請求以外の「契約解除」や「損害賠償請求」が求められる可能性があります。

心理的瑕疵における告知義務の有無

冒頭でも説明したように、心理的瑕疵のなかでも特に多い「人の死」に関しては、なにが瑕疵に該当するのか判断基準が明確ではありません。
その為、告知に関してトラブルに発展するケースが少なくありませんでした。
そこで、2021年に国土交通省では「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」で告知の義務のあるケースを明確にしました。
このガイドラインによる告知義務は、次のように定められています。

出典:国土交通省「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」

告知義務が発生しないケース

告知義務が発生しないケースには、次のようなケースが該当します。

  • 老衰や持病による病死といった自然死
  • 転落や誤飲・入浴中の溺死などの事故死
  • 日常的に使用しない共用部分における事案

老衰や病死といった自然死の場合は告知が不要です。
また、事故死であっても階段からの転落や食事中の誤飲のように、日常生活における不慮の事故も告知義務がありません。

告知義務が発生するケース

告知義務が発生するケースは、上記の告知義務がない人の死以外が該当します。
具体的には、次のようなケースです。

  • 自殺
  • 他殺
  • 事故による死亡(日常生活中の不慮の事故を除く)
  • 火災による死亡
  • 病死や不慮の事故死でも長期間放置された場合

自殺や他殺・事故や火災による死亡は告知義務があります。
また、病死や日常生活上の不慮の事故といった一般的な死因であっても、遺体が長期間放置され特殊清掃が必要な状態になった場合は、告知義務があるので注意しましょう。
その為、高齢者の孤独死といった場合には注意が必要です。
また、賃貸物件の場合告知すべき事例が発生した場所が専有部分でない場合も、入居者が日常的に使用する共用部分の場合は告知の対象となります。

上記の事例に対して、賃貸物件では事案発生からおおむね3年間告知の必要があると定めてられています。ただし、告知義務がなくなった場合でも入居者から問われた場合は、告知の必要があります。
なお、売買の場合は明確な定めがなく3年以降も告知が必要になります。

心理的瑕疵のある不動産を売却・購入する際の注意点

心理的瑕疵のある物件の取引にはいくつか注意点があります。
ここでは、売却・購入それぞれの注意点を見ていきましょう。

売却時の注意点

売却時の注意点としては、次の4つが挙げられます。

  • 相場よりも安値での取引となってしまう
  • 告知義務を怠らないようにする
  • リフォームや修繕が必要になる場合もある
  • 既存住宅売買瑕疵保険への加入を検討する

それぞれ詳しくみていきましょう。

相場よりも安価での取引となってしまう

一般的に心理的瑕疵物件は、通常の物件よりも安値での売却となります。
心理的瑕疵があるからといって必ずしも相場よりも下げる必要はありませんが、基本的に買主様に避けられる物件でもあるので価格を下げることが一般的です。

ただし、心理的瑕疵の発生原因によっても価格の下げ幅は異なるものです。
自殺や病死といった一般的な死因の場合は、それほど価格を下げなくても売却できる可能性があるでしょう。
反対に、社会的影響の大きい事件の物件の場合、大きく価格を下げても売却できないケースもあります。

また、買主様によっても価格は異なります。
事件をまったく気にしない方もいれば、ちょっとした自然死でも避けたいという方もいるでしょう。事故物件であることを気にする買主様であれば、大幅な値下げを要求してくるケースも考えられます。
このように、心理的瑕疵のある物件は事案の内容や買主様によって価格が大きく左右されます。

告知義務を怠らないようにする

告知義務のある物件で告知を怠った場合、契約不適合責任を問われる恐れがあります。
契約不適合責任とは、契約の対象物が目的の種類や品質を満たしていない場合に、売主様に問われる責任のことです。不動産取引では、心理的瑕疵に限らず瑕疵のある物件を瑕疵があることを告げずに引き渡した際に問われます。
以前は「瑕疵担保責任」として定められていましたが、2020年に内容を見直し契約不適合責任と名称が変わりました。

契約不適合責任を問われた場合、瑕疵の内容の修繕や代金の減額・契約解除・損害賠償請求などを受ける恐れがあり、売主様に大きな負担となります。
売主様は不動産の状況を正確に把握し、漏れなく買主様に告知することで契約不適合責任を避けられます。
瑕疵のある物件は、事前に不動産会社に相談したうえで告知義務を怠らず取引することが大切です。
契約不適合責任や売却時の注意点については、こちらの記事で詳しく解説していますのでご覧ください。

マンション売却における瑕疵担保責任(契約不適合責任)とは?対策方法を解説

事故物件を売却する方法とは?告知義務や売却価格の相場について解説

リフォームや修繕が必要になる場合もある

心理的瑕疵の場合、リフォームや修繕が必要になるケースもあります。
事案の内容によっては、建物内の汚れや破損が激しい場合もあるでしょう。
また、そのままの状態では買主様の印象も悪い為、リフォームしてイメージを一新するのも一つの手となります。

特に、遺体の腐敗が進んでからの発見の場合、通常の清掃やハウスクリーニングでは対応できない為、特殊清掃も検討する必要があります。
特殊清掃とは、血液や腐敗臭などがしみ込んだ建物内を特殊な洗剤などを用いて綺麗に清掃することです。
遺体が発見された室内は汚れや臭いだけでなく、病原菌など衛生面の心配もある為特殊清掃しておくと良いでしょう。

