
離婚によって所有する家を売ろうとするとき、離婚前と離婚後のどちらのタイミングが良いのでしょうか。どちらにもメリットがありますが、それぞれに注意すべき点もあるのでよく検討したうえで売却したいものです。
この記事では、離婚時に家を売却するタイミングについて解説します。また家が売れない理由とその対処法、トラブルを防ぐコツもご紹介していますので、家の売却を不安なく進めたい方はぜひ参考にしてみてください。
離婚時に家を売却するタイミングは?
離婚前と離婚後、家を売るのであればどちらが良いのでしょうか。ここでは、離婚前・離婚後に売却するときのそれぞれのメリットと、注意すべき点を解説します。
離婚前に家を売る
離婚前に家を売るメリットとしてまず挙げられるのは、現金化した財産を相手に分与できることです。離婚後に新しい生活をはじめる際には、ある程度の資金が必要になります。特に手持ち資金が少ない方にとっては、安心材料になるでしょう。
また離婚後に家の売却について連絡する必要もなくなる為、なるべくやりとりを最小限に抑えたい場合にもお勧めです。
「財産分与をすると贈与税がかかるのでは?」と考える方もいますが、婚姻中に夫婦で築いた財産を分与するときや、離婚後の生活費として相手側に財産を分け与える場合は、基本的に贈与税はかかりません。
しかし財産分与の額が明らかに多すぎる、もしくは贈与税の納税を免れる為の離婚とみなされると、贈与税の課税対象になる恐れがあります。離婚前に財産分与するときは、その金額に注意しましょう。
国税については、国税局電話相談センターや地域を所管する税務署でも相談できるほか、不動産会社によっては税務相談ができることがあります。
ちなみに長谷工の仲介では、不動産の売却にまつわる税金について、無料で直接税理士に相談できるサービスをご用意しています。
離婚後に家を売る
離婚後に家を売る場合は、新居への引っ越しや離婚の手続きなどを全て終えてから売却できます。心にゆとりも生まれ、売却活動に専念できるので、理想的な形で売却できる可能性も高まります。なるべく早く離婚手続きを進めたい方には、離婚後に家を売却することをお勧めします。
しかし離婚後にも家の売却について連絡する必要があり、離婚後のやり取りを最小限に抑えたい方にとっては精神的に負担を感じるかもしれません。
また「○○までに売却したい」といった期限がないと、売却活動が後回しになり、売却までに時間がかかってしまうことがあります。
その他、家に住んでいなくても、所有していることで固定資産税や都市計画税がかかります。家を維持管理する必要もあり、場合によっては水道料金や電気代などもかかることを想定しておきましょう。
離婚時に家が売れないよくある理由
離婚時に家の売却が思うように進まない場合、どのような原因が考えられるのでしょうか。ここでは、家が売れないよくある理由を4つご紹介します。
夫婦で意見が合わない
家の売却について夫婦で意見が合わないと、売りたくても売れないことがあります。
特に子どもがいる場合は、離婚後もなるべく生活環境を変えたくないと考え、そのまま住み続けることを希望する方もいます。
また、売却を進めていると売却価格に対して購入希望者から価格交渉されることがありますが、1人がその価格で売却したいと思っても、もう一方が拒否した場合は家の売却が難しくなることもあります。
売却をスムーズに進める為にも、まずは家の売却について話し合い、売却価格の下限や引き渡し条件などをあらかじめ決めておくようにしましょう。
住宅ローンの返済が残っている
住宅ローンの返済が残っている場合は、売却によって手にした代金で完済できるかどうかが重要です。
住宅ローンの残債が売却価格を下回る「アンダーローン」であれば問題ありませんが、住宅ローンの残債が売却価格を上回る「オーバーローン」の場合は、足りない分を自己資金から捻出するのが一般的です。
家の売却を検討する場合は、住宅ローンの残債を確認して売却価格で完済できるのか確認するようにしましょう。
離婚時に住宅ローンが残っている場合の対処法や売却時の注意点については、こちらの記事で詳しく解説していますのでご覧ください。
離婚時に住宅ローンが残っている場合はどうすれば良い?ケース別の対処法や注意点を解説
相場に合っていない売り出し価格を設定している
内覧希望者が極端に少ないと感じる場合は、売り出し価格が相場に合っているか、不動産会社の担当者に相談してみましょう。
近隣に比較検討される物件が多く、それらよりも売り出し価格が高すぎると買主様の候補から外されてしまう恐れもあります。一方で、価格が安すぎると事故物件や瑕疵物件ではないか、何かしら安くする理由があるのか、と疑われることもあります。
不動産をスムーズに売却する為には、適正価格で売り出すことが重要です。家の査定は複数の不動産会社へ依頼するようにし、自分自身でも近隣の成約事例や相場価格を調べておくと良いでしょう。
