不動産の売却を検討されている方のなかには、オーナーチェンジ物件は売れにくいという噂を聞いたことがある方もいるのではないでしょうか。
オーナーチェンジ物件には居住用物件とは違う特徴があり、スムーズに売却する為には状況に合わせた対策が必要です。この記事では、オーナーチェンジ物件が売れないといわれる理由や売却の流れ、売れないときの対処法などを解説します。
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オーナーチェンジ物件とは?
オーナーチェンジ物件とは、入居者がいる状態で売買される賃貸物件のことです。
まずは、その仕組みや概要を解説します。
オーナーチェンジ物件の仕組み
オーナーチェンジ物件の所有者は、入居者の意思にかかわらず物件を自由に売買でき、物件が売買されると、入居者は居住したまま所有者のみが変更となります。入居者は所有者と賃貸借契約を締結している為、所有者が変わってもそのまま居住し続けられます。
売買によって所有者の地位が移転することは、民法第605条の2で以下のように定められており、賃借人の許可を得る必要はないとされています。
賃貸借の対抗要件とは、入居者が賃貸物件の引き渡しを受けたことを指します。
オーナーチェンジ物件の売買は、買主様側にとって、物件取得後に入居者募集をかけることなく家賃収入が得られるメリットがあります。一方、売主様には、入居者を立ち退きさせずに売却できるメリットがあります。
オーナーチェンジの際に引き継ぐ権利や義務
オーナーチェンジで不動産を取得した買主様は、前の所有者から主に以下の権利義務を引き継ぐことになります。
- 家賃を受け取る権利
- 敷金返還義務
- 維持管理義務
- 家賃設定や契約期間、保証人など以前の契約条件
ただし、オーナーチェンジが行われると、賃貸管理を行っていた管理会社はその時点で解約されることがあります。オーナーチェンジ物件を売却する際は、賃貸管理を行っている管理会社に事前に通知したうえで相談することをお勧めします。
オーナーチェンジ物件が売れないといわれる理由
オーナーチェンジ物件は、以下の4つの理由から売れにくいといわれています。
ターゲット層が狭い
オーナーチェンジ物件が売れにくいといわれる1つ目の理由は、通常の不動産と比べてターゲット層が狭いことです。
居住用不動産は自らが住むことを目的にしているケースがほとんどの為、オーナーチェンジ物件と比較すると購入希望者が集まりやすい傾向にあります。一方、オーナーチェンジ物件のターゲット層は以下の方に限定されます。
- 不動産投資家
- 一般法人
- 地主
- 副業会社員
このように、居住用不動産とは違うターゲット層を狙う必要があることから、売れにくいといわれています。
買主様が直接室内を確認できない
購入時に室内を内覧できない点も、オーナーチェンジ物件が売れにくいといわれる理由です。
室内の設備状況や建具(窓やドア、襖など)の劣化具合は不動産経営において重要なポイントとなります。しかし、入居者が生活を続けるなかで売買することになる為、内覧でチェックできるケースは限られます。内覧せずに不動産を購入することには大きなリスクがあり、売れにくい理由の一つとなってしまっています。
買主様が住宅ローンを利用できない
オーナーチェンジ物件を購入する為には、金利が高い不動産投資ローンや現金一括で購入する必要があります。
しかし、不動産投資ローンを組めるのは、年収や自己資金などの金銭的な余裕がある富裕層に限られます。低金利の住宅ローンでオーナーチェンジ物件を購入できない点は、買主様にとって大きなデメリットとなるでしょう。
買主様から賃貸経営のリスクがあると思われている
家賃滞納やクレームが起きた際にうまく対応できるのか、建物の老朽化により家賃が下がったらどうすれば良いのかなど、賃貸経営のリスクが高いと買主様から思われている点も、オーナーチェンジ物件が売れにくいといわれる理由の一つです。
また、オーナーチェンジ物件では入居者がすでにいる為、買主様自身で入居者を審査できない点も売れにくい原因と考えられます。
売れやすいオーナーチェンジ物件の特徴
オーナーチェンジ物件は売れないといわれる反面、なかには売れやすいものもあります。
ここでは、売れやすいオーナーチェンジ物件の特徴を解説します。
築年数が浅い