ただし、リフォームや特殊清掃して綺麗になったとしても告知義務がなくなるわけではありません。
また、仮に建物を解体して更地にして売却する場合でも、告知義務は残る点にも気を付ける必要があります。

既存住宅売買瑕疵保険への加入を検討する

既存住宅売買瑕疵保険とは、中古住宅の検査と保証がセットになった保険のことです。
買主様ではなく売主様(事業者)が加入する保険で、この保険に加入することで売却後に瑕疵が見つかった際の補修費用などが加入者に支払われます。

中古物件の場合、売主様でも正確な物件の状況を把握することが難しく、売主様も把握していない瑕疵が売却後に発見される恐れがあります。
既存住宅売買瑕疵保険では、住宅の基本的な性能を専門の建築士に調査してもらい、合格することが保険加入の条件となる為、物件の状態を正確に把握することができます。
買主様としても正確な住宅の状態を知れるのは、購入判断の大きなポイントとなるでしょう。

また、個人が売主様の場合、損害賠償請求をされても支払い能力がない場合もあります。保険に加入することで、万が一請求を受けても支払いに対応できるので、売主様・買主様にとってメリットが生まれるのです。

ただし、既存住宅売買瑕疵保険は、基本的に心理的瑕疵には対応していない点には注意しましょう。

購入時の注意点

心理的瑕疵物件は一般的に安価で購入できる為、瑕疵内容を気にしない方であれば購入費用を抑えられます。

ただし、なかには「安かったから」と心理的瑕疵を見逃して購入してしまうケースもあるでしょう。
ここでは、心理的瑕疵物件購入時の注意点として、次の2つを解説します。

  • 該当箇所の確認を忘れないようにする
  • 売主様に請求できる権利を把握しておく

該当箇所の確認を忘れないようにする

瑕疵のある物件は、チラシなどの物件情報欄に「告知事項あり」と記載されるのが一般的です。
「告知事項あり」となっている物件は、その内容をしっかりと確認するようにしましょう。
この際、内容を情報としてみるだけでなく実際に現場の様子を確認することも大切です。
実際に見てみると、思ったよりも状態が良い場合や、想定よりも悪い場合など様々あります。

また、物件の状態や衛生面だけでなく、安全面も慎重にチェックすることが大切です。
事故の内容にもよりますが、殺人なら防犯上の問題、火災なら防災上の問題、などがリスクとして考えられます。
心理的な問題だけでなく、実際に安心して住めるかどうかという点でもしっかりとチェックするようにしましょう。

売主様に請求できる権利を把握しておく

契約不適合責任では、購入時に告げられなかった欠陥が見つかった場合、買主様は売主様に対して次のような請求をすることができます。

請求できる権利 権利の概要
追完請求権(補修請求権) 補修や代替物の引き渡しを請求できる権利
代金減額請求金 追完請求に応じてもらえない場合、代金を減額するように請求できる権利
損害賠償請求権 買主が損害を被った場合に請求できる権利
契約解除権 契約を強制的に解除できる権利契約解除時には代金全額の返還請求も可能

ただし、請求が認められるかは契約不適合の度合いによっても異なり、必ずしも認められるわけではない点には注意しましょう。

契約不適合責任を問える時期には定めがあり、契約書に記載されています。
また、特約を設けることで契約不適合責任を免責にすることも可能です。
築年数の古い中古物件などは、契約不適合責任を厳密に問うと取引自体に支障が出る為免責になるケースも多いでしょう。
契約時には契約不適合を問える時期や内容などはしっかりと確認しておくことが大切です。

まとめ

ここまで、心理的瑕疵の内容や告知事項、購入・売却時の注意点についてお伝えしました。
心理的に嫌悪感や抵抗感を抱く物件である心理的瑕疵物件には、告知義務があり告知を怠ると損害賠償請求や契約解除を求められる可能性があります。
なにが心理的瑕疵物件に該当するかは不動産会社などに相談して判断することが大切です。

そのうえで売却する際には、告知漏れをなくし必要に応じてリフォームなどを行ってから売却することが大切です。
瑕疵のある物件の売却に不安がある場合は、既存住宅売買瑕疵保険を検討するのも良いでしょう。

心理的瑕疵のある物件は買主様に避けられやすい物件の為、売却するなら不動産会社選びが重要です。そもそも心理的瑕疵物件を取り扱わない不動産会社も多い為、取り扱い可能かどうか確認しておきましょう。
心理的瑕疵物件の売却・購入なら、長谷工の仲介をお勧めします。
長谷工の仲介では、瑕疵の内容に応じた売却方法のご提案から買主様の要望に応じた物件の紹介まで手厚くサポートしています。万が一の為のアフターサービスも充実していますので、まずは無料相談からお問い合わせください。

※本記事の内容は2023年9月27日現在のものであり、制度や法律については、今後改正・廃止となる場合がございます。

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この記事の著者

逆瀬川 勇造(合同会社7pockets 代表社員)
明治学院大学卒。銀行、不動産会社勤務を経て独立。宅地建物取引士、FP2級技能士(AFP)、住宅ローンアドバイザー。

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