鉄骨造とは、建物の骨組みである柱や梁に鉄骨を用いた構造のことです。木造に比べて耐用年数が長く、住宅にも多く採用されています。
この記事では、鉄骨の厚みや用途による耐用年数の違いや、耐用年数について知っておきたいことを解説します。また鉄骨造の建物の寿命を延ばす方法や、耐用年数を越えたときの対処法もご紹介します。鉄骨造の住宅を購入・売却検討している方はぜひご覧ください。
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鉄骨造の耐用年数とは?
耐用年数は多くの場合、減価償却費を計算する際に用いる「法定耐用年数」を指すことが多く、建物の寿命を意味する場合は「物理的耐用年数」を指します。
ここでは、法定耐用年数と物理的耐用年数について解説します。
法定耐用年数
法定耐用年数とは、資産が使用できる期間を国が構造や用途に応じて定めたもので、減価償却を行う際に使用されます。
減価償却とは、資産の価値は時間経過とともに目減りするという考え方に基づき、その目減りを減価償却費として会計処理(経費として計上)することです。
法定耐用年数は、あくまでも国が税制上定めている年数である為、その年数が実際の寿命にはなりません。法定耐用年数は構造や用途によって異なり、鉄骨造の耐用年数はそれぞれ以下の通りです。
構造 | 事務所用 | 店舗用・住宅用 |
---|---|---|
鉄骨鉄筋コンクリート造・鉄筋コンクリート造のもの | 50年 | 47年 |
金属造のもので骨格材の肉厚が、4mmを超えるもの | 38年 | 34年 |
金属造のもので骨格材の肉厚が、3mmを超え、4mm以下のもの | 30年 | 27年 |
金属造のもので骨格材の肉厚が、3mm以下のもの | 22年 | 19年 |
鉄骨造の法定耐用年数については、「4mmを超えるもの」・「3mmを超え4mm以下のもの」「3mm以下のもの」で区分されています。しかし一般的には、「重量鉄骨造」と「軽量鉄骨プレハブ造」で区別することが多いでしょう。
以下で重量鉄骨造と軽量鉄骨の違いとそれぞれの特徴をご紹介します。
重量鉄骨造の特徴
鉄骨造の骨組みとなる鉄骨(鋼材)の厚みが、6mm以上の構造を、一般的に「重量鉄骨造」といいます。
重量鉄骨造は鋼材が厚い為、木造や軽量鉄骨造と比べて強度が高いのが特徴です。
強度が高い分、柱の数を減らすことができる為、大きな空間を作りやすくなります。また、柱が少なくても安定性を保てることから、間取りの自由度が高く、設計のバリエーションが増えるのも特徴です。
その他、重量鉄骨造の壁には軽量気泡コンクリート板(ALC)が使われることが多く、木造に比べて防音性が高いことから、高層ビルや商業施設、3階建て以上のマンションなどでよく用いられています。
デメリットとしては、木造や軽量鉄骨造に比べてコストが高くなることが挙げられます。また建物の重量が重くなる為地盤に負担がかかり、地盤の強度によっては地盤改良などが必要になることがあります。
軽量鉄骨プレハブ造の特徴
鉄骨造の骨組みとなる鉄骨(鋼材)の厚みが、6mm未満の構造を、一般的に「軽量鉄骨」といいます。
鉄骨の厚みが厚くなればなるほど、建材にかかるコストは高くなります。また重い建材を運ぶのに手間がかかれば、その分工期も長くなります。
つまり軽量鉄骨造は重量鉄骨に比べて建材にかかるコストが安く、工期が短い分人件費も抑えられることが、大きなメリットです。また重量も比較的軽い為、地盤改良などに費用がかかる心配もないでしょう。
ただし、重量鉄骨造と比べて鉄骨の厚みが薄い軽量鉄骨造は、壁が薄く防音性能が低いことがデメリットとして挙げられます。また、軽量鉄骨造は重量鉄骨造に比べて構造の強度が低くなる分、広い空間を作れないことから間取りのバリエーションが少ないこともデメリットでしょう。
物理的耐用年数
物理的耐用年数とは、物理的に使用できなくなるまでの期間を意味します。
重量鉄骨造(住宅)の法定耐用年数は34年ですが、重量鉄骨造は強度が高く、耐久性にも優れている為、適切なメンテナンスを行えば50年~60年、さらにそれ以上住むことも可能です。
ただし、建物の立地条件や周辺環境、使用状況によって物理的耐用年数は左右される点には注意しましょう。