築10年~15年以内など比較的築年数が浅いオーナーチェンジ物件は、設備がまだ新しく、家賃も下がりにくい為、売れやすい傾向にあります。
一方、築25年を超えると建物の劣化が進み、大規模な修繕が必要になるケースもある為、売れにくくなってしまいます。
設備が充実している
設備が充実しているオーナーチェンジ物件は売れやすい傾向にあります。
入居者が生活しやすい設備が多い物件は購入者にも魅力的に映るでしょう。
例えば、共用部分にオートロックや監視カメラなどがついているセキュリティ機能が高い物件、宅配ボックスやパーティールーム、ジムなどがついている利便性の高い物件などが挙げられます。
周辺環境や立地条件が良い
周辺環境や立地条件が良いオーナーチェンジ物件も、人気が高く売れやすい傾向にあります。例えば、駅からの距離が5分以内、最寄り駅がターミナル駅や快速・特急停車駅、買い物施設が周辺に充実しているなどの条件が該当します。
このような、周辺環境が充実している物件であれば空室になってもすぐに入居希望者が見つかるでしょう。
入居者と良好な関係を築けている
入居者と何かしらのトラブルが発生していると、その入居者にいつ退去されてもおかしくない状態になってしまいます。
一方、入所者とのトラブルがなく関係が良好であれば、長期的に入居者を確保でき、安定した不動産経営が実現します。買主様に安定感をアピールする為にも、日頃から入居者との適切なコミュニケーションを心がけることが大切です。
オーナーチェンジ物件を売却するときの流れ
オーナーチェンジ物件の売却は、以下の6ステップで進められます。
ここからは、各ステップについて詳しく見ていきましょう。
①物件の査定価格を把握する
オーナーチェンジ物件を売却する為には、まず物件の資産価値を知ることが大切です。資産価値を調べるには以下の3つの方法があります。
直接還元法
直接還元法とは、1年間で得られた純利益を還元利回りで割り戻して価格を算出する方法です。還元利回りとは、不動産の収益性を表した利率のことで、物件価格を評価する際に用いられます。直接還元法は、後述するDCF法と比較して精度が劣りますが、資産価値が計算しやすい特徴があります。
直接還元法の計算式は以下の通りです。
例えば、年間150万円の家賃収入があり、還元利回りが6%と予想される場合は、以下の計算式となります。
このケースでは、オーナーチェンジ物件の資産価値は2,500万円となりました。
DCF法
DCF法では、不動産を所有している期間に生み出す純利益と将来売却した場合の価格を現在価値に割り戻し、その合計を求めて不動産価値を算出します。
計算式が複雑な分、精度の高い査定方法です。DCF法の計算式は次の通りです。
割引率とは、将来生み出される収益を現在受け取った場合の価値に割り戻す係数のことです。割引率は一般的に3~5%程度で計算されることが多いとされています。
以下で実際にDCF法によるシミュレーションを行ってみましょう。
-
【条件】
- 1年間の家賃収入:180万円
- 割引率:4%
- 5年後の売却価格(想定):1,500万円
1年目:180万円÷(1+0.04)=173.07万円
2年目:180万円÷(1+0.04)^2=166.42万円
3年目:180万円÷(1+0.04)^3=160.01万円
4年目:180万円÷(1+0.04)^4=153.86万円
5年目:180万円÷(1+0.04)^5=147.94万円
上記の計算で、5年間の家賃収入を現在の価値に変換できました。これらを合計すると801.3万円となります。
次に、5年後の売却額を現在の価値に変換すると以下のように算出されます。
最後に、5年間の家賃収入と売却価格を合計すると以下のようになります。
上記のDCF法によるシミュレーションでは、査定価格が2,034.19万円と算出されました。
不動産会社による査定
不動産会社に査定を依頼して物件の価格を算出してもらうという方法もあります。
前述した直接還元法やDCF法による査定価格を加味したうえで、立地や築年数、入居率など個別要因を考慮して総合的に収益物件の価格を査定する為、より的確な売却価格を算出します。
例えば、DCF法により3,000万円という査定結果を得たうえで、需要が高まりそうなエリアだと判断し、3,500万円に上方修正して売却価格を算出する場合もあります。
