2024.10.02中古の二世帯住宅が売れない理由は?売れやすくする方法や注意点を解説

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通常の一戸建てと比べて特殊で大きい二世帯住宅は、買い手がつきにくい傾向にあります。

しかし、二世帯住宅を売却するコツを押さえれば売却できる可能性はあります。
この記事では、中古の二世帯住宅が売れにくい理由や売却方法、売却のコツについて分かりやすく解説します。

二世帯住宅の主な種類は?

二世帯住宅とは、親世代と子世代が一緒に生活することを想定してつくられた住宅です。
ただ、一口に二世帯住宅といっても間取りや構造によって、以下の3種類に分かれます。

  • 完全分離型
  • 一部共有型
  • 完全同居型

二世帯住宅の売却を検討している場合、まずは自分の住宅がどの種類に該当するのか押さえておきましょう。
以下で、それぞれの特徴について詳しく解説します。

完全分離型

完全分離型とは、全ての生活空間を世帯ごとに分けている住宅のことです。
「1階と2階で分ける」「左右で分ける」など形状は様々ですが、それぞれの居住空間が完全に分けられています。その為、同じ建物であっても、お互いのプライバシーが保ちやすい点がメリットです。

ただし、それぞれの世帯でキッチンやお風呂といった生活設備が必要になるので、二世帯分の建築コストがかかります。
その為、売却する際にも高額になりがちです。

一部共有型

一部の生活スペースや設備を共有するタイプが一部共有型(部分共有型)です。
どの部分を共有するかは住宅によって異なりますが、例えば玄関やトイレ・お風呂は共同で使用し、寝室やキッチン・リビングはそれぞれの世帯で分けるといった間取りがあります。

プライベート空間は独立できるので程良い距離感で暮らしやすく、完全分離型よりも建築コストを抑えやすいという点がメリットです。
とはいえ、共有部分がある以上、使い方や生活音などでトラブルになりやすいというデメリットもあります。

完全同居型

完全同居型は、寝室などの一部を除いてほぼ全ての部屋や設備を共有するタイプです。
間取りとしては一般的な一戸建てとほとんど変わらない為、建築コストを抑えやすいというメリットがあります。また、同居を解消してどちらかの世帯だけが残る場合でも生活しやすい点もメリットといえるでしょう。

ただし、居住人数が多い為、一般的な一戸建てよりも床面積が大きくなります。

中古の二世帯住宅が売れにくい原因

ここでは、二世帯住宅が売れにくい原因について解説します。

売り出し価格が高額になりやすい

二世帯住宅は、基本的にどの種類であっても一般的な一戸建てと比べると建築コストが高くなる傾向があります。
特に、完全分離型の場合、二世帯分の設備や居住空間が必要になるので建築コストが高額になりやすいです。
比較的費用を抑えられる完全同居型でも、敷地面積が広くなる為ある程度の費用はかかるでしょう。

このように建築コストが高く土地面積も広くなる為、基本的に売り出し価格も高く設定されます。売主様としても少しでも建築コストを回収しておきたいところでしょう。

その為、二世帯住宅は中古住宅であっても買い手から割高と思われてしまい避けられやすいのです。

二世帯住宅を購入する層が少ない

厚生労働省の「2023年国民生活基礎調査」によると、1986年には37,554世帯だった総世帯数が、2023年には54,452世帯に増加しています。

この内、親世帯と子どものいる子世帯が一緒に生活する三世代世帯数は、1986年の5,757世帯から減少を続け2023年には2,050世帯となっています。これは、世帯数全体(54,452世帯)に対して約3.8%と少ない割合でもあります。

一方、「夫婦のみ世帯」「夫婦と未婚の子のみ世帯」の総世帯数は、2023年で26,911世帯と世帯全体のほぼ半数を占めています。

総世帯数が増えている一方で、三世代世帯は減少していることから、核家族化が進んでいるといえるでしょう。

このように、同居世帯が減少を続ける日本では、そもそも二世帯住宅の購入層が少なくなってしまう為、売却が難しくなってくるのです。

参考:厚生労働省「2023年国民生活基礎調査」

買い手のニーズとマッチしにくい

二世帯住宅は、基本的に売主様の家族構成や事情・希望に合わせて建築されています。
その為、売主様にとっては住みやすい家でも、買い手のニーズにマッチするとは限りません。例えば、売主様の希望でキッチンや玄関を共有している二世帯住宅は、キッチンや玄関を別にしたい買い手のニーズには合わなくなります。

