2025.10.28マンションは売却と賃貸どっちがお得?同時進行できる?メリットや注意点を解説

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自分が住まなくなったマンションを売却するか賃貸に出すか迷っている方もいるかと思います。売却と賃貸ではどのような違いがあり、注意点はどこにあるのでしょうか。また、売却と賃貸を同時に進めることは可能なのでしょうか。

この記事では、マンションを売却するか賃貸に出すか、それぞれのメリット・デメリットや判断基準を解説します。

マンションは売却と賃貸どちらが多い?

国土交通省が公表している統計情報によると、住み替え前の分譲マンションの処分方法の割合は下表の通りです。

年度 売却 賃貸※1 その他※2
2020年度 63.0% 3.7% 33.3%
2021年度 60.0% 6.7% 33.3%
2022年度 74.3% 2.8% 22.8%
2023年度 60.6% 12.1% 27.3%
2024年度 83.3% 5.6% 11.1%
5年平均 68.2% 6.2% 25.6%

※1賃貸:令和2年、令和4年については参考値
※2その他:親族に貸す、空き家のままにしているなど

出典:国土交通省「令和6年度住宅市場動向調査報告書 問17 住み替え前の住宅の処分方法 集合住宅を処分 全国」

直近5年間は売却を選択する方のほうが多く、過去5年間を平均すると6割超の方が売却を選択しています。それに対して、賃貸を選択する方は、2023年度に1割を超えましたが、それ以外の年度は1割未満となっています。

では、売却する場合と賃貸に出す場合ではそれぞれどのようなメリットや注意点があるのでしょうか。詳しく解説していきます。

マンションを売却するメリット

マンションを売却するメリットについて解説します。

売却することで資金が手に入る

売却は、まとまった資金を手にできる点がメリットです。売却で得られた資金は、次の物件を購入する際の頭金や、老人ホームに入所する際の一時金として利用できます。

税制優遇を利用して税金を控除できる

マイホームの売却では、一定の要件を満たすことで以下の特例が利用でき、税金を抑えられる可能性があります。

例えば、マイホームの売却で発生した売却益(譲渡所得)から最大3,000万円を差し引ける「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例」が代表的な税制優遇の一つです。この特例を使えば、多くのケースで税金がかからなくなるでしょう。

さらに、所有期間が10年を超える場合は、売却益のうち6,000万円以下の部分について税率が低くなる「所有期間10年超の居住用財産を譲渡した場合の軽減税率の特例」も併用可能です。

所有期間 譲渡所得の税率
5年以下(短期所得) 39.63%
5年超(長期所得) 20.315%
10年超(6,000万円以下の部分) 14.21%

また、売却したマンションよりも高い価格の物件に買い替える場合、売却益に対する課税を将来に繰り延べられる「特定の居住用財産の買換えの特例」も利用できます。売却で損失が出た場合は、その損失を他の所得と相殺して税負担を軽くする「マイホームを買い換えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例」の利用も検討しましょう。

さらに、相続したマンションを売却する際には、相続税の一部を取得費(購入代金や購入時の手数料など)に加算して売却益を圧縮できる「相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」もあります。

これらの制度をうまく活用すれば、マンション売却時の税負担が軽くなるでしょう。

3,000万円特別控除や各税金特例については、こちらの記事で詳しく解説していますのでご覧ください。

マンション売却にかかる税金はいくら?計算方法や知っておきたい控除について徹底解説

居住用財産の3,000万円特別控除とは?適用要件や必要書類を解説

住宅ローンを完済できる可能性がある

売却価格が住宅ローンの残債額より高い場合は、ローンを完済できる可能性があります。また、売却価格が住宅ローンの残債額より低くても、自己資金を充当できればローンの完済は可能です。

ローン完済が難しい場合の対処方法については、こちらの記事で詳しく解説していますのでご覧ください。

ローン残債があってもマンション売却できる?ケース別に対処方法を解説

維持費や固定資産税の負担がなくなる

マンションを売却すると、固定資産税や都市計画税、管理費、修繕積立金、駐車場料金などの維持費の負担がなくなります。
なお、マンション売却では、引き渡し日以降の固定資産税は清算という形で買主様に実質的な負担をしてもらうことが一般的です。

