2023.08.23事故物件を売却する方法とは?告知義務や売却価格の相場について解説

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事故物件は市場価格よりも安値での売却になり、売却も難航するものです。
とはいえ、事故物件だからといって売れないわけでもなく、全ての物件が事故物件に該当するというわけではありません。
この記事では、事故物件に該当する物件や売却方法・売却のコツを分かりやすく解説していきます。
事故物件の売却について理解し、事故物件売却の成功を目指しましょう。

事故物件に該当するものと該当しないもの

事故物件とは、一般的になにかの原因で人が亡くなった物件のことをいいます。
不動産の売買では、心理的瑕疵の告知義務がある物件を事故物件と呼びます。

そもそも瑕疵には、大きく次の3つの種類があります。

  • 物理的瑕疵
  • 法律的瑕疵
  • 心理的瑕疵

よくある瑕疵がシロアリや雨漏りといった物理的瑕疵で、建築基準法などの法律や市区町村の条例などの制限により、契約上の目的を達することができない状況を法律的瑕疵といいます。
それに対し、心理的瑕疵とは心理的なストレスを負う物件のことをいいます。
物件自体や周辺で嫌悪される出来事があった場合に、心理的瑕疵があると判断されるのです。

瑕疵のある物件は、事前に買主様に告知する義務があります。
告知しなかった場合、「契約不適合責任」(以前の瑕疵担保責任)が問われ、契約破棄や賠償請求される恐れがあります。

しかし、その物件で該当する事象(人の死)などがあったとしても全ての原因に対して告知義務があるわけではありません。
告知義務がない物件は、事故物件ではなく通常の物件として取り扱われるのです。

以前は告知義務のあるなしの基準やいつまでに告知するのかが明確ではなく、トラブルになることもありました。
そこで、トラブル未然防止の観点から、国土交通省では2021年10月に「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」を制定し、その基準を明確にしました。
以下では、ガイドラインをもとに事故物件に該当する物件・該当しない物件を詳しく見ていきましょう。

参考:国土交通省「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」

該当しないもの

事故物件に該当するものしないもの

国土交通省のガイドラインでは、以下のような事案は告知する必要はないと定めています。

  • 自然死(病死や老衰など)
  • 日常生活のなかでの不慮の死
  • 賃貸物件の場合は、該当する事案でもおおむね3年経過した場合
  • 隣接住戸や集合住宅で日常使用しない共用部分で自然死や不慮の事故死以外の理由で人が死亡した場合

老衰や病死といった自然死、階段からの転落や入浴中の事故・誤嚥など日常生活のなかで発生する不慮の事故での死亡は告知の必要はないとしています。
ただし、上記のような原因での死亡であっても、長期間遺体が放置され特殊清掃などが必要な状況になった場合は告知の必要があるので注意しましょう。

また、告知が必要な事案の発生から3年が経過した場合、賃貸物件であれば告知の必要はないとされています。
隣接する住戸や使用しない共用部分で人がなくなった場合も告知の必要はありません。

該当するもの

国土交通省のガイドラインでは、「告知が不要な事案」に当てはまらないものは告知する必要があるとされています。
また、「取引の相手方等の判断に重要な影響を及ぼすと考えられる」場合は原則告知をする必要があります。

ガイドラインの内容を踏まえると、以下のような事案が読み取れます。

  • 他殺や自殺・事故死・火災などによる死亡
  • 遺体が放置され特殊清掃や大規模リフォームが必要になった場合
  • 事件性や周知性・社会に与えた影響が大きい事案
  • 集合住宅で通常使用される共用部分での事案

他殺や自殺などがあった物件は告知の必要があります。
自然死や日常の不慮の事故であっても、遺体が長期間放置され特殊清掃などが必要になった場合は告知の必要があります。

また、買主様から問われた場合は告知の義務のない事例であっても告知する必要があるので注意しましょう。
告知期間も賃貸物件であれば事例発生からおおむね3年間という期限がありますが、売買物件の場合は経過の期間によらず告知が必要です。

ただし物件の事情によっても様々ですので、告知するか否かについては不動産会社に相談しましょう。

事故物件の売却価格相場

事故物件だからといって必ずしも値引きしなければいけないわけではありません。
しかし、買主様から避けられやすい物件であることから、相場よりも安値での売却になるのが一般的です。

ただし、事故物件への捉え方は人それぞれです。
同じ事件に対しても「それくらいなら大丈夫」と捉える方もいれば「ちょっとした事故でもできれば避けたい」という方もいます。
また、時間が経過することで感じ方も異なってきます。

その為、事故物件を売り出す場合は時期や反応を見ながら売り出し価格を適宜変更していくことが大切です。
事故物件は自殺や他殺など状況によって価格が大きく異なるので、売却を検討しているならまずは不動産会社に相談することをお勧めします。

事故物件はどのように売却する?