同居を視野に入れている分、買い手の間取りに対する条件もシビアになってくることも予測できます。
種類が分かれるうえに間取りも多岐にわたる二世帯住宅は、細かい部分で買い手のニーズに合わないという点も売却がスムーズに進まない要因といえます。

物件にマイナスなイメージを持たれている

売りに出ている二世帯住宅にマイナスイメージを持っている買い手も少なくありません。

二世帯住宅が売りに出ているということは、何らかの理由で同居が解消されたことが予測できます。
一般的には、親の他界やそれにともなう相続による売却が多いでしょう。
もちろん、仮に売却理由が親の死亡であったとしても住宅内で亡くなっているとは限りませんが、「人の死」を連想しやすいことから、避けられやすくなります。

中古の二世帯住宅の購入を検討している層には高齢の親がいる為、縁起を担ぐ方やマイナスイメージのある家に抵抗感を抱く方も少なくないでしょう。

なお、実際に親が住宅内で死亡した場合、発見が遅れたなど一部のケースは事故物件として取り扱われます。
事故物件に該当する場合は、買主様への告知義務があるので注意しましょう。
事故物件に該当するか不安な方は不動産会社への相談をお勧めします。

事故物件の売却については、こちらの記事で詳しく解説していますのでご覧ください。

事故物件を売却する方法とは?告知義務や売却価格の相場について解説

二世帯住宅の売却が得意でない不動産会社もいる

不動産会社にも得意・不得意があります。
二世帯住宅の売却が得意でない不動産会社の場合、売却活動がうまくいかないこともあるでしょう。

不動産売却は不動産会社の力量にも左右されます。
二世帯住宅を売却するなら、実績のある不動産会社を選ぶことが重要です。

中古の二世帯住宅を売却する方法

次に、二世帯住宅を売却する方法について見ていきましょう。

そのまま仲介で売却する

二世帯住宅であっても、一般的な一戸建て同様に仲介での売却が可能です。
仲介で売却できれば、適正価格での売却が期待できるでしょう。
仲介で売却する場合の大まかな流れは以下の通りです。

売却の流れ
  1. 不動産の名義を確認する
  2. 不動産会社に査定を依頼する
  3. 不動産会社と媒介契約を締結する
  4. 売却活動を行う
  5. 買主様と売買契約を締結する
  6. 決済・引き渡しを行う

仲介で売却する場合、3ヵ月〜半年程時間がかかるのが一般的です。ただし、二世帯住宅の場合、間取りや家の種類によってはそれ以上の時間がかかる恐れもあるので注意しましょう。

また、二世帯住宅の場合は名義人が誰であるかによって売却時の注意点が異なります。名義人については後ほど詳しく解説します。

仲介で売却する際の流れについては、こちらの記事で詳しく解説していますのでご覧ください。

一戸建て売却の基礎知識!売却までの流れや費用、成功させる為のポイントを紹介

リフォームをして一戸建てとして売却する

二世帯住宅をリフォームして一戸建てにすれば、購入層を広げられるので売却しやすくなります。
一部共有型・完全同居型であれば、生活スペースがすでに共有されている為、スペースの調整や仕切りの新設・除去が少なくて済むケースもあり、比較的リフォームしやすいのでお勧めです。

ただし、リフォームには高額な費用がかかります。
また、リフォームしたからといって確実に売却できる保証はありません。
なかには、中古物件を購入して自分好みにリフォームしたいというニーズもあるので、先にリフォームしてしまうとそのニーズとマッチしにくくなる恐れもあります。
基本的にリフォーム費用は売却代金に上乗せできないので、かけた費用を回収するのも難しいでしょう。

リフォームについては判断が難しいので、リフォームする前に不動産会社に相談することをお勧めします。

賃貸物件として運用する

完全分離型であればそれぞれの世帯が独立しているので、一部や全部を賃貸として運用してみても良いでしょう。
賃貸なら毎月家賃収入を得られるので、固定資産税や修繕費用を賄える可能性があります。
また、所有権は手放さないので将来的にその家に住んだり、新しい建物を建てたりすることも可能です。

ただし、賃貸物件として運用しても必ず借り手がつくわけではありません。
立地や周辺環境・エリアの世帯ニーズなどを踏まえて、賃貸ニーズがあるかリサーチしたうえで検討するようにしましょう。

不動産会社に買取を依頼する

買取とは、不動産会社に直接二世帯住宅を買い取ってもらう方法です。

買取の場合、不動産会社との条件に合意できれば売却できるので、短期間での売却も目指せるでしょう。
また、一般的に不動産会社は買取後にリフォームして再販する為、事前にリフォームなどが不要というメリットもあります。
買主様が不動産会社になるので、売主様の負う契約不適合責任も免責できる点も魅力です。

