2023.06.12マンションの不動産売買契約書とは?記載内容や流れを解説

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不動産の売買では、書面で売買契約書を締結することが通常です。
日常生活で売買契約書を締結する機会は少ないことから、いざ書面を目の前にすると不安を感じる方もいるでしょう。
不動産の売買契約書には専門的な用語も記載されている為、あらかじめ用語の意味とチェックポイントを知っておくことが望ましいです。

この記事では、不動産売買契約書についてそれぞれの記載項目や見るべきポイントなどを解説します。

不動産売買契約書とは?

不動産の売買契約書とは、主に「いつ、いくらで売るか」ということを売買契約時に締結する書面のことです。
不動産の売買契約は、引き渡し日の約1ヵ月前に締結することが一般的となっています。売買契約書を締結する売買契約時点では、所有権は移転しないことが不動産売買の特徴です。

不動産は金額が大きな商品であることから、売主様と買主様との間でトラブルが生じると問題も大きくなりがちです。その為、売買契約書を作成してトラブルが生じたときの対処法を取り決めています。

なお、不動産の売買契約書は不動産会社が準備します。
その為、売主様と買主様は不動産会社が準備した売買契約書を売買契約時に読み合わせてチェックするという形になります。

マンションの売買契約の流れ

次に、マンションの売買契約の流れについて解説します。

売買契約に必要な書類をそろえる

不動産の売買で売主様が様々な書類を買主様に渡すのは、所有権の移転する引き渡し日です。売買契約日はあくまでも書面への署名押印がメインの日である為、基本的に必要書類は多くありません。主な書類は以下の通りです。

書類名 保有者
身分証明書 売主様
実印 売主様
身分証明書 買主様
実印 買主様
付帯設備表 不動産会社
売買契約書 不動産会社
物件状況確認書(告知書) 不動産会社

売買契約では、売主様と買主様の本人確認を行います。その為、運転免許証などの公的機関が発行した顔写真付きの身分証明書が必要です。また、売買契約書は実印で押印することが一般的であることから、実印も必要となります。

付帯設備表とは、売主様に記載いただいた設備の有無や不具合に関する事項を記した書面のことです。
物件状況確認書(告知書)は、主に瑕疵(かし:通常有する品質を欠くもの)について売主様に記載いただいた書面になります。
付帯設備表および物件状況報告書(告知書)、売買契約書は不動産会社が準備します。

重要事項説明を買主様と確認する

重要事項説明とは、不動産会社が買主様に対して物件に関する説明を行うことです。
重要事項説明は、本来売買契約の前に購入の最終判断をしてもらう目的で不動産会社が買主様に対して行います。

買主様への重要事項説明は法律で義務付けられていますが、売主様に対しては義務付けられていません。その為、売主様が重要事項説明に立ち会わないということもありえます。
ただし、実際には売買契約と同時に重要事項説明も行われることが多いです。
重要事項説明が売買契約と同時に行われる場合には、売主様も買主様と一緒に、不動産会社が行う重要事項説明を聞きます。これは、重要事項説明の内容が売主様の認識とも相違ないかを確認する役割も持ちます。

売買契約を締結する

売買契約書に関しては、売主様および買主様立ち会いのもと、読み合わせながら確認していきます。そして、売買契約書に問題がなければ署名押印を行い、契約が成立します。

マンションの不動産売買契約書の記載内容

売買契約書を読み合わせて確認するなかで、どのような点を見ておくと良いのでしょうか。ここでは、売買契約書の記載内容と確認ポイントについて解説します。

売買の目的物と売買代金

売買契約書には、表題部に売買の目的物(マンションの面積や所在地など)が記載されています。目的物の記載内容は、基本的に登記簿謄本と同じ内容です。

売買代金・手付金の額と支払期日

不動産の売買では契約が成立した証として、売買契約日に買主様から手付金を受領します。中古住宅の売買では、手付金の相場は売買代金の10%程度であることが一般的です。

手付金の額は事前に双方に知らされており、手付金の授受も売買契約日に行いますが、売買契約書にも手付金の額と支払期日が記載されています。
売買代金・手付金ともに金額に間違いがないか確認しておきましょう。
手付金の相場については、こちらの記事で詳しく解説していますのでご覧ください。