マンション売却の固定資産税については、こちらの記事で詳しく解説していますのでご覧ください。

マンションを売却した時の固定資産税はどうすればいい?清算方法や注意点を解説

マンションを売却するデメリット・注意点

続いて、マンションを売却する際の注意点について解説します。

売却できるまでに時間がかかることもある

不動産会社に仲介を依頼してマンションを売却する場合、準備から引き渡しまで6~7ヵ月程度かかることがあります。流れとしては、査定から販売開始まで1週間~1ヵ月、販売開始から売買契約まで3~4ヵ月、売買契約から引き渡しまで1~2ヵ月程度が目安です。

一方、不動産会社に買い取ってもらう場合は売却までの期間を短くできますが、それでも準備から引き渡しまで1週間~1ヵ月程度かかります。その為、余裕のあるスケジュールを組むことが望ましいでしょう。

売却までの流れについては、こちらの記事で詳しく解説していますのでご覧ください。

マンション売却完全ガイド!注意点や流れ、税金・費用、失敗事例を徹底解説

中古住宅が売れるまでの平均期間は?早期売却のコツと売れない場合の対処法をご紹介

築年数や時期によって売却価格が変動する

マンションは築年数によって価格が変動します。以下のグラフと表は、中古マンションの成約価格を築年数別に示したものです。

築年数別の成約価格画像
築年数 築0~5年 築6~10年 築11~15年 築16~20年 築21~25年 築26~30年 築31~35年 築36~40年 築41年~
成約価格 7,808万円 7,156万円 6,619万円 5,972万円 5,320万円 3,835万円 2,455万円 2,742万円 2,351万円

出典:公益財団法人東日本不動産流通機構(東日本レインズ)「首都圏不動産流通市場の動向(2024年)」

マンションは、築年数が経過するほど価格が下がる傾向にあります。実際、グラフを見ると築0~5年のマンションの成約価格が7,808万円であるのに対し、築26~30年では3,835万円と、約半額程度まで価格が下がっているのが分かります。

ただし、角部屋や高層階、駅からの距離が近いなど、条件の良いマンションは築年数が古くても比較的高値で取引される傾向にあります。逆に、駅からのアクセスが悪い、管理費・修繕積立金が相場よりも高いなどのマンションの場合は、相場よりも売却価格が下がることも考えられます。

また、不動産の需要は売却時期によっても変動します。例えば、新生活が始まる前の1~3月や転勤・異動シーズンである9月前後は購入希望者が増える為、高い金額で売却しやすい傾向にあります。

自身のマンションがいくらで売れるかを詳しく知りたい場合は、不動産会社に査定を依頼するのが最も確実な方法です。長谷工の仲介ではマンションの無料査定を行っていますので、ぜひお気軽にご相談ください。

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マンションの売却価格と築年数との関係や、売却査定でチェックされるポイントについては、こちらの記事で詳しく解説していますのでご覧ください。

マンション売却相場に築年数は影響する?売り時や高く売るコツも解説

マンションの売却査定で見られるポイントとは?査定の流れや高く売るコツ、注意点を解説

売却時に税金や費用がかかる

マンションを売却するとまとまった資金が入りますが、仲介手数料や各種税金などの費用もかかります。売却代金が全て手元に残るわけではない為、事前にどのような費用がどれくらいかかるかを把握しておく必要があります。

売却にかかる主な費用は以下の通りです。

費用 概要
仲介手数料 不動産会社に支払う成果報酬
印紙税 売買契約書に貼付する印紙代
登記費用 抵当権抹消などにかかる費用
譲渡所得税 売却して利益が出た際にかかる税金

特に高額になりやすいのが、不動産会社に支払う仲介手数料と、売却益に対して課される譲渡所得税です。
仲介手数料は法律で上限が定められています。速算式は以下の表を参考にしてください。

売却価格 仲介手数料の上限(税抜)
200万円以下 売却価格×5%
200万円超〜400万円以下 売却価格×4%+2万円
400万円超 売却価格×3%+6万円

出典:国土交通省「<消費者の皆様向け>不動産取引に関するお知らせ」

譲渡所得税は、譲渡収入金額(売却価格)から購入時や売却時にかかった費用などを差し引いた譲渡所得に課される税金のことです。譲渡所得は以下の計算式で算出できます。

譲渡所得=譲渡収入金額-(取得費+譲渡費用)-特別控除額

参考:国税庁「No.3202 譲渡所得の計算のしかた(分離課税)」

この税金は、売却した年の1月1日時点の所有期間によって税率が変わる為、注意が必要です。

所得の種類 所有期間 所得税率 住民税率 復興特別所得税 合計税率
短期譲渡所得 5年以下 30% 9% 0.63% 39.63%
長期譲渡所得 5年超 15% 5% 0.315% 20.315%

