2024.09.02住宅ローンがあるけど引っ越したい!引っ越す方法と注意点を解説

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ライフステージの変化や周辺環境のトラブルなどから、「住宅ローンが残っているけれど引っ越したい」と考えている方もいるでしょう。しかし、住宅ローンが残っている家から引っ越す場合、注意して動かなければ損をしてしまうかもしれません。

この記事では、住宅ローンが残っている家から引っ越す方法や売却する流れ、引っ越す際の注意点などを解説します。

住宅ローンがあっても引っ越しはできる?

住宅ローンが残っていても引っ越しは可能です。しかし、住宅ローンが残っている場合は基本的に売却・貸し出しはできません。
まずは、住宅ローンが残っている家の売却や貸し出しができない理由について解説します。

売却することができない理由

住宅ローンを組んで購入した場合、金融機関が抵当権を設定しています。抵当権とは、住宅ローンが返済できなくなったときに担保として不動産を差し押さえることができる権利です。
抵当権を抹消する為には、住宅ローンを完済する必要があります。住宅ローンが残ったままでは不動産がいつ差し押さえられるかわからない為、購入を希望する買主様がなかなか見つかりません。

抵当権や抵当権抹消については、こちらの記事で詳しく解説していますのでご覧ください。

抵当権とは?設定や抹消手続きの流れ、行使された場合の対処法についても解説

抵当権抹消手続きの流れは?手続きが必要なタイミングやかかる費用を徹底解説

貸し出すことができない理由

住宅ローンが残ったままの家は、原則貸し出すことができません。それは、住宅ローンを組んだ際に金融機関と締結した「金銭消費貸借契約」に違反してしまうからです。

住宅ローンは、第三者に貸し出すことを目的に家を購入する為の融資ではなく、マイホームを購入する為の融資です。金銭消費貸借契約のなかには、「住宅ローンを組んで購入した家には契約者本人または家族が住むこと」という条件が含まれています。
しかし、家を貸し出すと第三者が家に住むことになる為、契約違反となります。

住宅ローンが残っている状態で引っ越す方法

では、住宅ローンが残ったまま引っ越すにはどうすれば良いか、詳しく見ていきましょう。

家に家族が住み続ける

住宅ローンが残った家に家族の誰かが住み続けるならば、引っ越しは可能です。
住宅ローンは、前述した通り契約者本人または家族が住むことを前提としている為です。

家族が住み続ける例として以下が挙げられます。

  • 単身赴任で父が引っ越す
  • 娘が結婚により引っ越す
  • 子どもが進学の為引っ越す

住宅ローンが残っている家でも、上記のケースでは契約者や家族が住み続けている為、引っ越しても問題ありません。

事情で一時的に引っ越す

やむを得ない事情がある場合、金融機関の了承を得たうえで家族全員が一時的に引っ越すことが可能です。この場合、住宅ローンを支払い続けたまま、実家や賃貸住宅に住むことになります。

具体的には次のようなケースが挙げられます。

  • 転勤による引っ越し
  • 親の介護の為の引っ越し

また、家が長期間空き家になる場合は「リロケーション」も行えます。リロケーションとは、自宅を長期間留守にする場合、一定期間だけ貸し出して家賃収入を得る方法です。
リロケーションができる主なケースは以下の通りです。

  • 海外赴任
  • 遠方への転勤
  • 長期出張

住宅ローンが残った状態でやむを得ない事情で引っ越しすることになった場合は、契約違反にならないようできるだけ早く金融機関へ相談することをお勧めします。

家を売却して引っ越す

家を売却すれば、住宅ローンが残っていても引っ越せます。ただし、売却の為には住宅ローンを完済する必要があります。
ここからは、売却により住宅ローンを完済する方法をご紹介します。

家の売却代金でローンを返済する

住宅ローンの残債が売却価格より低い「アンダーローン」の場合、家の売却代金で住宅ローンを完済できます。例えば、住宅ローンの残債が2,000万円で売却代金が3,000万円といったケースです。