買取で売却する場合の大まかな流れは、以下の通りです。

売却の流れ
  1. 不動産の名義を確認する
  2. 不動産会社に査定を依頼する
  3. 不動産会社と買取条件の交渉を行う
  4. 不動産会社と売買契約を締結する
  5. 決済・引き渡しを行う

買取の場合も、仲介同様名義の確認が重要になってきます。
また、買取は仲介に比べて売却額が低くなる点には注意しましょう。
売却額が安くてもすぐに売却したい、契約不適合責任のリスクを負いたくないという場合は、買取が適しています。

こちらはマンション売却に関する記事ですが、買取の特徴や仲介との違いについて詳しく知りたい方はご覧ください。

マンション買取とは?仲介との違いや注意点、向いているケース、業者の選び方について解説

長谷工の仲介では買取や売却保証にも対応しているので、まずはお気軽にご相談ください。

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中古の二世帯住宅を売却する際のポイントや注意点

二世帯住宅売却する際には、ポイントや注意点を押さえておくことが大切です。詳しく見ていきましょう。

不動産会社に相談のうえ価格を調整する

前述した通り、二世帯住宅が売りにくい原因の一つに価格の高さが挙げられます。
売り出し価格は売主様が自由に決められるとはいえ、相場よりも高値になると買い手から避けられやすくなるので注意しましょう。

しかし、二世帯住宅は取引件数が少なく相場に対しての適正価格がつかみにくい物件でもあります。
売り出し価格を決める際には、不動産会社と相談しながら決めることで買主様が見つかりやすくなる可能性があります。また、値引きする場合も考慮して、最低売却価格も決めておくと安心です。

名義を確認しておく

二世帯住宅は名義が複雑なケースも多い為、まずは登記簿を確認して名義が誰なのかを確認しましょう。
以下では、二世帯住宅での名義人のパターンと売却時の注意点を一覧にまとめています。

名義人 売却時の注意点
親による単独名義
  • 親が売却するか、名義人を子に変更して子が売却する必要がある
  • 名義変更する場合贈与に該当する点に注意が必要
  • 親のみで売却可能だが合意を得ておくほうが良い
子による単独名義
  • 子のみで売却可能だが合意を得ておくほうが良い
親子で共同名義
  • 親と子どちらかだけでは売却できない為、親と子の合意を得てから売却を進める
  • 単独名義にして売却することも可能
区分登記による親子それぞれの名義 自分の持分のみ売却可能だが、持分のみの売却は難しい

二世帯住宅に限らず不動産は名義人しか売却できません。
例えば、子世帯が売却を進める場合、名義人が子であるなら子の判断だけで売却を進められますが、名義人が親の場合は売却ができません。

この場合、親が自分の持分を子に売却するか、不動産の名義を子に変更する必要があります。
ただし、親の生存中に名義を子に変更すると贈与に該当し贈与税が課せられる恐れがある点には注意しましょう。

一方、親と子で名義を共有している場合、売却するには両方の合意が必要となります。
また、二世帯住宅を2つの住宅とみなす区分所有名義であれば、自身の名義分のみ相手の合意を得ずに売却が可能です。
しかし、二世帯住宅の一部のみを購入したいという買主様は基本的にはおらず、単独での売却は難しいでしょう。

とはいえ、どのパターンであっても同居している家族全員の合意を得ておくことが大切です。

物件の清掃や点検をしっかり行う

物件をしっかり清掃しておくことで、内覧時の印象がよくなります。
また、清掃や点検を行っておくと、買主様にとって安心材料になるだけでなく信頼できる売主様と見られ、売却につながりやすくなるでしょう。

特に、築年数の古い物件の場合、劣化状況や設備不具合の有無について点検しておくことが大切です。
買主様の購入後に不具合が見つかると、契約不適合責任を問われ賠償請求を受けるなどのトラブルにもなりかねません。物件の正確な状態を把握することで、トラブルを避けやすくなるでしょう。