これらの費用を考慮して、売却計画を慎重に立てることが重要です。

マンション売却で発生する費用と税金については、こちらの記事で詳しく解説していますのでご覧ください。

マンション売却にかかる費用や手数料の相場は?節約方法やシミュレーションも紹介

マンション売却にかかる税金はいくら?計算方法や知っておきたい控除について徹底解説

譲渡益が発生した場合は確定申告を忘れない

売却によって確定申告が必要になる方は、確定申告を忘れないようにしましょう。売却によって利益(譲渡所得)が発生した場合には確定申告が必要となります。

マイホームの売却では、一定の要件を満たすとマンション売却のメリットでご紹介した税金優遇の特例を利用できますが、特例の利用で税金が発生しない場合でも確定申告は必要です。
一方、譲渡損失(マイナスの譲渡所得のこと)が発生した場合や、譲渡損失に関する特例を利用しない場合には、確定申告は不要となります。

マンション売却での確定申告については、こちらの記事で詳しく解説していますのでご覧ください。

マンションを売却したら確定申告が必要?流れや手順、必要書類について徹底解説

リフォームは不動産会社と相談して決める

売却前にリフォームを検討する場合は不動産会社に相談してから決めましょう。

リフォームすれば購入希望者への印象が良くなる可能性がありますが、かけた費用を売却価格に上乗せできるとは限りません。購入希望者によっては購入後に自分の好みに合わせてリフォームしたいと考えているケースもあり、売主様の判断でリフォームした結果、デザインが購入希望者の好みに合わず、かえって売れにくくなることも考えられます。

不動産会社は物件の状況やエリアのニーズを熟知している為、どの程度のリフォームが必要か、あるいはリフォームせずに売り出したほうが良いかなど、的確なアドバイスが受けられます。自己判断でリフォームを行わず、専門家の意見を参考にしましょう。

マンション売却でリフォームする際のコツや費用相場については、こちらの記事で詳しく解説していますのでご覧ください。

マンション売却でリフォームは不要?売却価格などの面からその理由を徹底解説

マンションリフォームの費用相場は?費用を抑えるポイントや実施する際の注意点を解説

マンションを売却する際の流れ

マンションの売却には、仲介と買取の2種類があります。

仲介を依頼する場合

仲介の流れは以下の通りです。

  • 不動産会社への査定依頼
  • 不動産会社との媒介契約の締結
  • マンション価格の確定
  • 売却活動の開始
  • 契約条件の交渉
  • 売買契約の締結、不動産会社への仲介手数料(50%)の支払い
  • マンションの引き渡し準備
  • 引き渡し作業や諸費用の支払い、不動産会社への残りの仲介手数料の支払い
  • 利益が出たら確定申告の手続きを行う

仲介では、媒介契約締結後に広告を利用して多くの購入希望者を募り、購入希望者に物件を見せる内覧などを行います。買主様との条件が調整できれば売買契約を結び、引き渡しや固定資産税の清算などを済ませます。

具体的なマンション売却の流れや内覧時のポイントについては、こちらの記事で詳しく解説していますのでご覧ください。

マンション売却完全ガイド!注意点や流れ、税金・費用、失敗事例を徹底解説

マンション売却での内覧の流れは?事前準備やチェックすべきポイントもご紹介

買取を依頼する場合

買取の流れは以下の通りです。

  • 買取価格の査定を依頼する
  • 買取業者を選択する
  • 買取業者と契約する
  • 決済と物件の引き渡しを行う

買取では、不動産会社と条件が合えばスムーズに売買契約を結べる為、売主様の都合に応じて売却時期を調整しやすくなります。

仲介と買取の違いについては、こちらの記事で詳しく解説していますのでご覧ください。

マンション買取とは?仲介との違いや注意点、向いているケース、業者の選び方について解説

マンションを賃貸に出すメリット

続いて、マンションを賃貸に出すメリットについて解説します。

入居者が見つかれば家賃収入が得られる

入居者が見つかれば家賃収入が得られる点が、マンションを賃貸に出す場合の一番のメリットです。家賃収入は不労所得であり、長期かつ安定した収益が見込めます。

賃貸経営にかかる費用を経費として計上できる

賃貸経営では、貸す物件で生じる一定の費用を経費として計上できる為、節税対策にもなります。個人が賃貸経営で得られる所得のことを不動産所得と呼びますが、不動産所得は所得税の課税対象です。

