2022.11.28マンションを売却した時の固定資産税はどうすればいい?清算方法や注意点を解説

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不動産を保有していると、毎年、固定資産税が課税されます。マンションを売却する際に知っておきたいのが、買主様と固定資産税の清算をするという取引慣行についてです。
では、固定資産税や、売却で行う固定資産税の清算とはどのようなものなのでしょうか。
この記事では、マンション売却の固定資産税の計算方法や買主様と清算をする場合の注意点を解説していきます。
この記事では「マンション売却の固定資産税」について解説します。

固定資産税とは?

固定資産税とは、土地と建物の両方に係る市町村税(東京23区は都税)の一種です。各市町村に備え付けられた固定資産課税台帳に、1月1日(賦課期日)時点において所有者として登録されている方に対して課税される税金です。

固定資産税の確認方法

固定資産税は、毎年、市町村税(東京23区は都税)から所有者に対して送付される納税通知書で確認が可能です。

納税通知書には、税額の他、固定資産税評価額や課税標準額、所在、面積、特例の適用などが記載されています。
課税標準額とは、税率を直接乗じて税金を計算できる額のことです。

納税通知書に記載されている固定資産税は、課税標準額に税率(1.4%)を乗じたもので、下記のように計算されています。

固定資産税 = 課税標準額 × 税率(1.4%)

参考:東京都主税局「固定資産税・都市計画税(土地・家屋)」

※なお、税率は地域や自治体によって異なる場合があります。

都市計画税との違い

都市計画税とは、都市計画で指定されている市街化区域内の土地や家屋の所有者に課税される税金のことです。
市街化区域とは、「すでに市街化を形成している区域またはおおむね10年以内に優先的かつ計画的に市街化を図るべき区域」になります。
街化区域は多くの方が住んでいる地域に指定されている場合がよくある為、都市計画税と固定資産税の両方が課税されることもあります。
固定資産税と都市計画税はどちらも1月1日時点の所有者に課される税金であり、主な違いは税率です。
固定資産税は課税標準額に1.4%を乗じるのに対し、都市計画税は固定資産税評価額に0.3%(標準税率)を乗じて求めます。

マンション売却の固定資産税は誰が支払う?

固定資産税および都市計画税の納税義務者は、あくまでも賦課期日である1月1日時点の所有者です。
仮に1月1日から12月31日までの間に、何度も売買され所有者が変わっていたとしても、納税義務者は1月1日時点の所有者となります。その為、マンションを売却すると、1月1日時点の所有者と引き渡し日以降の所有者が異なることが一般的です。

しかしながら、固定資産税は引き渡し日以降については買主様が負担するほうが合理的です。そこで、マンション売却では引き渡し日以降の固定資産税および都市計画税の相当額を清算金という形で買主様が売主様に支払います。これを「固定資産税の清算」と呼びます。

マンション売却時の固定資産税の計算方法

固定資産税は、固定資産税評価額から導き出される課税標準額に税率を乗じて求めます。

固定資産税評価額の目安

土地の固定資産税評価額は地価公示価格の7割が目安です。
地価公示価格とは、国が毎年行っている土地の評価であり、評価地点の1月1日時点における価格のことを指します。

建物の固定資産税評価額は新築当初は請負工事金額の5~6割程度が目安となります。
また、建物の固定資産税評価額は再建築価格と経年減点補正率を利用して求めることができます。再建築価格とは、対象物件を評価時点でその土地に新築する場合に要する建築費のことで、経年減点補正率とは、築年数経過にともなう減価を考慮した補正率です。

固定資産税の軽減措置

土地の固定資産税および都市計画税には、「住宅用地の軽減措置」があります。
課税標準額を求める料率を示すと下表のようになります。

住宅用地の種類 固定資産税 都市計画税※3
小規模住宅用地※1 固定資産税評価額の1/6 固定資産税評価額の1/3※3
一般住宅用地※2 固定資産税評価額の1/3 固定資産税評価額の2/3

