2024.09.02固定資産税の計算は自分でもできる?計算方法や減税措置、シミュレーション例をご紹介

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不動産を所有していると毎年固定資産税がかかります。
初めて不動産を所有する方のなかには、どのくらい納めることになるのか事前に知りたい方もいるでしょう。

この記事では、固定資産税の計算方法や減額できる特例措置について解説します。固定資産税額を算出するシミュレーションやよくある質問もご紹介しますので、すでに不動産を所有している方だけでなく、購入を予定している方もぜひ参考にしてみてください。

固定資産税とは?

固定資産税とは、毎年1月1日に固定資産を所有する方に対して市町村(東京都23区は都)が課税する税金です。課税対象となる資産は、大きく分けて「土地・建物」と「償却資産」があります。

対象となる土地は宅地のほかに、田や畑、山林も含まれます。建物は、住宅や店舗、倉庫などが対象になります。

償却資産とは、事業用の機械や装置、備品、船舶など、法人税法や所得税法上で減価償却の対象となる資産です。ちなみに自動車税種別割や軽自動車税種別割の課税対象となる、自動車などは除きます。

自治体によって多少異なりますが、4月〜6月頃に納税通知書が届くので、一括もしくは年4回の納付期限までに納税する必要があります。

固定資産税の計算方法

固定資産税は、以下の計算式で求められます。

固定資産税評価額(課税標準額)×1.4%(標準税率)

標準税率は1.4%ですが、税率は自治体の条例によって別途定めることができる為、自治体によって異なることがあります。実際に計算する際は、自治体のホームページなどで税率を確認してください。

固定資産税評価額が分かれば、自分でも固定資産税を算出できます。
ここからは、実際の計算方法を詳しくご紹介します。

➀固定資産税評価額を調べる

まずは、固定資産税評価額を調べましょう。
固定資産税評価額を調べる方法は、主に4つあります。

固定資産税課税明細書を確認する

1つ目の方法は、固定資産税納税通知書に同封されている固定資産税課税明細書で確認するという方法です。
明細書には、土地と家屋の固定資産税評価額(価格の欄)がそれぞれ記載されています。
購入予定の中古物件の固定資産税評価額を知りたいときは、不動産会社の担当者に相談し、売主様の課税明細書を確認させてもらいましょう。

固定資産課税台帳を閲覧する

役所に保管してある固定資産課税台帳を閲覧して、固定資産税評価額を調べることもできます。ただし閲覧できるのは、所有者本人もしくはその代理人です。閲覧するには、本人確認書類や所有者からの委任状が必要になりますので注意しましょう。

固定資産評価証明書を取得する

役所(税事務所)に申請して、固定資産評価証明書を取得するのも方法の一つです。固定資産評価証明書とは、固定資産課税台帳に登録されている内容を証明する書類です。

ただし取得できるのは、不動産の所有者もしくはその代理人です。本人確認書類や所有者の委任状、300円程度の手数料が必要になります。購入予定の物件の固定資産評価証明書を取得したい場合は売主様の委任状が必要になりますので、不動産会社の担当者に相談しましょう。

概算で算出する

土地と建物それぞれの固定資産税評価額を概算で算出することも可能です。
それぞれの算出方法は以下の通りです。

建物の評価額

建物の評価額は、新築時であれば建築費の50〜60%を目安として計算しましょう。
しかし建物の評価額は築年数や建物の構造、設備によっても異なります。

既存の建物の固定資産税評価額を算出する場合は、再建築した場合の建築費に経年減点補正率をかけて、以下の通り計算します。

建物の評価額=再建築価格×経年減点補正率×評点(木造:1.05、非木造:1.10)

経年減点補正率とは、建物の築年数に応じて生じる減価の割合を数値化したものです。ちなみに、木造建物減価補正率は1年経過で0.8、10年経過で0.5となります。

参照:法務局「経年減点補正率表」

土地の評価額

土地の固定資産税評価額は、地価公示価格の70%程度を目安として計算します。
地価公示価格とは、国土交通省の土地鑑定委員会が毎年公表している土地の価格で、一般的な土地取引の指標となるものです。国土交通省のWEBサイトなどで検索できます。

参照:国土交通省地価公示・不動産情報ライブラリ「都道府県地価調査の検索」

固定資産税評価額については、こちらの記事でも詳しく解説していますのでご覧ください。

固定資産税評価額とは?調べ方や税金との関連性、計算方法について紹介

➁土地と建物の評価額を合計する

土地と建物の固定資産税評価額を合計し、税率をかけたものが、おおまかな固定資産税の納税額になります。

固定資産税を減額できる特例や措置

固定資産税には、条件を満たすことで税負担を軽減できる特例や措置があります。
ここでは、4つの特例や措置をご紹介します。

固定資産税等の住宅用地特例

住宅用地に対しては課税標準額が軽減される特例措置があります。
具体的には、住宅用地1戸につき200㎡までは課税標準額が1/6、200㎡を超える部分は1/3まで軽減されます。一戸建てなど個人住宅はもちろんですが、マンションやアパートの敷地も住宅用地になります。