不動産所得とは単純に家賃を指すものではなく、以下の計算式で求められる利益を指します。

不動産所得=収入金額-必要経費

必要経費にできるのは下表のようなものです。

費用項目 内容
固定資産税および都市計画税 所有者に毎年かかる税金
建物の損害保険料 火災保険および地震保険
管理委託料 管理会社に支払う管理料
仲介手数料 入居者募集時に管理会社へ支払う手数料
管理費および修繕積立金 管理組合に支払うもの
減価償却費 建物の取得原価を各会計期間に費用として配分したもの
リフォーム代やハウスクリーニング代 賃貸として貸し出す際に行ったリフォームやハウスクリーニング費用

マンションを賃貸に出した際の賃貸収入は、不動産所得として所得税と住民税の課税対象となります。家賃収入から上記の必要経費が差し引かれて不動産所得を計算し、これに税率が適用される仕組みです。その為、必要経費をしっかり計上すれば課税所得を圧縮できます。マンションを賃貸に出す際は、税理士や不動産会社などの専門家と連携し、自身の状況に合わせた賃貸経営を行いましょう。

マンション売却の減価償却については、こちらの記事で詳しく解説していますのでご覧ください。

マンション売却時の減価償却とは?計算方法や譲渡所得税との関係について解説

資産として将来的に活用できる

マンションを賃貸に出すと、資産として将来的に活用できる選択肢が広がります。

例えば、転勤で一時的に家を離れる場合は定期借家契約(期間が定められている賃貸借契約)を利用すれば、家賃収入を得ながら資産を保有し、契約期間満了後に再び住むことができます。家に入居者がいれば、生活のなかで換気や通水が行われ、空き家にするよりも建物の劣化を防げるのがメリットです。

また、賃貸に出した物件は収益物件と位置づけられる為、将来的に好条件で売却できる可能性があります。収益物件の売却価格には、家賃収入と利回りをもとに算出される収益還元法が用いられることが多く、安定した家賃収入があれば、築年数が経過していても価格が下がりにくい傾向があります。

さらに、マンションに賃貸借契約による入居者がいる状態でも売却は可能です(オーナーチェンジ物件)。賃貸に出すことで、住む・貸す・売却するなど、複数の選択肢を検討できるでしょう。

転勤が決まった際にマンションをどのように活用すれば良いのかについては、こちらの記事で詳しく解説していますのでご覧ください。

転勤時にマンションは売却する?賃貸?売却のタイミングやコツを解説

マンションを賃貸に出すデメリット・注意点

マンションを賃貸に出す際の注意点についても解説します。

住宅ローンを完済している必要がある

マンションを賃貸に出す場合には、住宅ローンを完済している必要があります。銀行とのローンの契約において、マイホーム以外に利用することは資金使途違反となるからです。ただし、不動産投資ローンとして銀行に借り換えを認めてもらえれば、マンションを賃貸に出せる場合もあります。

状態によっては事前にリフォームが必要になる

売却の場合は自身の好みに合わせたリフォームやリノベーションをしたいと考える買主様が多い為、内装のリフォームや設備交換などをせずに現状のままでも売れるケースがあります。しかし、賃貸に出す場合にかかる住宅設備の修繕や交換はオーナーの負担となります。

築年数が経過しているマンションは、キッチンや浴室などの水回り設備が古かったり、壁紙が汚れていたりするケースが多い為、入居者が見つかりにくくなります。周辺の競合物件に見劣りしないよう、最低限のリフォームやハウスクリーニングは必須といえるでしょう。

リフォームを行えば物件の魅力が高まり、空室対策や家賃設定で有利になる可能性があります。しかし、その費用はオーナーが負担しなければなりません。どの範囲までリフォームを行うかは、不動産会社と相談して慎重に見極める必要があります。

場合によっては空室が続くこともある

入居者がなかなか決まらないと空室が続きます。その場合は、当然ながら不動産所得は得られないことになります。一方、空室中も固定資産税や管理費および修繕積立金などの維持費は発生します。万が一のリスクに備えてある程度の資金を確保しておく必要があるでしょう。

賃貸人の個人的な都合での契約解除は難しい

賃貸借契約では、貸主様からの一方的な都合による契約解除は難しい傾向にあります。借地借家法によって借主様の権利が守られている為、一度賃貸に出すと貸主様からは簡単に契約解除できない仕組みになっているのです。