マンションの寿命の目安と長く住めるマンションを見極めるポイントについては、こちらの記事で詳しく解説していますのでご覧ください。
参照:国土交通省「期待耐用年数の導出及び内外装・設備の更新 期待耐用年数の導出及び内外装 設備の更新 による価値向上について」
鉄骨造の耐用年数について知っておきたいこと
鉄骨造の法定耐用年数は、様々な場面で使用されています。ここでは、耐用年数が利用される場面についてご紹介します。
減価償却の計算に使用される
不動産を売却して譲渡所得(利益)が発生した場合は、譲渡所得税が発生します。譲渡所得を計算する際、不動産購入時にかかった費用(取得費)と譲渡費用を経費として差し引くことができます。譲渡所得金額は以下の計算式で求めます。
なお建物については購入時の価格から減価償却費を差し引いて計算する必要があり、以下の計算式で求めます。
※1年未満6ヵ月以上は1年、6ヵ月未満は切捨て
木造 | 木造モルタル | 鉄骨鉄筋コンクリート | 金属造① | 金属造② | |
---|---|---|---|---|---|
償却率 | 0.031 | 0.034 | 0.015 | 0.036 | 0.025 |
金属造①:軽量鉄骨造で骨格材の厚みが3mm以下
金属造②:軽量鉄骨造で骨格材の厚みが3mm超4mm以下
では、以下の条件で実際に建物の減価償却費を算出してみましょう。
所有期間10年
鉄骨造(骨格材の厚み3mm)の一戸建て
購入価格3,000万円
▼計算式
減価償却費=3,000万円×0.9×0.036×10年=972万円
減価償却費の計算方法については、こちらの記事で詳しく解説していますのでご覧ください。
マンション売却時の減価償却とは?計算方法や譲渡所得税との関係について解説
建物の減価償却とは?不動産売却時の計算方法や仕組みについて解説
年数が住宅ローンの借入に影響することもある
鉄骨造の住宅を購入する際、築年数によっては担保評価が低くなり、希望する金額を借入れできないことがあります。
住宅ローンは借入れする方の年齢や収入、勤務先などを審査しますが、抵当権を設定する建物の法定耐用年数も影響する為です。
建物の築年数が法定耐用年数を超えている場合は、超えていない物件よりも担保評価が低くなり、その分借入れが難しいことがあります。購入を検討する場合は、早めに金融機関に相談しましょう。
鉄骨造の建物の寿命を延ばすポイント
ここでは、鉄骨造の家に住んでいる方、もしくは鉄骨造の家の購入を検討している方の為に、鉄骨造の建物の寿命を延ばすポイントをご紹介します。
汚れや湿気への対策をして錆を防止する
前述したとおり、鉄骨造は錆に弱い為、錆を防ぐ対策が寿命を延ばすことにつながります。
例えば、窓などに結露が生じた場合はそのままにせず、拭き掃除や換気をして室内に湿気を溜め込まないようにしましょう。湿気はカビや錆びの原因になり、建物だけでなく住む方の健康にも影響します。
適切なタイミングで修繕を実施する
鉄骨造の家の寿命をなるべく延ばす為には、年数に応じたメンテナンスが必要です。修繕する箇所によって適した時期や頻度は異なりますが、屋根や外壁から雨水が内部に侵入してしまうと、鉄骨の柱や梁を錆びさせることになります。
一戸建ての場合は、専門業者やハウスメーカーに10年を目安に一度点検を依頼し、劣化具合に応じて10年~15年で改修工事を検討しましょう。
マンションの場合は、外部や共用部分は長期修繕計画に従って点検や大規模修繕が行われます。個人が修繕をする場合は専用部分に限られ、共用部分に影響するような修繕はできません。
建築前に気候環境や地盤の特徴を把握する
家を建築する前に、気候環境や地盤の特徴を把握しましょう。例えば、海に近いエリアは潮風の影響で金属が錆びやすく、他のエリアに比べて家の劣化を早めてしまう傾向があります。その為、一般的にメンテナンスが必要になるタイミングよりも、短いスパンで修繕が必要になります。塩害に強い素材を採用したり、小まめな清掃で塩を洗い流したりして対策しましょう。
また地盤にも注意が必要です。構造的に強度が高い建物であっても、地盤が弱ければその強度を保てない恐れがあります。土地を検討する際は、地盤の強度や土砂災害のリスクも考慮して選ぶようにしましょう。
耐用年数を超えた鉄骨造の建物はどうする?
