2026.2.4【テンプレート付き】不動産売却の委任状とは?必要なケースや書き方、注意点を解説

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この記事で分かることを1分で解説
  • 不動産売却の委任状は、本人が立ち会えない場合に代理人に権限を委ねる為の書類
  • トラブル回避の為、曖昧な表現や白紙委任状は避け、権限の範囲や委任状の有効期限を明確に記載することが重要
  • 委任状の内容や用意する書類に不備があると売却のスケジュールが遅れる恐れがある

不動産売却を進めるなか、手続きを誰かに委任したいと思っている売主様も多いのではないでしょうか。相続した遠方の実家を売却する為に何度も帰省できない、入院中で契約の場に立ち会えないといった事情で困っている方もいらっしゃるかもしれません。

このような場合は、委任状を使えば代理人に手続きを任せられます。しかし、委任状の書き方を間違えると思わぬトラブルに発展する恐れがあります。

この記事では、不動産売却における委任状の書き方やトラブル事例、その対策を解説します。さらに、すぐに使える委任状のテンプレートもご用意しましたので、ぜひご活用ください。

不動産売却の委任状とは?

不動産売却は、原則として不動産の名義人全員が取引の場に立ち会い、手続きを進める必要があります。しかし、様々な事情で本人がその場に立ち会えない場合もあります。その際に信頼できる第三者に権限を委ねる為の書類が委任状です。

委任状の法的な効果

委任状は、特定の法律行為(不動産売買など)を他人に任せることを証明する法的な書類です。民法上の委任契約に基づき代理人が行った契約や手続きは、本人が行ったものと同じ法的効果を持ちます。

参考:e-GOV法令検索「民法第643条」

つまり、代理人が売買契約書に捺印すれば、その効力は依頼した本人(売主様)に及び、本人が「知らなかった」と言っても契約を取り消すことはできません。その為、実印を押して委任状を作成することは、強力な権限を相手に渡すことになります。

なお、本人の代わりに手続きを行う代理人の種類は、大きく2つに分けられます。

代理人の種類 概要説明
法定代理人 法律の規定によって自動的に代理権を持つ方
  • 本人が未成年者の場合:親権者(両親)
  • 本人が認知症などで判断能力がない場合:成年後見人
任意代理人 本人の意思に基づいて代理権を与えられた方
  • 海外転勤中で帰国できない場合:親族や知人など
  • 入院中で外出できない場合:知人や専門家など

状況によって代理人が異なる為、区別して理解しておきましょう。

委任状が必要になる主なケース

続いて、不動産売却で委任状が必要となる代表的なシチュエーションをご紹介します。

共有名義の不動産売却を代表者1名に任せる場合

相続などで不動産を複数人で共有している場合、売却には名義人全員の同意と立ち会いが必要です。しかし、共有者が遠方に住んでいたり人数が多かったりすると、全員の日程を合わせて1ヵ所に集まるのは現実的ではありません。

その場合、共有者のなかから代表者を1名決め、他の共有者がその代表者に権限を委任すれば、スムーズに売却手続きを進められます。この際は、委任する共有者全員分の委任状と印鑑証明書に加え、代表者本人の印鑑証明書なども必要となり、代表者が単独で契約や決済を行う権限を持つ形になります。

共有名義の不動産を売却する流れやトラブル事例については、こちらの記事で詳しく解説していますのでご覧ください。

共有名義のマンションを売却する方法は?売却までの流れや注意点を解説

共有持分・共有名義の不動産は売れない?売却方法やよくあるトラブル例と対処法を解説

やむを得ない事情で売却に立ち会えない場合

本人が売却の意思を持っていても、スケジュールや身体的な事情で手続きの場に行けないケースがあります。例えば、売主様が仕事の都合で海外にいる場合や、病気や怪我で入院中、老人ホームなどの施設に入居していて外出許可が下りない場合などが挙げられます。

そうした場合でも、委任状を発行して代理人に不動産売却を委託すれば、代理人が手続きを進められるようになります。

海外にいる方(非居住者)が不動産売却を行う場合の注意点については、こちらの記事で詳しく解説していますのでご覧ください。

非居住者(海外在住者)でも不動産売却は可能?税金や確定申告、必要書類について解説

委任状があっても不動産売却が難しいケース

ここまで、委任状の効力について解説しましたが、委任状さえあればどのような状況でも代理人が認められるわけではありません。ここからは、委任状があっても代理人が不動産を売却できないケースをご紹介します。