居住用財産に対する税制優遇を利用できない

マイホームを賃貸に出す場合、本人が転居してから3年後の12月31日までの間に売却しないと、居住用財産に対する税金優遇の特例を利用できなくなります。逆にいえば、貸した後にマイホームの売却特例を利用したい場合には、本人が転居してから3年後の12月31日までの間に売る必要があります。

さらに、住宅ローン控除への影響も無視できません。住宅ローン控除は、年末のローン残高の0.7%を所得税などから最大13年間控除できる制度ですが、これはあくまで住宅ローン契約者本人が居住していることが適用条件です。住宅ローン返済中のマンションを賃貸に出した場合、その期間中は住宅ローン控除を受けられません。

一方、賃貸に出しているマンションを売却する場合は、一定の要件を満たすと「事業用資産の買い換えの特例」を利用できるケースがあります。詳しくは国税庁のページをご覧ください。

参考:国税庁「No.3405 事業用の資産を買い換えたときの特例」

住宅ローン控除の概要や適用要件については、こちらの記事で詳しく解説していますのでご覧ください。

【2024年】住宅ローン控除はいつまで受けられる?税制改正による変更点や要件、申請方法について解説

物件の管理をする必要がある

物件を賃貸に出すと、毎月の家賃の回収、賃貸借契約の締結や更新手続き、クレーム対応、原状回復の確認などの管理業務が発生します。さらに、家賃滞納が発生した際の督促、騒音・ゴミ出しといったマナーをめぐる入居者間のトラブル対応など、予期せぬ問題が発生する恐れもあります。

管理会社に管理を委託すれば、そうしたほとんどの業務は管理会社が行ってくれます。ただし、管理会社に管理を委託したとしても、借主様が退去した後に行うクロスの張り替えなどの基本的な修繕は貸主様の費用負担となります。

賃貸経営には、具体的に以下の費用や税金がかかります。

費用・税金 概要 費用目安
管理委託料 管理会社に支払う管理料 賃料の3〜5%
修繕費 経年劣化や故障による設備の交換・修理費用 10〜500万円
固定資産税および都市計画税 所有者に毎年かかる税金 10〜20万円
建物の損害保険料 火災保険および地震保険 2〜20万円
管理費および修繕積立金 毎月管理組合に支払うもの 2.5〜4万円

上記の管理負担や費用を考慮したうえで、賃貸経営をはじめるかどうかを慎重に判断しましょう。

マンションを賃貸に出す際の流れ

続いて、マンションを賃貸に出す際の流れについて解説します。

賃貸物件を扱う不動産会社と契約する

入居者を募集する為に、まずは賃貸物件を扱う不動産会社と契約を結びます。
売主様が不動産会社に入居者募集を依頼する契約には、主に媒介契約と代理契約の2種類があります。

媒介契約とは、不動産会社に入居者の募集活動や内覧の案内といった仲介業務を依頼する為の契約です。不動産会社はあくまで仲介として役割を果たす為、入居審査や入居条件などの最終決定は売主様が下すことになります。複数の会社に同時に依頼できる一般媒介と、1社に限定して依頼する専任媒介などの種類があります。幅広く入居者を募集したい場合は一般媒介、信頼できる1社に任せたい場合は専任媒介がお勧めです。

一方、代理契約とは、不動産会社が売主様の代理人として、入居者募集から契約手続きまでの一切を代行する契約です。管理業務全般を任せる場合に依頼することが多く、売主様は借主様と直接やり取りする必要がありません。

それぞれの特徴を理解し、自身の状況に合った契約方法を選びましょう。

賃貸借契約の方法や家賃を決める

次に、賃貸借契約の方法と家賃を決めます。
賃貸借契約には、普通借家契約、定期借家契約、サブリース契約の3種類があります。普通借家契約とサブリース契約は更新ができる契約で、定期借家契約は更新ができない契約です。

3つの具体的な違いは下表の通りになります。

比較項目 普通借家契約 定期借家契約 サブリース
契約期間 1年以上50年以内 1年未満も可 期間の定めなし
契約更新の可否 可能 更新ではなく再契約が必要 可能
借主様都合による中途解約の可否 特約があれば可能 特約があれば可能 特約があれば可能
貸主様都合による中途解約の可否 不可 不可 不可