耐用年数を超えた鉄骨造の建物は、どのように活用したら良いのでしょうか。ここでは5つの方法を紹介します。
リフォームや大規模修繕をして住み続ける
鉄骨造の建物が耐用年数を超えたとしても、すぐに住めなくなるわけではありません。しかし寿命を延ばす為にも比較的大規模な修繕を実施しなければならず、快適に暮す為には水回りや内装のリフォームを検討する必要があります。
しかしマンションの場合は、共用部分に影響があるような改修工事は個人で実施できないことが多く、工事内容はかなり制限されるでしょう。まずは管理規約や使用細則を確認する必要があります。
修繕やリフォームを実施する際は、専門業者やハウスメーカーに点検を依頼し、どの程度の修繕が必要で、どのくらい費用がかかるのか試算してもらうことをお勧めします。
売却する
法定耐用年数を超えていたとしても、売却は可能です。ここでは、4つの売却方法をご紹介します。
そのままの状態で売却する
法定耐用年数を超えている場合は建物の価値はゼロと判断されることもありますが、建物自体がまだ住める状態であれば、土地の価格で売却することができます。
家を売却する為に、リフォームや修繕をする必要はありません。まずは不動産会社に査定を依頼し、そのままの状態で仲介による売却を検討しましょう。
古い家を売却する方法については、こちらの記事で詳しく解説していますのでご覧ください。
古い家を売る方法とは?古い家の定義やかかる税金・費用、売却時のポイントを紹介
築50年のマンションでも売却できる?旧耐震物件の資産価値や特徴、買主様のメリットを解説
不動産会社に買い取ってもらう
家を売却する場合、仲介以外にも不動産会社に買取を依頼する方法があります。
買取の場合は仲介に比べて売却価格が安くなる傾向がありますが、契約不適合責任を免除できることが多く、築年数が古い家を売却する場合でも安心して取引できるのがメリットです。
契約不適合責任とは、売主様が買主様に引き渡したものが契約で定めた内容と異なる状態や数量だった場合に売主様が負う責任のことです。仮に、引き渡し後に瑕疵が見つかった場合、内容によっては買主様から損害賠償や代金減額請求をされたり、解約解除になったりすることがあります。
不動産会社による買取は、早ければ1週間程度で売買契約できることもあります。住み替えなどで現金化したい時期が決まっているときは、不動産会社による買取をお勧めします。
マンションの買取と業者の選び方については、こちらの記事で詳しく解説していますのでご覧ください。
マンション買取とは?仲介との違いや注意点、向いているケース、業者の選び方について解説
参照:東京都住宅政策本部「契約不適合責任に係るトラブルについて
古家付き土地として売却する
建物の状態によっては、「古家付き土地」として売却することを検討しましょう。
古家付き住宅とは、その名の通り古い家が建っている土地のことを指します。土地として売却することで、建物の契約不適合責任を免除できます。
基本的には土地の価格で売却することになりますが、売主様が建物を解体する必要はなく、建物に瑕疵があったとしても責任を負う必要はありません。
古家付き土地として売却する方法については、こちらの記事で詳しく解説していますのでご覧ください。
古家付き土地の売却方法は?解体して更地にする注意点やかかる税金・費用を解説
建物を解体して更地にして売却する
建物が建ったままの状態だと見栄えが悪い場合は、建物を解体して、更地にしてから売却しましょう。見栄えが良くなり、買主様にとっては解体費用が発生しない分購入までのハードルが低くなります。早期の売却を目指す場合は、更地にして売却することを検討しましょう。
しかし更地にする場合は、解体するタイミングや売却の時期に注意する必要があります。
住宅用地に対しては固定資産税の特例措置があり、200㎡(小規模住宅用地)までは固定資産税が1/6、都市計画税が1/3になります。しかし更地にしてしまうとこの適用を受けられなくなります。
またマイホームの売却で一定の条件を満たす場合、「3,000万円特別控除」という特例を利用できます。具体的には、家を売却して利益が発生する場合、この特別控除を利用することで利益(譲渡所得)から最大で3,000万円まで控除できるというものです。
ただし適用を受ける為には、解体後1年以内に売買契約を締結する必要があり、転居して3年後の年末までに売却しなければなりません。
家の解体費用にかかる費用相場や解体時の注意点については、こちらの記事で詳しく解説していますのでご覧ください。
家の解体費用の相場は?安く抑えるポイントや解体する際の注意点を解説
固定資産税の計算方法や税金の特例については、こちらの記事で詳しく解説していますのでご覧ください。
固定資産税の計算は自分でもできる?計算方法や減税措置、シミュレーション例をご紹介
建て替えを検討する
鉄骨造の家を解体し、新しく家を建てる方法もあります。費用をかけてリフォームや大規模修繕をしても築年数は古いままですが、家は新築することで資産価値が高くなります。
ただし建て替える場合は少なくとも3ヵ月~6ヵ月仮住まいをする必要があり、高額な建築費もかかります。慎重に資金計画を立てたうえで、建て替えが有効かどうか判断しましょう。
なおマンションの建て替えは難しいことが多く、区分所有者と議決権において各4/5以上の賛成が条件になります。今現在建て替え案が話し合われていたとしても、実現までに時間がかかり、かならずしも建て替えが実現するとは限りません。その為、マンションについては、建て替えは選択肢としては現実的ではありません。
まとめ
耐用年数は減価償却費を計算する際に利用する法定耐用年数を指すことが多く、耐用年数=家の寿命を意味するものではありません。
仮に鉄骨造で耐用年数を超えている家でも住み続けることは可能ですし、売却して現金化することも可能です。また築年数に応じた適切なメンテナンスをすることで、寿命を延ばすことも可能です。家に劣化が見られたときは、専門業者やハウスメーカーに相談し、早めに対処するようにしましょう。
長谷工の仲介では、無料査定を随時お受けしています。家の売却を検討している方は、以下の専用フォームもしくは「売却何でも相談」からお気軽にご相談ください。
※本記事の内容は2024年11月15日現在のものであり、制度や法律については、今後改正・廃止となる場合がございます。