一方、住宅ローンの残債が家の売却価格を上回る「オーバーローン」の状態では、売却代金だけでは住宅ローンを完済できません。例えば、住宅ローンの残債が3,000万円にもかかわらず、売却代金が2,000万円にしかならないようなケースが該当します。

自己資金と売却代金でローンを返済する

オーバーローンの状態でも、売却代金と自己資金を合わせることで住宅ローンを完済できます。例えば、以下の状況であればオーバーローンでも売却が可能です。

  • 住宅ローンの残債:4,000万円
  • 売却価格:3,500万円
  • 自己資金:1,000万円

住み替えローンを利用する

住み替えローンを利用して残債を完済する方法も考えられます。住み替えローンとは、現在住んでいる家のローンの残債と、新しい住宅を購入する為の資金を合算して借り入れるローンです。

住み替えローンを活用して住宅ローンを完済する例としては、次のケースが挙げられます。

  • 現在住んでいる家の住宅ローン残債:3,000万円
  • 売却価格:2,000万円(不足金額:▲1,000万円)
  • 住み替え先の購入資金:4,000万円
  • 住み替えローン:5,000万円(4,000万円+1,000万円)

この場合、住宅ローンの完済には1,000万円が不足していますが、住み替えローンとして新居の購入資金4,000万円に加え不足分1,000万円を借り入れることで、現在住んでいる家の住宅ローンが完済できます。

ただし、住み替えローンには以下のリスクが考えられるので、利用する場合は慎重に検討する必要があります。

  • 審査が厳しい場合がある
  • 売却日と購入日を調整する必要がある
  • 通常の住宅ローンよりも金利が高い傾向にある

住み替えローンを活用する際のリスクについては、こちらの記事で詳しく解説していますのでご覧ください。

住み替えローンの利用はあり?メリットや金利・審査面から注意点を解説

任意売却を検討する

金融機関の同意を得て住宅ローンを一括返済する「任意売却」を利用する方法もあります。任意売却は、住宅ローンの返済が滞っていたり、不動産を売却しても残債が完済できなかったりするケースで利用できます。

任意売却とは、住宅ローンを組んでいる金融機関と協議して、合意を得たうえで売却する方法です。金融機関が金銭的な事情を考慮して、無理のない返済プランを提案してくれるケースがある為、金銭的負担は軽減されます。

一方、住宅ローンの滞納が続くと個人信用情報に傷がつき、一定期間新たな融資やクレジットカードの作成ができなくなる恐れがあるので注意しましょう。
その為、任意売却は他の手段で住宅ローンを完済できなかった場合の最終手段として考えるようにしましょう。

任意売却のメリットや注意点については、こちらの記事で詳しく解説していますのでご覧ください。

任意売却とは?売却の流れや条件、メリット・注意点を解説

住宅ローンが残っている家を売却するときの流れ

住宅ローンが残っている家を売却する流れは以下の通りです。

  1. 金融機関に相談する
  2. 住宅ローンの残債額を正確に確認する
  3. 家の査定を依頼する
  4. 売り先行か買い先行か決める

ここからは、それぞれ詳しく解説していきます。

➀金融機関に相談する

まずは、ローンを組んでいる金融機関に相談して承認を得ましょう。
前述した通り、金融機関に無断で住宅ローンがある家を売却したり、賃貸として貸し出したりすると契約違反となり、住宅ローン残債の一括返済を求められる恐れがあります。

金融機関に相談をすれば、現状に応じて柔軟な対応を取ってもらえるはずです。無用なトラブルを避け安心して売却を進める為にも、金融機関には必ず相談しましょう。

➁住宅ローンの残債額を正確に確認する

次に、住宅ローンの残債額を正確に把握しましょう。家の売却代金だけで住宅ローンが売却できるか(アンダーローンの状態かどうか)を知る為にも確認することが大切です。

住宅ローンの残債額を調べる方法は主に以下の通りです。

  • 住宅ローンの残高証明書を確認する
  • 返済予定表を確認する
  • インターネットバンキングにログインして確認する

住宅ローンの残債額によって売却方法が変わってくる為、できるだけ早めに確認しましょう。

➂家の査定を依頼する

住宅ローンの残債額を確認した後は、どのくらいの金額で売却できるかを知る為に、不動産会社に住宅の査定を依頼します。算出された価格によって、自己資金で充当可能かどうか、住み替えローンが必要になるのかなど今後の資金計画も変わってきます。その為、エリアの情報が豊富な不動産会社へ依頼し、できる限り正確な売却額を出してもらいましょう。