不動産査定については、こちらの記事で詳しく解説していますのでご覧ください。
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一戸建て売却の査定価格はどう決まる?見られるポイントや査定のコツとは
長谷工の仲介では、無料で売却査定を受け付けています。まずはお気軽にご相談ください。
内覧対応が良くない
内覧件数は多いのにもかかわらず、成約に至らない場合は、内覧時の対応が良くないことが考えられます。内覧時は気持ちよく見てもらえるように配慮しましょう。
内覧時のNG例をご紹介しますので、心あたりがないか確認してみてください。
- 掃除が不十分で、清潔感がない
- 部屋が散らかっていて、狭く見えてしまっている
- 内覧希望者の質問に回答できていない
- 家の魅力を上手に伝えられていない
- 内覧希望者とスケジュールが合わないことが多く、内覧までに時間がかかっている
離婚で家が売れないときの対処法
離婚にともない家を売却するときは、なるべくストレスを抱えることなく売却したいものです。ここでは、家が売れないときの対処法を4つご紹介します。
共同名義の場合は両者の同意を得る
家が共同名義の場合は、お互いに売却の意思を確認して、売ることについて同意を得ましょう。相手側の同意がなくても持分のみを売却することは可能ですが、家全体を売却することはできません。
一般の方が不動産の一部(持分)を購入するケースはほとんどなく、買取専門の不動産会社に持分を買い取ってもらうことがほとんどです。その場合は相場価格で売却することが難しく、本来の資産価値よりも低い価格で売却することになるでしょう。
その為、共同名義の場合は相手側の同意を得てから売却するようにし、話がまとまらない場合は、最終手段として弁護士へ入ってもらうことも視野に入れておきましょう。
共有名義の不動産を売却する際の注意点や共有名義を解消する方法については、こちらの記事で詳しく解説していますのでご覧ください。
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売却活動に問題がないか確認する
家が売れないときは、売却活動で見直すべきポイントがないか確認しましょう。例えば、前述したように内覧希望者が極端に少ないと感じるときは、競合物件の動向を確認し、売り出し価格を見直します。
場合によっては、売却を依頼している不動産会社が売れない原因になっていることもあります。売却活動がスムーズに進まない、担当者との相性が合わないと感じるときは、不動産会社を変更するのも手です。
家が売れないときの原因と対処法については、こちらの記事で詳しく解説していますのでご覧ください。
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内覧時の対応を見直す
内覧件数が多いのに成約に結びつかないときは、内覧時の対応を見直しましょう。
内覧時の第一印象は、非常に重要です。
日頃から整理整頓を心がけ、内覧前には念入りに清掃をしておくようにします。他人の玄関のニオイに敏感な方も多い為、窓を開けて換気もしておきましょう。
また質問が出たときは快く対応し、家の魅力や住んでみないと分からない周辺環境の特徴などを上手に伝えましょう。ただしアピールし過ぎは禁物です。事前にメリットをリストアップしておき、不動産担当者に伝え方や内容を確認しておくと安心です。
マンション売却での内覧時の対応や事前にチェックすべきポイントについては、こちらの記事で詳しく解説していますのでご覧ください。
マンション売却での内覧の流れは?事前準備やチェックすべきポイントもご紹介
長谷工の仲介ではハウスクリーニングサービスのほか、売却をご依頼いただいている方向けに整理整頓や床のクリーニングなどのオプションサービスもご用意しております。
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売却方法を変える
家の売却方法としては、不動産会社の仲介による売却が一般的です。
しかし、一般的に仲介での売却には3ヵ月程度かかるケースもある為、家をなるべく早く売却したいなど状況に合わせて売却方法を変更してみても良いでしょう。
買取
不動産会社によっては、仲介だけでなく買取にも対応していることがあります。
買取とは、不動産会社に直接買い取ってもらう売却方法です。早ければ1週間程度で現金化できることもあり、基本的には仲介手数料もかかりません。
ただし、通常不動産会社は、リフォームを施し、再販することを想定して買い取ります。その為、仲介による売却よりも2~3割程度安くなることもあります。買取を検討する際は、住宅ローンが完済できるか、手元にいくら残るのかよく確認したうえで依頼しましょう。
買取については、こちらの記事で詳しく解説していますのでご覧ください。
マンション買取とは?仲介との違いや注意点、向いているケース、業者の選び方について解説