長谷工の仲介では、オーナーチェンジ物件の査定を無料で承っております。ぜひ、こちらのフォームからお問い合わせください。
不動産査定の流れやポイントを深く知りたい方は、以下の記事もぜひ参考にしてください。
マンション売却査定の不安を解消!査定の流れや査定でみられるポイントを徹底解説
一戸建て売却の査定価格はどう決まる?見られるポイントや査定のコツとは
②不動産会社と媒介契約を締結する
上記の方法により売却価格の目安を把握できれば、売却活動に向けて不動産会社と媒介契約を締結します。信頼できる不動産会社を選ぶ為には、複数の不動産会社へ査定依頼をして直接話を聞いてみると良いでしょう。
媒介契約には、一般媒介契約、専任媒介契約、専属専任媒介契約の3種類があります。
それぞれの違いは以下の表の通りです。
項目 | 一般媒介契約 | 専任媒介契約 | 専属専任媒介契約 |
---|---|---|---|
契約期間 | 3ヵ月以内 (法律上の規制なし。標準媒介契約約款による) |
3ヵ月以内 (宅建業法による定めあり) |
3ヵ月以内 (宅建業法による定めあり) |
複数の会社と契約できるか | 可能 (1社のみに依頼することも可能) |
不可 (1社のみに限定される) |
不可 (1社のみに限定される) |
依頼主への活動報告義務 | 報告義務なし (報告を依頼することは可能) |
2週間に1回以上の活動報告義務あり (文書もしくはメール) |
1週間に1回以上の活動報告義務あり (文書もしくはメール) |
自分で買主様を発見し取引できるか | 可能 | 可能 | 不可 |
レインズの登録義務 | 任意 (登録の義務はなし。ただし登録を依頼することは可能) |
媒介契約を締結した翌日から7日以内に登録する義務あり ※休業日を除く |
媒介契約を締結した翌日から5日以内に登録する義務あり ※休業日を除く |
それぞれの媒介契約のメリットや注意点は、以下の記事で詳しく解説しています。
専任媒介契約とは?他の媒介契約との違いやメリット・注意点を分かりやすく解説
媒介とは?不動産取引における仲介との違いや媒介契約の種類について解説
③賃貸状況を開示して売却活動を開始する
不動産会社と媒介契約を締結したら、売却活動を開始します。
その際は、購入希望者が賃貸状況を把握できるよう、オーナーチェンジ物件の賃貸状況を開示する必要があります。具体的には、部屋ごとの家賃や敷金、礼金、契約日、契約期間など賃貸借条件を一覧表にしたレントロールを作成し、情報を提供する方法が一般的です。
公益財団法人東日本不動産流通機構の調査によると、中古物件は売り出しから売却まで3ヵ月程度の期間がかかるとされています。売れにくいオーナーチェンジ物件の場合、それ以上の期間がかかる場合があることも念頭に置いて売却活動に臨みましょう。
参考:公益財団法人東日本不動産流通機構「首都圏不動産流通市場の動向(2023年度)」
④買主様と売買契約を締結する
売却活動により買主様が見つかり、条件交渉が成立したら、買主様と売買契約を締結します。
売買契約では、まず不動産会社が買主様向けに物件に関する重要な事項を説明する重要事項説明を行います。次に売主様と買主様がそれぞれ売買契約書を確認し、内容に問題なければ署名押印をして契約が成立します。
その際、契約が成立した証として買主様から手付金を受領します。
⑤物件を引き渡す
物件の引き渡しは、売買契約締結から約1ヵ月後に行われることが多いです。その際、司法書士による所有権移転登記の手続きや残代金(物件代金から手付金を除いた代金)の受領を行います。
また、買主様へ賃貸借契約の引き継ぎも行います。
⑥入居者にオーナーチェンジを通知する
物件の引き渡しが完了したら、賃借人様に向けて早急に賃貸人の地位承継通知を送り、所有者が変更したことを伝えます。賃貸人の地位承継通知とは、物件の所有権が新オーナーに変更されたことを通知する書面です。
賃貸人の地位承継通知には以下の内容を記載する必要があります。
- オーナーチェンジを行った旨の通知
- 新オーナーが敷金の返還義務を引き継ぐ旨の報告
- 賃貸契約条件の確認
- 新しい賃料の振込先と振込先の切替えタイミング
- 新オーナー・新管理会社の名前や連絡先
できるだけ早く入居者へオーナーチェンジを通知することで、スムーズに新しいオーナーへの引き継ぎが行えます。
オーナーチェンジ物件を売却するときの注意点は?