本人の意思能力がないと判断された場合

本人の意思能力が失われている場合は、たとえ委任状があっても不動産売却はできません。

民法では、認知症や重度の精神障害などで自分の行為の結果(不動産を売って所有権を失うことなど)を理解できない状態にある場合、法的に有効な意思表示はできないとみなされます。

参考:e-GOV法令検索「民法第3条の2」

このような状態で作成された委任状は、そもそも委任する意思がなかったとして無効となります。無理に手続きを進めてしまうと、後から売買契約自体が無効となり、買主様や不動産会社を巻き込んだ大きなトラブルに発展する恐れがあります。

本人の判断能力が低下している場合は、家庭裁判所に申し立てて成年後見制度を利用し、選任された後見人が代理で売却手続きを行う方法を検討しましょう。

成年後見制度を利用した不動産売却については、こちらの記事で詳しく解説していますのでご覧ください。

認知症になった親の不動産を売却するには?成年後見制度や売却の流れを解説

成年後見人が不動産売却するには?流れや必要書類、注意点を解説

司法書士による本人確認や意思確認ができない場合

犯罪収益移転防止法により、不動産取引でのなりすましや詐欺を防ぐ為、所有権移転登記を担当する司法書士には本人確認の義務が課せられています。
不動産売却の最終段階である決済や所有権移転登記までに、司法書士による本人確認ができない場合、売却手続きを完了させることができません。

参考:国土交通省「犯罪収益移転防止法の概要」

たとえ代理人が委任状を持参していても、司法書士が事前に本人と電話や面談を行います。司法書士は、本人に売却する意思があるか、委任状は本人が作成したものか、などを直接確認します。売却意思が確認できない場合は決済ができず、売却手続き自体がストップしてしまいます。

本人が成人していない場合

不動産の名義人が未成年の場合、委任状を作成して代理人に委託しても売却はできません。未成年者は法律上、単独で法律行為(不動産の売買契約など)を行うことが制限されています。その為、未成年者が作成した委任状には法的な効力が認められず、親戚や知人などを代理人として立てることはできないのです。

参考:e-GOV「民法第5条」

未成年者が所有する不動産を売却する為には、親権者である両親などが法定代理人として、本人に代わって手続きを行います。

不動産売却の委任状の書き方

不動産売却の委任状に法律で定められたフォーマットはありません。しかし、記載内容に不備があると契約が無効になったり、登記が通らなかったりする恐れがあります。ここでは、トラブルを防ぐ為に記載すべき項目をご紹介します。

記載項目

不動産売却の委任状を作成する際は、誰が見ても内容が伝わるよう、具体的な情報を漏れなく記載する必要があります。記載すべき主な項目は以下の通りです。

委任状に記載する項目
  • 委任状の作成日
  • 売主様と代理人の住所・氏名
  • 売主様の捺印(実印)
  • 売却する不動産の詳細(所在、地積、構造、床面積など)
  • 委任する権限の範囲
  • 売却の条件(売却最低価格や売却の期限など譲れない条件がある場合)

委任者(売主様)と受任者(代理人)の住所や氏名は、印鑑証明書や住民票に記載されている通りに記入します。

また、売却する不動産の所在も普段使っている住所ではなく、登記上の正確な情報が必要です。法務局で最新の登記事項証明書(登記簿謄本)を取得し、そこに記載されている内容を見ながら正確に書き写してください。

委任状のひな形(テンプレート)

ここまでの内容をもとに作成した委任状のテンプレートはこちらです。

【委任状のテンプレート】

委任状のテンプレート画像

テンプレートのように、委任状を作成する際は内容の改ざんや悪用を防ぐ為、文末に必ず「以上」「以下余白」と記載しましょう。

不動産売却の委任状を書く際の注意点

次に、不動産売却を進めるうえで知っておきたい、委任状を書く際の注意点を6つご紹介します。

内容を明確に記載する

曖昧な表現を使うことで代理人が売主様の意図しない条件で契約を結んでしまっても、法的には有効な代理行為とみなされ、後から取り消すのが難しくなります。
その為、委任状を作成する際は、代理人に与える権限の範囲を可能な限り具体的に記載しましょう。