長谷工の仲介では、直接買取や売却保証にも対応しており、お客様のご希望に合った売却プランをご提案できます。
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任意売却
任意売却とは、住宅ローンの返済が難しくなった方が、金融機関へ抵当権の抹消について交渉し、同意を得たうえで一般の不動産市場で売却する方法です。通常は抵当権が設定されたまま家を売却することはできませんが、金融機関の合意を得ることで住宅ローンの残債が残った状態でも売却が可能になります。
離婚時に任意売却を選択する理由として、夫婦が住宅ローンを共同名義で借り入れている、もしくは相手側の連帯保証人になっている場合、住宅ローンの返済義務が継続する為、離婚後も関係が続く可能性があります。
任意売却を選択することで住宅ローンの残債が残る状態でも売却が可能になり、ローン返済や連帯保証人の関係を解消できる可能性がある為、離婚後の負担を軽減する手段として有効です。
任意売却については、こちらの記事で詳しく解説していますのでご覧ください。
リースバック
もし相手側が家にそのまま住み続けることを希望する場合は、リースバックも一つの方法です。
リースバックとは、家を売った後に買主であるリースバック事業者(主に不動産会社)と賃貸借契約を結び、賃借人として住むことを前提に売却する方法です。
リースバックは、リースバック事業者に直接売却をする為、周囲に知られずに家を現金化することができ、売却後も住み続けられるのがメリットです。しかし売却価格が相場よりも安くなる傾向があり、毎月家賃を支払うことになる点には注意しましょう。
リースバックのメリットや注意点については、こちらの記事で詳しく解説していますのでご覧ください。
よくあるリースバックのトラブル事例とは?失敗しないためのコツを紹介
長谷工の仲介では、リースバックによる売却もサポートしています。
詳しくはこちらをご覧ください。
離婚時の不動産売却でトラブルを防ぐコツ
最後に、離婚時の不動産売却で、トラブルを防ぐコツを3つご紹介します。
不動産の名義を確認しておく
離婚時に家を売却する場合は、まず名義人を確認することが重要です。不動産は名義人しか売却できず、共同名義の場合は全員の同意がなければ、家全体を売ることができません。
名義人を調べる方法としては、法務局の窓口で不動産の登記簿謄本(登記事項証明書)を取得するのが一般的です。また、「登記情報提供サービス」を利用すれば法務局へ足を運ぶことなくインターネットで名義を調べることができます。
登記簿謄本とは、登記されている事項が間違いないことを証明する書類です。窓口で請求する場合は600円の手数料がかかりますが、インターネットを利用すれば141円(税込)で所有者を確認できます。
家を売却する場合は、不動産会社に家の査定を依頼することになります。査定時、不動産会社は登記簿謄本や登記事項証明書で名義人を調べる為、不動産会社に確認してもらう方法もあります。
財産分与の方法を決めておく
財産分与の額は、離婚後の生活への保障や損害賠償の性質もあり、当事者間で決めることになります。ちなみに婚姻期間中に築いた財産は、収入の大小に関係なく、夫婦で1/2ずつ折半するのが一般的です。
離婚後の財産分与については、トラブルを避ける為にも口約束ではなく、公正証書を作成しておくと良いでしょう。
財産分与については、こちらの記事で詳しく解説していますのでご覧ください。
離婚時にマンションを売却すべき?財産分与やローンがある場合の注意点を解説
参照:法務省「 離婚を考えている方へ~離婚をするときに考えておくべきこと~ 財産分与」
財産分与の請求は離婚後2年以内に行う
当事者間で財産分与について話し合いがまとまらないときは、離婚後2年以内に家庭裁判所に財産分与の請求をするようにしましょう。
離婚後2年以内に財産分与請求の調停や審判の申し立てをすれば、調停や審理中に2年を経過することになっても、財産を受け取れる可能性があります。
なお財産分与請求ができるのは、婚姻期間中に夫婦で築いた財産(不動産・株式・貯金)です。つまり婚姻中にどちらか一方の名義で購入した不動産であっても、夫婦で協力して購入したことになり、財産分与請求の対象になります。
参照:法務省「 離婚を考えている方へ~離婚をするときに考えておくべきこと~ 財産分与」
まとめ
離婚にともない家を売却するときは、離婚前と離婚後のどちらのタイミングで売却したほうがご自身にとってメリットがあるのか、よく検討したうえで準備を進めましょう。またトラブルを防ぐ為にも、家の売却条件や財産分与については、良く話し合っておくようにしましょう。
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※本記事の内容は2024年10月2日現在のものであり、制度や法律については、今後改正・廃止となる場合がございます。