※2:一般住宅用地とは、住宅の敷地で住戸1戸につき200㎡を超え、家屋の床面積の10倍までの部分
※3:東京23区ではさらに税額が1/2となる

建物の固定資産税には、一定の減額制度があります。
建物の固定資産税の減額制度は下表の通りです。

減額制度 一般の住宅 長期優良住宅
減額年 減額割合 減額年 減額割合
一般の新築住宅 3年間 1/2 5年間 1/2
主な新築マンション※ 5年間 1/2 7年間 1/2
耐震改修 1年間 1/2 1年間 2/3
バリアフリー改修 1年間 1/3 適用なし
省エネ改修 1年間 1/3 1年間 2/3

※地上3階以上の中高層耐火建築物

出典:東京都主税局「軽減制度」

新築マンションの固定資産税の計算

では実際に、新築マンションの固定資産税の計算をしてみましょう。

(前提条件)
敷地全体の固定資産税評価額:12億円
敷地権割合:100万分の50
住宅用地の特例:全て小規模住宅用地
都市計画税:あり(23区外)
建物の固定資産税評価額:800万円
構造:地上3階以上の中高層耐火建築物
(計算例)
(固定資産税)
土地の課税標準額 = 敷地全体の固定資産税評価額 × 敷地権割合 × (1/6)
         = 12億円 × 1万分の50 × (1/6)
         = 100万円

土地の固定資産税 = 100万円 × 1.4%
         = 1.4万円

建物の固定資産税 = 800万円 × 1.4% × (1/2)
         = 5.6万円

固定資産税 = 土地 + 建物
      = 7万円

(都市計画税)
土地の課税標準額 = 敷地全体の固定資産税評価額 × 敷地権割合 × (1/3)
         = 12億円 × 1万分の50 × (1/3)
         = 200万円

土地の都市計画税 = 200万円 × 0.3%
         = 0.6万円

建物の都市計画税 = 800万円 × 0.3%
         = 2.4万円

都市計画税 = 土地 + 建物
      = 3万円

税額 = 固定資産税 + 都市計画税
   = 7万円 + 3万円
   = 10万円

中古マンションの固定資産税の計算

次に、中古マンションの固定資産税の計算をしてみましょう。
前提条件は築10年とし、その他の条件は前節と同じとします。築10年の中古マンションである為、建物の新築の軽減制度は適用されないものとします。

(前提条件)
敷地全体の固定資産税評価額:12億円
敷地権割合:100万分の50
住宅用地の特例:全て小規模住宅用地
都市計画税:あり(23区外)
建物の固定資産税評価額:800万円
構造:地上3階以上の中高層耐火建築物
築年数:築10年
(計算例)
(固定資産税)土地の課税標準額 = 敷地全体の固定資産税評価額 × 敷地権割合 × (1/6)
         = 12億円 × 1万分の50 × (1/6)
         = 100万円

土地の固定資産税 = 100万円 × 1.4%
         = 1.4万円

建物の固定資産税 = 800万円 × 1.4%
         = 11.2万円

固定資産税 = 土地 + 建物
      = 12.6万円
(都市計画税)
土地の課税標準額 = 敷地全体の固定資産税評価額 × 敷地権割合 × (1/3)
         = 12億円 × 1万分の50 × (1/3)
         = 200万円

土地の都市計画税 = 200万円 × 0.3%
         = 0.6万円

建物の都市計画税 = 800万円 × 0.3%
         = 2.4万円

都市計画税 = 土地 + 建物
      = 3万円

税額 = 固定資産税 + 都市計画税
   = 12.6万円 + 3万円
   = 15.6万円

固定資産税の起算日別清算方法

固定資産税の起算日には、課税期間(1月1日から12月31日)を基準にする場合と、会計年度(4月1日から3月31日)を基準とする場合の2種類があります。

関東の場合

関東では、課税期間(1月1日から12月31日)を基準とし、1月1日を起算日とする取引慣行が一般的です。
固定資産税を12万円、引き渡し日を5月1日とした場合の清算額は以下のようになります。

起算日:1月1日
売主様の負担:4万円(1月~4月までの4ヵ月分)
買主様の負担:8万円(5月~12月までの8ヵ月分)
買主様から売主様へ支払われる清算金は8万円となります。

関西の場合

関西の一部の地域では、会計年度(4月1日から3月31日)を基準とし、4月1日を起算日とする取引慣行が見られます。
固定資産税を12万円、引き渡し日を5月1日とした場合の清算額は以下のようになります。