再び住みたい場合には原則として定期借家契約を選択します。定期借家契約であれば、契約期間満了時に確実に賃貸借契約が終了する為、マンションを借主様から返してもらえるからです。普通借家契約で貸主様から更新を拒絶する場合には、貸主様には正当事由(借主を退去させる正当な理由)と立ち退き料が必要となります。

一方、今後収益物件として長期的に運営したい場合には、普通借家契約を選択します。普通借家契約は、借主様の立場が安定している為、入居者が決まりやすい傾向にあります。

サブリース契約とは、物件を不動産会社に貸し出し、その会社が入居者に転貸する仕組みを指します。サブリース契約では、借主様は不動産会社となり、賃貸借契約の特約があれば借主様からの中途解約が可能です。しかし、サブリース契約も普通借家契約や定期借家契約と同じく、貸主様から中途解約する場合は正当事由と立ち退き料が必要となります。

また、入居者を募集するにあたっては家賃を決めなければなりません。家賃は、周辺の物件が設定している賃料を参考に算出する方法や、売主様が期待する利回りから逆算して決める方法などがあります。
例えば、4,000万円の物件で期待利回りを3%、年間でかかる諸経費を40万円と仮定した場合、年間の家賃収入の目標は160万円((4,000万円✕3%)+40万円)となり、月々の家賃は約13.3万円と算出できます。

状況によって賃貸借契約の方法や設定すべき家賃が異なる為、不動産会社と相談のうえで決めましょう。

賃貸経営をシミュレーションする

マンションを賃貸に出す場合には、まず賃貸経営をシミュレーションし、賃貸経営によってどのくらいの収入が得られるのかを計算します。

表面利回り

表面利回りとは、年間家賃収入を物件価格で割って求める利回りのことです。

表面利回り(%)=年間家賃収入÷物件価格×100

参考:日本FP協会「不動産投資における利回りの意」

例えば、3,000万円で購入したマンションを月15万円の家賃で貸し出すケースを考えてみましょう。年間の家賃収入は「15万円✕12ヵ月=180万円」です。これを物件価格で割ると、表面利回りは「180万円÷3,000万円×100=6%」となります。

表面利回りは支出を考慮しない為、簡単に計算ができますが、収益の実態が分かるものではないので、注意が必要です。

実質利回り(NOI利回り)

実質利回りとは、年間家賃収入から年間運営管理費を控除した正味の利益を物件価格で割って求める利回りのことで、「NOI利回り」とも呼ばれます。NOIとは、「Net Operating Income(正味の利益)」のことです。

NOI利回り(%)=(年間家賃収入-年間運営管理費)÷物件価格×100

参考:日本FP協会「不動産投資における利回りの意」

先ほどの例で、年間の諸経費が30万円かかると仮定して計算してみましょう。年間の家賃収入180万円から諸経費30万円を引くと、手元に残る利益は150万円です。これを物件価格で割ると、実質利回りは「150万円÷3,000万円✕100=5%」となります。

このように、実質利回りは運営にかかるコストを反映する為、より正確な収益性を判断できます。

年間運営管理費には、固定資産税や都市計画税、管理委託料、管理費および修繕積立金、簡易な修繕費、仲介手数料などが含まれます。NOI利回りは収益の実態が把握できますが、支出も考慮しなければならない為、計算に手間がかかる場合もあります。

入居者を募集し賃貸借契約を締結する

家賃や契約条件が決まり、収支シミュレーションが完了すれば、いよいよ入居者の募集を開始します。不動産会社は、ポータルサイトへの物件情報の掲載や店頭での紹介などを通じて物件情報を広く発信し、内覧希望者が現れれば物件の案内を行います。

入居希望者から申し込みが入ると、家賃の支払い能力などを確認する入居審査が行われます。審査を通過すれば、契約内容を最終確認する為の重要事項説明を宅地建物取引士が行い、賃貸借契約を締結します。

賃貸借契約が無事に完了し、敷金や礼金などの初期費用が支払われると、鍵を借主様に引き渡します。この後は、毎月の家賃入金の確認や、借主様からの問い合わせ対応などの賃貸管理業務が始まります。

マンションの売却と賃貸の同時進行は可能?