不動産売却で発生する手付金とは?相場や手付解除時の対応方法について解説

土地の実測

土地の面積は、土地登記簿に記載されている数値と実際の数値に差が出ていることがあります。土地の面積は不動産価格に影響が出る為、実際に面積を測量して、登記簿の価格との差を清算し、より正確な金額で取り引きを行うことがあります。これを土地の実測(実測清算)と言います。

しかし、一般的なマンションの売買契約では実測清算は行わず、土地登記簿の面積で売買する(公簿売買)取り決めになっていることが多いです。
その為マンションの場合、契約書に記載されている面積と実測面積との間に差異があっても、互いに異議を述べず、売買代金の増減を請求しないものとするといった内容が記されていることがよくあります。

また土地に関連することとして、マンションの場合は敷地権の内容も記載されています。こちらも、登記簿謄本の内容と相違がないかを確認します。
マンションはその性質上、建物の権利(建物所有権)と土地の権利(土地利用権)は分離処分(分けて売ること)できないように法律で決められており、この二つを合わせて敷地権と呼びます。

所有権移転(登記手続き)および引き渡しの日

売買契約書には所有権移転(登記手続き)および引き渡し日が記載されています。
前述の通り、一般的には所有権移転(登記手続き)日と引き渡し日は同日であり、所有権は引き渡し日に移転します。
所有権移転登記については、こちらの記事で詳しく解説していますのでご覧ください。

マンションの名義変更(所有権移転登記)はいつ行う?手続きの流れや費用、注意点を解説

付帯設備の引き渡し

売主様は付帯設備表に「有」と記載した設備を引き渡します。
例えば、エアコンを「有」とした場合には、取り外さずに残した状態で引き渡すということです。

負担の消除

負担の消除とは、売主様が抵当権等の権利を所有権移転の時期までに抹消する義務を定めた規定のことです。
抵当権とは、債権者(お金を貸す方)が占有権を移転せずに土地や建物を担保にできる権利を指します。

売買契約書では抵当権等は「所有権移転の時期までに消除する」と記載されていることが一般的ですが、実際には引き渡し日と同日に抹消手続きを行うことが多いです。
抵当権は売買代金や自己資産によって住宅ローンを完済しないと抹消できない為、抵当権抹消と代金の支払い、引き渡しの3つが同時に行われます。
抵当権や抵当権抹消手続きについては、こちらの記事で詳しく解説していますのでご覧ください。

抵当権抹消手続きの流れは?手続きが必要なタイミングやかかる費用を徹底解説

公租公課の起算日

公租公課とは、主に固定資産税や都市計画税の税金のことです。
引き渡し日以降の公租公課を買主様に移転するにあたり、いつからの固定資産税を買主様負担とするかを決めます。
起算日は一般的には売却する年の1月1日ですが、関西の一部の地域では4月1日とすることもあるようです。
公租公課については、こちらの記事で詳しく解説していますのでご覧ください。

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手付解除の期限

手付解除とは、売主様もしくは買主様の一方的な都合で解除する方法のことです。
売主様は手付金の2倍の額を買主様に渡す、もしくは買主様は手付金を放棄することで手付解除ができます。
手付解除の期限は、一般的には売買契約から2~3週間以内くらいとすることが多いです。ただし、売買契約から引き渡しまでに長い期間がある場合は契約日と引き渡し日の中間に期限を設けることもあります。

手付解除の期限までは売主様も買主様も手付解除をされる可能性がありますが、手付解除の期限を過ぎればお互いに手付解除ができなくなります。手付解除については、こちらの記事で詳しく解説していますのでご覧ください。

不動産売却で発生する手付金とは?相場や手付解除時の対応方法について解説

契約違反による解除

売買契約書には、売主様または買主様のいずれかが契約違反を犯した場合の解除も定められています。
違約金も定められていますので、念の為、違約金の額も確認するようにします。

引き渡し前の滅失・損傷

売買契約から引き渡しまでの間に、例えば地震で建物が倒壊した場合などの規定が定められています。
天変地変によって物件が引き渡せなくなった場合は、買主様は代金の支払いを拒むことができ、売主様は手付金を返還することになります。

反社会的勢力の排除

売主様もしくは買主様が暴力団等ではないことを確認する規定です。
仮に該当することが後から発覚した場合には、契約は解除されます。

融資利用の場合(融資利用の特約)

買主様が住宅ローンを利用する場合の規定が定められています。
融資利用の特約は、通称「ローン特約」と呼ばれます。
ローン特約とは、売買契約後に買主様が住宅ローンの本審査に通らなかった場合、契約が解除されるという規定です。