表にまとめると以下の通りです。

区分 固定資産税
小規模住宅用地 住宅用地で住宅1戸につき200㎡までの部分 課税標準額×1/6×1.4%(税率)
一般住宅用地 住宅用地で住宅1戸につき200㎡を超える部分 課税標準額×1/3×1.4%(税率)

参照:国土交通省「固定資産税等の住宅用地特例に係る空き家対策上の措置」

ただし、住宅用地であったとしても、更地にしてしまうと住宅用地の特例措置が適用されません。既存の住宅の建て替えなど一定の要件を満たす場合は、住宅用地の特例措置が継続されます。賦課期日である1月1日のタイミングで更地になる場合は、手続きを忘れないようにしましょう。

参照:東京都主税局「住宅を建て替える土地の特例措置のご案内」

また、一戸建てを解体して更地にして売却する際は、賦課期日である1月1日を過ぎてから解体工事するなど、タイミングに注意しましょう。

その他、空き家を放置したことにより倒壊の恐れがある場合や、周辺環境に悪影響を与えていると判断されると、住宅用地の特例措置の適用を受けられなくなることがあります。
空き家を放置したことによる固定資産税の増額や対策については、こちらの記事で詳しく解説していますのでご覧ください。

空き家を放置すると税金が高くなる?固定資産税の増額や対策について紹介

新築住宅に係る税額の減額措置

新築住宅に対しては固定資産税額の減額措置があります。
具体的には、一戸建ては3年間(長期優良住宅は5年)、マンションは5年間(長期優良住宅は7年間)税額が1/2に減額されます。なお、床面積は50㎡以上280㎡以下である必要があり、適用となるのは2026年3月31日までです。減額措置適用終了後は税額が元に戻るので、いつまで減額されるのか把握しておきましょう。

参照:国土交通省「新築住宅に係る税額の減額措置」
参照:国土交通省「認定長期優良住宅に関する特例措置」

建て替えや住宅リフォームによる減税措置

住宅の建て替えやリフォームを実施したことで耐震や省エネ性能が向上したと認められる場合、固定資産税の減額措置が受けられる可能性があります。

減額措置を受ける場合は、市区町村へ申告が必要です。
詳しくは、役所の担当窓口へお問い合わせください。

リフォームの種類別の軽減率は下表の通りです。

リフォームの種類 耐震リフォーム バリアフリーリフォーム 省エネリフォーム 長期優良住宅リフォーム
リフォームの内容 1982年1月1日から所在している住宅に対して、現行の耐震基準に適合させる為に実施した耐震改修工事 一定の要件を満たす個人が所有する築10年以上の住宅に対して行うバリアフリー改修工事。

通路の拡幅や浴室の改修、段差の解消工事などが対象
2014年4月1日以前から所在する住宅に対する窓の断熱改修工事。

窓の断熱改修工事(必須)と一緒に行う、天井や床の断熱改修や高効率給湯器設置工事なども対象
耐震改修や省エネ改修などの長期優良住宅化リフォーム。

窓の断熱改修工事(必須)と一緒に行う、天井や床の断熱改修や高効率給湯器設置工事なども対象
減税額や軽減率 工事の翌年の固定資産税額が1/2に減額 工事の翌年の固定資産税額が1/3に減額 工事の翌年の固定資産税額が1/3に減額 工事の翌年の固定資産税額が2/3に減額

参照:国土交通省「住宅リフォームにおける減税制度について」

各地方自治体が定めている減税措置

地方自治体ごとに、固定資産税の減税措置を設けていることがあります。
例えば災害などの被害に遭った場合の減免措置や、生活保護を受けている場合の減額措置などです。各自治体によって減税額や軽減率が異なる為、役所の担当窓口やホームページなどで確認してください。

固定資産税のシミュレーション

次は、実際に固定資産税がどれぐらいかかるのか、新築一戸建て、中古マンション、更地別に条件を設定してシミュレーションしてみましょう。

新築一戸建て

下記条件で、新築一戸建てにかかる固定資産税をシミュレーションします。

▼条件

  • 土地の評価額:2,400万円
  • 建物の評価額:2,500万円
  • 2023年4月新築
  • 土地面積120㎡(小規模住宅用地)
  • 固定資産税の税率:1.4%

▼計算式
土地の固定資産税:
土地の評価額2,400万円×1/6×1.4%=5.6万円

建物の固定資産税:
建物の評価額2,500万円×1.4%×1/2=17.5万円

土地・建物の固定資産税:
5.6万円+17.5万円=23.1万円
この場合の固定資産税は、23.1万円となります。

中古マンション

下記条件で、中古マンションにかかる固定資産税をシミュレーションします。

▼条件

  • 土地の評価額:3,000万円
  • 建物の評価額:1,000万円
  • 土地:小規模住宅用地
  • 固定資産税の税率:1.4%

▼計算式
土地の固定資産税:
土地の評価額3,000万円×1/6×1.4%=7万円

建物の固定資産税:
建物の評価額1,000万円×1.4%=14万円

土地・建物の固定資産税:
7万円+14万円=21万円
この場合の固定資産税は、21万円となります。

更地

下記の条件で、更地にした場合にかかる固定資産税をシミュレーションします。

▼条件
土地の評価額:2,400万円
土地面積120㎡(更地の為住宅用地の特例は適用外)