事故物件を売却する方法としては、次の2つの方法があります。

  • 仲介で売却する
  • 不動産会社に直接買い取ってもらう

それぞれ詳しく見ていきましょう。

仲介で売却する

仲介での売却とは、不動産会社に買主様を見つけてもらう一般的な売却方法です。
事故物件であっても、一般的な売却方法で売却することは可能です。

売却する流れも基本的には一般的な売却方法と変わりません。
大まかな売却の流れは次の通りです。

  • 不動産会社に査定依頼
  • 不動産会社との媒介契約
  • 販売活動
  • 売買契約
  • 決算・引き渡し

事故物件の場合は、前述した通り市場価格よりも安値での売却になることも多く、不動産会社によっては事故物件の取り扱いを断るケースもあります。
事故物件を仲介で売却する場合は、告知義務や買主様探しなどハードルが高くなるので、事故物件の取り扱いに慣れている不動産会社を選ぶことをお勧めします。

不動産会社に直接買い取ってもらう

仲介以外の売却方法として、不動産会社に直接物件を買い取ってもらう方法があります。
仲介において不動産会社はあくまで間に入るだけで買主様が第三者であるのに対し、買い取りは買主が不動産会社になります。

買い取りであれば、不動産会社との条件に合意できればすぐに売却が可能です。
しかし、買い取りでは買い取った不動産を不動産会社が再販することを目的としている為、再販で利益を得られるように価格を設定します。一般的には、市場価格の7割程度となり、事故物件の場合はそれよりも低くなると考えて良いでしょう。

少しでも早く手放したいというのであれば、買い取りを検討してみても良いでしょう。
買い取りについては以下の記事でも詳しく解説しているので、参考にしてください。

マンション売却は買い取りがお勧め?仲介との違いや向いている物件の特徴を解説

事故物件を売却するコツ

売却価格が落ちやすく売りにくい事故物件ですが、できるだけ価格を落とさずに売却したいものです。

ここでは、事故物件を売却するコツとして次の5つを紹介します。

  • 修繕や清掃を行っておく
  • 買主様や不動産会社への告知義務を怠らない
  • 不動産会社が取り扱い可能かどうかを確認しておく
  • 場合によっては期間をおいて売却する
  • 更地にして再利用する

修繕や清掃を行っておく

事故や事故の内容や状況にもよりますが、修繕や清掃は必須と考えて良いでしょう。
床や壁に汚れが残ったままでは、基本的に買い手は付きません。
目に見える汚れだけでなく、部屋に染み付いた臭いにも注意が必要です。

事故物件は、心理的な原因だけでなく衛生面での心配から買主様に避けられてしまうケースもあります。
事件のあった部屋を綺麗に清掃しておくことで、イメージを良くすることができるでしょう。

自身での清掃やハウスクリーニングでは対応できない場合は、特殊清掃が必要になります。
特殊清掃とは、通常のハウスクリーニングでは落としきれない汚れや臭いの清掃のことです。室内の状況によっては、リフォームするのも良いでしょう。
また、お祓いしておくことも心理的瑕疵を軽減でき安心材料にもなります。
ハウスクリーニングやリフォームの費用については、こちらの記事で詳しく解説していますのでご覧ください。

マンションのハウスクリーニングの相場は?売却時に実施するメリットやポイントを解説

マンションリフォームの費用相場は?費用を抑えるポイントや実施する際の注意点を解説

買主様や不動産会社への告知義務を怠らない

事故物件について「告知しなければ値引きせずに売れるのでは?」と考える方もいるでしょう。
しかし、事故物件であることを告知せずに売買契約を結び、買主様が後からその事実に気付いた場合、契約不適合責任が問われトラブルに発展する恐れがあります。契約不適合責任を問われると、賠償請求や契約解除・代金減額請求などのペナルティがあります。
告知せずに売ることはデメリットでしかない為、告知すべきことは告知するようにしましょう。