マンションの売却と賃貸を同時に進めることは可能です。どちらか一方に決めかねる場合は、まず両方の募集を並行して行い、市場の反応を見ながら最終的な判断を下すことも検討してみてください。

売却と賃貸を同時進行する場合のメリットとデメリットを以下の表にまとめました。

メリット デメリット
  • 早期の成約が期待できる
  • 状況に応じた有利な選択ができる
  • 市場の需要を直接把握できる
  • 空室期間を短縮できる
  • 内覧対応の手間が増える
  • リフォーム費用が無駄になる恐れがある
  • 不動産会社の選定が難しい
  • 不動産会社とのやり取りが面倒になる
  • 不動産会社の動きが鈍くなる恐れがある

売却と賃貸を同時進行する際のメリットとして、同時進行すればアプローチできる人の数が増え、どちらか一方に絞って活動するよりも早く話がまとまる可能性があるという点が挙げられます。また、実際の募集状況をもとに、売却と賃貸のどちらがより有利なのかも比較検討できます。

さらに、売却と賃貸でどちらの問い合わせが多いのか、市場の反応を直接知ることでより現実的な意思決定ができます。また、購入希望者か入居希望者のどちらかが早く見つかる可能性が高く、物件が収益を生み出さない期間を最小限に抑えられる点もメリットとして挙げられます。

売却と賃貸を同時進行するデメリットは、購入希望者と入居希望者の両方に対応する為、内覧の回数が増え、時間的・精神的な負担が大きいことです。また、賃貸向けにリフォームしたにもかかわらず、最終的に売却となった場合、かけた費用が回収できない恐れがあります。

さらに、売却と賃貸では不動産会社の得意分野が異なる為、両方に強い会社を見つける必要がある点も注意点です。また、アプローチする人数が多い為、連絡や調整の手間が増えて不動産会社との連絡が大変になることや、不動産会社にとって利益の大きい売却に力が入り、賃貸募集がおろそかになる恐れがあることもデメリットとして考えられます。

このように、売却と賃貸の同時進行にはメリット・デメリットがある為、状況に応じて慎重に見極める必要があります。

売るか貸すか、その判断基準とは

マンションを売るか貸すか、その判断基準は一人ひとりの状況によって異なります。
ここからは、具体的な判断基準を5つの視点から解説します。

間取り・築年数

まずは間取りと築年数の観点から見てみましょう。

【売却向きのケース】

  • 築年数が古い
  • 専有面積が広いファミリー向け物件
  • 特殊な間取り

マンションを賃貸に出す際はリフォームや設備の交換が必要になる場合が多く、築年数が古いマンションは費用がかさむ為、売却がお勧めです。また、ファミリータイプの物件は賃貸市場では家賃が高額になり入居者様が見つかりにくい傾向にある為、売却に向いています。

さらに、趣味やテレワークなどのスペースを重視した特殊な間取りの物件は、特定のライフスタイルを持つ方には魅力的ですが、一般的な賃貸需要には合致しにくい場合があります。ニッチな層をターゲットにするよりも、その価値を評価してくれる購入希望者を探すほうがお勧めです。

【賃貸向きのケース】

  • コンパクトな間取り(ワンルームや1LDK)
  • 日当たりの良い南向きや角部屋

コンパクトな間取りの物件は単身者や二人暮らしの需要が高く、手頃な家賃で貸し出しやすい為、賃貸に向いています。また、日当たりの良い南向きの部屋や、隣戸との騒音トラブルが少ない角部屋は快適性が高い為、賃貸市場で人気があります。

立地条件

次に、立地条件の視点で売却向きか賃貸向きかを確認してみましょう。

【売却向きのケース】

  • 駅から遠い物件
  • 周辺に競合物件が多いエリアの物件

駅から遠い物件は利便性が低い為、賃貸需要が安定しにくく、空室リスクが高い傾向にあります。その為、賃貸による長期的な収益より売却して現金化するのがお勧めです。また、周辺に競合物件が多いエリアの物件は家賃競争が激しくなり、収益性が低下する恐れがある為、需要があるうちに売却を検討すると良いでしょう。

【賃貸向きのケース】

  • 駅徒歩5分以内の物件
  • マンション自体の入居率が高い物件
  • 大学のキャンパスや大企業が集まるビジネス街に近い物件

賃貸市場では築年数よりも立地が重視される傾向が強い為、駅徒歩5分以内の物件は多少古くても安定した賃貸需要が見込めます。マンション自体の入居率が高いのは管理状態や住環境が良好な証拠である為、高い入居率を維持できる可能性が高いでしょう。

また、大学のキャンパスや大企業が集まるビジネス街に近い物件であれば、毎年春になると新しい学生や新入社員が入ってくる為、入居者の入れ替わりはあっても空室になる期間は短い傾向にあります。