起算日:4月1日
売主様の負担:1万円(4月の1ヵ月分)
買主様の負担:11万円(5月~翌年3月までの11ヵ月分)
買主様から売主様へ支払われる清算金は11万円となります。

固定資産税を清算する際の注意点

固定資産税を清算する際の注意点について解説します。

日割り計算をする規定はない

固定資産税の清算は、法律上決まっているものではありません。取引慣行上のものであり、清算を行うかどうかはあくまでも売主様と買主様との協議によって決めるのが原則です。

起算日や清算内容を明記する

不動産会社が使用する売買契約書では、起算日や清算内容が明記されていることが通常です。清算内容とは、例えば都市計画税も清算するか否かといった内容です。
不動産会社を通さずに個人売買を行う場合には、起算日や清算内容が明記されていないこともある為、売買契約書に明記することがトラブル防止につながります。

清算によって利益が出た場合は確定申告をする

個人がマンションを売却する際、譲渡所得(売却益)が発生した場合には売却の翌年2月16日~3月15日までに確定申告を行う必要があります。
譲渡所得の計算式を示すと以下のようになります。

譲渡所得 = 譲渡価格 - (取得費 + 譲渡費用)

譲渡価格とは、売却額などの売却で得た収入のことです。
取得費とは、土地は購入額、建物は購入額から減価償却費を控除した額です。
譲渡費用は、仲介手数料などの売却に直接要した費用のことです。

固定資産税の清算金は、譲渡価格の計算に関係します。
固定資産税は、あくまでも1月1日時点の所有者が納税すべきものである為、本来的には清算する義務がありません。
つまり、売主様は清算する必要性のない清算金を買主様からもらっているということになります。
国税庁から見ると買主様から受領する固定資産税の清算金は、単なる値上げと判断されてしまう為、譲渡所得を計算するうえでは、固定資産税の清算金は譲渡価格に加算しておく必要があります。

譲渡価格 = 売却価格 + 固定資産税の清算金

一方で、マンション売却では買主様との間で管理費や修繕積立金を清算することも多いですが、こちらは譲渡価格に加算しなくても問題ありません。
理由は、管理費や修繕積立金は、翌月分を前月に支払う前払い方式が多い為、売買を行うと清算する必要があるからです。例えば、6月分の管理費などは5月に支払う為、6月に引き渡しがなされると売主様が本来買主様の負担すべき管理費などを支払っていることになります。

買主様から支払われる管理費などの清算金は、売主様が立て替えたものを清算していることになりますので、管理費や修繕積立金の清算金は譲渡価格に加算しなくても良いといえます。
確定申告については以下の記事で詳しく紹介していますので、ご覧ください。

マンションを売却したら確定申告が必要?流れや手順、必要書類について徹底解説

納税証明書が届く前に売却した場合は?

東京都23区内では、毎年6月1日に納税通知書が送付されますが、納税通知書が届く前に売却が行われることも十分にありえます。
この場合、清算金は買主様と協議のうえ、手元にある最新の(前年の)納税通知書に基づき、清算額を求めることが一般的な対応となります。

マンション売却時にかかる固定資産税以外の税金は?

マンション売却では、売主様に以下のような税金がかかります。

  • 売買契約書に貼る印紙税
  • 抵当権抹消の登録免許税
  • 譲渡所得が出た場合の所得税および住民税、復興特別所得税

マンション売却で発生する税金については以下の記事で詳しく紹介していますので、ご覧ください。

マンション売却にかかる税金はいくら?計算方法や知っておきたい控除について徹底解説

まとめ

ここまで、マンション売却の固定資産税について解説してきました。
マンションの売却では、固定資産税を清算することが取引慣行となっていますが、その年における固定資産税の納税義務者は、あくまでも1月1日時点の所有者です。その為、買主様と清算をする場合は、売買契約書に起算日や清算内容を明記しておくとトラブルを避けられるでしょう。

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※本記事の内容は2022年11月28日現在のものであり、制度や法律については、今後改正・廃止となる場合がございます。

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この記事の著者

竹内英二(株式会社グロープロフィット 代表取締役)
不動産鑑定および宅建業の代表取締役。不動産鑑定士、宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、公認不動産コンサルティングマスター(相続対策専門士)、中小企業診断士、住宅ローンアドバイザー。大阪大学出身。
写真:竹内英二(株式会社グロープロフィット 代表取締役)

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