契約不適合責任については以下の記事でも詳しく解説していますのでご覧ください。

マンション売却における瑕疵担保責任(契約不適合責任)とは?対策方法を解説

不動産会社が取り扱い可能かどうかを確認しておく

事故物件の場合、全ての不動産会社が取り扱ってくれるわけではありません。
不動産会社によっては条件が設けられている場合は、そもそも取り扱ってもらえないケースも珍しくないのです。

場合によっては期間をおいて売却する

事件や事故の発生直後は、マイナスな印象が強く売却しにくい物です。
一定期間空けることで、事件や事故が風化し買主様の嫌悪感が緩和されることで売却しやすくなる可能性があります。
また、事件や事故の直後は売主様の精神的な疲労も強く、正常な判断ができない場合もあるでしょう。
ただし、どのくらい期間を空ければ良いのかは事件の内容によって異なる為、注意が必要です。

更地にして再利用する

建物での売却を諦め更地にしてしまう方法もあります。
更地にしてしまうことで、イメージ改善につながり売却しやすくなる可能性があるでしょう。人気エリアや立地条件が良い場合は、更地の方が売りやすくなります。

また、更地にして駐車場など別の活用を試す方法もあります。
賃料収入を得ながら一定期間を過ごせば、イメージが改善して売却も期待できるようになるでしょう。

ただし、更地で売却する場合でも告知義務は残っています。
更地にしたからといって必ず売却できるわけでもなく、売却できなければその期間高い固定資産税がかかってしまうものです。
また、更地にする為に工事費用などがかかったり、そもそも再建築ができなかったりする場合もあります。
その為、更地にするかどうかは、不動産会社に相談したうえで判断すると良いでしょう。

事故物件の売却に関するよくある質問

最後に、事故物件の売却に関するよくある質問を見ていきましょう。

事故物件についてどのように告知すれば良いですか?

一般的には、売買契約時の重要事項説明の際に事故物件であることを告知します。
しかし、買主様側に売買契約時に事故物件であると分かると、契約に支障が出る恐れやトラブルに発展する恐れがあります。
買主様への告知はできるだけ早いタイミングでしておくことが大切です。

告知では次のような項目を告知する必要があります。

  • 発生時期
  • 発生場所
  • 死因
  • 特殊清掃の有無

これらの事実は口頭だけでなく、契約書や重要事項説明書にも記載しておくことが大切です。口頭だけでは後々「言った」「言わない」に発展しトラブルになりかねません。
きちんと書面にしておくことでトラブルを避けやすくなるでしょう。

事故物件を早く売却する方法はありますか?

事故物件を早く確実に売却したいなら買い取りがお勧めです。
仲介で売却する場合は、相場よりも安値を付けることで売却しやすくなるでしょう。
しかし、あまりに値引きしてしまうと住宅ローンを完済できなくなる恐れがあります。

ただし、住宅ローン契約者がすでに亡くなっており、契約者が団体信用生命保険(団信)に加入している場合は、生命保険会社が住宅ローンの残債を金融機関に支払うことになる為、保険への加入有無を確認しておきましょう。

いずれにせよ、売却にあたり、まずは住宅ローンの残債を確認し、どこまで値引きできるのかを明確にしておくことが大切です。
また、すぐに手放したいのか、ある程度時期を待ってでも高値で売却したいのかによっても売却方法は異なります。
売却時期も明確にしておくと、適切な方法を選びやすくなるでしょう。

まとめ

事故物件は、人の死亡の原因によって事故物件に該当する物件と該当しない物件に分かれます。

告知義務がある物件で告知せずに売却すると契約不適合責任を問われ賠償請求などを受ける恐れがあるので注意しましょう。
また、事故物件に該当する場合、買主様から避けられてしまうと、売却がスムーズに進まないこともある為、事故物件の売却に強い不動産会社を選ぶことが大切です。

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事故物件の売却についても相談を受け付けているので、まずは無料相談で相談してみると良いでしょう。(物件の状況によってはご対応が難しい場合もあります)

※本記事の内容は2023年8月23日現在のものであり、制度や法律については、今後改正・廃止となる場合がございます。

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この記事の著者

逆瀬川 勇造(合同会社7pockets 代表社員)
明治学院大学卒。銀行、不動産会社勤務を経て独立。宅地建物取引士、FP2級技能士(AFP)、住宅ローンアドバイザー。

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