なお、ローン特約においても解除できる期限が定められており、解除期限は手付解除の期限と揃えているケースが多いです。ローン特約で契約を解除された場合、売主様は預かっている手付金を買主様に返さなければいけない点が注意点となります。

例えば、ローン特約の解除期限までに売主様が次の物件を購入する為の手付金として買主様から預かっている手付金を使い込んでしまうケースがあります。
ローン特約の解除期限までは手付金を返還する可能性がありますので、手付金はローン特約の解除期限を過ぎるまで手を付けないことが適切です。

契約不適合責任(瑕疵担保責任)

契約不適合責任とは、売主様が契約の目的物に反するものを売った場合、引き渡し後に買主様から修補や契約解除、損害賠償といった請求を受けなければいけない責任のことです。

契約不適合責任は永久に負うわけではなく、引き渡し後の一定の期間が定められています。一般的には「契約不適合責任の通知期間」と表現されている期間が、責任を負う期間です。
契約不適合責任については、以下の記事で詳しく解説していますのでご覧ください。

マンション売却における瑕疵担保責任(契約不適合責任)とは?対策方法を解説

特約

特約は、一般的に記載される事項とは別に設ける、売主様・買主様の間での取り決めです。不動産会社に伝えた内容が漏れなく記載されているかを十分に確認することが必要です。
特約とは、例えば以下のようなものが挙げられます。

  • 買主は、将来において本物件の周辺に建物が建設され、日照、通風、眺望等の環境の変化が生じても売主に対し一切の異議苦情を申し述べないものとします
  • 買主は、本物件で大規模修繕計画の予定があることを確認し、修繕積立金の値上げおよび一時金の負担が生じたとしても売主に対し一切の異議苦情を申し述べないものとします
  • 売主は本物件を現状有姿のまま買主に売り渡し、買主はそれを容認のうえで本契約の売買代金で購入するものであり、買主は売主に対して契約不適合責任を問わないものとします

不動産売買契約書に関するよくある質問

最後に、不動産売買契約書に関するよくある質問を紹介します。

不動産売買契約書には印紙が必要ですか?

不動産売買契約書は印紙を貼らなければいけない課税文書となります。
課税文書と呼ばれる書類を作成する場合には、印紙を貼ることで印紙税を納税する必要があります。

印紙は誰が負担するかは売買契約書に記載されており、売主様と買主様が平等に負担することが一般的です。
売買代金と税額の関係は、下表のようになります。

売買契約書に記載する売買代金 本則 軽減税率※
1万円未満 非課税
1万円以上10万円以下 200円 対象外
10万円超50万円以下 400円 200円
50万円超100万円以下 1,000円 500円
100万円超500万円以下 2,000円 1,000円
500万円超1,000万円以下 10,000円 5,000円
1,000万円超5,000万円以下 20,000円 10,000円
5,000万円超1億円以下 60,000円 30,000円
1億円超5億円以下 100,000円 60,000円
5億円超10億円以下 200,000円 160,000円
10億円超50億円以下 400,000円 320,000円
50億円超 600,000円 480,000円
契約金額の記載のないもの 200円 対象外

※2014年4月1日~2024年3月31日まで

参考:不動産売買契約書の印紙税の軽減措置

売買契約書はいつ受け取れますか?

売買契約書は売買契約日に受け取ることができます。
買主様は、売買契約後に行う住宅ローンの本審査に売買契約書が必要です。
売主様は、引き渡し後に行う確定申告において、売買契約書を証拠資料として残しておく必要があります。

まとめ

ここまで、不動産売買契約書について解説してきました。
不動産の売買契約では、不動産売買契約書の内容を買主様と読み合わせて契約内容に相違がないか確認されます。
売買契約書には売却金額や引き渡し日、トラブル時の取り決め等が記載されている為、この記事で紹介したポイントを抑えておくと安心です。

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※本記事の内容は2023年6月12日現在のものであり、制度や法律については、今後改正・廃止となる場合がございます。

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この記事の著者

竹内英二(株式会社グロープロフィット 代表取締役)
不動産鑑定および宅建業の代表取締役。不動産鑑定士、宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、公認不動産コンサルティングマスター(相続対策専門士)、中小企業診断士、住宅ローンアドバイザー。大阪大学出身。
写真:竹内英二(株式会社グロープロフィット 代表取締役)

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