不動産査定については、こちらの記事で詳しく解説していますのでご覧ください。

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④売り先行か買い先行か決める

住宅ローンが残っている家の売却を検討する際は、売り先行か買い先行かを決める必要があります。

売り先行とは、現在住んでいる家を売却した後に新居を購入する方法です。
売却してから新居を購入する為、堅実な資金計画が立てられる点や、良い条件で売る為にじっくり腰を据えて売却に臨める点がメリットです。
家の査定価格が住宅ローン残債額より低い場合は売り先行を選び、住宅ローンを完済し金銭的負担を軽くしてから新居の購入を検討すると良いでしょう。

一方、買い先行とは、新居を購入した後に現在住んでいる家を売却する方法です。
買い先行のメリットには、今の住まいから直接新居に引っ越せることから仮住まいがいらない点や、新居選びに時間をかけられる点が挙げられます。
住宅ローンの残債額より高い査定価格が算出された場合は買い先行がお勧めです。売却価格で住宅ローンを返済できる可能性が高く、資金計画が立てやすい為、妥協することなく新居選びができるでしょう。

売り先行や買い先行については、こちらの記事で詳しく解説していますのでご覧ください。

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住宅ローンがある状態で引っ越すときの注意点

続いて、住宅ローンが残っている状態で引っ越す場合の注意点を解説します。

売却する場合は費用も把握しておく

売却するといっても、その手続きには以下の諸費用がかかります。それぞれしっかり把握しておきましょう。

かかる費用 相場
仲介手数料 売買価格によって異なる。

  • 400万円超:成約価格(税抜)×3%+6万円+消費税
  • 200~400万円以下:成約価格(税抜)×4%+2万円+消費税
  • 200万円以下:成約価格(税抜)×5%+消費税
印紙代 売買契約書に記載されている売買価格によって異なる。

  • 100万円を超え500万円以下:1,000円
  • 500万円を超え1,000万円以下:5,000円
  • 1,000万円を超え5,000万円以下:1万円
  • 5,000万円を超え1億円以下:3万円
2027年3月31日までの間に作成される契約書については印紙税税額の軽減が適用される。
登録免許税(抵当権抹消) 不動産1つにつき1,000円
司法書士報酬 住所の移転登記や氏名変更登記、抵当権抹消登記の際に必要になる。

司法書士に依頼する場合は依頼料として1万円~3.5万円程度
住宅ローン完済手数料 金融機関によって異なる。

一般的には3.3~5.5万円程度
譲渡所得税 売却で得た所得額や保有期間により異なる。
  • 所有期間5年以下:譲渡所得の39.63%
  • 所有期間5年超:譲渡所得の20.315%

出典:国税庁「不動産売買契約書の印紙税の軽減措置」

出典:日本司法書士連合会「報酬アンケート結果(2018年(平成30年)1月実施)」

物件価格によっては100万円を超える諸費用がかかるケースもある為、資金計画は慎重に立てる必要があります。

売却にかかる費用や税金については、こちらの記事で詳しく解説していますのでご覧ください。

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住宅ローン控除の適用可否を確認する

住宅ローンが残っている家から引っ越す場合は、住宅ローン控除が引き続き適用されるかどうかを確認しなければいけません。住宅ローン控除とは、10年以上住宅ローンを組んでいる方を対象に所得税や住民税が控除される制度のことです(その他にも適用条件あり)。

ここからは、ケース別に住宅ローン控除が適用されるかどうかを解説します。

家族全員で引っ越す場合

家族全員で引っ越す場合、住宅ローン控除を継続して受けることはできません。
住宅ローン控除は「契約者やその家族が住宅ローン控除を受ける年の12月31日まで居住している」ことが条件となっています。したがって、家族全員が引っ越すと控除を受ける住宅に誰も住んでいないことになる為、住宅ローンが適用されません。