その際、不具合や劣化原因を診断するホームインスペクションを実施しておくと、物件の状態を把握できるだけでなく、買主様の印象も良くできるのでお勧めです。

インスペクションについては、こちらの記事で詳しく解説していますのでご覧ください。

インスペクションのメリットは?流れや費用相場、検査項目などを解説

瑕疵を隠さずに伝える

不動産における瑕疵とは、建物や土地に何らかの欠陥がある状態のことです。
瑕疵には、以下の4つの種類があります。

瑕疵の種類 概要
物理的瑕疵
  • 建物や土地が本来備えている品質や性能を損なっている状態
  • 雨漏りやシロアリなどの物理的な不具合のこと
心理的瑕疵
  • 心理的に嫌悪感や抵抗を抱く恐れがあること
  • (亡くなってから発見までに日数が経っている)孤独死や(不慮の事故を除く)事件・事故などが起こった物件が該当
法的瑕疵
  • 建築基準法など現行の法を満たしていないこと
環境的瑕疵
  • 物件には問題なくても周辺環境に問題があること
  • 火葬場やゴミ処理場が近隣にあるケースなどが該当

瑕疵がある場合、買主様には事前に告知する必要があります。
告知せずに売却した場合、前述した契約不適合責任を問われて賠償請求や契約解除などになる恐れもあります。
ただし、瑕疵がある場合でも事前に告知し契約書に明記していれば契約不適合責任は問われません。
その為、物件の状態は正確に把握し、買主様に告知しておくことが重要です。

瑕疵や契約不適合責任については、こちらの記事で詳しく解説していますのでご覧ください。

心理的瑕疵とは?該当する例や告知義務の有無について解説

マンション売却における瑕疵担保責任(契約不適合責任)とは?対策方法を解説

バリアフリーのポイントをアピールする

二世帯住宅の場合、バリアフリー住宅というケースは少なくありません。
バリアフリーが充実していると、高齢の買主様からも選ばれやすくなるので、アピールすることが重要です。
アピールポイントとしては、以下のようなものが挙げられるでしょう。

  • 段差がない為、足腰への負担を軽減でき、将来車椅子生活になっても安心
  • 車椅子が通るように廊下の幅が広くなっている
  • 寝室の近くにトイレを設置している

また、周辺に病院や役所・散歩できる公園など高齢者にとって利便性の高い環境が整っている場合も、二世帯住宅を売却する際のアピールポイントになるでしょう。

売却後のローン返済計画を立てておく

二世帯住宅は前述した通り売り出し価格が高くなりがちな為、なかなか買い手が見つからず、最終的に値下げして売却するということもあるでしょう。

値下げしてしまうと、オーバーローン(住宅ローンの残債が売却価格を上回る状態)になることもあります。

住宅ローンが残っている家を売却するには、住宅ローンの完済が必須です。
仮にオーバーローンの状態で売却するには、以下の方法が検討できます。

  • 自己資金や親からの援助で不足分を補って住宅ローンを完済する
  • 住み替えローンを利用して住宅ローンを完済する

反対に、これらの方法で住宅ローンが完済できない場合、通常の売却ができないので注意が必要です。

まずは、正確な住宅ローンの残債と自己資金、査定結果をもとに、住宅ローンの完済計画を立てたうえで売却に臨むようにしましょう。

二世帯住宅の売却実績が多い不動産会社に依頼する

前述した通り、二世帯住宅を売却できるかは不動産会社によっても左右されます。
二世帯住宅を売却するなら、一戸建てでさらに二世帯住宅の売却実績の豊富な不動産会社を選ぶことが重要です。
二世帯住宅の売却実績が豊富な不動産会社であれば、適切な売却方法やアドバイスをしてくれる為、満足いく売却を目指せるでしょう。

まとめ

ここまで、二世帯住宅が売却しにくい理由や売却方法・売却のコツについて解説してきました。

二世帯住宅は、価格の高さや買い手の少なさや、ニーズにマッチしにくいなどの理由で売りにくいと言われている物件です。
ただし、二世帯住宅の種類や家の状況に合わせて適切な売却方法で売り出せば理想的な形で成約できる可能性もあるでしょう。

また、売却時には名義人の確認や住宅ローンの返済計画を立てたり、インスペクションを受けたりしておくことも重要です。さらに、不動産会社によっても売却が左右される為、信頼でき、二世帯住宅の売却実績が豊富な不動産会社に依頼するようにしましょう。

長谷工の仲介では、二世帯住宅の売買実績が豊富で売主様の状況に応じた最適な売却プランをご提案可能です。二世帯住宅の売却を検討中の方は、ぜひ長谷工の仲介にご相談ください。

※本記事の内容は2024年10月2日現在のものであり、制度や法律については、今後改正・廃止となる場合がございます。

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この記事の著者

逆瀬川 勇造(合同会社7pockets 代表社員)
明治学院大学卒。銀行、不動産会社勤務を経て独立。宅地建物取引士、FP2級技能士(AFP)、住宅ローンアドバイザー。

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