▼計算式
土地の固定資産税:土地の評価額2,400万円×税率1.4%=33.6万円
更地の固定資産税は33.6万円となります。

住宅用地の特例が適用されない為、一戸建ての場合と比べて固定資産税が高くなることが分かります。

固定資産税の支払い方法

固定資産税の納付方法は窓口での現金払いの他にも、様々な支払い方法があります。ここでは、どのような支払い方法があるのか解説していきます。

窓口での現金払い

固定資産税を現金で支払う場合は納付書を持参し、役所の窓口(23区は都税事務所)や銀行、郵便局、コンビニエンスストアで納付します。指定の窓口は自治体によって異なる為、事前に納付書を確認しておきましょう。

現金払いは実際に窓口へ足を運ぶ必要がありますが、手元に領収書が残る為支払ったことを記録として残せます。

インターネットでの支払い

固定資産税は、インターネット上で納付することもできます。基本的に24時間どこからでも支払うことができるのがメリットですが、自治体によって利用できる方法が異なります。実際に納付できるかどうかは、納付書や役所で確認してください。

インターネットでの主な支払い方法は以下の通りです。

決済方法 概要説明
クレジットカード
  • オンライン上でクレジットカードを使って納付する方法
  • カード利用によりポイントが付与されるが、手数料がかかることがある
決済アプリ
  • QRやバーコードがある場合は、PayPayやauPAY、d払いなどの決済アプリを使って納付可能
  • ポイントが付与されるが、領収書は発行されない
ペイジー
  • 納付書にペイジーのマークがあれば、ペイジーで納付可能
  • インターネットバンキングにログインして、納付書に記載された番号を入力して納付する
  • 手数料がかかることがある

自治体によっては、電子マネー決済やクレジット払いに対応していないこともあります。事前に固定資産税納税通知書や納付書を確認し、自分に合った納付方法を選びましょう。

口座振替

事前に金融機関で手続きが必要ですが、固定資産税を口座振替することもできます。
指定した口座から自動的に納付額が引き落とされる為、払い忘れを防ぐことができます。ただし残高が不足していると引き落としされませんので、残高不足に注意しましょう。

家の固定資産税に関するよくある質問

最後に、家の固定資産税に関するよくある質問をご紹介します。

固定資産税が急に高くなった場合はどうする?

新築住宅に対する軽減措置の適用期間の終了や固定資産税の評価替えなどによって、固定資産税が急に高くなることがあります。

それらを考慮しても高いと感じる場合は、管轄の税事務所へ相談しましょう。納税通知書を受け取った日から3ヵ月以内であれば、固定資産評価審査委員会へ再審査の申出ができます。

固定資産税がかからないこともある?

固定資産税には免税点があります。
同市区町村内に所有する固定資産の課税標準額の合計が一定以下の場合、固定資産税は課税されません。免税点はそれぞれ以下の通りです。

  • 土地:30万円
  • 家屋:20万円
  • 償却資産:150万円

出典:総務省「固定資産税の概要」

不動産を売却した後の固定資産税の支払いは?

不動産を売却したときは、残代金決済日に売主様と買主様で固定資産税の年税額を日割り清算するのが不動産売買における慣例です。なお清算する際の起算日が関東と関西で異なります。

関東と関西それぞれの固定資産税の起算日や清算の方法は、下表の通りです。

関東 関西
起算日 1月1日 4月1日
売主様の負担 1月1日から決済日の前日まで 4月1日から決済日の前日まで
買主様の負担 決済日から12月31日まで 決済日から翌年の3月31日まで

不動産売買時の固定資産税の清算は、法律によって定められているものではありません。計算方法や起算日については不動産会社の担当者に相談し、売主様と買主様で協議したうえで決定するようにしましょう。

不動産を売却したときの固定資産税については、こちらの記事で詳しく解説していますのでご覧ください。

マンションを売却した時の固定資産税はどうすればいい?清算方法や注意点を解説

まとめ

ここまで、固定資産税の計算方法や減額できる特例措置、納付方法について解説してきました。

固定資産税は、原則3年に一度、土地・建物の「評価替え」が行われます。タイミングによっては固定資産税評価額が見直される為、多少の変動があることは想定しておきましょう。ちなみに2024年が評価替えの年で、次回は2027年になります。

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※本記事の内容は2024年9月2日現在のものであり、制度や法律については、今後改正・廃止となる場合がございます。

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この記事の著者

桜木理恵
私鉄系不動産会社にて仲介営業を約8年、大手ハウスメーカーのグループ会社にてリフォーム営業を5年従事した経験を活かし、現在不動産Webライターとして活動。保有資格は宅地建物取引士・管理業務主任者・2級ファイナンシャルプランニング技能士

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