ただし、住宅ローン控除の残存期間中に戻ってきた場合は、再適用の手続きを行うことで残りの期間は住宅ローン控除が受けられます。

再適用の手続きを行う場合、再適用を受ける最初の年分の確定申告書に、住宅ローン控除を受ける金額について記載して以下の書類を提出します。

  • 住宅借入金等特別控除の計算に関する明細書((特定増改築等)住宅借入金等特別控除額の計算明細書)
  • 金融機関等から交付を受けた「住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書」

出典:国税庁「住宅借入金等特別控除の再適用を受けるための手続2(再び居住の用に供したときの手続)」

住宅ローン控除の適用要件や申請方法については、こちらの記事で詳しく解説していますのでご覧ください。

【2024年】住宅ローン控除はいつまで受けられる?税制改正による変更点や要件、申請方法について解説

やむを得ない事情で契約者のみが引っ越す場合

住宅ローンの契約者のみが引っ越してその家族が家に住み続ける場合、所定の手続きを行えば住宅ローン控除を継続して受け続けられます。
同一生計の家族が住み続けることで、本人が居住しているものとして扱われる為です。

なお、単身赴任などのやむを得ない状況で引っ越しする場合は、管轄の税務署に以下の書類を提出する必要があります。

  • 転任の命令等により居住しないこととなる旨の届出書
  • 未使用分の「年末調整のための(特定増改築等)住宅借入金等特別控除証明書兼給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書」(税務署長から交付を受けている場合に限る)

出典:国税庁「No.1234 転勤と住宅借入金等特別控除等」

買い替えの場合

買い替えによる住み替えの場合は、要件を満たすことで買い替え先の住宅で住宅ローン控除を引き続き受けられます。ただし「3,000万円特別控除」など、住宅ローン控除以外の特例を利用したほうが税額を減らせる可能性がある為、どちらが得なのかを十分にシミュレーションすることが重要です。

3,000万円特別控除については、こちらの記事で詳しく解説していますのでご覧ください。

3000万円特別控除とは?適用条件や計算方法について解説

住民票を必ず移しておく

住宅ローンが残っている家から引っ越す際は、住民票を必ず移しておくようにしましょう。住宅ローン控除を引き続き受けたいからと住民票を移さずにいると、以下のリスクが発生します。

  • 居住地の公共サービスを受けられない
  • 5万円以下の過料が徴収されるケースがある

住民票を移さずにいると、図書館利用などの地域住民向けの公共サービスや、居住地の選挙への参加ができなくなるなどのリスクが生まれます。また、住民票を移さないと住民基本台帳法により法律違反となり過料が徴収されるケースもあります。

さらに、実際には住んでいないにもかかわらず住宅ローン控除を受け続けた場合、脱税とみなされ起訴される恐れがあります。裁判により有罪と判決されると、10年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金に処せられる場合もあります。

出典:総務省「住民基本台帳等|住所の異動届は正しく行われていますか?」

まとめ

住宅ローンが残っていても引っ越すことは可能です。しかし、基本的に住宅ローンを完済しなければ売却や貸し出しはできません。また、引っ越す場合は売却にかかる諸費用や住宅ローン控除の適用条件も確認しておく必要があります。

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※本記事の内容は2024年9月2日現在のものであり、制度や法律については、今後改正・廃止となる場合がございます。

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この記事の著者

杉山明熙
元不動産営業のWEBライター。
不動産営業を12年間経験し店長、営業部長として、売買仲介、賃貸仲介、新築戸建販売、賃貸管理、売却査定等、あらゆる業務に精通。
個人ブログにて不動産営業への転職のお手伝い、不動産営業のノウハウ、不動産投資のハウツーなどを発信。
不動産業界経験者にしかわからないことを発信することで「実情がわかりにくい不動産業界をもっと身近に感じてもらいたい」をモットーに執筆活動を展開中。
宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、2級ファイナンシャルプランナー保有。
写真:杉山明熙

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