例えば「売買契約書、重要事項説明書への捺印のみを委任する」や「売買契約締結のみを委任し、代金の受領権限は委任しない」「売却代金は○○万円以上とする」のように、委託する内容や条件を具体的に記述します。誰が見ても解釈が一致する表現を用いることで、代理人との意思疎通が確実になり、お互いに安心して手続きを進めることができます。

不安な場合は注意事項を記載する

代理人に任せることに不安がある場合は、委任状のなかに注意事項や条件を追記しておくと安心です。事前に制約を設けておくことで、想定外の事態が起きた際や代理人が独断で判断しそうな場面でブレーキをかける効果が期待できます。

具体的には、「売買契約の条件に変更が生じた場合は必ず委任者の承諾を得ること」や「手付金および残代金の受領は委任者の指定する銀行口座への振り込みに限る」などの一文を書き加えます。このように記載しておけば、もし代理人が勝手に値下げに応じたり、現金を直接受け取ろうとしたりしても、それが委任の範囲外であることを主張できます。

白紙委任状は避ける

受任者欄や委任する権限を空欄にしたまま実印を押す白紙委任状は絶対に渡してはいけません。白紙委任状を渡すことは、どのような条件でも誰と契約しても構わないという全権を代理人に与えたのと同じ意味を持ち、悪用されるリスクが高いからです。

もし白紙の部分に「売却代金を代理人が受け取る」と書き加えられたり、相場より安い金額を記入されたりしても、実印が押されている以上、本人の意思で作成された書類として扱われます。代理人が信頼できる相手であっても、必ず全ての項目を埋め、空欄がないことを確認してから手渡すようにしましょう。

有効期間を明確にする

委任状には必ず有効期限を記載し、代理権の効力が及ぶ期間を設定してください。期限を定めていないと、売却手続きが終わった後やなんらかの事情で売却を中止した後も代理人が売却の権限を持ち続けることになり、将来的に悪用されるリスクが残ってしまいます。

委任状には、「本委任状の有効期限は作成日から3ヵ月間とする」や「令和○年○月○日まで有効」などと明記しましょう。期限を区切ることで、万が一代理人との関係が悪化した場合でも自動的に代理権を消滅させられます。

実印を使用し、印鑑証明書も添付する

不動産売却に使用する委任状には必ず実印を押し、印鑑証明書を添付しましょう。

実印とは、住民登録をしている市区町村役場に正式に登録された印鑑です。委任状に押された印影と添付された印鑑証明書の印影が一致することで初めて、その書類が本人の意思に基づいて作成されたものであると証明されます。不動産売買では一般的に実印が求められ、認印やシャチハタでは効力が認められないケースが多くあります。

また、印鑑証明書は発行から3ヵ月以内のものが求められる為、手続きの直前に取得し、期限切れにならないように準備を進めましょう。

訂正する場合も捨印は押さないようにする

委任状の記載内容を訂正する場合でも、欄外に捨印を押すのは避けてください。

捨印とは、あらかじめ訂正印を欄外に押しておくことで軽微な修正を相手に任せる方法です。しかし、捨印を悪用されると、委任状の内容まで勝手に書き換えられ、トラブルに発展する恐れがあります。書き損じてしまった場合は、新しく一から作り直すか、間違えた箇所に二重線を引き、その上に訂正印として実印を押し、正しい文字を記入しましょう。

不動産売却で委任状と併せて必要な書類

不動産売却を代理人に委託する際は、委任状だけでなく本人確認書類なども必要です。
事前に準備すべき書類は委任者と代理人(受任者)で異なる為、以下の表を参考に漏れのないよう準備を進めましょう。

委任者側が用意する書類 受任者側(代理人)が用意する書類
  • 印鑑証明書
    発行から3ヵ月以内のものを市区町村役場で取得する。
  • 権利証または登記識別情報
    物件の所有者であることを証明する重要書類。紛失した場合は司法書士や不動産会社に相談する。
  • 住民票
    登記上の住所と現住所が異なる場合に必要となる。市区町村役場で取得する。
  • 本人確認書類
    運転免許証やマイナンバーカードなど。契約時に提示を求められる場合が多い。
  • 印鑑証明書
    発行から3ヵ月以内のものを市区町村役場で取得する。
  • 実印
    売買契約書や重要事項説明書、各種申請書類への署名・捺印に使用する。
  • 本人確認書類
    運転免許証やマイナンバーカードなど。契約時に提示を求められる場合が多い。