収益性

収益性を基準に考える場合は、売却による売却利益(キャピタルゲイン)と賃貸による継続的な収入(インカムゲイン)のどちらを重視するかで判断が分かれます。

【売却向きのケース】

  • まとまった資金が必要な場合
  • 不動産価格が上昇している時期
  • 賃貸経営の利回りが低い

老後資金の確保や住み替え先の購入費用など、すぐに大きな資金が必要な場合は売却がお勧めです。
周辺の不動産相場が上がっているタイミングであれば、高値での売却が期待できる為、高額の売却益を得られる可能性があります。さらに、賃貸に出しても十分な収益が見込めない場合も売却を優先すると良いでしょう。

【賃貸向きのケース】

  • 高い利回りが見込める場合
  • 私的年金として活用したい場合

高利回りで長期的に安定した収益が期待できる物件は賃貸が有利です。
一般的に、新築物件の利回りは3~4%程度、中古物件では5~8%程度が目安とされています。また、家賃収入を私的年金のような安定した収入源として活用したい場合も賃貸がお勧めです。

ライフスタイル

将来のライフプランに今所有しているマンションがどのように関わるかも判断基準の一つです。

【売却向きのケース】

  • 将来そのマンションに住む予定がない場合
  • 賃貸経営の手間を避けたい場合
  • 身軽で柔軟なライフスタイルを望む

実家に戻る、海外に移住するなど、今後そのマンションを利用する可能性が低いのであれば、維持費のかかるマンションを持ち続けるより売却するほうが合理的です。また、入居者対応や建物の維持管理などの賃貸経営の手間を避けたい方も売却のほうが向いているでしょう。

さらに、ライフステージの変化に応じて住む場所を自由に選びたい、フットワークの軽い生活を送りたいなどと考えるのであれば、売却して現金化するほうがより自由度の高い生活を送りやすいでしょう。

【賃貸向きのケース】

  • 将来的に戻って住む可能性がある場合
  • 物件への思い入れが強い場合

転勤などで一時的に離れるだけであれば、賃貸に出して家賃収入を得ながらマンションを保有し将来再び住むという選択肢がお勧めです。また、思い出のある家を手放したくないという気持ちが強いのであれば、賃貸として貸し出し、資産として保有し続けるのも一つの方法です。

住宅ローン残債

住宅ローン残債の有無も売却と賃貸の選択肢を左右するポイントです。
原則として、住宅ローンが残ったままでは賃貸に出すことはできず、売却にも制約があります。前述した通り、居住用物件の住宅ローンは原則として本人が住むことが融資の条件となっており、住宅ローンが残っている家を売却する場合は、売却金額の決済と同時に完済する必要があります。

もし住宅ローンが残ったまま賃貸に出したいなら、投資用ローンへの借り換えが必要です。ただし、投資用ローンは一般的に金利が高く、審査も厳しくなります。借り換えが難しい場合や高い金利の返済に不安がある場合は売却を選択するほうが現実的といえます。

手持ちの資金でローンを完済できる余裕がある場合は、売却も賃貸も自由に選択できます。しかし、資金に余裕がない場合は、売却してローンを清算するほうが安全で確実な方法といえるでしょう。

まとめ

ご紹介した通り、国土交通省の統計情報を見ると、住まなくなったマンションに関しては売却を選択する方のほうが多くなっています。

売却と賃貸のどちらが良いかは、間取りや築年数、ライフスタイルなどによって左右される為、自身の状況に応じて選ぶことが重要です。もしマンションの売却を選択した場合は、心強いパートナーに仲介を依頼することが望まれます。

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※本記事の内容は2025年10月28日現在のものであり、制度や法律については、今後改正・廃止となる場合がございます。

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この記事の著者

杉山明熙
元不動産営業のWEBライター。
不動産営業を12年間経験し店長、営業部長として、売買仲介、賃貸仲介、新築戸建販売、賃貸管理、売却査定等、あらゆる業務に精通。
個人ブログにて不動産営業への転職のお手伝い、不動産営業のノウハウ、不動産投資のハウツーなどを発信。
不動産業界経験者にしかわからないことを発信することで「実情がわかりにくい不動産業界をもっと身近に感じてもらいたい」をモットーに執筆活動を展開中。
宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、2級ファイナンシャルプランナー保有。
写真:杉山明熙

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