オーナーチェンジ物件を売却する際は、ここでご紹介する5つのポイントに気をつけて手続きを進めましょう。
利回りが良くても売れない場合がある
オーナーチェンジ物件の売却では、利回りが良くても売却できないケースがあります。
例えば、築年数が古い、人口が減っているエリアに物件がある、周辺の物件が供給過多の状態にあるなどの場合、たとえ今の利回りが良くても、将来にわたって入居率を維持するのが難しいと思われてしまう為です。
最新の賃貸契約内容を確認する
管理会社に物件の管理を任せている場合は、最新の賃貸借契約の内容を必ず確認しましょう。最新の賃貸契約内容をきちんと把握していないと、引き渡し後に買主様と管理会社の間で賃料や敷金、更新料などに関するトラブルが発生する恐れがあります。
管理会社や保証会社の引き継ぎ方を確認する
オーナーチェンジ物件を売却する際は、管理会社や保証会社の引き継ぎ方の確認も忘れてはいけません。買主様が自由に選べるように管理会社や保証会社を解約するのか、そのまま引き継ぐのかは、状況によって変わります。
管理会社や保証会社の選定は買主様にとって重要なポイントです。
引き渡し後に「管理会社を変更しようとしたら解約違約金を請求された」「管理料や手数料を値上げされた」など、買主様と管理会社間でトラブルにならないよう、契約している管理会社や保証会社と事前に打ち合わせを行っておきましょう。
賃貸契約の更新時期を相談する
引き渡しの直後に賃貸契約の更新が控えていると、賃料の見直しによる契約解除のリスクが発生します。
一方、購入後に家賃の見直しを検討している買主様の場合、更新時期から離れた時期に引き渡しを行うと、次の見直し時期まで期間が空いてしまい、その間の買主様の負担が増えてしまいます。最適の引き渡し時期を見極めて契約を結びましょう。
売却理由を聞かれたら正直に答える
購入希望者から売却理由を聞かれた場合は、包み隠さず正直に答えることが大切です。
その際、相続物件の為売りたい、利益を確定させたいなど、ポジティブな理由であればそのまま伝えても問題ありません。
しかし、入居者とトラブルがあった、損切りの為、入居者が期間満了で退去するなど、ネガティブな理由の場合は買主様にとってリスクが生じる場合もあります。
売却後のトラブルを防ぐ為にも、不動産会社に伝え方を相談のうえ、買主様に正直に伝えることを心がけましょう。
オーナーチェンジ物件が売れないときの対処法
なかなかオーナーチェンジ物件が売れない場合は、以下の対処方法を検討してみてください。
空室状況を改善する
賃貸経営では満室に近いほど収益性が高まる為、購入希望者も増えやすいと考えられます。その為には、空室状況を改善して物件の魅力を高めることが有効です。
空室状況を改善する為の対策としては、現在の入居者の更新手数料を無料にする、賃料を見直す、入居率の高い管理会社に変更するなどの方法が考えられます。
入居率を改善して家賃収入を増やせれば、売却できる可能性が高まるでしょう。
物件をメンテナンスする
購入希望者からの印象を良くする為に、物件の掃除やメンテナンスを入念に行うことも対処法の一つです。
多少空室があっても、見た目が綺麗で設備のメンテナンスが行き届いている物件であれば、購入希望者からの印象が良くなります。すぐに借り手が現れそうと思ってもらいやすくなり、好条件での売却につながるでしょう。
不動産会社を変更する
売却活動期間が長いにもかかわらずなかなか売れない場合は、売却を依頼している不動産会社の変更を検討するのも手です。
売却価格や売却までのスピードは不動産会社の手腕が大きく影響します。オーナーチェンジ物件の売却タイミングや売却ノウハウをよく知る不動産会社に仲介を依頼しましょう。
居住用物件として売り出す
前述した通り、居住用物件として売り出すほうがターゲット層は広がります。
その為、なかなか買い手がつかない場合は、空室になるまで待ち、居住用物件として販売することで、買い手がつく可能性が高まります。
なお、居住用として購入を希望している方に売却する場合は、入居者が引っ越しをして空室になったタイミングで売りに出すことをお勧めします。入居者がいる状態で売りに出すと、内覧ができず購入希望者からクレームが入ったり、入居者に退去してもらう為の交渉でトラブルに発展したりする恐れがある為です。
不動産買取を利用する
オーナーチェンジ物件を素早く売りたい場合や、なかなか売れずに困っている場合には、不動産買取の利用も検討してみましょう。
不動産買取とは、不動産会社に直接買い取ってもらう売却方法です。物件を買い取った不動産会社は、物件を運用したり、空室になった段階でリフォームして付加価値を付けて販売するなどして利益を得ます。
不動産買取のメリットは、不動産会社の買取価格に承諾すれば、すぐ売買契約に進めることです。一方、不動産買取による売却金額は市場相場の7割程度になる為、少しでも高く売却したい方には不向きです。
長谷工の仲介は、売却保証や不動産買取にも対応しています。オーナーチェンジ物件が売れずにお困りの際は、ぜひ長谷工の仲介にご相談ください。
まとめ
オーナーチェンジ物件が売れないといわれる理由には、ターゲット層が狭いことや住宅ローンを利用して購入できない点が挙げられます。
売却できない状況を打破する為には、空室状況を改善したり、空室になるまで待って居住用物件として売り出したりする対処法があります。
しかし、売れにくいオーナーチェンジ物件をいち早く売却したい場合は、実績が豊富な不動産会社へ相談するのが有効な手段です。長谷工の仲介では、お客様や物件の状況に合わせて最適なプランをご提案しています。また、売却何でも相談ではオーナーチェンジ物件の売却に関するご相談を受け付けています。お問い合わせフォームからお気軽にお問い合わせください。
※本記事の内容は2024年11月26日現在のものであり、制度や法律については、今後改正・廃止となる場合がございます。