特に印鑑証明書や住民票はほとんどの場合、発行から3ヵ月以内の原本を用意する必要があります。期限が切れていると手続きが進まない為、取引のスケジュールに合わせて取得する時期を調整しましょう。また、権利証(または登記識別情報)を紛失している場合は、司法書士による本人確認情報の作成など別の手続きが必要になる為、早めに不動産会社に相談してください。

なお、売主様が海外に居住しており日本国内で印鑑証明書や住民票を取得できない場合は、現地の日本大使館や領事館で以下の代替書類を取得する必要があります。

  • 署名証明書
    日本の印鑑証明書の代わりになる書類。領事の目の前で委任状などに署名し、それが本人の署名であることを証明してもらう。

  • 在留証明
    日本の住民票の代わりになる書類です。現地のどこに住んでいるかを証明する為に使用します。

参考:外務省「海外渡航・滞在 在外公館における証明」

上記の書類は取得に時間がかかる場合がある為、一時帰国のタイミングや国際郵便の日数を含め、余裕を持ったスケジュールで準備しましょう。

不動産売却の委任状に関するよくあるトラブルと対策

委任状を利用すれば遠方からでも手続きができる反面、作成方法や管理を誤るとトラブルに発展する恐れがあります。ここでは、よくあるトラブル事例とその対策を解説します。

委任状の内容が不明確

もし委任状に記載された権限の範囲が曖昧だと、後々代理人との間でトラブルになったり、最悪の場合、意図しない条件で契約を結ばれてしまったりするリスクがあります。

よくある事例として委任状に「不動産売却に関する一切の件を委任する」とだけ書いてしまうケースがあります。この場合、代理人が売主様の意図に反して勝手に売却価格を下げたり、不利な特約をつけたりしても、形式上は正当な権限の行使とみなされ契約が成立してしまいます。

このような事態を防ぐ為には、委任する事項を細かく具体的に明記することが重要です。「代金の受領権限は委任しない」といった制限を設ければ、代理人が独断で判断することを防げます。また、「万が一契約内容に変更が生じる場合は、必ず本人から書面による承諾を得る」という特約を記載しておくのもお勧めです。

書類の不足や不備

提出書類に記載漏れがあったり、実印の印影が不鮮明だったりすると、法務局での登記申請が却下され、売却のスケジュールが遅れてしまいます。

特に多いのが、委任状に押した実印と添付した印鑑証明書の印影が合わないケースや、住所の記載が住民票と一字一句まで同一ではない(「1丁目2番3号」を「1-2-3」と略して書いてしまう)ケースです。

このようなミスを防ぐ為にも、書類を作成する際に印鑑証明書などの原本を手元に置き、見比べてチェックしながら記入しましょう。印鑑証明書の有効期限の確認も忘れてはいけません。

まとめ

不動産売却時には原則として売主様本人の立ち会いが必要ですが、立ち会いができない場合は委任状を用いて代理人に手続きを任せられます。ただし、委任する場合は委任する行為や範囲の曖昧な記載を避け、分かりやすく明確に記載しましょう。白紙委任状は避ける、有効期限を設けるなどの点にも注意が必要です。

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※本記事の内容は2026年2月4日現在のものであり、制度や法律については、今後改正・廃止となる場合がございます。

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この記事の著者

杉山明熙
元不動産営業のWEBライター。
不動産営業を12年間経験し店長、営業部長として、売買仲介、賃貸仲介、新築戸建販売、賃貸管理、売却査定等、あらゆる業務に精通。
個人ブログにて不動産営業への転職のお手伝い、不動産営業のノウハウ、不動産投資のハウツーなどを発信。
不動産業界経験者にしかわからないことを発信することで「実情がわかりにくい不動産業界をもっと身近に感じてもらいたい」をモットーに執筆活動を展開中。
宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、2級ファイナンシャルプランナー保有。
写真:杉山明熙

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